この物語は『坂の上のアリス』というタイトルだ。
今日で33回になるけど、アリスが出てきたことは無い。アリスというからにはブロンドの髪にパラシュートみたくスカート膨らんだ水色ワンピに真っ白な胸当てエプロン姿。で、時々懐中時計で時間を気にしている兎が出てこなければならない。ハートの女王もイカレタ帽子屋もハンプティーダンプティーも出てこない。ハートの女王にお目にかかったこともない。
なのに、なぜ『坂の上のアリス』なんだ?
実は、坂の上というのは、俺たちが通っている坂の上の高校にちなんでいる。律儀に第一回から欠かさず読んでくれている人なら分かっているんじゃないかと思う。
じゃ、アリスは?
これは名前の頭文字なんだ。アは綾香のア、リは亮介のリ、スはすぴかのス、で、『坂の上のアリス』ということになっている。
……ということで、俺、新垣亮介は、この物語の主人公の一人……なんだけど……。
やめてくれェーーーーーーー!!!
叫んだところで、風を切って急降下してしていった! あとは自分で何を言ったか叫んだか記憶にない。
一分間の恐怖を味わった後、俺の顔は涙と涎でビチャビチャだった。事前にトイレに行っていたのは正解だ。ビチャビチャが涙と涎だけでは済まないところだった。
今日は、気分を変えてUFJに来ている。UFJ……なんか違う? あ、そうそうUSJだよな、ユニバーサルスタジオジャパンの略だもんな。
地面が揺れている……あーー気持ち悪いーーーー。
「これしきのことで、しっかりしなさいよ下僕!」
「そーよ、次は、やっとハリポタエリアなんだからさ!」
くそ、絶叫系はダメだって言ったのによ。なんでフライングダイナソーから乗るんだよ!
「亮ちゃん、仕方ないよ。ハリポタは混んでるんだから、時間調整しなきゃならないでしょ」
「まだ三十分ほどあるよ」
あ、俺はヘバッテっから……先いってくれていいよ。
「ニューヨークエリアに行こう! 水鉄砲で打ち放題だからさ! ほら、下僕! 行くわよ!」
ひ、引っ張るなあ!
「ニイニ、行くぞ!」
で、ニューヨークエリアでさんざん水鉄砲の的にされる。
俺はすぴかみたいに大阪に偏見は無いけど、今日ばかりは違う。弱った俺を「キャッキャ」言いながら的にしやがって!
「あら、半分以上は大阪の外から来たお客さんよ。隙あり!」
グエ! ゲホゲホ! 水がまともに口に飛び込んできた!
「じゃ、日本中大っ嫌いだあああああ!」
「ニイニ、外人さんもたくさん来てるんだよ、トドメ!」
ウギーーー!
「世界中、みんな嫌いだああああああ!」
以上、USJからの中継だったぜ……。
♡主な登場人物♡
新垣綾香 坂の上高校一年生 この春から兄の亮介と二人暮らし
新垣亮介 坂の上高校二年生 この春から妹の綾香と二人暮らし
夢里すぴか 坂の上高校一年生 綾香の友だち トマトジュースまみれで呼吸停止
桜井 薫 坂の上高校の生活指導部長 ムクツケキおっさん
唐沢悦子 エッチャン先生 亮介の担任 なにかと的外れで口やかましいセンセ
高階真治 亮介の親友
北村一子 亮介の幼なじみ