goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲『パリー・ホッタと賢者の石・1』

2019-07-06 06:34:44 | 戯曲
パリー・ホッタと賢者の石
ゼロからの出発
 大橋むつお
 ※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します 

時     ある日
所     とある住宅街
登場人物……女2(パリーを男にかえても可)  
      パリー・ホッタ 魔女学校の女生徒
      とりあえずコギャル風の少女
 
 のどかな住宅街の昼下がり。小鳥のさえずり。パリーがメモをたよりに家をさがしている。パリーは、魔法学校の制服を着ている。ややあって、下手から、キャリーバッグひきながら少女がやってくる。茶髪にピアスと厚化粧という三点セットの首の下は、超ミニのセーラー服の上下に膝丈のジャージと薄汚れのルーズソックスという一昔前のコギャルの出で立ち。 
 
パリー: あのう……(よく姿を見ずに声をかけてしまった後悔が声をつまらせる)
少女: なに?
パリー: いえ……
少女: ふん(鼻をならして行こうとする)
パリー: いえ、あの……
少女: 用があんならさっさと言えよ。こっちは魔法学校の生徒みたいにヒマじゃねえんだからよ。
パリー: あの……イマイチ先生のお宅知らないかしら?
少女: イマイチ……?
パリー: ええ、あの、魔法学校のイマイチ先生……
少女:  イマイチねえ…………ここだよ。
パリー: ありがとう!
少女: 留守だよ。
パリー: え……?
少女: 先生は留守だ。
パリー: どうして?
少女: 留守だから留守……
パリー: (無視して、呼び鈴を押しに行こうとする)
少女: 留守だって言ってっだろ!
パリー: いらっしゃるかもしれないわ。ものしずかな先生だから、留守のようにみえてるだけで……
少女: おめえなア……
パリー: とっても大事な用事で先生をたずねてきたの、留守ですよって言われて帰るわけにはいかないの!
少女: あのなア……
パリー: (何度も呼び鈴を鳴らす)先生! イマイチ先生! 二年B組のパリーです! 大事な相談があってうかがいました! 先生! イマイチ先生!…………先生……ハァー(ため息)
少女: だから留守だって言っただろう……
パリー: どうして留守って言いきれるのよ?
少女: あ、あたし……イマイチ先生の娘だもん。
パリー: え……!?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑪』

2019-07-05 06:53:44 | 戯曲
連載戯曲『梅さん⑪』       


: 彼はどうしたの? 本拾ってもらって「じゃ」でおしまい?
: それから帝大に入って、逓信省に二年勤めて、結核で死んじゃった。
: みんな早死に……でも、あたしの聞きたいのは……
: そういう時代。今日は九十九年ぶり……ちっとも変わってなかった、石頭の熱血漢。
 会話なんて、辞書を拾ってさしあげた、ほんの二言三言……だけど、わたしの殿方を見る目に狂いはなかったわ。
 元締めの剪定一本やりのやり方に反対し、これはという人にとりついて、立ち直らせる運動を進めている。
: ……やさしい人なんだね。
: 違うよ。人にとりついて立ち直らせるなんて、手間と時間ばかりかかって、成功率は二割もないんだよ。
: わかんない……
: 平四郎さん、生きてる人間のことは生きてる人間にまかせろって主義。
 戦争が起ころうと災害が起ころうと、生きてる人間にまかせ、これはと思う少数の人間にとりついて矯正……
 厳しく鍛え直すって意味ね。そうして鍛え直した人間の手で、世の中を良くしようって、
 まあ、遠回りで間接的なやり方……ある面、人間を突き放した愛情ね。
 だから数的には元締めの剪定方式にはかなわない。
: ……むずいよ。
: あけすけに言うと、筋向かいの池田君なんか、そのまま生かしといて、事故はおこさせない。
: それって……
: ね、優しさとか、愛情とか……とってもむづかしいことなんだ、人に対しても、世の中に対しても。
 平四郎さんの目を見ていると、渚のことにかぎっては、任せても良いような気になった……
 渚、平四郎さんは間接的に関わってくれるだけだからね。
 ぼんやり生きてると、子供を死なせて、自殺の巻き添えで大勢の人を死なせることになるからね……
: うん。
:  拙いけれど進一君への愛情は本物になるかもしれない……
 そのへんに賭けて、信じるわ、しっかり生きていきなさい。じゃあ……
: 梅さん……あの……おでんの作り方を……
: おでんのレシピは……
: 待って、書きとめるから……もう少しいっしょにいて。
: 大丈夫。サービスで頭の中にインプットしといたから、次から同じ味が出せるよ。
: 梅さん……
: うん……
: あの……(無理に話題をさぐる)あたしの渚って名前、源七じいちゃんがつけてくれたの。
  海と陸との境目をとりもち、人の心を和ませてくれる伊豆の浜辺の渚にちなんで……
:  ああ、それ……ふくさんと相談して、二十年前源七の耳元でささやいてやったの。
  源七自身、なんとか渚とかのファンだったから、ひっかけやすかった。
: ……梅さんがふくさんといっしょにつけてくれたんだ!
: それも源七の孫への愛情があって、はじめてできることなんだよ。
: うん、うん、大切にするね……
: そうしてちょうだい。
: 梅さん……
: 言っとくけど……わたしのことはすぐに忘れちゃうからね。
: ううん、忘れないよ!
: 無理だよ、夢といっしょだからすぐに忘れちゃう……
 でも、梅ってひいひい婆ちゃんいたことぐらい、心の片隅に残っていると嬉しいよ。
: 忘れないよ……きっと!
: あ、美智子さんが帰ってくる。ほら、もう玄関の方に……(渚、一瞬玄関に目をやる。そのすきに、梅消える)
: ただいまあ……あら、貸衣裳屋さんはもう帰ったんだね……うまく着付けてもらったじゃない。
 ね、母さんの選択はまちがってなかったね。やっぱり女学生はこうでなくっちゃ……せめて、最後ぐらいはね……
 あら、いい匂い、おでんつくっといてくれたの、たすかったわ……
 (台所へ、声)うわーおいしそう……(ハンペンをつまみ喰いしながら出てくる)
 あんた、お料理うまくなったわね、このハンペンのおいしいこと……どうしたのボンヤリして?
: え……あ、ああ……誰かと話してたような気がするんだけど……
: 変な子。そうだ、渚も帰ってきたことだし、お父さんも今日は定時だって言ってたから一本つけようよ。
 その姿とじいちゃんの梅を肴にさ! あ……お酒きれてるんだ。
: あ、あたし買ってくる。
: え、そのかっこうで?
: いいじゃん、すぐ近所だし。渚の御町内デビューってことで……ワインもいっしょに買っとくね。
 あ、その梅あたしんだからね、さわっちゃやだよ。じゃあ……だめだってさわっちゃ!(奪いとる)
: え、だって嫌がってたじゃない……
: 今は気にいってんの。名前までつけたんだからね。
: 梅に名前を?
: うん、梅さんていうの。
: ハハハ、まんまじゃない。
: ……ほんと、まんまだ。
: 思いつきでしょ、あたしが梅に構うもんだから?
: ち、ちがうよ……(と言いながら、自分でも不思議な感じがする)

   この時、かすかな爆音に、母、空に顔を向ける

: あ、飛行船! ニュースでやってたやつだ……
: ほんとだ、伊豆じゃじいちゃんしか気がつかなかったんだ……
: どうせ おしゃべりに夢中になってたんでしょ?
: あったりィ、朝シャンと朝風呂しながらね。
: 胴体に梅の模様が散らしてある。粋だねえ……
: 飛行船も、梅さんだ……
: (思いのほか、飛行船に見とれている娘を気づかい)買い物、あたしが行ってこようか?
: 待って、あの飛行船を見送ったら……いっしょに行こう……久しぶりに二人でさ……
: え、そうかい(チラと娘の横顔を見て、すぐに空に目をもどす)……そうだね、いっしょに行こうか……誰かさんの風むきが変わらないうちにね……

 梅の鉢を手に、飛行船をなごやかに見送る二人。
 なごやかなエンディングテーマ、飛行船の爆音とクロスしつつフェードアップして幕


 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑩』

2019-07-04 06:34:18 | 戯曲
 連載戯曲『梅さん⑩』             
 

 
 
 

ふく: わかった?
二人: ふくさん!?
ふく: 平四郎さんて、梅さんの初恋の人。
梅: ちょ、ちょっとふくさん! 
ふく: 話しには聞いてたけど、いい男だったわね。
梅: あ、さっき感じた気配?
ふく: あ・た・し、ヘヘ、でも渚ちゃんも良い勘してるよ、梅さんの決心間違ってないと思うよ。 
渚: ありがとう。で、平四郎さんて?
ふく: 旧制一高の学生さん……いつも通学途中の坂道ですれちがっていた……そうだったよね?   
梅: ……
渚: デートとかは?
ふく: とんでもない……一度だけ……ね(n*´ω`*n)
渚: 一度だけ?……
ふく: 変なこと想像したでしょ(ー_ー)!?
渚: う、うん……
ふく: 正直でよろしい。でも、そういう刺激的な想像が先にたつようじゃまだまだね。
渚: は、はい。
ふく: 一度だけ……平四郎さん、脇に抱えた辞書をおっことして、それを梅さんが拾ってあげたことがある。
渚: 勉強家なんだ。
梅: さあね……でも、それで間垣平四郎いう名前が知れた。
 「あの……落としましたわ……」
 「ありがとう……君、白梅女子の?」
 「はい、佐倉梅と申します(*ノωノ)」
 「そう……ありがとう佐倉君」
 「どういたしまして……」
 「じゃ」



