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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・52『ユニットの衣装……①』

2020-10-03 06:49:19 | 小説6

・52
『ユニットの衣装……①』
      
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名

  

 ポナはバカではないけど、たまに大きなところで抜けてしまう。

 今回は二つだ。

 ユニットの衣装を安請け合いしたが、家に帰ってお父さんに言うと、お父さんの達孝は、唸りながらパソコンのキーを叩いた。
「やっぱりなあ~」
「なにがやっぱりなの?」
「こういうのは人気が高くてさ、レプリカでも高いんだ。コスプレファンは多いからな。絶版ものなんかだと十万以上の高値のつくものもあるんだ」
 お父さんは根気よくいろんなオークションを当たってくれたが、とてもポナたちの予算で間に合うものは無かった。

 もう一つの問題は、みんなのサイズを聞いてこなかったことである。

 みなみはチイネエの制服が間に合ったことで、自分とサイズは大差ないだろう。だけど、あとの三人が分からない。
 メールで問い合わせれば一発なんだけど、なんだか自分のバカを宣伝するような気がする。それにサイズなんて聞きだしたら、みんな「なんとかなるんだ」と期待してしまう。

 で、今日は学校にずっと居ながら、由紀にも奈菜にも聞けなかった。幽霊の安祐美に至っては姿も見かけなかった。多分昨日の全力投球がたたって実体かはおろか、霊体としても出てくることができないんだろう。
 修学院の蟹江からは「オーディション合格おめでとう!」のメールがきていた。都の生活文化局のホームページを見たようだ。
――ありがとう――
 たった五文字のメールに、みんなの集合写真を添付して返事だけはしておいた。
 ポナからの初めてのメールが嬉しかったのだろう、直ぐに返事が返ってきた。
――あとは、デビューのときのコスだね。資金とか大丈夫かい?――
 さすがは偏差値60の修学院の蟹江。痛いところに目を付けてくる。

 で、その蟹江が、帰りの駅で待っていた。

「その顔、やっぱ、コスで悩んでる顔だな」
「蟹江君、どうして、そんなに鋭いの?」
「好きだからに決まってるじゃないか。あの……ダメ元で聞いてみるけど、ボクがスポンサーになってコス作るのはダメかな……」
 ポナは、開いた口が塞がらなかった。
「あんたって、ボンボンか!?」
「やっぱりダメだよな。好きなポナのためならなんでも……でも、なんでもなあ。そりゃそうだ。あ、これ送ってくれた写メから割り出したみんなのサイズ。よかったら参考にしてよ」
「なんで、こんなの分かるの……?」
「家がアパレル関連の仕事やってるから、見れば大体のサイズは分かる。ポナのはミリ単位で間違いなし。そのポナを基準にして他の四人も分かるってわけさ」

 ポナは「ありがとう!」と言っていいのか「この変態!」と言うべきか悩んでしまった。




ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

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かの世界この世界:90『ポチの退屈・2』

2020-10-03 06:41:22 | 小説5

かの世界この世界:90

『ポチの退屈・2』     

 

 

 この身体になって世界がひろがった。

 

 なんせ、シリンダーだったころってゆーか、今もシリンダーなわけで、カテゴリー的にはシリンダーの変異体なんだろうけど、この自由さとときめきは格別なんだ。

 十三四歳の女の子のナリはしてるけど、身の丈は25センチ。てっきり30センチはあるかと思ったんだけど、だって、みんな1/6サイズのフィギュアみたいだって言ってる。1/6サイズのフィギュアって30センチくらいあるもん。

 そういうことにしとけばいいのに、ロキは退屈まぎれに、わたしの身長を測った。

「あ、25センチ!」

 大きな声で言うもんだから、四号の車内のみんなが「ヘー」とか「ホー」とか言って納得してしまった。

 ま、いいけどね。狭い四号の中でも25センチの身長ならスイスイらくちんに移動できる。

 ロキが車載通信機の上にベッドを作ってくれた。四号を整備するときに使うウエスってゆう布キレを適当に縫い合わせただけのベッド。ここだと通信手のロキと操縦手のタングリス、両方の顔が見える。人間だったら、こんな間近に、たとえ親しくっても人がいるというのは落ち着かないかもしれないけど、わたしは嬉しい(^▽^)/。

 もっともタングリスは無口なんで、もっぱら、お喋りしたりチョッカイを出し合ったりするのはロキだ。厳密にはご主人様になるのかもしれないけど、気分は相棒だね。

 寝返りうつと、タングリスの横顔。

 胸もおっきいし、めちゃくちゃ美人だ。ブリ(本人が嫌がるんで面と向かってはブリュンヒルデと正確に言う)にだけは丁寧な言葉を使う。丁寧なんだけどきびしい。あんまし遊んでくれないから苦手。ロキはツンデレなんだと言うけど、まだデレたところは見たことがない。

 人型になったら飛べないかもしれないかと心配したけど、しっかり飛べる。普通の人間は飛べないから、飛べる自分は人の形をしていても、やっぱ本質はシリンダー? まあ、ブリもケイトもテルも戦闘の時は飛んでるから、あんまり深くは考えないでおこう。

 こんなことをポワポワ考えるのは気分よく空を飛んでいるからだ。

 タングリスに言われて西部戦線の偵察。ムヘン街道に戻った時は砲撃とかがあって、さぞかし北上したらドンパチの真っ最中と覚悟したら、四号の北上と共に戦線は西の方に行ってしまったらしい。

 

 ピピピピ ピピピピ

 

 識別信号機がアラーム。

 ポチっと目の前をクリックすると、仮想デスクトップが出てくる。

 3Dのマップに三種類のドットがせめぎ合っている。

 青が味方のトール元帥軍。赤がクリーチャー。白がレジスタンス。

 赤はとても少ない。その少なくなった赤を取り囲んでいる白と青がせめぎ合っている。

 レジスタンスたちは、闇雲にクリーチャーを討伐するんじゃなくて協調しようとして、トール元帥軍と衝突している。

 その関係が、そのままマップに現れている。

 

 全体としては青のトール元帥軍が赤と白をせん滅する寸前に見える。でも戦線は一進一退で、ほとんど膠着しているようだよ。

 これから、どう動くのかは、もうちょっと近づいてみないと分からない。

 

 よーし、もうちょっと下りてみるか。

 

 わたしは、静かにゆっくりと高度を下げていった……。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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