小悪魔マユの魔法日記・25
『AKR47・2』
――マユ、何をしに戻ってきた……UUUUUU
――なにって、先生……。
そこはサンズの川を挟んだ、魔界とこの世の境目であった。
川の向こうに、ケルベロスがいる。
魔法学校に(落第せずに)通っていたころ、よく鼻くそ味のチョコなどをやっていたので、このケルベロスは、マユによくなついている。
今も目を細め、お座りをしながら、ヨダレを垂らしている。しかし、その口から聞こえてくる声は、担任のデーモン先生の声である。
ケルベロスは、地獄の番犬であるが、子犬や、孫犬がたくさんいて、魔界のいろんなところで番犬をやっている。
で、今は、かなたの魔法学校から駆けてきて、学校の出張インタホンになっているのが、このケルベロスで、ポチ……と、マユは勝手に名付けた。本名はセリネンティウス・アトランティウス・ケルベロスというが、ながったらしく、らしくないので、本犬も含め、みな、この「ポチ」に馴染んでしまった。
一応は本名の通り血統のいいケルベロスで、校長のお気に入りだったが、なんとも軽々しい「ポチ」にしてしまったことも、マユが人間界に追いやられた小さな原因の一つになっている。
で……人なつこい顔をしながら、ニクソいデーモン先生の声でしゃべるのが、なんともアンバランスでおかしい。
思わず、マユは笑いそうになるが、この数か月の人間界での修行で「何食わぬ顔」というのを覚え、見た目には分からない。しかし、そこはデーモン先生である。ケルベロスの二番目の顔が言った。
『AKR47・2』
――マユ、何をしに戻ってきた……UUUUUU
――なにって、先生……。
そこはサンズの川を挟んだ、魔界とこの世の境目であった。
川の向こうに、ケルベロスがいる。
魔法学校に(落第せずに)通っていたころ、よく鼻くそ味のチョコなどをやっていたので、このケルベロスは、マユによくなついている。
今も目を細め、お座りをしながら、ヨダレを垂らしている。しかし、その口から聞こえてくる声は、担任のデーモン先生の声である。
ケルベロスは、地獄の番犬であるが、子犬や、孫犬がたくさんいて、魔界のいろんなところで番犬をやっている。
で、今は、かなたの魔法学校から駆けてきて、学校の出張インタホンになっているのが、このケルベロスで、ポチ……と、マユは勝手に名付けた。本名はセリネンティウス・アトランティウス・ケルベロスというが、ながったらしく、らしくないので、本犬も含め、みな、この「ポチ」に馴染んでしまった。
一応は本名の通り血統のいいケルベロスで、校長のお気に入りだったが、なんとも軽々しい「ポチ」にしてしまったことも、マユが人間界に追いやられた小さな原因の一つになっている。
で……人なつこい顔をしながら、ニクソいデーモン先生の声でしゃべるのが、なんともアンバランスでおかしい。
思わず、マユは笑いそうになるが、この数か月の人間界での修行で「何食わぬ顔」というのを覚え、見た目には分からない。しかし、そこはデーモン先生である。ケルベロスの二番目の顔が言った。
――だいぶ、とぼけるのが上手くなったな。
――とぼけているわけじゃありません。
――とぼけているわけじゃありません。
ケルベロスには三つの首があり、当然六つの目がある。二つの目で、マユの姿は3Dで見られている。そして、もう一組の双眼で、マユは心の中まで見られている。しかし、その目をしてもマユの心は読み切れない。
なぜか……マユ自身にも、自分の気持ちがよく分かっていないからだ。とりあえずは、ケルベロスのアンバランスがおかしいだけである。
なぜか……マユ自身にも、自分の気持ちがよく分かっていないからだ。とりあえずは、ケルベロスのアンバランスがおかしいだけである。
――マユ、おまえ……このケルベロスをだいぶ手なずけたな……UUUUUU
ケルベロスは、三つの首で、互いの顔を見回した。そして、前足で、三つの頭を器用に叩いた。「ギャフン」という声が三つして、ケルベロスの顔は、いくぶん引き締まった。
――どうやら、迷いがあるようだな……UUUUUU
――は、はい……。
デーモン先生の声で、マユは、自分の心を探ってみた。
――は、はい……。
デーモン先生の声で、マユは、自分の心を探ってみた。
補習の辛さ、知井子や、沙耶たち友だちへの想い。雅利恵への敵愾心。任務か、憎しみか、友情か、愛情か分からなくなってしまった自分の心。
まるで、七つにほぐれて、こんがらがった虹のような心……マユは、自分の心を美しく形容してみた。
――飾ってみても、おまえの心に変わりはない。要は、どうしていいか分からなくなって……サボりたい気持ちでここに戻ってきたな……UUUUUU
――そ、そんなことは……。
――違うというか……UUUUUU
――分かりません……正直言って。
――ならば、別の目でみてやろう……UUUUUU
三つ目の首の目が鋭くなってきた。他の二つの首が、なにか羨ましそうに、三番目の首を見ている。
――な、なんなんですか、その目は!?