渚: ……それで?
梅: それだけ。
渚: それだけ?
梅: 卒業間近い、ちょうどこんな梅の季節……
ふく: そして、それが桜に替わり、八重桜も散った新緑の頃……お見合い、そして結婚。
 そして次の梅の季節に雪ちゃんが生まれて、そして、その年の新緑のころ死んじゃったのよね。
渚: ……そんなにあっけなく。
梅: よくあった話よ、昔は。
渚: 梅さん……
梅: え?
渚: サクラって苗字だったんだ……
ふく: そう、佐倉惣五郎の佐倉。
渚: え?
梅: 人偏に左って書く佐と、倉敷の倉。わたしの旧姓。
渚: でも、耳で聞くとサクラウメ、春の妖精みたいだね……
梅: ありがとう、でもわたしは水野梅よ。たった一年ちょっとだったけど、わたしは今でも水野梅……渚のひいひいお婆ちゃんよ。
渚: ありがとう……
ふく: じゃ、私はこれで……
梅: マレーネは、うまくいった?
ふく: ヘヘ……また二人きりの時にでも……じゃあこれで、大事に生きるんだよ渚ちゃん。
渚: はい……
梅: 一つだけ聞くね。
ふく: なに?
梅: ドイツにもその格好で行ったの? たしかブランデンブルグ門の近くだったわよね?
ふく: もちろん。
梅: やっぱし……
ふく: じゃあね(消える)。
渚: ふくさん……悲しそう。
梅: そう分かっただけでも成長ね。でも、渚が同情しても解決にはならないからね。
 今夜はよっぴき二人で飲み明かすわ……それより平四郎さんはね……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑨』

2019-07-03 06:54:50 | 戯曲
連載戯曲『梅さん⑨』 


 
 
 暗転。
 
 梅の鼻歌におでんの材料を切る音や仕込みの音が重なって明るくなる

: ……ねえ、梅さーん。
:(声) もうちょっと、待ってて……
: ……お料理しながらでも話しできるでしょう……いったい何があったのよォ、進一とォ? 
 えらく楽しそうに話したり、肩さわられたり、じゃが芋のお手玉とかしてニコニコしちゃったり、
 そうかと思うと急に真剣な顔になっちゃって、幻だって言われたってスネちゃうよー。
:(声)もうすぐだからね、今仕上がるとこ。
: 最初の「もうすぐ」から二十分はたってるわよ、明治時代の人って気が長いんだからもう。
 ……でも、いい匂い……つまみ食いしちゃおっかな(小声で)
:(声) いけません、つまみ食いは。
: 聞こえてんだ……もう、早くしないとお母さん帰ってきちゃうよ。

 上手から、襷をほどきながら梅あらわれる

: 大丈夫だよ、わたしたちの用件が済むまでは、お母さんは帰ってこないから。
: もう、びっくり、また幻? あ、ひょっとして……?!
: 今度は進一じゃないよ。
: なんだ……え、じゃ誰と!?
: 元締め。ちょっとこみいった話しをね。
渚: あたし、もう覚悟はできてる……でも、進一のこと、最後に聞かせてほしい。
: うん、わたしも……あんまり時間がないから、手短に言うわね。
: うん。
: 最初は頭を打ったのかと思った。次に……魂が誰かと入れちがったんじゃないかと疑った……
: 梅さんとあたしみたいに……?
: うん。ところが、進一は剪定される寸前だったんだ。
: ……?
: わたしの受持外だったからわからなかったけど、その剪定の直前にあの子は事故を起こしてしまった。
 めったにないことだけど、〇・一パーセントの誤差。担当の剪定士が出向く一時間前。
 ほんとうは、ほとんど即死に近い状態だった。あのバイクの壊れ方を見ればわかるでしょ?
: じゃ……
: あの子は進一のままよ。
: え……どういうことよ?
: 進一のままだけど、あの子の心の中には同居人がいる。間垣平四郎という守護霊みたいなお兄さんがね。
 その平四郎が、自分の支配を受け入れることを条件に命をたすけた。だから無傷なの。
 予定通り一時間後に来た剪定士は、もう手が出せなかった。
: それで、進一は?
: がんばってるわ、平四郎にしぼられながらね。
 でも、がんばれるのは進一がもともとは素質のある子だから、目標を持てばがんばれる子。
 あそこも、親がほったらかしでグレちゃった口なんだけどね……進一は、今でも渚のことが好きなんだよ。
: (恥じらってうつむく)
: ただ、今は修行中の身だから、平四郎が会うことを禁じている。
: 大事なときなのね、進一にとって今は……あたし、やっぱり……(ポロリと涙がこぼれる)
: 今の渚のままでいたい……だろ?
: うん……(とめどなく涙が流れ落ちる)
: 平四郎、渚のことも認めてた。顕微鏡レベルのひとのよさを……懐の広いというか、わからん男よ。
: ……(泣きながらも、梅の言葉を真剣にうけとめようとしている)
梅: 平四郎さん、人を剪定することには反対なの……ほら、この源七の盆栽。
 大きな蕾たちの中に一つだけ小さい蕾が残してあるでしょう……ほら奥の方にちょこんと……。
 わたしも平四郎さんに言われて初めて気づいたんだけど。
: ……ほんとだ、こんな目立たないところに……。
: 近くの蕾の障りになるかもしれないけれど、その蕾はわざと残した。
: どうして……
: 剪定者の勘。白い花たちの中で、それ一つだけが、ほんのり紅梅……うすい桃色になる可能性があるんだって。
 蕾を支えている枝の流れ方や色つやまでみなきゃわからないことらしいけど、
 咲くと意外に大ぶりで、梅の木全体に締まりが出ていい景色になるって。
 ……たとえ〇・一パーセントでも可能性があるのなら、そのままにしておいて、観察してみた方が良いって……。
 その責任は僕がとるよって言ってた……この蕾は渚のことだよ。
: ……あたし……。
: 今のままだよ。
: ほんと?……ほんとにほんと?……うれしい、梅さーん!(梅に抱きつき、梅は母親のように渚を包むように抱き留める)
梅: よかったね、進一がもう少し安心できるようになったら、そう思えたら時々様子を見に来るってさ、
 「チワー」って御用聞きを兼ねて。そして二人とも安心できるようになったら、そう思えたら……
 進一の支配も解いて自由にしてやるって……元締めには叱られた。罰として、しばらくはこっちの世界には来られなくなる。
: ええ、せっかく……。
: やっぱり、わたしの娘にうまれたかった?
: その……友だちになれたのに……。
: ハハハ、ひいひい婆さんを友達にしちゃったんだ……さあ、そろそろ行かなくっちゃ!
: 今度いつ来るの?
: 百年くらい先。
: ひゃ、百年……!
: 元締め怒らしちゃったから。でも、あっという間よ百年なんて。
: じゃ……がんばって百二十歳まで生きる。
: その前に渚の方がこっちに来ちゃうよ。いいお婆ちゃんになっておいで……
: アハハ……そうだね。なんか嬉しいような悲しいような……一つ聞いていい?
: うん、あんまり時間はないけど。
: 平四郎さん……生きてたときに、その……かかわりのあった人?
 (この会話の終わり頃、上手奥に目立たぬようにふくがあらわれている)
       
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑧』

2019-07-02 06:37:20 | 戯曲
連載戯曲『梅さん⑧』       



 暗転、商店街の環境音して明るくなる。
 物陰(ポストや電柱など)から、下手の袖奥にあると想定してある八百屋の店先を見まもる二人。


: あれが渚の彼氏?
: うん
: ……ねじり鉢巻に前垂れかけて、なかなかしぶいわね……真面目そう……でも、渚って意外にオジン趣味なのね?
: ち、ちがうよ、あれはお父さん。奥の方でしゃがんで背中見せてる方。
: 道理だ……あ、こっち向いた!
: (想いとは逆に背を向けて)進……
: 思ったよりいい男じゃない……でも、渚の情報の中に彼の事無いよ、進(しん)というのは……
: (桓間見ながら)進一……
: 進一……暴走族の遊び仲間に、そう言う名前があったようだけど……
: その進一。
: え?
: もう三ヶ月近くも話らしい話していない……
: どうして?
: 近寄りにくくて……三ヶ月前、デートのかえりにバイクで事故ちゃって……
: 頭でも打ったの?
: わからない、さよならして帰る途中だったから。
: でも、怪我したでしょう?
: 雨でスリップして転倒。バイクはグシャグシャ……でも、進は放り出されて、
 生け垣がクッションになって怪我一つしなかったって……
 それからだよ、族もやめちゃって、この春から、夜間大学にいくんだ……
: やっぱ、何処か打ったんだよ。
: CTとかも撮りに行ったんだけど、異常なしだったし……
: 話しに行ったら?
: だめ、仕事中に声をかけると叱られる。
: (ノートを見ながら)進一はただの遊び仲間の一人にすぎなかったのにね……渚、いつもこうやって見てるだけなの?
: 今日は梅さんがいっしょだから。ほんとうは、もうこれで別れようと思ってた。
 五六人いるオトコの一人だったから……でも、こうなっちゃって、進一のこと愛してたの……初めてわかった。
: だったら、しばらくあっち行ってようか?
渚: だめ! 梅さんがいっしょにいてくれるから、ここから見ていることもできるの。チラ見が精一杯……
: 電話とかは?
: 進一、スマホもやめちゃった……時々手紙は出すの、返事はこないけど……
: 一度も?
: 一度だけ、年賀状「あけましておめでとう。元気でいますか?」そう書いたら「元気です。その時が来たら会います」
 ……それっきり。
: あ!? ひょっとしたら……わたし、会ってくる。
: 梅さん……
: 大丈夫、お客で行くの。大根でも買ってくるわ……チャンス! お父さんが裏にまわった。

