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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

乃木坂学院高校演劇部物語・55『マクベスの首・2』

2019-12-04 06:30:54 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・55   
『マクベスの首・2』  


 
 
『ハムレット』もすごかった。

 どこがって……やたらに人が死んじゃうんだもんね。ただホレーショっておじさんが都合良く生き延びちゃうのには、若干の抵抗。
 あれだけの波瀾万丈のドラマの中で、親友のハムレットがメチャクチャやって、一族死に絶えちゃって、なんだか自分一人だけ語り部みたく生き延びて……残りの人生虚しくないの? って、わたしがひねくれてんのかなあ。

『ロミオとジュリエット』は、なんだか我が身と引き比べちゃったりして、興味津々。
 ストーリーや登場人物は、よく分かんないけど、発見が二つあった。
 忘れもしない、第二幕第一場「キャピュレット家の庭」チョ-有名な愛の語らいの場!
 なにがすごいって、一回読んでみるといいわよ。
 ロミオが庭、ジュリエットがバルコニー……すごいと思わない? 
 並の作家なら、同じ平場で愛を語らせちゃうんだろうけど、これを互いに見えるけど手の届かないところに持ってきて、キスどころか、指一本触れさせないんだもんね。ミザンセーヌが最高! おそらく世界最高のラブシーンだと思う。
 それに、もっとすごいのは、あれだけのラブシーンで「I love you!」が一言も無いの。
 わたし気になって、ここだけ二回読んだんだけど、無い……「do you love me?」「Love me!」はあるんだけどね、「愛は勝ち取るものなんだ!」って、スタンスがすごいと思うのよ。
 この場面は、互いに「愛してる! んでもって結婚しよう!」ってことだけなんだけど、字数にして六千字も使ってんのね。このわたしのことを書いてる作者なら、章一つでそんくらい。才能が違う……なんて言ったら、どこで仕返しされるか分からない。なんたって、第五章じゃ主役のわたしを焼き殺しかけた人だもんね。
 それから、タマゲタのは、ジュリエットに出会ったとき、ロミオにはすでに恋人が居たんだ!……知らなかったでしょ? ロザラインって子で、二回ほど台詞の中にしか出てこないんだけどね。

 明らかに、ロミオは二股かけてんのよね!!

 わたしはロザラインに同情したわ。シェークスピアってオッサンもたいがいよ!
 なんて妄想してるうちに薮医院が近くなってきた。
 
 説明するわね。
 わたしが生まれる一年ほど前に、お父さんとお母さんは大げんかをした。
 バブルの後、工場の経営が今イチだったってこともあるんだけど、どうやらお父さん浮気もしてたみたい。
 で、お母さんは、ほんのガキンチョの兄貴連れて、家をおん出ちゃったわけ。
 そこを間に入って、元の鞘に収めたのが薮先生。お陰でわたしは一応無事に生まれることができたわけ。兄貴のアンニュイなとこもこのへんの幼児体験に原因あり……と見てるんだけど、まあ、それは置いといて。恩義に感じたじいちゃんが、盆暮れのつけとどけをお父さんにやらせてたんだ。
 でも十七年もたっちゃうと、もう時候の挨拶ってか年中行事。薮先生も、お父さんの顔見てもつまんないんで、今年は兄貴をご指名。どうやらクリスマスの香里さんへのフライングが耳に入ったみたい(このへんが、下町のいいとこでも、怖いとこでもある)なんだ。
 で、恋人同士来いってことらしいんだけど、兄貴嫌がっちゃって……兄貴は香里さんが嫌がってるって言ってた。ただ目的語が抜けてるんで、兄貴が、まだ嫌われてんのか、薮先生とこへ行くのを嫌がってるのかは分からない。
 で、わたしが代理ってわけ。むろん三千円のギャラ付き。

「こんちは……」

――二十八日~新年三日まで休診――の張り紙をしたドアを開ける。
「まどかか、そのまんま上がってきな」
 と、奥で先生の声。まあ一時間程度の「お話」は覚悟していた。ギャラもらってんだもんね。
「失礼しま~す」
 殊勝げに、待合室を抜けて、奥の座敷へ。
「あ……!?」
 しばらく、声が出なかった。
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