大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・001『渡辺真智香を認識 要海友里の場合』

2019-03-16 17:20:27 | 小説

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・001

『渡辺真智香を認識 要海友里の場合』 

 

 

 ☆要海友里(ようかいゆり)の認識

 券売機の前まで来て気づいた……今日からお弁当だったんだ。

「ごめん、すっかり忘れてた💦」

「そっか、そだったよね」

「……」

 ノンコは直ぐに分かってくれたけど、清美はちょっと嫌な顔をした。

 友達付き合いを優先するならお弁当は頭の隅に押しやって、ノンコ・清美といっしょにお昼する。そいで、お弁当は放課後にでも食べて帳尻を合わせる。ふつうの女子ならそうするだろう。わたしだってレギュラーな事情ならそうする。

 でもでも、お弁当を先延ばしにして放課後食べたとすると、晩御飯が食べづらくなる。晩ご飯の箸が進まなければ(お母さん)が心配する。お父さんだって「あれ?」って思う。そういうのは避けたい。最悪な場合、放課後になって、またお弁当の事を忘れて家に帰って鞄を開けて気づくということになりかねない。こっそりお弁当を処理する方法も理論的には可能だけど、そんなズルをやって平気でいる自信は無い。なんたって(お母さん)が初めて作ってくれたお弁当なのだ。きちんとお昼に食べると言う正当な選択肢しかない。

「ごめん、また今度ね!」

 二人を片手拝みにして教室に戻る。

 教室はお弁当組の半分が思い思いにお弁当を広げている。半分と言うのは、教室の外や他の教室で食べてる人がいるので半分になる。たいていの子は二三人で机をくっ付けて楽し気に食べている。ひとりで食べている子はめったに居ない……が、一人いた。

 出席番号一つ違いの渡辺真智香。

 一つ違いなんで学年の最初は前と後ろの席同士だった。一学期の中間テストが終わって席替え、それからは近所の席になったことは無い。それまで二言三言しか話したことが無い。

 なんというか、とっつきにくい。

 あ、原因はたぶんわたし。

 なんたって渡辺さんは美少女だ。気後れしてしまって話すきっかけがね……類は友を呼ぶというやつで、わたしの友だちは、さっきのノンコ(野々村典子)とか清美(藤本清美)とかの普通人。勉強そこそこ、容姿そこそこ、女子高生としての偏差値55くらいの人たち。渡辺さんは、いまも一人でお弁当食べているとおり、少し孤高の優等生。個人情報だから具体的な数字を知ってるわけじゃないけど、先生たちの接し方を見ても相当の優等生。偏差値マックス!

 おまけに美人、チョー美人。

 優等生でチョー美人なんだから、もう近寄れません!

 でもって、わたしも初めてのお弁当なので、つい窓際でボッチランチしてる渡辺さんを視野に入れてしまう。

 視野に入れると言っても、視界の端っこにとらえるだけ。

 平均的なハイスクールである都立日暮里高校の生徒はめったにガン見なんかしないんだよ。

 渡辺さんは、午後の日差しの中窓枠を額縁にして、まるでフェルメールの絵のようよ!

 なんか文庫本を読みがら楚々と食べている……ん?

 ガン見してしまった。

 え? ええ!?

 なんと、おかずの玉子焼きやらウィンナー、それにご飯の一口分が渡辺さんの顔の前にポワポワ浮いて、渡辺さんがお口を開けると、まるでデススターに宇宙艇が戻るように入っていくではないか!

 あり得ない。

 思った瞬間、おかずや一口ご飯はお弁当箱の中に戻った!

 でもって、渡辺さんと目があってしまった。まさにシマッタ!という感じ。

「あ、要海さんもお弁当なんだ」

「は、はいいい!」

 てっぺんから声が出てしまった。

「よかったら、いっしょに食べない?」

 ニッコリと、天使だか悪魔だか分からない笑顔で言われてしまった。

 

 とんでもない物語が始まってしまった……。

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・01『尾道育ちだから』

2019-03-16 06:38:03 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・01
『尾道育ちだから』


 尾道育ちだから自転車には乗れない。

 このことで、自分を卑下したり、つまらなく思ったことは無い。
 尾道は坂の街だから、大の大人でも自転車に乗らない人が多い。
 流行りの電動自転車でも、尾道の坂道には歯が立たない。
 坂そのものが、電動自転車でも受け付けないほど急なところもあるし、道が入り組んでいたり段差があったり。