 梅、下手袖中へ、物陰からそっと見守る渚

: 梅さんいつの間にか買い物カゴ持って……進一が振り向いた……驚いた顔、どうして ……!? 
 なつかしそうな顔してる……笑った! 頭かいた! あんな顔あたしには見せたこともないのに……
 何を話してんだろう……ヤバイ、こっち見た(身を隠す。ややあって、臆病そうに再びのぞく)
 大根選んでる……場合じゃないでしょ……楽しそうに……笑った。
 どーして? まるでずっと昔からのおなじみさんみたいじゃん……あ、進のやつ、ジャガイモでお手玉して、梅さん笑いころげてる。 どーして、どーしてあんなに親しげ?……あ、急に真面目な顔……なにかたずねあって……どうせあたしの悪口だ。
 へそ出しルックにへそピアス。わがままで自分勝手で、めんどうくさがり屋の自己チューで軽薄でおしゃべりで、
 きれやすいくせににぶい奴だとか、どうせコネでなきゃ就職もできないパッパラパーだとか……
 想像しすぎて落ちこんじゃう……なにうなずいてんのよお、なに話してるのよゥ……あ、肩触った! 
 トントンて二回も気やすく触りやがった!……又々笑った……ほほえましいぞ、うらやましいぞ、グジョー……!

 いつの間にか上手から梅がやってきて下手の様子にヤキモキしている渚を楽しげに見ている

: 済んだわよ。
: え! どうして……(梅が、側に立っているので驚く)だ、だって……今の今まで……
: あれは幻よ。
: ま、まぼろし?
:  進一の顔を見て、お互いびっくりしたところまでは二人とも実態……その後は幻を残して、別の次元で話していたのよ。
 ……大根と男爵芋まけてもらっちゃった。他にもおでんの材料買ったから、記念に梅さん特製明治時代のおでん作ってあげる。
: あの……
: さあ、詳しくは家へ帰って……ん、誰かいなかった?(気配を感じて、見回す)
: え?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑦』

2019-07-01 07:01:19 | 戯曲

連載戯曲『梅さん⑦』      

 

: おふくさーん……行っちゃった……
: 忙しいのよみんな。
担当の数も多いし、身内のこととなると、やっぱり人任せにはできない。明治女の業かもね……
: ……
: 少子化って問題になってるでしょ。あれ、半分ちかくはわたし達の仕事。
 そこの池田さんちの勇君、説明したら、わりとあっさり受け入れたわよ。
 「ああリセットできるんだ」そう言って、うっすら笑って消去。
 ハリのないことおびただしい「じゃ、やるわよ」「うん」「プシュッ!」それでおしまい。
 逆に、こちらが口を挟む間もないくらい、言い訳しゃべりまくる人もいる「海外旅行行き損ねたところがあるから……」「まだ本当の恋をしたことがないから」「いっぺん万馬券をあててみたい……」「阪神の優勝をもう一度」
 紙屑が燃えるときみたたいに、ペラペラと良く喋る……でも両方とも一緒。まっとうに生きようという気持ちがない。渚は……
: 一つ聞いていい?
: なに?
: 梅さんはどうしてあたしの体を……?
梅: 言ったでしょ、わたしにも情があるって。たとえ体だけでも渚を生かしてあげたい……それと、正直に言うね。
 わたし、もう一度やり直したい……やり続けたい思いが山ほどあるの、文章を書いてみたい。心の想いを形にしたい。
 わたしが雪を生んで、あの歳で死ななかったら、五千円札の肖像は、私だったかもしれない……
 わたしの心の中には、この源七の盆栽のように開く寸前だった蕾がいくつもあった。
 人の一生は短い、渚の体を受け継いでも、四十年がいいとこ……(それほど痛めつけてるのよ、自分の体を)……
 それでも、せめてその蕾の一つでも花を咲かせたい、そう言う想い……これ以上は酷だからよすわ。それともう一つ…
: それってもっともらしいけど、自分勝手じゃね?
: どうして?
: だって、あたしの体だよ。
 どうしてもっていうんなら、その池田なんとか君みたいにあっさり消してもらったほうがさっぱりするよ!  
: だってもったいないでしょう、あと四十年はもつんだから、その体。
: だって、だってあたしの体だよ。どうしようとあたしの勝手じゃん!
: その勝手で迷惑をかけられる世間は渚のものじゃないんだよ。渚は、木に咲く一つの花にすぎないんだからね。
: でも、やだ! あたしの体はあたしの体だよ!
: そう……そこまで言うんじゃ仕方がない(消去用の銃をとり出す)
: あたしの体なんだ、たとえひいひい婆ちゃんだからって……
: みんな忘れちゃうんだよ、お父さんもお母さんも、友だちも先生も、コンビニのおねえさんも、となりのポチも。
 この引き金をひいた瞬間に……渚って子を忘れちゃう……ううん、存在しなかったことになる。
 渚の持ち物も、関係したものも全て消える。
 小学校の卒業記念に壁のタイルに残した手形も、ぬりたてのコンクリートにいたずらで残した靴のあとも……いいのそれで? 
 水野家は、この盆栽と同じように、渚が存在しないことが、ごく自然な中年夫婦だけの家になる、池田さんちのようにね。
 むろんわたしも人生のやり直しをあきらめなくっちゃならないけどね。
: (梅の懐剣をとっさにとる)なら死んでやる! そうすれば、渚が死んだ悲しみをみんな憶えてくれるじゃないか。
 そして、後悔すればいいじゃないか、ああもしてやればよかった、こうもしてやればよかったって!
: 最低ね、あてつけに命を絶って、みんなが悲しむ方がいいの?
: あたし……だってあたし…… 
: やり直そうよ二人とも、わたしは渚になって、渚はまた赤ちゃんにもどって……
: ウヮー(泣く)やだよそんなの、どこの家に生まれるかわからなくって、あたしがあたしでなくなって……
 そんなのやだよ、怖いよう、ウワーン……
: 安心おし、わたしが渚を産みなおしてあげることになっているから……きちんと育てて、
 夢と思いやりのある子に育ててあげる……元締めとのやりとりで、そういう約束になっているの……
 これ、本当は言っちゃいけないことなんだよ。インサイダー取引と同じだから。
: ……あたしは……あたしは、ほんとうにこのままでいると……沢山人に迷惑をかけるんだね……
: うん、酷なようだけど……明日の天気予報よりも確かなことよ……
: ……渚のこと、かわいがって育ててくれる? 夜遅くまで保育所にいれっぱなしにしない? ちゃんとダッコとかしてくれる? 
 学童保育で渚がいじめられてることを知りながら「やられたらやりかえしな」って無責任につき放して、鍵っ子にしたりしない?
: あたりまえじゃないか、四代先のやしゃごが、今度は自分の娘になるんだから……
 自分の子供がかわいくない親なんて、わたしの時代にはいなかった。
 「できたみたい」そう言ったら「二人の子供だ、しっかり産めよ!」わたしの時代の男は、みんなそう言った……
 そういう男を見る目は確かだからね……いい男を亭主に見つけるよ……だから、やり直そうね……
: うん……
: じゃ、いくよ(懐剣をかまえる)……覚悟!
: ちょっと待って!(梅ずっこける)
: な、なによ?!
: 最後に会っておきたい人がいるの、その人に一目会ってから……
: いいよ、それくらいのこと。会ってくればいいよ。どこにいたって、渚の居場所はわかるから。
: ほんと? 三丁目の八百屋さんなの。梅さんもついてきて!(立ちあがる)
: え、あたしも!?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑥』

2019-06-30 07:03:07 | 戯曲
 
連載戯曲『梅さん⑥』  


 
 