――これは、おまえを裸にして見る目だ……UUUUUU
――え……?
――バストが3センチ、ヒップが2センチ大きくなった。ウエストは……UUUUUU
――ちょ、ちょっと先生!!
マユは慌てて、両手で体の上と下を隠した。
――心は、体に現れる……良くも悪くも、おまえは人間界に馴染んできたな。今回の知井子や拓美の件で、おまえのやったことは間違ってはおらん。だからカチューシャを締め上げることもしなかったであろう。ただ、お前は自信を無くし疲れてきてはおる。だから、今やっていることが、正しいのか、サボりたいという気持ちからなのか分からなくなっってきた。その迷いが肌に現れておる……WWWW
――どうして、今のとこだけWWWWなんですか?
――そ、それは……お前の背中を押してやろう。ただちに人間界に戻るがいい……UUUUUU!!
まるで、七つにほぐれて、こんがらがった虹のような心……マユは、自分の心を美しく形容してみた。
――飾ってみても、おまえの心に変わりはない。要は、どうしていいか分からなくなって……サボりたい気持ちでここに戻ってきたな……UUUUUU
――そ、そんなことは……。
――違うというか……UUUUUU
――分かりません……正直言って。
――ならば、別の目でみてやろう……UUUUUU
三つ目の首の目が鋭くなってきた。他の二つの首が、なにか羨ましそうに、三番目の首を見ている。
――な、なんなんですか、その目は!?
――これは、おまえを裸にして見る目だ……UUUUUU
――え……?
――バストが3センチ、ヒップが2センチ大きくなった。ウエストは……UUUUUU
――ちょ、ちょっと先生!!
マユは慌てて、両手で体の上と下を隠した。
――心は、体に現れる……良くも悪くも、おまえは人間界に馴染んできたな。今回の知井子や拓美の件で、おまえのやったことは間違ってはおらん。だからカチューシャを締め上げることもしなかったであろう。ただ、お前は自信を無くし疲れてきてはおる。だから、今やっていることが、正しいのか、サボりたいという気持ちからなのか分からなくなっってきた。その迷いが肌に現れておる……WWWW
――どうして、今のとこだけWWWWなんですか?
――そ、それは……お前の背中を押してやろう。ただちに人間界に戻るがいい……UUUUUU!!
