『五番砲塔の幻想』
ラッタルを上がり切ったところで気が付いた。
「すまん、艦コーヒーを買ってくるよ」
「それならわたしが行って……」
従兵というよりは副官のようなサクラが気を回す。
「ハハ、これは私の辻占でね、自分でやらなきゃ意味が無いんだ」
サクラをデッキに残して艦長は上がったばかりのラッタルを下りて行く。
「よし、今日はまだ当たりは出ていないようだな」
艦内の四か所に設置された自販機は日に一回当たりが出る。
当たりになると、もう一本がタダで出てくる。街中では珍しくもない自販機だが、単調な艦内生活では潤いをもたらす遊びになる。
先日までは当たりが出たかどうかは分からなかったが、機関科が調整してくれて当たりが出たものはランプが灯るようになった。
それが灯っていないので、シメタと思う艦長である。
ちちんぷいぷい~(*^▽^*)
子どものようなノリでボタンを押す!
ガタンと音がして艦コーヒーが出てくるが当たりにはならない。
「よし、もう一本」
ガタンと音がしてもう一本。
パンパカパ~ン🎶
電子音のエフェクトがして、全てのボタンが当たりを寿いで点滅する。
「今日はついてる」
艦長は迷わずに微糖のボタンを押した。
艦長は、こういう選択の局面では迷わない。艦長という職種からではなく持って生まれた性分だ。
判断力決断力が求められる指揮官としては求められる資質なのだろうが、日常生活では、ちょっと面白みに欠けるかもしれない。
娘の友子に敬遠されるのも、こういうところに……苦笑いしてラッタルを上がるとサクラの姿が見えない。
艦長こちらです。
声は五番砲塔の向こうから聞こえた。
「やあ、そっちに居たのか」
「すみません、不思議なものが見えたものですから」
「不思議なもの?」
「はい、ほんの数秒ですが筑波が並走していました」
「筑波……巡洋戦艦筑波かい?」
「質量を検知できませんでしたので実体は無いと思われますが、形は筑波そのものでした」
筑波とは、河内と同じ1917年、横須賀で爆沈した旧日本海軍の巡洋戦艦である……。
ラッタルを上がり切ったところで気が付いた。
「すまん、艦コーヒーを買ってくるよ」
「それならわたしが行って……」
従兵というよりは副官のようなサクラが気を回す。
「ハハ、これは私の辻占でね、自分でやらなきゃ意味が無いんだ」
サクラをデッキに残して艦長は上がったばかりのラッタルを下りて行く。
「よし、今日はまだ当たりは出ていないようだな」
艦内の四か所に設置された自販機は日に一回当たりが出る。
当たりになると、もう一本がタダで出てくる。街中では珍しくもない自販機だが、単調な艦内生活では潤いをもたらす遊びになる。
先日までは当たりが出たかどうかは分からなかったが、機関科が調整してくれて当たりが出たものはランプが灯るようになった。
それが灯っていないので、シメタと思う艦長である。
ちちんぷいぷい~(*^▽^*)
子どものようなノリでボタンを押す!
ガタンと音がして艦コーヒーが出てくるが当たりにはならない。
「よし、もう一本」
ガタンと音がしてもう一本。
パンパカパ~ン🎶
電子音のエフェクトがして、全てのボタンが当たりを寿いで点滅する。
「今日はついてる」
艦長は迷わずに微糖のボタンを押した。
艦長は、こういう選択の局面では迷わない。艦長という職種からではなく持って生まれた性分だ。
判断力決断力が求められる指揮官としては求められる資質なのだろうが、日常生活では、ちょっと面白みに欠けるかもしれない。
娘の友子に敬遠されるのも、こういうところに……苦笑いしてラッタルを上がるとサクラの姿が見えない。
艦長こちらです。
声は五番砲塔の向こうから聞こえた。
「やあ、そっちに居たのか」
「すみません、不思議なものが見えたものですから」
「不思議なもの?」
「はい、ほんの数秒ですが筑波が並走していました」
「筑波……巡洋戦艦筑波かい?」
「質量を検知できませんでしたので実体は無いと思われますが、形は筑波そのものでした」
筑波とは、河内と同じ1917年、横須賀で爆沈した旧日本海軍の巡洋戦艦である……。