goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ファルコンZ:26『さよならアルルカン・2』

2019-11-29 07:00:31 | 小説6
ファルコンZ 26
『さよならアルルカン・2』     
 
 
 
 アルルカンの特技は、心の先を読むことである。
 人の心も、アンドロイドの行動予測も読めた。
 そして……自分の心さえ。
 
 だから、街角の占い師から、十年の歳月をかけて、地球の銀河連邦大使の地位まで上り詰めた。
 
 そのことは問題ではない。
 
 問題は、アルルカンの欲である。
 
 地球や銀河宇宙のために使おうというのであれば、多少のことは許される。宇宙に完全な善などは存在しない。みな自己保全と、自分だけの成長が……煎じ詰めれば存在目的である。しかし、たいていの者は自己保全と成長が目的であるとしても、表面は銀河宇宙の安定と平和を願っている。いわば擬態である「善」の顔で付き合っているのが銀河連邦である。
 その中で、アルルカンは違った。アルルカンは銀河連邦の覇権を握ろうとしていた。大使というのは、そのための最後の擬態であった。
 
「感じる……アルルカンの心を」
「アルルカンの船には、まだ100パーセクもあるねんで。それで読めるか?」
 クルーのみんなも同じ気持ちだった。
「わたしの、ほとんど唯一の特技です。読むことと隠すこと。ただアルルカンのように先は読めません。今が見えるだけ」
「で、あいつの今の心は……?」
 ファルコン・Zのクルーは、マリア王女……マリア近衛中尉に注目した。
「危険です……ベータ星の水銀還元プラントは設計が盗まれています。設計は、すでに地球に送られ作られ初めています」
「地球の水銀を金に還元するんやな」
「しかし船長。水銀は還元の過程で1/100になります。地球中の水銀を金に還元しても、ロックフェラー級の金持ちになれる程度です」
「……投機に回したら、一時的やけど、地球の経済は大混乱やろな」
「それが、アルルカンの狙いです。その隙に地球の指導者になり、その先は……銀河連邦の支配です」
「銀河連邦の支配!?」
 
 一同が驚いた。
 
「連邦を支配できれば、わがベータ星の水銀もアルルカンの手に金として、盗られてしまいます」
「銀河連邦と言っても、その範囲は半径100光年の球状に過ぎないわ。たかが銀河の10%。その先は未知の宇宙同然。たとえハンパでも連合していなければ、これからやってくる危機には耐えられないわ」
 ミナホが、啓示を受けたように言った。
「ミナホちゃんも、なにか担わされているようね。その洞察力には、すごいオーラがあるわ」
「それより、どないすんねん、アルルカンは!?」
「破壊しましょう、船ごと」
「でも、あの船のバリアーは、コスモ砲でも打ち抜けません」
 コスモスが冷静に言った。
「わたしのソウルを同期させます」
「下手したら、死ぬで!」
「皇位の継承は妹を指名してあります」
「マリア……」
 船長以外のクルーは言葉も無かった。
「わたしも、同期します」
「ミナホ……」
「バリアーは破壊できても、シールドがあります。瞬時に破壊しないと反撃……アルルカン自身が、この船に乗り込んできます」
「ミナホ、お前には重要な任務が……よう分からんけどある!」
「わたしにも、うっすらと分かってきてます。ミナコちゃん、力を貸して」
「え、あたしが!?」
 ミナコが、素っ頓狂な声をあげた。
 マリアと、ミナホ、ミナコが手を繋ぎ、ファルコン・Zをバージョンアップした。
「反重力砲コンタクト、コスモ砲に転換……完了!」
「照準完了まで、5秒、4,3,2,1,ファイア!」
 
 アルルカンが、コスモ砲の発射に気づいた瞬間に、着弾。バリアーもシールドも船ごと一瞬に吹き飛ばされ、蒸発してしまった。
「やったー!」
「しまった!」
 ポチの歓声と、マリアの傷みの声が同時にした。
 
「やってくれたわね……」
 
 コクピットに、アルルカンが実体化していた……。
 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 永遠女子高生・13・《京橋... | トップ | 乃木坂学院高校演劇部物語・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説6」カテゴリの最新記事