大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・132『二年目の体育祭』

2024-10-09 15:53:06 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
132『二年目の体育祭』   




 ちょっと面白くない。

 なにが?

 運動会よ運動会。

「体育祭と言いなさい体育祭と」

 佳奈子が真面目な立ち姿で注意する。

 見上げる佳奈子はけっこう色っぽい。

 学年対抗リレーを走り終えてクラス席に戻ってきたばかり。アンカーで200を走り終え、一等こそは一年生にかっさらわれたけど、その一年との差をコンマ8秒にまで縮めたのは、さすがに女バレのキャプテンだ。

 200を全力疾走してきたので、お肌ははち切れそうにツヤツヤして頬は健康な朱に染まり、瞳の奥は――惜しくも二着!――の灯を収めきれずに潤んでいる。退場門から戻ってくるまでにウォータークーラーでガブガブ水分補給、ざっと拭っただけの唇はプクプク潤って、心臓はニュートラルに戻り切らずに首筋の血管をピクピクさせている。

「なんかねえ、不完全燃焼!」

 目の前のブルマは不完全燃焼のオケツを収めきれずにフニフニさせてけしからん景色。令和の時代にはほとんどの学校でご禁制品扱いしているのがよく分かる。

「やっぱり、文化祭と一週間違いじゃ、文化祭の方に力が入っちゃいますよぉ」

 午後からの出番のないロコは、さっさとジャージの下を履いて気持ちの上では体育祭を終えている。

『プルグラム15番、着せ替えリレーに出場される先生方とサポート伴走者に当っている生徒のみなさんは入場門にお集まりください。くりかえします……』

「あ~あ~行って来るかぁ」「荷物頼むわね」

 これも、ノリの悪い声で入場門に向かう真知子とたみ子。

「でも、着せ替えリレーを最後に持ってきたのは正解ですね。面白いからダレずに閉会式にいけますよ。生徒会も考えましたねえ(^▽^)」

「アハハ、まあねぇ」

 わたしは好きじゃない。

 男の先生をトラックの真ん中に立たせる。海パンとTシャツで。

 スタート地点から走り出した女子がトラックを一周して、それぞれのチームの先生のところに取りつく。先生たちの足元には黒い袋が置いてあって、到着した女子は袋から女ものの衣装を取り出して先生に着せて、着せ終わったら手に手を取ってトラックを一周走ってゴールするという恒例のプログラム。

 衣装は女子の制服やら看護婦やらミニスカポリスやら、女性アイドル風のやらいろいろ。パンツ以外の下着とかも入っていて、もし令和でやったら、ちょっと問題ありという代物。

 まあ、1971年だし、ノープロブレムで、みんなワハハハワハハハと笑って、大晦日みたいに一年の憂さを晴らす。

『ええと……杉野先生が事情によって参加されませんので、2年3組の加藤君が代わりに参加します。加藤君、頑張ってください~』

 放送部のウグイス嬢が気楽に変更をアナウンス。

 ウワァアアア(^▽^)!!

 
 中略


 例年の如く、おぞましくも大爆笑の『着せ替えリレー』を終え、運動会、いえ体育祭はめでたく幕を下ろした。

 そうそう、杉野先生に代わって出場した加藤高明、10円男は意外に用意されたセーラー服が似合って好評。

 順位が一年と同点になって、なんとか二年生の面目を保った運動会、いや体育祭だった。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!25『デーモン先生との対話』

2024-10-09 08:41:32 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
25『デーモン先生との対話』 





『マユ、何しに戻ってきた……ガルルル』

『なにって、先生……』 


 そこはサンズの川を挟んだ魔界とこの世の境目だったぜ。

 川の向こうに、ケルベロスがいやがる。

 魔法学校に(落第する前)通っていたころ、よく鼻くそ味のチョコなんかやっていたんで、このケルベロスはマユによくなついてやがる。

 今も目を細め、お座りをしながら、ヨダレを垂らしてやがる。でもよ、その口から聞こえてくるのは、あの、おぞましいデーモン先生の声だ。

 ケルベロスは、地獄の番犬なんだけどよ、子犬や、孫犬がたくさんいて、魔界のいろんなところで番犬をやってるんだ。

 ケルベロスってのは、犬の一族の名前でよ。 一匹一匹は別なんだけどな、悪魔や小悪魔はみんなケルベロスって呼んでる。たとえばよ、スマホのことはスマホとしか呼ばねえだろ。スマホを『ジミー』とか『香里菜』とか『ハインリヒ』とか名前つけて呼ぶ奴はいねえだろ。

 で、かなたの魔法学校から駆けてきてシッポ振ってんのが、学校の移動インタホンになってるケルベロスで、ポチ……と、マユは勝手に名付けてんだけどな。
 
 この「ポチ」って名前にしたことも、マユが人間界にやられた原因の一つだとマユは思ってるぜ。

 で……人なつこい顔をしながら、ニクソいデーモン先生の声でしゃべるのがアンバランスでおかしいんだけどよ。

 笑いそうになったけど、この数か月の人間界での修行で「何食わぬ顔」というのを覚えたからな、見た目には分からねえ。でもよ、そこはデーモン先生で、ケルベロスの二番目の顔が言う。

