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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・メタモルフォーゼ・12・オトンボのミソッカス

2019-03-11 06:56:16 | 小説3

メタモルフォーゼ・12・オトンボのミソッカス


「最優秀賞 受売(うずめ)高校 大橋むつお作『ダウンロ-ド』!」

 嬉しいショックのあまり息が止まりそうだった。なぜか下半身がジーンと痺れたような感覚。
 え、なに、この感覚? こんなの初めてだよ……!?

 あ、おしっこをチビルってのは、こんなのか……括約筋にグッと力を入れて我慢した。

 賞状をもらって壇上で振り返ると、秋元先生はじめ、助けてくれた人、心配してくれた人たちの拍手する姿が目に入り、ニッコリしながらも目頭が熱くなった。
 それから閉会式の間、あたしは嬉しい悲鳴をあげながらもみくちゃにされていた。

「あ、剣持さんが来てる……」

 ホマの声で、みんなが一斉にそっちを見た。
 あたしでも知っている三年生で一番と評判の倉持健介……さんが来ていた。ユミがスマホを出してシャメろうとした。
「チッ……!」
 シャメる前に、他校の女子生徒が三人来て取り巻き、その子達がチヤホヤしだした。倉持さんは慣れた笑顔であしらいながら、出口に向かった。女の子達が後に続く。
「もてる人だから、オッカケの子たちの義理で来たんだろうね」
 クラス一番モテカワのミキでさえ、倉持さんは別格のようだった……。

 家に帰ると、みんな、それぞれにくつろいでいた。

 お母さんはルミネエといっしょにミカンの皮を剥きながら、テレビドラマを見ている。
 ミレネエは、お風呂から上がったとこらしく、パジャマ姿にタオルで頭くるんでソファー。やっぱ、テレビが気になるよう。頭を左右に振りながら「見れねえ」とシャレのようなグチを言ってる。親と姉が邪魔でテレビが見づらそう。
 レミネエは、我関せずと自分の部屋でパソコンらしい。キーボ-ド叩く音がしている。
「ただいま。コンクールで最優秀とった……」
「やっぱ、エグザイルはいいわ。犬の娘が結婚するわけだ」
「進一兄ちゃんも、ここまで努力したら、トバされずにすんだのかもね……あ、美優帰ってたんだ。ただ今ぐらい言いなよ」
「言ったよ」
 女子になったころは珍しくて、うるさいほどに面倒みてくれたけど、もう慣れたというか飽きたというか、進二だったころと同じく空気みたいになってしまった。ま、いいけど。
「先にお風呂入っていい?」
「うん」が二つと「どうぞ」が一個聞こえてきた。
「じゃ、お先……」

 着替え持って、脱衣場でほとんど裸になったときにミレネエが、入浴剤の匂いをさせ、なにか喚きながら、あたしをリビングに引き戻した。
「美優の学校大変だったんだね、侵入者がいて演劇部の道具壊されたって、で、犯人掴まったそうだよ!」
――今朝、受売高校に侵入し、演劇部の道具などを壊した容疑で、S高校の少年AとB、それに同校の少年が、侵入と器物破損の容疑で検挙されました――
「大変だったんだね、美優……美優、なにおパンツ一丁で。あんた女の子なんだから……」
「ちょ、ちょっと!」
 テレビが続きを言っていた。
――なお、受売高校演劇部は、この御難にもかかわらず、地区大会で見事最優秀を獲得いたしました――
「美優、やったじゃん! なんで言わないのさ!?」
「言ったわよ、ただ今といっしょに……あの、寒いんで、お風呂入っていい?」
「さっさと入っといで!」
 と、引っぱり出してきたミレネエが……言うか?
「上がったら、ささやかにお祝いしよう!」
「ほんと!?」
 あたしは、急いでお風呂に入った。しかし女子になってから、お風呂の時間が長くなった。
 お風呂から上がると、祝勝会は、すでに始まっていた。改めて乾杯はしてくれたけど、話題は、いつの間にか、職場、ご近所のうわさ話になった。

 やっぱ、あたしは男でいても女になっても、オトンボのミソッカスに変わりはないようだった。

 つづく

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高校ライトノベル・時かける少女・34・プリンセス ミナコ・16・王女!

2019-03-11 06:44:14 | 時かける少女

時かける少女・34 
プリンセス ミナコ・16・王女! 
      