 でも、そこが尾道のいいところで、流行りの言葉で言うと『3Dの街』なんだ。

 坂を下りたり上ったり曲がったり、すると思いもかけない世界が広がったり入り込んだり。
 わたしの妄想癖は、多分に尾道が3Dであったことが影響しているんだと思う。

 でも、自転車に乗れない(乗らない)ことを意識したことはなかった。

「自転車に乗れたら世界が広がるよ」
 京ちゃんが、形のいい眉をヘタレにして言ってきたので、そうかなあ……と、人生で初めて思った。
 京ちゃんは、この九月、高安に引っ越してきて、たった一人友だちになってくれたクラスメート。

 先月の勤労体験で八尾本町の歯ブラシ工場に行ったんだけど、待ち合わせの本町交差点が分からない。

「え、どこなの?」
 すると、歯ブラシ工場組のみんなが「え?」という顔になった。
 雰囲気から、八尾市民なら「空は頭の上にある」というくらいに当たり前らしいということが察せられた。
「ほんなら、あたしが迎えに行ったげるわ」
 と言ってくれたのが京ちゃん。

 その当日「お早うございます」と迎えに来てくれた京ちゃんは自転車に乗っていた。

「え、自転車に、よう乗らんのん?」
 自転車に跨ったまま、京ちゃんは控えめに驚いた。
 本町交差点というのは自転車で行かなければ時間的に間に合わないところにあるらしく、わたしも京ちゃんも途方にくれた。

 わたしのことなんか放っておいて、一人で行けばいいんだけど、そんな薄情なことはできない京ちゃんなんだ。

「仕方ない、送ったたげよう」
 見かねたお母さんが言ってくれて、その日一台だけ残っていた営業用の車で送ってくれることになった。

 え、えええーーーーー!!

 待ち合わせ場所に着くと、グループの仲間どころか、交差点にいた全ての人に驚かれてしまった。
 乗ってきたのは外車なんだけど、ちょっと普通じゃない。

 M8グレイハウンド     

 37ミリ砲を搭載したアメリカの装甲車。
 家は、映画やイベントで使う特殊車両のレンタルをやっている。その事業拡大のために八尾は高安に引っ越してきたのだ。

「「「「「「うわー、ガルパンやんけ!!」」」」」」

 グループの男子が口を揃えた。
「帰りは普通の車で迎えに来るから」
 そう言い残して、お母さんはグレイハウンドを運転していった。

 このことがあって、京ちゃんは、わたしに自転車に乗ることを強く勧めた。

 本当は、恥ずかしさからなんだけど、京ちゃんは真実を言っていた。

 自転車に乗れるたら世界が広がるよ。

 自転車に乗れるようになったら、またお目にかかります。  美智子

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・1(その始まり)

2019-03-16 06:26:16 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・1
(その始まり Eloim, Essaim)
       


 晴れと雨を六日繰り返した後大風が吹いた。

「春一番てのは聞いたが、冬一番てのは初めてだな!」
「それって、木枯らしって言うんじゃないですか!?」
「木枯らしに、こんな生暖かいのはねえ。それに、なんだ、この臭いは!?」
 確かに、黴臭いような生臭いような臭いが満ちていた。
「古い図書館だから、こんなもんですよ!」
「さっさと見回り済まして帰ろうぜ!」

 この会話が、警報によって駆けつけたガードマン二人の、この世での最後の言葉だった。

 箕作図書館は、その夜十万冊の蔵書とガードマン二人の焼死体を残して全焼した。正確には、一冊の本が奇跡的に残っていた。まるで火事の後に誰かが持ち込んだように、焼け焦げ一つなかった。濡れてはいたが水でふやけるということもなかった。

「なに、この本?」

 やっと現場検証に立ち会えた司書の由奈が取り上げた。その本はタイトルだけが焼けて抜けていた。Eで始まっているのは分かったが、飾り文字なのであとは読めなかった。
「え、なにこれ?」
 もう一人の司書の緑もよってきて、ページをくったが、その本には何も書かれていなかった。ただ装丁から言って、戦前からあった貴重本のような感じで禁帯の赤いラベルが背表紙に貼られていた。

 真美は、いつになく起きづらかった。

「真美、もう時間よ!」
 母が階下で呼ぶ声で、やっと目覚めた。いそいで制服に着替えて鏡の前に立ってびっくりした!
「キャー!」
 慌てて母親が駆け上がってきた。
「どうしたの真美!?」
「あ、あ、あたしの額に……!」
「……額がどうかした?」
「だって、ほら、鏡に……!」