『だいぶ、とぼけるのが上手くなったな』

「と、とぼけてんじゃねえよ」

 ケルベロスには三つの首があり、当然六つの目がある。四つの目で、マユの姿は3Dで見られてる。そして残り二つで、マユは心の中まで見られてる。悪魔の魔眼てやつだ。

 でもよ、その魔眼をしてもマユの心は読み切れねえぜ。

 なんでか……マユ自身にも、自分の気持ちがよく分かってねえからだ。

『マユ、おまえ……このケルベロスをだいぶ手なずけたな……』

 ポチは、三つの首で、互いの顔を見回した。そして、前足で、三つの頭を器用に叩いた。「ギャフン」という声が三つして、ポチの顔はケルベロスらしく、いくぶん引き締まったぜ。まあ、年寄が調子の悪いテレビとかを叩くようなもんだ。

『どうやら、迷いがあるようだな……』

「あ、まあな……」

 デーモン先生の言葉で、マユは自分の心を探ってみた。

 補習の辛さ、知井子や沙耶たち友だちとの毎日。雅部利恵への敵愾心。任務か憎しみか、友情か打算か分からなくなっちまった自分の心。

 まるで、七つに分解してこんがらがった虹みてえな心……マユは、自分の心を美しく形容してみたぜ。

『ばか、飾ってみても、おまえの心に変わりはない』

「アハハハ、バレちまったか(^_^;)」

『要は、どうしていいか分からなくなって……サボりたい気持ちでここに戻ってきたな……』

「そ、そんなことは……」

『違うというか……』

「分かんねえよ……」

『ならば、別の目でみてやろう……』

 シャキン

 三つ目の首の目が鋭くなってきやがった。他の二つの首が、なにか羨ましそうに、三番目の首を見ているぞ。

「な、なんだよ、その目は!?」

『これは、おまえを裸にして見る目だ……』

「え……?」

『バストが1センチ、ヒップが2センチ大きくなった。ウエストは……』

「ちょ、ちょっと先生!!」

 マユは慌てて、両手で体の上と下を隠したぞ。

『心は体に現れる……良くも悪くも、おまえは人間界に馴染んできたな。今回の知井子や拓美の件で、おまえのやったことは間違ってはおらん。だからカチューシャを締め上げることもしなかったであろう。ただ、お前は自信を無くし疲れておる。だから、今やっていることが、正しいのかサボりたい気持ちなのからなのか分からなくなってきた。その迷いが肌に現れておる……WWWW』

「なんで、今のとこだけWWWWなんだよ?」

『……お前の背中を押してやろう。ただちに人間界に戻るがいい』


 六つの目がいっぺんに怪しい光を放って……気が付いたら、大石クララの横顔が目の前にあった。

 え、なんで横顔?

 クララの目は、目に見えてる方のマユに向けられている。

「マユ……あんたの目は、浅野拓美の目だわ!」

 バレてしまった。デーモン先生のせいだ!

「わ、わたし……」

「そうだよ、今の今まで忘れてたけど、拓美って子がいたんだ!」

 クララは目を丸くしてマユの姿をした拓美はうろたえた。仕方なく、本物のマユは半透明な姿を現してやったぜ。

「マ、マユ……いったい……!?」

 クララは、ハッキリなのと半透明の二人のマユを交互に見て混乱したぜ!

 でもな、クララはたいしたもんで、並の女の子みてえにパニクることも気絶することもなかったぜ。ただ、目の前の不思議を一生懸命理解しようとしやがった。


「なるほどお、そういうことだったの……」


 クララは、二人のマユの話しを理解した。
 
 あの屋上で、マユは拓美の強い想いを理解したんだ。そんで自分の体を貸してやることにしたんだ。

 だからよ、屋上から降りてきて、今に至るまでのマユは拓美なんだ。

 そんでマユは、魂だけの存在になって、魔界に戻ろうとして、さっきのケルベロスとのやりとりになったわけだ。で、デーモン先生の一押しで戻って来た、目には見えねえソウルになってよ。でもよ、元来鋭いクララには真実を見抜かれちまったわけだ。

「あ、マユ、消えかかってるけど!」

――魂だけで姿を見せるって、ずっと片足でつま先立ちしてるみたいにシンドイんだ!――

「ごめんね、マユさん(-_-;)」

 マユの姿の拓美がすまなさそうに言いやがった。

――いや、マユも、少しさぼれるかなあって、ヨコシマなところが無くもねえから……あ……消え……かけ……あと……心で……伝え……――

 そこで、半透明なマユは消えちまった。あとは心で二人に伝えたぜ。

――当面、週末だけ拓美に体を貸す。その間拓美はマユの記憶も預かることになる(ただし魔法は使えねえ)――

 だから、拓美はあくまでマユであり……マユはマユで……言葉がややこしい。悪魔ではなく、あくまでマユであり、そのことを人に言っちゃあならねえ。クララは特異体質で記憶を完全には消せねえ。無理にやると、クララの命に関わるんで、クララも秘密を守ること。

 で、平日は、本物のマユに戻るけど、休日は魔界で特別補講。

 そして、いつかは拓美は、マユの体に入れなくなり、昇天しなければならねえ。

 それが、どんな状況や条件の下でそうなっちまうかは……拓美にも、マユにもわからなかったぜ。デーモン先生もなんにも言わねえしな……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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