goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

あたしのあした・69『智満子んちの表札』

2020-07-30 05:58:29 | ノベル2

・69
『智満子んちの表札』         




 あーーーーこんぐらがってきたあーーーー!!

 雲母祭りが終わったあと、市役所の裏側でサイレンサー付きのマシンピストルで撃たれるハメになった!
「ごめん、やっぱ巻き込むわけにはいかない」
 そう言って、ショートヘアにイメチェンしたきららさんは去って行った。
 市役所の裏庭、それも雲母市のビッグイベント『雲母祭り』が終わった直後に祭りのヒロイン雲母姫と、その侍女が撃たれたというのになんのリアクションも無い。

 これは騒がない方がいい。

 直観でそう思った。
 だから、あくる日からは普通に学校に通った。

「「よく食べるわねぇー」」

 智満子とネッチの声が揃った。
「そっかなー」
 そう言いながらラーメンのスープを飲み干す。
「そーよ。ランチのデザートに大盛りラーメンてどーかと思うわよ」
「スープまで飲み干しちゃって、2000キロカロリーはいってるよ」
「どれどれ……」

 ウキャ!

 いきなりわき腹をつままれた。
「ちょ、スープ飲んでるのよ!」
「その割に贅肉になってないんだ」
「ひょっとしたら……」
「キャプ! 胸触んなあ!」
「あいかわらずの憐乳だしい」
 とりあえずは弄られる。このままで終わったらイジメられていたころと変わらない。
「海岸で死んでたのは王女様一人だけにされちゃったね」
 智満子なりに調べているようだ。
 智満子の家でお泊り会をやった翌朝、雲母ヶ浜で男女三人の水死体に遭遇した。

――雲母ヶ浜に身元不明の水死体!――

 ニュースに出たのはそれだけだった。ようやく昨日になって――水死体はゼノヴィア公国のシャルロッテ王女!――と発表された。
「男二人の死体は無かったことにされたのよね」
 若草色のプラコップにお茶を入れながら智満子がため息をつく。
「お父さんからのルートでも分からないの?」
 ネッチの瞳も真剣モード。
「この件には関わるなって、いつになく真剣な声で言われた」
 あのお茶目なお父さんが真剣……お風呂で裸同士で遭遇した時の様子からは想像もできない。
「かなりヤバイことが背景にありそうね」
「学校に爆弾予告した犯人も分かってないし……思うんだけど、王女様の事件と爆破予告は連動してるんじゃないかあ」
「ネッチ、鋭いよ。あたしもそうだと思う」
「爆破予告は雲母市始まって以来のことで、警察なんかも、かなり人を割いて警戒したらしいの……これって、王女様のことから目をそらせるためのフェイクなんじゃ……」
「でもね、深入りはしない方がいいような気がする」
 智満子は、そう言いながらスマホの画面を見せた。
「ん……智満子んちの表札じゃん」
「こーするとね……」
 智満子は指を添えて画面を拡大した。
「「え……あ!?」」
 ネッチと二人息をのんだ。

 苗字の「横」と「田」の間に穴が開いている。

「これって……」

「たぶん銃痕、で、あくる日の表札がこれ……」

 あくる日の表札に、その穴はなかった。
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« せやさかい・160『リボン... | トップ | かの世界この世界:25『あ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ノベル2」カテゴリの最新記事