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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

真凡プレジデント・69《エマヌエラ・1》

2021-05-01 05:46:42 | 小説3

レジデント・69

《エマヌエラ・1》  

 

    

 VRの準備画面に似ている。

 

 プレステのVRじゃなくてパソコンの方の、オキュラスとかスティームとか。

 天井と床が無限大の方眼紙のようなマス目が入っていて、彼方の地平線だか水平線だかの果ては、オボロに霞んでいる。

 VRだと、これから何が始まるんだろうかとワクワクするんだろうけど、VRのゴーグルも付けないで、この状況に投げ出されると、ちょっと心細い。

 横には降りたばかりの消防車。

 それがなければ、心細すぎて、ムンクの『叫び』みたいになっていたかもしれない。

「ちょっと見てくる」

 チッと舌打ちしてビッチェは方眼紙の地平線に消えて行った。

 わたしを待っているはずのエマちゃんとかを捜しに行ったんだ。

 消防車の周りを、ゆっくり三周して、何度目かのため息をついた。

 反対方向に回ろうと、回れ右しかけて聞こえてきた。

 

 ……なせ……なせったら! 腕が千切れる~~~~~!

 

 ドタドタという音もフェードインして、五十メートルほど先で実体化した。

 ビッチェが幼稚園の年長さんくらいの女の子を、強引にひっぱりながらやってくるところだ。

 女の子は、ゾロっとした黒のワンピに、アニメでしかありえないような長~いツインテールをなびかせ、目を✖(ばってん)にしてわめいている。

「だれ、その子?」

「ごめん、待たせたわね。この寝坊助が、なかなか起きないもんで。ほら、あいさつ!」

 犬か猫の子にするように女の子の襟首を掴んで、わたしの前に据えた。

「わたしはペットじゃないし~」

「あいさつ」

「ったわよ、ちょ、放しなさいよ。ふん、わたしがエマよ、見知りおきなさい」

「は、はあ……」

「説明してあげなきゃ分からないでしょーーが」

「ビッチェが済ましてるんじゃないの~?」

「先にやったら怒るでしょ、自分でやらなきゃ正確を規せないって」

「それは成熟体の場合、未熟体のときは、やっておいてくれなきゃ、未熟体は堪え性がないのよ、ったく……わーった、わーったから……」

 女の子が肩の高さで指を回すとヴィクトリア調というのか、シャーロックホームズ的クラシックな椅子が二脚と立派な机が現れた。

 トコトコと机の向こうに回った女の子は「うんしょ」と椅子に掛けたようなんだけど、首から上しか出てこない。

「ムーーーー!」

 唸ってからいったん椅子を下り、机の陰でキコキコ高さを調整してから座りなおした。

「わたしが担当の閻魔、エマヌエラ。田中真凡、あなたの地獄生活をプロディユースするわよ」

「え、じ、地獄!?」

 わたしがビックリすると「え、あ、違ったっけ!?」とワタワタして閻魔帳をひっくり返す。

 わたしの横では、ビッチェがジト目になって女の子を睨んでいるのであった。

  

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、いまは家でゴロゴロ
  •  橘 なつき    中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問
  •  柳沢 琢磨    天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス
  •  北白川綾乃    真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲
  •  福島 みずき   真凡とならんで立候補で当選した副会長
  •  伊達 利宗    二の丸高校の生徒会長
  •  ビッチェ     赤い少女

 


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