ふく: ごめんなさい遅くなって。はい十六人分の署名と捺印(回覧板を渡す)
: ありがとうふくさん、グッドタイミングよ。
: 誰、その人?
: 渚の母方のひいひい婆ちゃん。
: お母さんのひい婆ちゃん? でも、なんで……
: ダサくって齢とってるか?
ふく: このなりとこの齢で死んだからさ。
: でも、歳は無理でも、その服装くらいなんとかしたら。
ふく: ハハ、動きやすくってさ。それに回覧板まわすのにピッタリでしょ。この子が渚? かわいい赤ちゃんだったのにねえ……
: 今でもかわいいよ!
ふく: ごめんね梅ちゃん、美智子がずぼらな育て方しちゃったから。
: 自分の責任よ、もう二十歳なんだから……
: ムッ……でもさ、聞いてよ、お母さんのひい婆ちゃん……梅さん、あたしの体を奪おうとしてんのよ。
ふく: アハハ、そのとおりだね「奪う」ってとこだけで聞いちゃうと変なこと連想しちゃうけど、渚にしてみりゃその通りだもんね。
: ね、でしょ、だから……
ふく: 元締めの決済も終わってるんでしょ?
: ええ、ついさっき。
ふく: じゃしかたないわ、回覧板も回し終わっちゃったし……
: ご覧、わたしを含む十六人の署名捺印。
: 十六人?
: 四代さかのぼると十六人の人間がいるんだよ、渚って子が一人生まれるのに。
 その十六人のやしゃごだからね渚は。その人達の認めをもらってきてもらったの。
 渚の心は初期化し、体はわたしが預かって、まっとうな人生を歩みますって……
 またいずれ、新しい人間として生まれ変わるんだ渚は……
ふく: 悪いようにはしないから。ね、梅さんもついてることだし。そういうこと……じゃ、あたしそろそろ……
: もう?
ふく: うん、内やしゃごの消去に行かなきゃならないから。
: 決まったの!?
ふく: ここに来る前に、元締めからレッドカード……とりつくしまもなかった。
: ……遠いんでしょ、ふくさんとこは?
ふく: 気持ちがね……孫の歳三がドイツ人と結婚しちゃったから……
: マレーネちゃん……だったよね。
ふく: うん、マレーネ・エッセンシュタイン・フクダ、舌噛みそう。
: レッドカードじゃ完全消去ね……
ふく: うん、でもカードの片すみ見て(カードを示す)
: 初期化可、ただし圧縮保存のうえ、百年間は解凍不可……情があるようなないような……
 あたし、最後くらいドイツ語でかましてやろうと思って、急ぎのアンチョコだから自信なくて、聞いてくれる?
: うん。
ふく: エス イスト ツァイト。エス イスト ショーン シュペート!
: もう遅すぎる、時間だよ……まるでファウストね。
ふく: ありがとう、通じるようね……渚ちゃんは百年もかからないからね、それに……
: ふくさん。 
ふく: 用事が済んだら、また戻ってくるわ。じゃ、アウフビーダゼーエン(消える)
: おふくさーん……行っちゃった……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん➄』

2019-06-29 06:37:11 | 戯曲
連載戯曲『梅さん➄』        



: 短大行ったのも、働きたくないからでしょ。
 だから運良くお父さん必死のコネで就職きまっても不満タラタラ……
 えーと……予測では(ノートを開く)三年目でルックスだけがアドバンテージ男にはまって子供ができて「できちゃった、どうしよう!?」
 男はどういう答えをすると思う? 百パーセントこう言う「君の好きにしたらいいよ」だよ。
: あたりまえじゃん。生む生まないは女の権利だから、男はそう答えるしかないんだよ。
: で、生んじゃったら、事あるごとに「おまえが生むって決めたんだぞ!」と、男は百パーセント渚に責任転嫁するわ。
 そして、子供捨てられるほど不人情じゃないから……
 わたしは、そのへんに可能性を感じて、元締めと最後まで掛け合ったんだけどね。
 元締めはこう言うの。続けるね……その渚に残された顕微鏡で見なきゃわかんないほどの人情、
 この人情が裏目に出て、子供を殺したり捨てたりすることもなくダラダラ虐待寸前の育児。
 その間に離婚と再婚。あげくの果てにパチンコに入り浸り、車に子供を残して熱中症で死なせてしまう…… 
: それでガス自殺でドッカーン……!?
: そう、まだ六七年先のことだから少し誤差はあるけど、大筋はその通り。
 巻き添えは間違いなし、十人から二十人の巾かなあ……
: そんなことしない、ぜったいしない。だって、今話聞いたもん。肝に銘じて忘れないもん!
: 忘れる、必ず忘れる、ぜったい忘れる。思い出してごらん、今までどれだけ約束を破ったり忘れたりしたか……
: ……
: もう忘れたことさえ忘れたか……
: 約束破ったりしないもん。そりゃちっこいことはあったかもしれないけど、人に迷惑かけるような約束忘れたりしないもん!
: ほう……たとえば五年前、高校受験の前の日、谷掛安子さんと受験会場に行く約束をしたよね?
: え……ヤッチンと?
: あんたたち受験の前日、前祝いとか言って、不安解消するために、公園でチューハイ飲んでできあがちゃってさ。
 そこで渚、あんたは谷掛さん、ヤッチンと約束したんだ。三丁目のポストの前で待ち合わせしようねって……
 ヤッチンは覚えていた……だから時間が過ぎてもギリギリまで待っていた。
 先生に言われたとおりその日スマホは家に置いてきて連絡もとれずに……そしてヤッチンは受験会場に間に合わず不合格。
: そんなの、そんな約束……(;゚Д゚)
: したのよ。で、ヤッチンは、そんな約束を信じた自分が馬鹿だったと、渚には一言も言わなかった。
 いい子だね。それが幸いしてか、公立ではいい友達、いい先生にめぐりあえて、今はもうあれはあれで良かったと思っている
 ……いい友達だったのにねえ。渚はただ行く学校がかわったから離れていった子だとしか思ってないだろ?
: そんなことが……
: そうだよ。
: でも、それはアルコールが入っていたから……
: その梅の盆栽、源七が剪定しとくよって、昨日晩ご飯の時、渚にもちゃんと聞いてるんだ。
: 嘘……(;゚Д゚)
: 友達と喋っていて、いいかげんな返事をしたんだよ。
 源七おもしろくなかったろうね、よかれと思って帰りに渡したら、渚にムッとした顔されて……
: 盆栽なんてささいな……(-_-;)
: その些細なことで、ついさっきまでどんな顔してたの……どれだけの人を傷つけたの……
 駅の南口で、女の人と肩がぶつかったろう「このバカヤロー! どこに目ぇ付けて歩いてんだ!」……
 もう忘れちゃったよね。あの女の人、これからお見合いにいくとこだったんだよ、十三回目の……
: ……
: 最後にもう一つ。今わたし達は何の話をしているんだっけ?
: どれだけあたしが人の話を聞いていないか……
: 違う。
: どれだけあたしが知らず知らずの間に人を傷つけてきたか……
: 違う……それはみんな周りの問題だ。根本はもっと違う話。
: ……?
: 渚には夢がないという話。
: どうして夢がなきゃいけないのよ! 夢のない人間なんてゴマンといるよ、
 トコも、サチコも、うちの親だって夢なんてもってないよ。親父なんて万年平社員じゃないか!
: 言葉って難しいね……わかりやすく夢という言葉を使ったんだけど、金持ちや、スターになることだけが夢じゃない。
 ……覚悟って言った方が良かったかな……金持ちになる覚悟、スターになる覚悟、そして大人になる覚悟。
 親から自立し、自分の力で身の丈にあった生活を送り、子供を産んで育てる覚悟……
 それも立派な夢なんだよ……聞いてる、私の話? ロクに人の話も聞かずに人を傷つけてばかり……
 だから、源七がやったみたいに蕾のうちに剪定されるのよ。他の蕾を生かし、木を守るために……

 この時、もんぺ姿に防空頭巾を首に回覧板を持った五十代と思しきふくがあらわれる 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん④』