で、気が付いたら、大石クララの横顔が目の前にあった。
クララの目は、目に見える方のマユに向けられていた。
「マユさん……あなたの目は、浅野拓美さんの目だわ!」
バレてしまった。デーモン先生の一押しのせいである。
「わ、わたし……」
マユの姿をした拓美はうろたえた。仕方なく、本物のマユは半透明な姿を現した。
「マ、マユさん……いったい……!?」
クララは、ハッキリなのと半透明の二人のマユを交互に見て混乱した。しかし、クララはたいしたもので、並の女の子のように、パニックになることも気絶することもなかった。ただ、目の前の不思議を一生懸命理解しようとだけしていた。
「なるほど、そういうことだったの……」
クララは、二人のマユからの話しを良く理解した。
あの屋上で、マユは拓美の強い想いを理解し、自分の体を貸してやることにしたのである。だから、屋上から降りてきて、今に至るまでのマユは、拓美である。
当のマユは、魂だけの存在になり、魔界に戻ろうとして、先ほどのケルベロスとのやりとりになったわけである。で、デーモン先生の一押しで、元来鋭いクララは真実を見抜いたわけである。
「あの、マユさん、消えかかってるけど」
――魂だけで、姿を見せるって、ずっと片足でつま先立ちしてるみたいにシンドイの!
「ごめんね、マユさん」
マユの姿の拓美がすまなさそうに言った。
――いえ、わたしも、少しさぼれるかなあって、ヨコシマなところが、無くもなかったから……あ……消え……かけ……あと……心で……伝え……。
そこで、半透明なマユは消えてしまった。あとは、二人の心に伝えた。
当面、週末だけ拓美に体を貸す。その間拓美はマユの記憶も預かることになる(ただし魔法は使えない)
だから、拓美はあくまでマユであり……言葉がややこしい。悪魔ではなく、あくまで(どこまでも、と同じ副詞)マユであり、そのことを人に言ってはいけない。クララは得意体質で記憶を完全には消せない。無理にやると、クララの命に関わるので、クララも秘密を守ること。
で、平日は、本物のマユに戻るが、休日は魔界で特別補講。これは、やぶ蛇だった。
そして、いつか拓美は、マユの体に入れなくなり、昇天しなければならない。
それが、どのような状況や条件の下で、そうなるかは……拓美にも、マユにもわからなかった……。
クララの目は、目に見える方のマユに向けられていた。
「マユさん……あなたの目は、浅野拓美さんの目だわ!」
バレてしまった。デーモン先生の一押しのせいである。
「わ、わたし……」
マユの姿をした拓美はうろたえた。仕方なく、本物のマユは半透明な姿を現した。
「マ、マユさん……いったい……!?」
クララは、ハッキリなのと半透明の二人のマユを交互に見て混乱した。しかし、クララはたいしたもので、並の女の子のように、パニックになることも気絶することもなかった。ただ、目の前の不思議を一生懸命理解しようとだけしていた。
「なるほど、そういうことだったの……」
クララは、二人のマユからの話しを良く理解した。
あの屋上で、マユは拓美の強い想いを理解し、自分の体を貸してやることにしたのである。だから、屋上から降りてきて、今に至るまでのマユは、拓美である。
当のマユは、魂だけの存在になり、魔界に戻ろうとして、先ほどのケルベロスとのやりとりになったわけである。で、デーモン先生の一押しで、元来鋭いクララは真実を見抜いたわけである。
「あの、マユさん、消えかかってるけど」
――魂だけで、姿を見せるって、ずっと片足でつま先立ちしてるみたいにシンドイの!
「ごめんね、マユさん」
マユの姿の拓美がすまなさそうに言った。
――いえ、わたしも、少しさぼれるかなあって、ヨコシマなところが、無くもなかったから……あ……消え……かけ……あと……心で……伝え……。
そこで、半透明なマユは消えてしまった。あとは、二人の心に伝えた。
当面、週末だけ拓美に体を貸す。その間拓美はマユの記憶も預かることになる(ただし魔法は使えない)
だから、拓美はあくまでマユであり……言葉がややこしい。悪魔ではなく、あくまで(どこまでも、と同じ副詞)マユであり、そのことを人に言ってはいけない。クララは得意体質で記憶を完全には消せない。無理にやると、クララの命に関わるので、クララも秘密を守ること。
で、平日は、本物のマユに戻るが、休日は魔界で特別補講。これは、やぶ蛇だった。
そして、いつか拓美は、マユの体に入れなくなり、昇天しなければならない。
それが、どのような状況や条件の下で、そうなるかは……拓美にも、マユにもわからなかった……。