 ミナコの中でなにかが弾けた。自分でも意識しない心の奥底で……。

 ミナコは、横様に倒れながら父のジョルジュに足払いを掛け、父の自動小銃は虚しく虚空を半円状に弾をばらまいた。
 そして、それが合図であったように、水中からダニエル、ダンカン、NATOの特殊部隊が水中から躍り出て、ゲリラ達を掃射した。
「ダニエル、ダンカン!」
「王女、頭を下げて!」
「危ない!」
 ダニエルとダンカンは同時に声をあげた。

 それからの数秒は、スローモーションのように思えた。

 父のジョルジュは倒れていたので、特殊部隊の隊員達は、瞬間、弾に撃たれて死んでいるものだと思った。熟練した隊員達はジョルジュが生きていて、拳銃を抜くところであることに反射的に気づいたが、一瞬遅れた。
 ジョルジュは、ぶれながらもミナコの胸を狙った。
 特殊部隊の隊員も反射的にジョルジュに狙いを定めた。

「お父さんを撃たない……!」

 ミナコは全身で父を庇った。そのために、父と特殊部隊の隊員の弾を二発も同時にうけてしまうことになった。

「王女!」

 ジョルジュが、真っ先にミナコに駆け寄った。
「お父さんは無事……」
「ケガをされていますが、ご無事です」
「ミナコの王制は……わたしが……」
 そこまで言ったとき、ミナコの口から、おびただしい血が溢れた。
「いかん、心肺停止。救護ヘリを呼べ!」
「もう、呼んである!」

 ダニエルの叫びも、ダンカンの機転も虚しく、ミナコは、救護ヘリの中で十六歳の生涯を閉じた……。

 その夜、ミナコ公国は悲しみに包まれた。

 若きプリンセスは、その戴冠式も済まないうちに命の灯を消した。皇太子ジョルジュは軽傷ではあったが、国民感情も母たる女王も、その復位は認めなかった。ローテも王位継承は固辞した。ミナコの真心が分かったからであることは言うまでもない。

 その夜、ミナコの遺体は清められて、王宮の教会に安置された。女王と母の奈美子、妹の美奈が付き添った。

「まるで、シンデレラのようね……」
 女王と奈美子は、代わる代わる髪をとかしたり、頬に触れたりした。
「まだ、少し体温が残っている……」
 女王が涙をこぼした。
「この気温のせいでしょう。陛下、そろそろドライアイスを……」
 ダンカンが、冷静に言った。
「ダンカン、あなたの冷静さを……」
 女王は、厳しく悲しみに満ちた顔のまま言いかけた。
「は……?」
「感謝すると、おおせなのだ」
 ダニエルが女王の言葉を拾った。
「ありがとう、ダニエル……」

 係のものが、花柄の枕になったドライアイスをミナコの頭にあてがおうとした。

「冷たい……」

 

「「「「え?」」」」



 微かではあるが、ミナコが声をたてた!

 それからは、原稿用紙で十枚分ぐらいの歓喜が続き、一カ月の療養のあとで、ミナコは回復し、正式にミナコ公国の王位継承者として、王女のティアラを頭に頂いた。


「さあ、これで今回のミナコは、終わりだ。ラストのがんばりは評価してやるが、その前は死に神をペテンにかけたからな、まだ、お前は別のミナコとして生きなければならない」
「少し、休みってのはもらえないの?」
「おまえが、選んだ道だ、こんなもので済むと思うな」
 ミナコと同じ姿の死に神が、情けのカケラもなく言い放った。

 ミナコは、また混沌の中に引きずり込まれていった……。

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高校ライトノベル🍑MOMOTO🍑デブだって彼女が欲しい!・64『たった3キロだけど』

2019-03-11 06:34:58 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

64『たった3キロだけど』


 クレオパトラと天智天皇を検索した。

 歴史上の人物という以外にこの二人には共通点が無い。でも、検索したら出てきた……とんでもない共通点が。
 
 クレオパトラは、父が亡くなって王位に就くとき実の弟と結婚している。
 天智天皇は実の妹を夫人にしていた。

 なぜこんなことを検索したかというと、桃が調べろと言ったからだ……。

「ね、こんなチョー有名人でもやってるんだよ」
 枕の端っこを噛みながら、上目遣いに桃が言う。
「だからって、オレたちがやらなきゃならないことにはならないだろーが」
「でもね……」
「さっさと寝ろ」
 背中を向けると、瞬間移動してオレの胸元にくる。
「……もう、しちゃったんだよ、夕べ」
「って……記憶にないぞ」
「ショックみたいだったから、記憶を消しておいたの……」
 そう言って、桃は右手をオレの胸に当てた。とたんに早回しで蘇る。

 あんなこと! こんなこと! そんなこと!