2019-06-28 06:35:07 | 戯曲
連載戯曲『梅さん④』     
 


: やしゃご?
: 孫の孫……その梅をくれた源七はわたしの孫よ。
: ……って、源七じいちゃんのおばあちゃん!?
: 知らなかったでしょ、四代前に梅って若死にした娘がいたことなんか。
 女学校卒業と同時にお見合い、そして二月ちょっとで結婚。一年後に雪が生まれて……
: 知ってる。雪ってひいばあちゃんの名前、あたしが三歳の時まで生きてたんだ。
: 雪は難産でねえ……色の白い、それはそれは可愛い赤ちゃんだった。
 でも産後の肥立ちが悪くて、わたし産後三月で死んじゃったんだ……
 亭主はすぐ後添え、再婚しちゃったから、早かった早かった忘れられちゃうのが……
: ねえねえ、だったらひいひい婆ちゃん……
: ひいひい婆ちゃんてのはよしてくれる。わたし、渚と変わらない年齢で死んじゃったんだから。
: じゃあ、なんて呼んだら?
: 名前でいいわよ。
: ウメちゃん。
: ん……梅さんくらいにしとこう。
: じゃ、梅さん。お願い! 助けて! そのピストルみたいなので撃たれて消されたり、初期化とかされんのは……
: 渚さん、ほんとうに人の話聞いてないわね。
: え?
: あなたは特別にこの懐剣で……
: 痛いよそんなの、あたし痛いのダメなの。今でも自分の腕に注射されんの見れない人なんだから。
 ね、だから……
: 話をお聞きなさい!
: はい……
: これは、あなたの魂と身体を切り離すために使うの。こんなふうに
 (渚の目の前で懐剣を一振りする。ぐにゃりとくずおれる渚。梅、切り離された魂に向かって話しかける)
 ね、痛くもなんともないでしょ……まあ、そんなに怒らないで。今のは実験、すぐにもどしてあげるから。
(目に見えない魂と、体の端を結びつける)
: ……ああ、びっくりした! 
: わかった?
: わかんないよ、切れちゃった心と体はどうなるのよ?!
: 心は初期化する。
: え、あたしがあたしでなくなっちゃって、どこかで生まれなおすわけ?
: そう、そして体はわたしがあずかる。
: あずかる?
: わたしが明日から、良い子の渚になって一生懸命生きてあげるから安心して。
: それはどうもありがとう……って安心なんかできないよ! だって、あたしの体だよ! 
 お願い、明日っからいい子で生きていくから。
: その歳じゃ矯正のしようがないのよ。元締めの最終チェックも済んだし。
: そこをなんとか……お願いお願い、お願ーい!
: ……何をどう言えばいいんだろう……渚さん。
: はい。
: たとえば、その親からもらった体を、いわば我々御先祖さまからもらった体を、
 いわばわれわれ御先祖さまから命とひきかえみたいにしてもらった体を、渚たちはどうしてんの? 
 髪はブリ-チと染髪の繰り返し、耳やらおへそに穴を開けるのはまだしも、不摂生な生活はもう限界。
 まともに生きても五十代で、シミとシワとうすら禿。
: ハゲ!?
: いじりすぎると、女でも禿になるのよ。体もガタきちゃってるし、六十代の半ばでくたばっちまう状態なんだよ。
 渚、もう五人と男性経験があるでしょ。
: え、あたしって、そっちの病気?
: さあね、……でも、わたしが渚になったら一番にお医者さんにいくわ。
: トホホ……
: だいたい渚、あんた人生に夢持ってないでしょ? 
 いいこと、これが一番の問題なんだよ。夢のもてない人間は、自分で自分の躾ができない……親の責任もあるけどね。
 人間は夢があるから、夢のために勉強し、勉強の中で自らを躾け、友達を増やし、大人になっていくんだよ。
 二十歳にもなったら、心の芯のところではわかってなくっちゃ……
: だって……


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん③』

2019-06-27 07:00:30 | 戯曲
連載戯曲『梅さん③』 


 
 
: よろしゅうございます。恐れ入ります、そこにおなおりいただけますか。
: おなおり? 
: お座りくださいまし……正坐で、背筋をお伸ばしなさいまして……
: は、はい。
: 失礼いたします(スマホを出して写す)元締め……上役に最後のチェックをさせていただきます……
: イエィ! 百点満点!(スマホに向かってVサイン)
:(スマホで話をする)はい……でも……はあ……はあ……やはりそうですか。
 はい、承知致しました……(みぞおちのあたりに力をいれるようにして)申し上げます……わたくし実は……
: 実は……?
: 貸衣裳屋、常磐衣裳とは、世を忍ぶ仮の姿。実は……剪定士でございます。
: え……植木の散髪屋さん?
: 植木ではなく、なんというか……人間の……
: あ、美容師さん!? やだよあたし、リボン付けんのはいいけど、入社式までは、ヘアースタイル変えるつもりはないんだからね!
: 美容師ではなく……いわば、人間そのものの剪定士。
: え……
: 放置しておくと、この先世のため人のためにならない人間を剪定するのが役目。
: え……
: 元締めと呼ばれる……神さまと申しあげればよろしいかと……その元締めから、この人間を剪定せよと申しつかり、このように種種様々な方法で剪定される人様に近づくのです。そして、念には念を、ただ今元締めによる最終チェックをいたしました。
: それって……え? え?
: 残念ですが、冗談でもドッキリでもございません(懐剣を取り出し床に据える)
: ゲ!……渚のこと殺すの!?
: いいえ……この懐剣は、渚さんの肉体と魂を切り離すためのもの……
 通常は(ピストルのようなものを取り出す)このピストル型の人消しを使います。
: 人消し……
: 存在そのものを消し去り、このカートリッジ(銃からカートリッジを取り出す)に魂を回収します……
 たとえば、筋向かいの池田さんのおうち。去年定年をむかえたご夫婦だけで暮らしてらっしゃいますよね。
: そうだよ、水野さんちは渚ちゃんがいていいねって、小さい頃からかわいがってもらって……
: 若い頃から不妊症かと思って、ずいぶん努力を……
: そうだよ、病院を何軒もまわって、体外受精とか、いろいろやったけど、結局……
: (カートリッジを示して)実は、この中に、池田さんの息子の魂が封じ込めてある……
: え……?
: ……(カートリッジをガチャリと銃にもどす)
: ……池田さんちに子供なんていないって。
: ……よくできた盆栽の剪定といっしょ。初めからそういう形であったかのように見える……
 その梅の盆栽も、半月もすれば、始めから、自然にきれいに枝や花が整っているように見えるようになるわ。
 池田勇君て子がいたの、記憶は消えてしまっているけど、渚とは保育所のころからいっしょ。おもしろい子だったけど、中学のころからくずれはじめ、たばこにシンナー、お酒にクスリ……ここまではいいとしても、
 将来、とんでもない災いのもとになる……元締めからそういう依頼があって、先週剪定した……つまり存在そのものを消した。
: 消した?
: 親でさえ、その存在を忘れ、彼がこの世に存在していた痕跡の全てを消してしまうの。あの子の部屋は、そこ……あの家の少しゆったりしたカーポートの半分を占めていた増築部分……今は跡形もないけどね。
: うそ……
: ほんと。
: ……魂は?
: 初期化して、問題がなければ、またどこかの赤ちゃんとして生まれ変わる……そして、今度剪定の依頼をうけたのが、あなた水野渚さん……(じっと見つめる)よろしく。
: (耐えられずに、戸や障子を開けて逃げようとするが、ことごとく鉄の扉のようにロックされており、ビクともしない)……そんなあ……(;゚Д゚)
: まあ、そんなにお騒ぎにならずにお座りなさい……(指先で渚を、そして元の座っていた位置を示すと、見えざる手によってつかまれたごとく、元の場所に正坐する渚)
: ……あ、あんた魔法使い?「千と千尋」の湯バーバみたいな!?
: どうせ言うなら銭ーバくらいにしてもらいたかったわね……少しは情ってものがあるのよ、私にも……
 わがままで見栄っ張りで、面倒くさがり屋で、人の世話をするのが大嫌いで、こらえ性がない……こんなにかわいいのにねえ……将来は、結婚と離婚を繰り返し、二人の子供を車の中に置き去りにして、渚はパチンコに熱中。子供は車の中で熱中症で死亡。悲観のあまり自宅でガス自殺。そのガスに引火して大爆発。
大勢の人がまきぞえをくって死んだり怪我したり……そして、その死に至るまで、通りすがりの人や近所の人達に数え切れない悪影響を及ぼすんだそうよ……
: そ、そんな……
: という元締めの話。
: どうしてそんなふうになるってわかるのよ!?
: 言ったでしょ……運命の神さま。人がこれからどんな生き様を示すかを見通す、剪定士の元締め。どの枝を切り、どの花を生かせば、人や人の世が平和になるかを見通される。その的中率は九十九点九パーセントだといわれる。
: だ、だからって、まだやってもいないことに責任とらされるなんて理屈に合わないよ!
: これをごらんなさい。
池田君が存在し続けていた場合の、つまりわたしが彼を剪定しなかったらこうなったという別次元の新聞、
 日付は一昨々日の夕刊。
: ……暴走男、男女五人を轢き殺し、他四人重軽傷……親と口論の末、酒を飲んで暴走……父親は責任を感じて自殺……
: 死んだ人の名前を見てご覧なさい。
: 死者は、太田豊子、新田幸子、水野渚……!? 
 三人は卒業旅行の待ち合わせのため、水野さん宅前の路上を歩いているところを……
: そう、放っておいても渚は死ぬことになっていたんだけど、他のまきぞえくって死ぬ人はもっとかわいそうでしょ。理不尽だわ、加害者のお父さんは責任感じて自殺に追い込まれるし、渚のお父さんやお母さんも、嘆き悲しむ。警察は余計な仕事が増えて、喜ぶのはテレビのワイドショーくらいいのもんでしょ。それで、これがその現場写真。
: (チラッと見て顔をそむける)なんでこんなものが……
: 超正確な天気予報みたいなもの。近い未来は確実に見通せる。
 渚なんて、車の下に巻き込まれて五十メートルも引きずられて……もう人間の形してないよ。
: ……
: 普通、元締めはここまで見せたり、教えたりはしてくれない。ただ「だれそれを」剪定してこい……こんなに詳しく教えてくれるのには訳がある。渚……あなたはわたしのやしゃごだからよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん②』

2019-06-26 07:14:47 | 戯曲
連載戯曲『梅さん②』      


 
 
