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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・里奈の物語・36『気の早い初詣』

2019-07-26 06:16:05 | 小説3

里奈の物語・36
『気の早い初詣』

 
 

 岸田先生にもらった学校のあれこれをゴミ袋に入れて口を縛ると着メロが鳴った。

――気が早いけど、初詣に行かないか? 拓馬――

 あれこれをゴミ袋に入れた➡せいせいした➡新たかな気持ち➡気の早い初詣もありか?

 という具合に繋がって、お誘いに乗ることにした。

 拓馬は鶴橋から電車だという。で、あたしも鶴橋で乗り込んで合流することにした。

「彼女、美姫ちゃん。安藤美姫、今里に来てできた数少ないお友だち」
 

 あたしは思い立って美姫をお誘いしておいた。

 拓馬は一瞬ビックリしたけど、海外旅行で日本人に会ったような笑顔になった。
 

「オレ吉村拓馬。里奈とは家が骨董屋同士で親しくなって、エ(うっかりエロゲと言いそうになっている)……エー、よろしく」
「あたしはたこ焼き仲間。それと元演劇部ってとこで、里奈と親しくなったの」
 美姫は、ごく自然に右手を出して握手。引きこもりと現役の違いはあるけど、同類同士だと分かったみたい。あたしはいい勘をしている。
「それで、山本八幡宮って、どんな神社?」

 拓馬は、今里から各停で七つ目の河内山本ってとこにある山本八幡宮に行くと言っていた。八幡宮というから鶴岡八幡とか宇佐八幡とかの大神社を想像していた。

「これが山本八幡宮」          

 言われるまでもない、河内山本で降りると、ロータリーを挟んで玉垣があり、その上に『山本八幡宮』という清々しい看板が出ていた。神社の前は幅三メートルほどの遊歩道を挟んで清げな小川が流れて、鮒だか鯉だかが群れて泳いでいる。なんだか、鉄道模型のジオラマを原寸大に拡大したような秩序がある。
「ひい爺ちゃんの代まで、この辺に住んでて、この八幡様がうちの氏神様。小ぢんまりした神社やけど、正月は駅まで初詣の列ができる」
 拓馬が、ここを選んだ理由と、可愛い神社であることが分かった。
「ホー……一幕もののええドラマが書けそうな神社やね……境内には、お宮参りの家族連れが似つかわしい」
 美姫は、長いため息に感想を載せて吐き出した。クラブは辞めたけど、感度のいい演劇少女ではある。鳥居をくぐると、本当にお宮参りの若夫婦と赤ちゃんを抱いた姑さんらしき一組が居た。
「お参りの仕方知ってる?」
「お辞儀して手を合わせる?」
「それでもええねんけど、正式なやつ教えたるわ」
 拓馬は、手水所で手を洗うところから、お賽銭を入れ、鈴を鳴らし二礼二拍手一礼をするところまで丁寧に教えてくれた。
 こういうことは大混雑する正月の初詣ではできない。

「なにをお祈りしたの?」

 お百度石のところで美姫が聞いた。

「うん……三人が、いい友だちでいられますように……かな?」
 自分で言って照れてしまう。でも本音。あたしの人間関係は、どんどんピュアじゃなくなってきたから、拓馬と美姫は大事にしたい。
「美姫は?」
「あたしは……感謝」
「感謝? お願いとかじゃなくて?」
「うん、あたしの振る舞いとか運次第では、もっと状況悪なってたと思うねん。それが、里奈と知り合えたし、今日は拓馬君とも出会えたから、それを感謝」
「そっか……てか、ありがとう。あたしのことを、そんな風に……その……大事に思ってくれて」
「ううん、そんなん。あたしのほうこそ」
「ハハハ、お願いと感謝の違いはあるけど、二人ともいっしょやな」
「ハハ、そうやね」
 美姫の目がへの字になった。
「そういう拓馬は、どうなのよ?」
「そら、オレは、ええエロゲに……」
「え、エロゲ!?」

 美姫の目はへの字から点になった。          

「「うわー、きれいな川!」」

 お昼を食べようということになり、踏切を渡って駅の南側に出た。で、美姫と二人で歓声を上げた。
「これは玉櫛川。南北に四キロほど続いてる。昼食べたら、ちょっと歩いてみよか」
 玉櫛川沿いを少し行って、焼き立てパン食べ放題のお店でランチ。
 それから、駅一つ分を玉櫛川沿いに散策。

 書きたいことは、まだまだあるんだけど。またいずれね……。

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