テキサスも三笠も修理を終えて小惑星ヘラクレアを離れて行く。
ヘラクレアは、テキサスの廃材と、代わりにテキサスに使った材料を整理するために、星全体がガチャガチャと音を立てて形を変えていた。小惑星とは言え、長径30キロ、短径10キロもある星である。テキサスの修理ぐらいで形が変わるはずはないのだけど、ヘラクレアのオッサンにはこだわりがあるようで、全てのスクラップをあるべき場所に収めなければ気が済まないようだ。テキサスという異質物を取り込んでそのままにせず、全体の調和の中に収めているんだとみかさんは言った。
「あんな面倒なこと、わたしにはできないわ」
みかさんは天照大神の分身でありながら、言うことが、片付けが苦手な女子高生のようである。
パッと見は全然変わらないんだけど、モニターにテキサスと三笠が来る前と、今のヘラクレアを重ねてみると微妙に細部が違う。星全体を覆っている外板と鋲の位置が違うし、デコボコした張り出しもセンチ単位で位置や形が異なっていた。
ヘラクレアは、テキサスの廃材と、代わりにテキサスに使った材料を整理するために、星全体がガチャガチャと音を立てて形を変えていた。小惑星とは言え、長径30キロ、短径10キロもある星である。テキサスの修理ぐらいで形が変わるはずはないのだけど、ヘラクレアのオッサンにはこだわりがあるようで、全てのスクラップをあるべき場所に収めなければ気が済まないようだ。テキサスという異質物を取り込んでそのままにせず、全体の調和の中に収めているんだとみかさんは言った。
「あんな面倒なこと、わたしにはできないわ」
みかさんは天照大神の分身でありながら、言うことが、片付けが苦手な女子高生のようである。
パッと見は全然変わらないんだけど、モニターにテキサスと三笠が来る前と、今のヘラクレアを重ねてみると微妙に細部が違う。星全体を覆っている外板と鋲の位置が違うし、デコボコした張り出しもセンチ単位で位置や形が異なっていた。
「まるで『ハウルの動く城』ね」
美奈穂が言った。
「それならソフィーがいなくっちゃ。ヘラクレアのオッサン一人じゃね」
と、樟葉がチャチャを入れる。
「いっそ、美奈穂さんが居てあげれば」
みかさんも尻馬に乗る。
「あたしがいなきゃ、三笠の射撃ができません」
「及ばずながら、わたしが帰りに通りかかるまで代わってあげてもいいことよ」
「いいえ、三笠の砲術長はあたしですから!」
美奈穂はムキになった。
「それなら、それでいいのよ。ただね、ヘラクレアのおじさん……」
「なんですか?」
「娘さんを亡くしてるの……」
美奈穂が言った。
「それならソフィーがいなくっちゃ。ヘラクレアのオッサン一人じゃね」
と、樟葉がチャチャを入れる。
「いっそ、美奈穂さんが居てあげれば」
みかさんも尻馬に乗る。
「あたしがいなきゃ、三笠の射撃ができません」
「及ばずながら、わたしが帰りに通りかかるまで代わってあげてもいいことよ」
「いいえ、三笠の砲術長はあたしですから!」
美奈穂はムキになった。
「それなら、それでいいのよ。ただね、ヘラクレアのおじさん……」
「なんですか?」
「娘さんを亡くしてるの……」
「ほんと……!?」
「あなたと逆ね。娘さんは戦争で、仲間を庇って亡くなってるわ」
トシも樟葉も修一もみかさんの言葉に驚いた。
「あんな風に、スクラップを集めているのは、あの星の中心に娘さんが載っていた船の残骸があるから……それが捨てられずにね、ああやってスクラップで囲んで思い出を守っているのよ」
「あ、信号旗が上がった」
「航海の無事を祈る……か」
美奈穂は、ずっと信号旗を見ていた。
「どう、お父さんを見直す気になった?」
「あたし、お父さんんことなんか……」
美奈穂の父は、美奈穂一人を残して中東で死んでいる。
「ヘラクレアのおじさん、美奈穂ちゃんのお父さんに似てる……直観でそう思ったでしょ?」
「……いいんです。おかげで横須賀に来られて、みんなに出会えたから。物事には裏と表があります。だから……」
美奈穂が言い終わる前に7発の礼砲が鳴った。
「あ、それ、あたしの仕事!」
慌ててCICに飛び込む美奈穂であった。
トシも樟葉も修一もみかさんの言葉に驚いた。
「あんな風に、スクラップを集めているのは、あの星の中心に娘さんが載っていた船の残骸があるから……それが捨てられずにね、ああやってスクラップで囲んで思い出を守っているのよ」
「あ、信号旗が上がった」
「航海の無事を祈る……か」
美奈穂は、ずっと信号旗を見ていた。
「どう、お父さんを見直す気になった?」
「あたし、お父さんんことなんか……」
美奈穂の父は、美奈穂一人を残して中東で死んでいる。
「ヘラクレアのおじさん、美奈穂ちゃんのお父さんに似てる……直観でそう思ったでしょ?」
「……いいんです。おかげで横須賀に来られて、みんなに出会えたから。物事には裏と表があります。だから……」
美奈穂が言い終わる前に7発の礼砲が鳴った。
「あ、それ、あたしの仕事!」
慌ててCICに飛び込む美奈穂であった。