 スマホの地図を見ながら、紺の袴に矢絣姿、パンフのモデルそのままの「梅」が、衣装箱を持って、水野家の玄関にいたる。  

: ごめんくださいませ……
: はい……?
: 常磐衣裳でございます。御注文のお衣裳をお持ちいたしました。
: ……かっこいい。
: ありがとう……あなたパンフのモデルをやってらっしゃった……(パンフとみくらべる)
: はい。モデル自身が御注文と同じお衣裳で、おとどけいたすことになっております。
 社員なのでプロのモデルではございませんが、この姿をご覧いただいて、最終的にご判断いただき、
 お気に召していただければ、着付けのお稽古などもさせていただきます。
: まあまあ、それはごていねいに(^▽^)。
: お母さん、だんぜんこれがいい(#^0^#
)!
: なにもかも勝手に決めてって、文句言ったのは、どこの誰だったっけ?
: いいものはいいの、それでいいじゃん。いいと思ったことは素直にみとめる。
 年格好というか、姿形というか、あたしによく似た美人さんだし、あたしもピシッときめれば、こうなるんだ!
: ありがとうございます。
: それじゃ、あたし近所の寄合に行ってますんで。どうぞ上がっていただいて。
 着付けの指導とかしていただいてもらいな。その梅の鉢も忘れずに入れとくんだよ。じゃ、よろしくね。
: はい、承りました。いってらっしゃいませ。
: こっちよ、玄関入ってくれる。

 庭のセット(物干しに植え込み程度)が瞬時に片づけられ、居間の設定になる。

: 失礼いたします。
 (渚が開けた無対象の玄関を閉じ、框で草履を脱ぎそろえ、下座とおぼしきあたりに正坐をし、作法どおりに頭を下げる)
 改めてご挨拶いたします、このたび水野様の担当をさせていただきます、水野梅と申します。よろしくお願いいたします。
: あ、ども、こちらこそ……同姓なんですね、水野さん(梅の鉢をもったまま、一応正坐で礼をする)
: おそれいります。どうぞお楽になさってくださいませ。あ、その梅の鉢はわたくしが……
 とりあえず出窓の方でよろしゅうございますでしょうか?
: う、うん。
: まことに、見事な剪定でございますね。枝の詰め方といい、葉の刈り方といい……
 あら、思い切って間引いてございますね。
: でしょ。花が開いたときにちょうどよくなるって、おかあさんもそう言うんだけど……
: ……
: あたし的には、自然にボサッとパンクしててさ、ゴシャッとしているのがよかったんだよね。
: ここまで……
: どうかした? 
: いえ、蕾の間引き様に驚いてしまいました……
: でしょでしょ、ほっときゃそれなりにお花がいっぱいになったのにね……
: さ、ではさっそく着付けのお稽古をいたしましょう。
: うん、どこまで脱ぐ?
: コートをお脱ぎになって……
: はい。
: あら、お覚悟の良い、ショートパンツでいらっしゃいますのね。
: うん、部屋の中でゴシャゴシャと着てるのウザったくって、コートだけごつくして、中味は、夏とそうかわんないの。
: それでは、そのセーターとレッグウオーマーを……
: ブラとかパンツは?
: ホホ、そこまでは、お稽古ですから、Tシャツとショートパンツで……

 襦袢、着物、帯、袴と要領よく着せていく。
 その間「いいプロポーションでございますこと」「へへ、そうかしら」「足袋をお履きになって……」
 「旅から帰って足袋だ」「おみ足もおきれいでいらっしゃいますこと」「へへ、どうも」
 「はい、やっぱり今のお方ですものねえ……」「おねえさん、いい香り」「さようでございますか?」
 「なにかつけてんの?」「いいえ特別なものは」「ううん、なにかつけてるよ」「ホホ、椿油とヘチマコロンを少々……」
 「ヘ、ヘチマ?」
 「レアものでございますのよ、ホホ……お袖を通しますわね……そう、リラックスなさって……この襟元がコツでございましてね」
 「へえ……どうだろ、髪型とかは?」
 「おまとめになって、お手伝いしますね……そう……おリボンもセットされてございますから」
 「わ、おっきくてかわいいね、このリボン」「お似合いですわよきっと……帯をしめます、息をお吐きになって」
 「ハー……」「はい!」「……帯ってこんなにきつい……おねえさんの性格……?」
 「いいえ、」「すっきりしあげるためには、ここが肝心!」「ギョエッ……」
 「でも、私どもの……いえ、昔にくらべますと、かなり略式になってございますのよ。
 はい、ではお袴はこんな……感じでございましょうかね」
 「ま、毎日着るわけじゃなし……へえ、袴の位置ってこんなに高いんだ」「料金はお安くしてございます」
 「ハハ、うまいこと言うジャン」「はい、鏡をどうぞ……」
 「ワッ、カッケー、脚がすんごく長く見える。こんなの制服にしてお店開いたら、アンナミラーズとか、今流行のメイドカフェより繁盛うたがいなしかもね」
 「ホホ、そういうときには襷がけなどいたしますと、二の腕あたりがチラリと……色っぽうございますわよ」
 「ハハ、おねえさんもなかなか言う……」「さ、できあがりました、ひとまわりしていただけます……(かるく襟元などを手直しする)はい、よろしゅうございます」「ありがとう」など。
 着付けの時間無言になったり、テンポをくずさぬよう、着付けの練習と会話の練習をしっかりしておくこと
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん①』

2019-06-25 07:00:56 | 戯曲
連載戯曲『梅さん①』  


 
 
時 ある年の初春

所 水野家と、その周辺

人物 母(水野美智子 渚の母)
   渚(卒業間近の短大生)
   梅(貸衣裳屋、実は……)
   福田ふく(梅の友人、実は……)水野美智子と二役可




 幕開くと、水野家の玄関脇の庭。母の美智子が鼻歌まじりで洗濯物をとりこんでいる。明るい性格だが、子育てには失敗したようで、娘の渚は、わがままで刹那的な性格。生まれもった人の良さを、ほとんど損なっている。ややあって、家の前の四メートル巾の道路に見立てた花道(客席通路)を渚がキャリーバッグを引きずり盆栽のビニール袋をぶら下げ早足でやってくる。母の鼻歌が聞こえるやいなや……


: お母さああああああああああん!
: あら、お帰り。さっそくで悪いけど、洗濯物たたんどいてくれる。
 五時から町会の寄り合いがあんの。短時間だっていうけど、夕食前の五時なんてねえ、婦人部長だから仕方ないけど……町会長も考えてくれなきゃ……悪いけど夕飯は、お父さんと適当に食べといてね。
: お母さんっヽ(#`Д´#)ノ!!        
: なによお、怖い顔して、卒業旅行の帰りって顔じゃないわよ。
: これ!(スーパーの袋に入った梅の盆栽を、母の顔の前につきつける)
: あら、かわいい盆栽じゃない。白梅ね……おじいちゃんにもらったんでしょう? 
 やっぱり親類の家を利用するのが一番よね。伊豆の一等地で、宿泊代もただでお土産までもらって。
 盆栽のお土産って気が利いてるじゃないの、じいちゃんも増やしすぎてもてあましちゃったんだろうね。
 まだ蕾だから、水やりに注意して家の中に入れといたら四五日で開くわよ。玄関に置く? それともリビングの出窓にでも……
: あの!
: あ、飛行船が飛んでたでしょ! ツエッペリンての、ニュースでやってた。なんかの宣伝らしいけど、伊豆の海と山の上をゆーっくりと飛んでるの。見たかったなあ……渚は見たんでしょ!? 
: 人の話を聞かないで一方的にしゃべるのは、水野家の伝統のようね?
: あ、そう?
: 娘がこんな顔して帰ってきたら、理由聞くのが先でしょ!?
: ごめん、卒業旅行が羨ましくってさ。
 伊豆の海と空と飛行船、おまけにあんまりかわいい盆栽だからさ……どうかした? 
 ひょっとして盆栽きらい? だったらお母さんが……(手を出す)
: (さっとひっこめて)これは、あたしがくれって言ってもらったものなの!
: はあ……
: だから……
: だったら怒ることなんかないじゃない。
: だから聞いてよ! この梅はね、昨日まで、葉っぱや蕾がいっぱいついててゴージャスだったの、
 だからちょうだいって言ったの。卒業式も控えてるし、白梅学園て学校の名前にもピッタリだったし。
: おやおや、麗しい愛校心ね。そうだ、卒業式の衣裳決めてなかったでしょ、もう間に合わないから決めといたわよ。
 縁側にパンフ置いといたから見といて、今日明日くらいには配達してもらえる手はずになっているから。
: またそうやって勝手に事を……盆栽よ……盆栽!
 いつしょに行ったトコとかサチはきれいに散髪しといてくれって言ってたけど、あたしの梅はボサボサのまんまがいいって、
 じいちゃんちっとも話聞いてないんだから!
: じいちゃんらしいねえ。
: そのくせ、湯かげんはどうかって、お風呂入ってる時に覗きに来るし。
: アハハ……
: アハハじゃないわよ。就職したら、カチコチのスーツ、髪だって眉のとこまで切るんだよ、チョンチョンにさ。
 ミッションスクールじゃあるまいし……そんなみじめな自分の姿とも重なるってことも考えないで、こんなに散髪しちゃって……
: 剪定っていうのよ。花が開いたときにちょうど良い姿にするために、開花するちょっと前にも……(自分でパンフをとりにいく)
: あたしはボサボサがいいの!
: ほら、卒業式の衣裳。やっぱ紺の袴に矢絣、これにしといたよ。
 まあ、モデルさんほど清楚なべっぴんてわけにはいかないだろうけど、馬子にもなんとかっていうから……
: もう、そうやってみんななにもかも勝手に……
: 勝手なことばっかり言うんじゃないわよ! 
 文句があんなら、どうして旅行の前に決めとかないの、
 前から言ってるでしょ。盆栽だって、じいちゃんが善意でしてくれたことでしょうに。
 それをそんなに悪く言うもんじゃないわよ!
: 勝手がしたいの! 
 もう大人になって、社会人になって、着るものから髪型までうるさく言われる会社に入って、
 三月半ばから、もう研修とかでしばられっぱなしで、この半年一年は、息もつけないんだよ。
 それを、その直前ほんのちょっとわがまま言ったり、勝手言ったりしちゃいけないの!? 衣裳だってスマホで送るなり……  
: おじいちゃんちは圏外なの、知ってんでしょ。裏山で電波届かないって!
: 電話で話してくれるだけでもいいじゃない!
: 電話でイメージなんか伝わらないでしょ。だいいち、旅先に電話なんかしてくんなって行ったのは渚の方なんだよ!