 真美の額にはEloim, Essaimの文字が血の色で浮き出ていた。

「え……なにも見えないわよ」
 母は、鏡と娘の顔を交互に見たが、どこにも異変は無かった。
「だ、だって……!」
 血文字から滴った血が目に入って、真美は一瞬目をつぶった。それを拭って目を開けると、もうEloim, Essaimの文字は見えなくなっていた。
「夕べの風で眠れなかったんでしょ。寝ぼけたか夢の続きか……とにかく急ぎなさい。いつもより五分遅いんだから」
 そう言って母はダイニングへ降りて行った。
「どうした、季節外れのゴキブリでも出たか~?」
 朝食を終えた父がのんびり言った。
「え、あ、なんだか寝ぼけてたみたい」
 そうとしか言えない真美だった。朝の五分は貴重だ。朝食は流し込み、朝のいろいろは、いくぶん省略。髪の毛の寝癖が気になったが、ポニーテールにしてごまかした。

 そうして、家を出る時には一分遅れ。駅まで早足で歩いて、なんとかいつもの準急に間に合う。真美は日常に戻りつつあった。

 そのことが起きるまでは……。

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高校ライトノベル・メタモルフォーゼ・17・再びのかおるさん

2019-03-16 06:10:23 | 小説3

メタモルフォーゼ・17・再びのかおるさん       


 片道一時間ちょっとかけてレッスンが始まった。

 学校が終わると、4:05分の大宮行きに乗って、東京で地下鉄に乗り換えて神楽坂で降りて5分。放課後は必死。掃除当番なんかにあたると、駅までダッシュ。
 ミキとは別々。下手に待ち合わせたら、いっしょに遅刻してしまうし、みんなの目もある。
 だから一本違う電車になることもあるし、同じ電車に乗っても並んで座ったりはしない。地下鉄に乗り換えても、気安く喋ったりはしない。
 これは人の目じゃなくて、自分のため。行き帰りの二時間半は貴重だ。学校の予習、復習、台本読んだり(演劇部は続いている)レッスンの曲を聞いて歌やフリの勉強もある。

 一カ月が、あっという間に過ぎてしまった。

「美優、明日からチームZね」

 突然プロディユーサーから言われた。普通研究生からチームに入るのには最低でも三か月はかかる。
 ちなみに、神楽坂46は、チームKからZまである。K・G・Rがメインで、ユニット名もKGR46。Zは、いわば予備軍ってか、劇場中心の活動で、たまにテレビに出ても、ひな壇のバック専門。
 でも、チーム入りには違いない。「おめでとう」とミキが伏目がちに言ったのは戸惑った。
 そのミキも三週間後には、チームZに入った。ただ、あたしは入れ替わりにチームGのメンバーになり、ここでも差が付いた。

 そんな暮れも押し詰まったころ、ミキのお祖母ちゃんのカオルさんの具合が悪くなった。

「ありがとう、大変だったでしょ。二人揃ってスケジュール空けてもらうの」
「ううん、たまたまなの。わたしは完全オフだし、美優は夜の収録までないから」
「そう、よかった」
 カオルさんは、ベッドを起こして、窓からの光に照らされて、あまり病人らしく見えなかった。
「並んでみて、そう、光があたるところ」
「ミキ、こっち」
「う、うん」
「美優ちゃんは、自然と光の当たる場所に立てるのね……」
「たまたまです、たまたま」
「ううん。自然に見つけて、ミキを誘ってくれた。美優ちゃん、これからもミキのこと、よろしくね」
「よろしくって、そんな……」
「ううん、美優ちゃんには華がある。不思議ね、こないだミキのタクラミでうちに来たときには、ここまでのオーラは無かったのにね。あ、看護婦さん」
「カオルさん、今は看護師さんて言うのよ」
「はい、なんですか、カオルさん」
 看護師さんは、気楽に応えてくれた。
「このスマホで、三人並んだとこ撮ってもらえませんか」
「いいですよ。じゃあ……」
 カオルさんを真ん中にして、三人で撮ってもらった。
「ほら、これでいいですか?」
「あら、看護婦さん、写真撮るのうまいわね」
「スマホですもん、誰が撮っても、きれいに写りますよ」
「いいえ、アングルとか、シャッターチャンスなんかは、スマホでも決まらないものよ」
「へへ、実は十年前まで、実家が写真屋やってたもんで」
「やっぱり……!」
 カオルさんは、勘が当たって嬉しそう。カオルさんが嬉しそうにするとまわりまで嬉しくなる。さすが、元タカラジェンヌではある。それも、この感じはトップスターだ。
「ほら、見てご覧なさい。写真でも美優ちゃんは違うでしょ」
「確かに……」
 ミキは、わざと悔しそうに言った。
「アハハ、ミキ、その敵愾心が大事なのよ」
「あの、カオルさんの宝塚時代のこと見ていいですか?」
「え、どうやって?」
「あたしのスマホで」
 あたしはYou tubeで、秋園カオルを検索した。
「あら、美優ちゃんのスマホ凄いわね!」
「カオルさんのスマホでもできますよ」
「ほんと、全然知らなかった!」
「カオルさん、思いっきり昭和人間なんだもん」
 そうやって、カオルさんの全盛期の映像を見て楽しい午後を過ごした。

 そして、その四日後の朝に、カオルさんは神さまに召されました……。

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高校ライトノベル・時かける少女・39『女子高生怪盗ミナコ・5』

2019-03-16 06:00:52 | 時かける少女

時かける少女・39 
『女子高生怪盗ミナコ・5』 
      

 


 なんで、負けた方の素材を盗まなきゃならないのか分からなかった。

 バーサスというテレビ番組の収録に潜入して、絶対穴を開けるガスバーナーと、どんな高温でも穴の開かない金属の勝負を見極め、金属の方が負けるはずだから、それを頂戴してこいというのが爺ちゃんの指令であった。
 それも、本体ではなく、溶けて飛び散ったカケラを持ってこいという。
 まあ、先日の保科クンのパソコン操作でも完敗しているので、文句は言えない。

 バーサス(VS)は、人気のある番組で、相反する技術を持った会社の製品を力比べして、どちらが勝つかをゲストでアテッコするというシンプルな番組だが、日本の技術者の中では人気のある番組だった。
 先日は、誰にも開けられない鍵と、どんな鍵でも開けてしまうという鍵開け世界一名人の一騎打ちだった。
 ミナコは爺ちゃんと二人で柿の種にノンアルコールビール並べてお気楽に見ていた。
「こんな、若僧に開けられる鍵じゃねえよ。鍵田コーポレーションは、昔は角鍵って言ってよ、オイラ達の稼業の天敵だったもんよ」
 予測通り、鍵田コーポレーションの勝ちだった。勝った若いエンジニアは、とても得意そうだった。

 と、そこに飛び入りが入った。

「あ、藤三爺ちゃんだ!?」
「変装もしねえで……」

 そして、藤三爺ちゃんは、悪びれもせずに、正体を明らかにしてしまった。
「シキテンの藤三ってケチな本業でしたが、この春にお務め果たして引退いたしやした。まあ、年寄りの冷や水と思って、やらせて、おくんなさい」
 スマホで、検索したMCのニイチャンは声を震わせて紹介した。
「山口藤三さんは、戦後の三大盗賊と言われ、開けた金庫は……」
「能書きはいいよ、ニイサン。それより、条件を変えておくんない」
「じゃ、規定は、五分ですが、八分というところで」
「いや、三十秒、いまからでいいよ」
「では、スタート」
「でも、なんだね、レギュラーのAKRの小野寺潤ちゃんは、一本気なとこがいいね」
「あの、藤三さん。もう始まって……」
「鍵なら、もう開いてるよ」

 現場も、スタジオも騒然となった。藤三爺ちゃんは、MCと話していただけで、画面で見た限り、鍵に触りもしていない。
「え、ええ!」
「角鍵も、こんな甘い鍵つくってちゃ、いけねえなあ」

「藤三アニキ……」

 爺ちゃんは、こぼれ落ちる涙を拭おうともしなかった。
「すごいね、藤三爺ちゃん……」
「てやんでい、天下に面を晒したってのは、廃業宣言と同じだい。お、おれがなんのために二年六月(ろくげつ)塀の内側にいたか……」

 そのあと、テロップで鍵田コーポレーションは藤三を特別顧問に雇ったと出てきた。
「ありがてえ、これで、遅ればせながら孫を大学に入れてやれやす」
 藤三爺ちゃんは、目を赤くして喜んでいた。
 ミナコは、あの雪の日、A刑務所の近くで別れた美代子の幸薄い顔が浮かび、まるで姉の門出を喜ぶように上気した。

 そして、ミナコはバーサスの次の収録場所、簑島工業の敷地に居た。相手の会社は、まだ分からない。
 やがて、古ぼけたセダンに乗って、対決の相手が現れた。
 社長は、五十手前のおじさんだったが、後ろに付いている女の子を見てびっくりした。正隆のもう一人の彼女、山城琴子ではないか……!

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