「思い出したでしょ? もうしちゃったんだから、もっかいやっても同じだよ……」
「も、桃……」
 あとの言葉は桃の唇で塞がれてしまった。

 今度は記憶を消していかなかった。

 桃の温もりが自己嫌悪とともにオレの中に刻み付けられてしまった。
「くそ……洗っておくか」
 いつになく桃の匂いが残ったシーツが疎ましく、バサっと剥がして洗濯機に放り込む。
 冷凍庫からナポリタンを取り出すが躊躇ってしまう。
「ちょっと多いなあ」
 焼きおにぎりの冷凍に替えてレンジに安置する。チンまで時間があるのでインスタント味噌汁を作る。
「ちょっと具が少ないか……」
 野菜庫からシメジのパックを取り出し、4つ程むしって味噌汁にぶち込む。

 今日は10時30分登校で、発育測定の日だ。

 早番の女子たちとすれ違うようにして学校に向かう。
「お先です百戸先輩」
 すれ違いざまに片桐さんが声を掛けてくる。バイトでは「桃斗くん」だが、学校では下級生だという姿勢を崩さない。
「お、早くもお近づきか!?」
 腐れ縁の八瀬が冷やかす。八瀬は入学式から彼女に目を付けているようだ。バイト先での彼女を知っているので、八瀬の手に負えないことは分かっている。分かっているから放っておく。

「どうして体重計の目隠し外すのかなあ」

 身長の計測が終わって体重のところに行くと、デブの会の野呂がボヤイテいる。
 午前中の女子の時は目盛りは隠されているが、午後の男子の時には外してある。片づけを早く終わるためという保健委員の説明には納得していない。目隠し1枚剥がしても劇的な時間短縮になるとは思えない。どうも男のデブに人権は無いようだ。
 ま、3年にもなると気心は知れているので、110キロの体重でもイジメ的な歓声が上がることはないだろう。
「次、13番百戸」
 保健委員に呼ばれ、お決まりの冷やかしの声を背に体重計に乗る。
「ン……オ……もっかい乗ってくれよ」
「ちゃんと見てくれよ」
 冷やかしは覚悟しているが、2度も乗せられるのはかなわない。
「……107キロ……減ったなあ、百戸!」
「え、ほんとか?」
「ああ、見てみろよ」
 保健委員は針をロックしてオレに見せた、軽いどよめきがオーディエンスから起こった。いくらデブとはいえ、その体重を覚えているとは暇な奴らと思うが、ま、デブというのは弄られやすいものなんだ。

「なにかいいことあったの?」

 ソレイユに行くと妹背店長に聞かれる。3キロだけど、やっぱり嬉しい。
「百戸くん、少し落ちた?」
 片桐さんは、きちんと体重の減少を分かってくれていた。
「あ、分かる?」
「うん、なんだかオーラがね、身のこなしも軽いようだし」
 デブの3キロなんて、ほんのハナクソみたいなもんだけど、それをきちんと気づいているのは大したものだと思う。ま、身の軽さは気分の問題が大きいと思う。
「倉庫整理、4分早く終わってるよ」
 そう言われた時は、やっぱ健康的に痩せたのかと嬉しくなる。

 その夜、異変が起こった。

「なんだ、ヒッツキ虫ならやってもいいぞ」
 ベッドに入ると、いつものように桃が現れたが、ベッドの端に居て引っ付いてこようとはしない。昨日のように兄妹の敷居を超えられるのは嫌だが、隅っこというのも落ち着かない。
「今夜はダメだと思う……」
「ん、どうして?」
「手ぇ握ってみて」
「あ、うん」
 桃が差し出した手を握ってみた……。
「え……」
 オレの手は何も握ることが出来ず、虚しくグーの形になってしまう。
「……………………」
「桃……どうした?」
「お兄ちゃん……」
 桃の目から涙がこぼれた。
「桃……!」
 思わず抱きしめようとしたら、桃の体をすり抜けてベッドの下に落ちてしまった。

 見上げると、桃はベッドの上で小さな肩を震わせていた……。

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