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『あすかのマンダラ池奮戦記⑨』

2019-06-24 06:58:56 | 戯曲

連載戯曲
あすかのマンダラ池奮戦記⑨』


 
 

 戦闘音が土木機械の音に置き換わって明るくなる。もとのマンダラ池のほとり。手前にあすか、奥に桔梗が倒れている。

あすか: ……ん……マンダラ池……埋立て工事が始まってる……夢おち?(桔梗に気づく)フチスミさん!? フチスミさん、しっかりしてフチスミさん!
桔梗: ん……あすかさん……ここは?
あすか: マンダラ池ってか万代池、イケスミさんが住んでいたところ。大丈夫? 大丈夫だよね、神さまなんだからフチスミさんは。
桔梗: わたし、桔梗だよ。
あすか: 桔梗さん? どうして?

 ガードマンのオバサンの姿をしたイケスミがホイッスルをふきながら上手からくる。

イケスミ: ダンプは北から、むこうの方! ユンボこっち! 土ゆるいからそこで停めといて。(二人に)そこあぶないから、こっちの方で話してくれる。ごめんね。今日から工事始まっちゃうから……
桔梗: すみません。
あすか: ども……

 舞台中央で、ガードマンのイケスミと二人、交差。二人はイケスミに気づかない。

桔梗: オオミカミさまももどられたし、フチスミさん、あそこを離れられないと思うの……
あすか: そうか。ミズホノサトは廃村というか……沈んだまんまだし。桔梗さん、あそこに住むわけにもいかないんだ。
桔梗: 万代池も、ひどいことになってしまってるのね……
あすか: 時代の流れというのかね。あたしも長年……と言っても十数年だけど、万代池だなんて由来知らなかったからさ、マンダラ池だと思って、昨日なんか、ウンコふんづけちゃって、靴洗ってたりしたんだ。
桔梗: 靴洗っちゃたの、神さまの池で!?
あすか: 知らなかったんだもん……ごめんなさいって……ちゃんと謝ったんだよ……言っちゃあなんだけど、やっぱイケスミさんて、すねた神さまだよね、それで、あたしをひっかけて依代にしちゃうんだから……今ごろはオオミカミさまのスネしゃぶりつくしてんだろうね。ま、いいか、頭もよくしてもらったことだし……
桔梗: どっちもどっち、二人ともたくましい都会の神さまと人間。
あすか: 桔梗さん。しばらくあたしの家にいなよ。3LDKだけど、三人家族だからもぐりこめるよ。
桔梗: そんなの悪いよ。わたしも子供じゃないんだから……
あすか: そうしなって、ここへそろって送ってこられたのも、そういうおぼしめしだと思うの。
桔梗: だって……
イケスミ: だってもあさってもなーい!
二人: え……!?
イケスミ: まだ気がつかない?
二人: ……?
イケスミ: あ・た・し(ヘルメットとタオルをとる)
あすか: イケスミさん!
桔梗: どうかしたんですか!?
あすか: てっきりスネかじってると思ってたのに……その姿?
桔梗: 神さま廃業ですか?
あすか: だったらお父さんに頼んでもっと時給のいいパート紹介してもらったのに。
桔梗: おいたわしい……
イケスミ: うるせー!
桔梗: だって……
あすか: その姿……
イケスミ: これは、池の最後を見届けるための方便だよ。
あすか: ホーベン?
桔梗: ということは、まだ神さまでいらっしゃるんですね。
イケスミ: オオミカミさまに叱られてな。
あすか: キャッチセールスみたいなことするからだろ?
イケスミ: それもあるけどさ、ここを見捨てたことな……あすかも言ってただろ?
あすか: あれ、売り言葉に買い言葉。気にしないでくれる?
イケスミ: 池があろうとなかろうと、そこに人が住んでいるかぎり逃げてきちゃいけないって。
あすか: でも、人がいたって信者がいなきゃ。
イケスミ: いるよ。あすか、おまえが信者一号、桔梗が信者二号だ、よろしくな。
桔梗: アハハ……でもフチスミさんは……
イケスミ: あたしが兼任、元をたどればオオミカミさまにたどりつくんだから、どっちの信者になっても同じさ。フチスミさんは、しばらくはオオミカミさまと地元の復興……それに、あんたたちも、たどっていけば同じ一族なんだよ。
あすか: え、親類!? あたしたちが!?
イケスミ: あすかの元宮というのは、元宮司って意味で、天児一族の分家、三百年前にあたしといっしょにやってきた家系さ。
桔梗: でも、一族とは思いませんでした。
イケスミ: さすがの桔梗にもわからなかったか?
あすか: でも、親類だと思うとなんか嬉しいね。
桔梗: はい……でもお世話になるのは……
あすか: 硬いこと言うなよ。
イケスミ: あんたたちは双子の姉妹、二卵性の。そういうことにしといた。
二人: ええ!?
イケスミ: 役所の書類もそうしといたし、親も友だちも、みんなそういうふうに思ってる。
あすか: ええ、そんな……
イケスミ: ミズホノサトは必ず人がもどってくる。少しずつ水もひいて、もとの生活がね……でも、それには何十年もかかるだろう。それまで桔梗を天涯孤独の身の上にしておくのはかわいそうだ……これはオオミカミさまのおぼしめしでもある……それとも、桔梗と姉妹じゃ不足かあ?
あすか: ないない。ねえ?
桔梗: え、ええ。
イケスミ: そうときまれば、やることは一つだけ。
あすか: え、なんかすんの?
イケスミ: 双子でも、姉と妹の区別がいる。
あすか: そりゃ、誕生日の早いほうが……
イケスミ: バカ、双子の誕生日はいっしょにきまってるじゃないか。
桔梗: 何をするんですか?
イケスミ: ここから、自分の家まで、ヨーイドンで走る。先についた方がお姉ちゃんだ。いいな。
あすか: ようし、足には自信が……
桔梗: わたしだって!
イケスミ: それじゃ……(競技用のピストルを出す)ヨーイ……
あすか: っと、その前に一つ聞いていい?
イケスミ: なんだい、ずっこけるだろーが!
あすか: オオミカミさまたちの出雲会議がさ……あんなに長引いた理由ってのは? よっぽど大事な議題なんでしょ?
イケスミ: ああ、人と自然の将来に関わる大切な話をされていたのさ、ずいぶんもめたみたいだけどね。
あすか: で、結論は?
桔梗: それは……
イケスミ: こうして、あんたたちとわたしがいる。それが結論……と、いうことで納得しろ。
あすか: こうして、あたしたちがいることが……
イケスミ: それじゃいくよ、ヨーイ……っとその前に。
あすか: なによ、ずっこけるじゃないよ!?
桔梗: アハハハ……
あすか: なによ!?
イケスミ: 実は、あのオール五の成績票ね。
あすか: そうそう、ごほうびの……(ポケットに手をやる)ない……ポケットのどこにもない!?
イケスミ: 戦いの最中に、おっことしたんだよ。
あすか: え?
イケスミ: フチスミさんが拾ってくれた。そうだよね?
桔梗: え、ええ。
イケスミ: それをあずかったのがこれ……
あすか: ありが……とうに破れてるじゃん!?
イケスミ: 戦いの最中だもん……
あすか: じゃ、もとのあたしにもどったってわけ!? せっかく真田コーチと同じ学校いけると思ったのに……
桔梗: いいじゃない、受験までにはまだ間がある。今度は自分の力で。わたしも応援するから。
イケスミ: じゃ、今度こそいくぞ。待ったなし……ヨーイ……ドン(本物の競技用がいい)

 花道(通路)を本気で駆ける二人、見送るイケスミ。

イケスミ: ……どっちが勝つにしろ、着いたころには、本当の姉妹と思い込んでいるはず、そういう魔法がかけてあるんだから……さあ、またせたな! 埋め立てるよ、ユンボはむこうから、ブルドーザーこっち、ダンプも前に進んで……(観客に)じっと観てないで拍手! おしまいだから幕はおろして……

 イケスミ、まるで現場監督のようにホイッスルを吹き、埋め立ての指揮をとるうちに幕。(余裕があれば、キャスト、スタッフが出てきて、鳴り物入りでフィナーレにしてもいい。ラストのイケスミの台詞「じっと観てないで拍手」のあたりで)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『あすかのマンダラ池奮戦記⑧』

2019-06-23 06:48:35 | 戯曲
連載戯曲
『あすかのマンダラ池奮戦記⑧』




 上手の藪から、あすかが飛び出してくる。手には件のメモリーカードとコントローラーを握って。 

あすか: 言ったじゃないか、神を信じろって! 
イケスミ: あすか!?
フチスミ: あすかさん!?
あすか: 今のは威力偵察なんかじゃない。本格的な攻撃の陽動作戦に過ぎない。主力は南よ! 南に何か途方もなく禍々しい化け物が潜んでここを狙っている。獣道を通っても、ひしひしと感じたよ!
イケスミ: ほんとうか!?
フチスミ: そのとおりよ。北に気をとられすぎていた……南に化け物……動き始めた!
あすか: 話は聞いた。消えかかっているんでしょ、イケスミさん。もっかいやろうよ。ほら、コントローラーとメモリーカード!
イケスミ: いいのか? 今度は命にかかわるぞ……?
あすか: 賢くなったの。二人を見殺しにしても、あの南の化け物は、あたしを認識している。ここをあっさりかたずけたあと、きっとあたしを殺しに来る。知りすぎてしまったかから。そのためには、もっかい依代になって戦ったほうが生き残れる可能性が高い。そう計算できるほどにね……って理屈つけたら納得してくれる?
フチスミ: アスカさん……
あすか: さあ、コントローラーを持って! あたしはメモリーカードを……え!?
イケスミ: どうかしたのか?
あすか: これ、ドラクエⅧ「空と海と呪われし姫君」のメモリーカード……鞄の中でごちゃになったんだ……これは、ラチェットアンドクランクⅢ……ファイナルファンタジー……メタルギアソリッドスリー……おっかしいなあ……
イケスミ: 度はずれたゲーマーだな……
フチスミ: だめ、もう、間に合わない!

 ゴジラの咆哮のような禍つ神の叫び声が聞こえる。

あすか: あいつよ、南側に潜んでいた奴!
フチスミ: 並みの禍つ神ではない……いずれの荒ぶる神か?
イケスミ: ……あれ、轟八幡だよ。ほら、あの頭の鳥居。
フチスミ: え、この国の二ノ宮の……(神の咆哮)なんとあさましいお姿に……
イケスミ: 人間が、よってたかっておもちゃにしちまったんだ。駐車場の経営から、貸しビル、株の売買にスーパーの経営、観光会社に、このごろじゃ専門学校から塾の経営まで手を出しているって話だよ。
あすか: お母さんの言ってた轟塾!?
イケスミ: この国の人間は、思いやるって心を失ってしまったんだ。人に対しても、神さまに対しても、自然や何に対しても……祖先から受け継いだ夢も誇りも恐れも忘れ果てたアホンダラにな!
フチスミ: 感想言ってる場合じゃないわよ。
あすか: ね、あたしにもやらせて! こう持つの?(百連発の大筒を両脇に抱える)
フチスミ: だめ、普通の人間が持っていたって、ただの竹筒……
あすか: そんなのやってみなきゃ……(引き金を引いた気持ちになる。両脇から百発ずつの鬼の殺気のミサイルが飛び出す。反動でニ回転半ひっくりかえる)
イケスミ: あすか……おまえって……
フチスミ: 動きが止まった……
イケスミ: ちょっと驚いただけさ、じきに……ほら動き出した(神の咆哮と地響き)
あすか: くそ!
フチスミ: 撃つしかないわ、最後まで!
イケスミ: 撃て撃て撃て! 撃って撃って撃ちまくれえええええええええええええ!!

 三人しばらく撃ちまくる、地響きしだいに近くなる

イケスミ: 弾が少なくなってきた……
フチスミ: そろそろ桔梗とあすかちゃんを解放してあげたほうが……
あすか: やだ! ここで逃げんのはやだ!
イケスミ: あたしたちは踏まれても死なないけど、あんたたちは死ぬんだよ!
フチスミ: 桔梗も離れようとしない!
あすか: やだ! もうわけわかんないけど、やだ!!
 
 ブーーーーーーーーン ドカッ!!

 この時、大きな白い矢がとんできて、轟八幡の胸板を射抜く(音と演技だけで表現)大音響とともに轟八幡が倒れる気配。

フチスミ: オオミカミさまだ! オオミカミさまがもどられた!
あすか: まぶしい!
イケスミ: 笠松山の向こうから矢を射られたんだ!
あすか: まぶしくて……
フチスミ: 間もなく笠松山を越えられる。それまでに、とどめをさそう!
イケスミ: ああ、残った雑魚の禍つ神どももな。
フチスミ: いくよ!
イケスミ: おお!  
あすか: あ、ちょっと待って、あたしも……!

 舞台前まで乗りだして、掃蕩戦にいどむ三人。笠松山からのオオミカミを暗示する光などが戦斗音を残してフェードアウト(戦闘を表す歌とダンスになってもいい) 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・連載戯曲『あすかのマンダラ池奮戦記⑦』

2019-06-22 06:54:27 | 戯曲
連載戯曲
『あすかのマンダラ池奮戦記⑦イケスミ危機一髪!』




フチスミ: 近いわ!
イケスミ: あすかは無事に!?
フチスミ: 無事に道を見つけた。向こうはまだ安全だ!
イケスミ: それはよかった。でも、その分、こっちに集中しまくってるぞ!
フチスミ: 数が多い……
イケスミ: よく用意しといてくれた。これだけの禍つ神にいちいち手づくりの気を飛ばしていたら、体がもたんからな!
フチスミ: 封じ込めてあった鬼の気を、枝や竹の切れ端にこめておいたの!
イケスミ: それで鬼岩の気が弱くなっていたのか!
フチスミ: その奇数番号の太い竹を撃ってみて。オートの百連発だから……!
イケスミ: よっしゃああああああああ!
   
 三番のオートを撃ちまくるイケスミ、花火大会のクライマックスのように盛大に盛り上がり、急速に静寂がおとずれる。二人とも、ざんばら髪に制服姿も痛々しげに乱れている。やがて、イケスミが腰を抑えてくずおれる。

フチスミ: なんとか、やっつけたみたいね……
イケスミ: この百連発は腰にくるよ……
フチスミ: うん、だからイケスミさんにまかせたの。
イケスミ: あのなあ……(^_^;)
フチスミ: わたしの華奢な体じゃ、扱えないもの。
イケスミ: だって、依代についてんだろ。多少の無理は……
フチスミ: 桔梗に負担はかけたくないの。
イケスミ: そのために依代についてんだよ。依代につくから、このサトから出ることもできるし、サト中じゃ依代につくことで何十倍もの力を発揮できるんだぞ。
フチスミ: でも、依代にも負担がかかるんだよ。
イケスミ: そこはギブアンドテイク。だからあすかだって……
フチスミ: 桔梗は、今度の地震で天涯孤独の身。危ない目に遭わせたくない……それに桔梗って、おとなしそうに見えて、けっこう戦闘的な子なの、そんなの持たせたら、どこまでやるかわからない。奇数番号のオート持てるだけ持って自爆さえしかねない子よ。ほら……もうわたしの支配から離れて、勝手に動こうとしている……ダメよ桔梗、全てをわたしにゆだねなければ……ゆだねなければ……桔梗! き、き、桔梗……!(桔梗を封じ込めるように身もだえする)
イケスミ: あすかの半分も要領かませれば、もっと気楽に世の中渡っていけるのにな……
フチスミ: 桔梗も好きだけど。あすかって子のハッキリしたところも好きよ。
イケスミ: イケメンコーチと同じ大学うけられてルンルンだろうな。でも、頭はともかく、あの器量だから、いずれふられるだろうがな。でも、あすかはそうやって成長……(何気なく自分の手を見て愕然とする)
フチスミ: ……どうしたの?

イケスミ: 手が……体が透けてきた。結界がほころび始めているんだ。今日一日ももたないぞ……二、三時間で消えてしまうかもしれない……!

フチスミ: しっかりして! 
イケスミ: もう少し……
フチスミ: もう少し?
イケスミ: もう少し、あすかを足止めしておくべきだった、依代さえいれば……そうだ、ふんぱつして惚れ薬で彼氏の心をとりこにするぐらいのことを……
フチスミ: バカ!(イケスミをはりたおす)
イケスミ: ……なにすんだ!?
フチスミ: あなたに欠けているのは信じる心よ。必ずオオミカミさまはおもどりになる! けして、この里をトヨアシハラミズホノサトをお見すてになったりはしない!
イケスミ: だって、だってなあ……!
フチスミ: 霜月を過ぎて、まだたったの三週間あまり……きっとおもどりになる。あなたもさっきそう言ってたじゃない。だから、あの禍つ神達も恐れてる。一気に力攻めにはしてこない、ゲリラのように小攻めに……
イケスミ: 今のが小攻め?
フチスミ: ……威力偵察ね。ちょっと強めにあたって、相手の強さを知る。
イケスミ: 思い知っただろう、ほとんど全滅にしてやったから。
フチスミ: しばらくは攻めてこないわ。
イケスミ: そして今度攻めてこられたら、こっちが思い知る番だな(自分の透け始めた体を見て)わるいけど、やっぱニ三時間……それも無理かも……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする