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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・242『ハルハ川沿いの戦い』

2024-08-22 10:56:55 | 小説4
・242

『ハルハ川沿いの戦い』孫大人 




 敵の騎兵部隊は横に広がった。広がっても、その厚みはさして薄くなったとも思えず、その数五千ほど、背後には後詰がおるかもしれず、一個師団は優にいるだろう。

 先頭の千余の騎兵が差し渡し二キロほどの横隊になるのに三十秒もかかっていない。

 横に広がった分、進撃速度は落ちるが、テムジンの部隊も突撃しているので自分たちの進撃速度は重要ではない。

「包み込まれて殲滅されるよ(''◇'')」

 ハンベで鳥観図に変換した戦場の映像は数分後のテムジン隊の全滅を予測させた。

 テムジンが左手を上げ、グルッと回して左を指した。

 すると、左翼の二騎が俄然速度を上げて敵の右翼に周る。

 一騎は敵の右翼の外へ。もう一騎は人馬共々背を低くして敵の右翼中央に突撃していく。

「え、殺されるわよ!」

 東鈴が叫ぶ。右翼の外に周った一騎はともかく中央の一騎は接触と同時に倒されるだろう。

「中央のをズームしてくれ」

「う、うん」

 東鈴がタッチすると、画面は中央に迫る一騎をアップにした。

 戦場をくまなく観察するために、複数の蜂型のカメラロボットを飛ばしてある。そのうちの一つが中央に迫る一騎を大写しにした。

 とたんに消えた!

「違う、後ろに飛んだ!」

「え?」

「馬の腹にブースターを付けてんの、それを逆噴射して後ろに飛んだ!」

 とたんに、敵右翼の三割ほどがなにかに躓いてもんどりうって倒れる。

「ワイヤーかなにかを張ったんだ!」

 そうか、二騎でワイヤーを張って敵右翼の馬たちの脚を絡めとったんだ!

 飛び退る瞬間にワイヤーの端を地面に打ち込んで固定したんだ。跳び退るという意外な動きで、敵はワイヤーもワイヤーが打ち込まれたことも気づいていない。

 倒れた馬は百に近いだろう。すかさず、テムジンは自分の左翼を引き連れて突進、混乱する敵右翼の残敵に飛びかかっていく。

 ズドド ズドドド パパン ズドン パパパン ズドン パパン

 彼我の銃声が響く。

 テムジンは敵の混乱に乗じて部隊を突撃させる。

 前方の数百は壊滅して残りも混乱させたが、この突撃は少し無謀だ。多勢に無勢、各個に包まれて摺りつぶされてしまう……と思ったが、テムジンは全部の馬にブースターを取り付けさせていて、リアル馬とは思えない挙動と敏捷さで馬を操り、正確に銃撃を加える。

 ズドドド パパン ズドン パパパン ズドン パパン ズドド 

「あれ?」

 東鈴が声を上げると、敵の後方で混乱が起きている。

「おお、ゴルジン!?」

 敵右翼の外側を周っていたのはゴルジンだったのだ。そのゴルジンが反対側の敵左翼の後ろから出てくると、敵後尾の数十騎がバタバタと倒れて土煙が上がっている。

「そうか、ゴルジンは後ろからワイヤーを引き回してるんだぁ(^▽^)!」

 春鈴が喜ぶが、敵も馬鹿ではない、さっさと足元のワイヤーを切って無力化する。

 敵は十分足らずで三割の騎兵を打ち倒され、テムジンの損害は十騎余りに止まっている。

 敵は進撃を停めた。

「もう一度立て直して向かって来るでしょうねえ(^へ^)。」

 ここでポップコーンを渡してやったら、ムシャムシャ食べてサッカーの観戦でもするような感じの東鈴。

 儂も、これから戦の本番と腰を落ち着けるが、ちょっと様子がおかしい。

 シュポポーーーン シュポポーーーン

 敵は、そこいらじゅうに対人地雷を撒くと、馬を下りて塹壕を掘りだした。

「持久戦に持ち込むつもりかしらね」

「増援があるのかもしれん、健康な兵は半分ちょっとだろうしなあ」

 ようやく敵も持ち直し、うかつには手出しできなくなって二時間近くが経過した。

 その間、いつの間に出したのか、斥候たちが一騎二騎と戻って来る。

 都合四騎ほどから報告を聞いて、テムジンは回覧板を回すような気楽さで、こちらに寄ってきた。

「これは陽動だ、敵の主力は西に集中している」

 それだけ言うと自分の配置に戻り、さっと手を挙げるとたちまち千騎余りの騎馬部隊が一斉に西に走った。全馬ブーストをかけているので、あり得な速度になる。俺と東鈴の馬にはブーストの機能が無いので、ポックリポックリ普通の速度で移動。

 そのコントラストがなにかオチョクッテいるように見えるのか、目の前には自分たちが撒いた地雷も残っていて、敵は直には追撃には移ってこなかった。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

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銀河太平記・241『敵襲・草原に土色の草が萌える』

2024-08-18 11:04:02 | 小説4
・241

『敵襲・草原に土色の草が萌える』孫大人 



 モンゴル平原の一帯はAP(アンチパルス機)の波動によってパルス兵器が使えない。むろん満州戦争のころと違って、APとて絶対的な効力があるわけではない。

 しかし、誇り高いモンゴル人たちがAPを設置している以上、それを無視して近代兵器を使いまくれば、世界中から不信の目で見られる。モンゴル人たちは、たとえ占領されても抗い続けるに違いなく、結局は勝利の実を採りにくくしてしまう。

 ロシアは、はるか千年の昔にはチンギス・ハーンとその息子たちに国を取られ、タタールの軛(くびき)と呼ばれる苦難と苦渋の時代を過ごさなけれならなかった。

 その雪辱を晴らすためにも、ロシアは騎兵でやってくる。

 騎兵と言っても20世紀以来、機甲部隊を指す。非パルス戦車、装甲戦闘車、誘導ミサイル、各種誘導弾。無人機にドローン兵器。

 はてさて、どんな展開になるのかと窪地に身を伏せる。

 前方には、同様に窪地に身を伏せたテムジンの兵たちの背中が見える。

「10騎足りない」

 東鈴が呟いた時、地平線の少し手前で仕掛け花火のように連続して火花が散った。

 ピシュピシュ ズドン ズコン ズドド ピシュピシュ ズドン

 遅れて各種携帯兵器が目標を破壊する爆発音や衝撃音が伝わって来る。

「10騎、別動隊になって、敵をブチノメシテるわ……移動しながら次々に……」

「すごい腕だな、戦車やミサイルは屁でもないんだなぁ」

「人も馬も義体化されてるんだろうけど、尋常な能力じゃないわねえ」


「これで、敵も普通の騎兵でやってくる」


 突然の声にビックリしたら、テムジンが儂たちの後ろに来ている。

「( ゚Д゚)!?」

「え、わたしでも気が付かなかった( ゚Д゚)!」

「これで敵は純粋の騎兵で攻めてくる。相当の激戦になるから少し後退してくれ。危ないと思ったら退避してくれ、悟兵の筋斗雲なら逃げ切れる」

 そこまで言うと、返事も聞かずに戻った。

「あら?」

 首を戻すと、前方の窪地に居たテムジンの部下たちの姿が消えている。

 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシ

 そこに百を超える弾着の土煙。敵の射撃も見事で、土煙は、あたかも土色の草が一斉に芽吹いたかのようだ。

「少し下がるわよ」

「おお」

 移動した二秒後には、二人でいたところにも土色の草がいっぱい芽吹いたアル。

 春鈴がチラッとジト目になるが、声に出した「アル」ではないのでノーカウント(^_^;)。

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……

 地平線の向こうから優に千を超える馬蹄の響きが地を揺るがして迫ってきた。



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・240『ハルハ川』

2024-08-14 11:48:57 | 小説4
・240

『ハルハ川』孫大人 




 親父の孫悟勇が跡継ぎを誰にするか悩んでいたころ、儂は東京に出ていた。

――トンキン?――

 それはベトナムだ。

――ああ、TOKYOね――

 テキストチャットで話しているので、時どきスカタンになる。

 テムジンの100騎といっしょに行軍中なので会話を控えている。

 うっかりアルアル語を使って100元取られるのも業腹でもあるしな。

――その東京がどうかした?――

 東京の団子坂というところに下宿していた。

――あら、美味しそうなところね――

 むかし、坂の下に美味しい団子を出す茶店があったらしい。

――フフ、坂で躓いて団子みたいに転げ落ちる悟兵を想像した。でも、なんで団子坂、都心からは微妙に離れてる感じだけど――

 好きな女の子が居てなあ、その子の実家が千駄木にあった。

――千駄木……ああ、団子坂あたりの地名ね――

 それでな……

――………………――

 ちょっと、聞いてるかぁ?

――その女の子って、惟任美音でしょ――

 なんで知ってるアルか!?

――あ、50元――

 え……あ、テキチャ、ノーカウント!

――だから半額にしてあげたじゃない。ジャキーン!――

 効果音入れなくていい!

――むかし、あのあたりじゃ千駄木小町って言われた子ね……学習院を優秀な成績で卒業した才色兼備……横須賀でお店出してたのね……ほうほう……あの児玉元帥が士官学校のころになかなかの関係にねぇ……ねえ、大人になってからは月に一二度しか実家には戻ってないはずなのに、どうして団子坂なんかに? 横須賀に行った方がチャンスは多いでしょ?――

 フフ、読みが浅いわ(`^´)。

――なによ――

 横須賀にいる時の彼女は店のママだ。つまり営業用の顔しか見せない。横須賀で、仲良くなっても、結局のところは客でしかない。しかし、千駄木に戻った時は、素のままの、本来の惟任美音なわけさ。

――ほおぉ……でもさ、結局はものに出来なかったわけでしょ。いっしょじゃない――

 ふふ、まだ読みが浅い。

――え……あ、惟任美音って、カルチェタランの初代オーナーじゃない!?――

 フフ、東鈴の検索は、どうも灯台下暗しの傾向があるなあ。

――フン、ほっといてよ!……あ……まさか、わたしの外見とか、その惟任美音をコピーとかしてないでしょうね!?――

 おまえたちJQシリーズの外見はデフォルトのままだ。

――そ、そうならいいけど。でも、なんで団子坂とか千駄木の話しになるの?――

 あのあたりは、少し行くと日暮里でな、台東区と荒川区の境目なんだ。間には神田川が流れていて常磐線と山手線が走っていて、日暮里から東はストンと崖になっていて景色が変わるんだ……

――あ……そうか、ここの地形に似てる!――


 東鈴が思い至ったところで、先頭を行っていたテムジンが停止を命じた。


「ここはノモンハン、下を流れているのはハルハ川だ。ロシアはこのハルハ川に沿って南下してくる。ここなら状況次第で西のモンゴル平原にも東のマンチュリアにも行けるからな。西に進ませれば敵はモンゴル平原を蹂躙し漢明になだれ込み、東を許せばマンチュリアに浸透し地盤を固めるだろう。いずれにしても、我々の脅威であり世界平和への許しがたい挑戦だ。我々は、ここで敵を待ち受ける。ゴルジンの50騎はここで、俺の50騎は向こうの窪地で待ち受ける。この鷹を放つことで合図とする。光学迷彩を掛けた上で待機。かかれ!」

 おお!!

 ヨタ話をしているうちに、テムジンは着々と状況にあった戦法を考えている。

 しかし、この100騎あまりで、ロシアの騎兵とどう渡り合うつもりか……ちょっと時めいてきた。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
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  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
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  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・239『テムジンと出撃』

2024-08-08 11:04:09 | 小説4
・239

『テムジンと出撃』孫大人 




「あっちの1000騎は?」


「ゴルジンの兄のリムジンとドライジンの部隊だ。跡は継がせんが馬のほとんどは譲った」

「じゃあ、テムジンの馬は、この100騎だけか?」

「十分だ、100%リアル馬だしな」

「リアル馬アルか!?」

 ジャキーン

 東鈴の目がレジスターになって、また百元取られた。

 23世紀の今日、馬の99%はオートホース。100%のリアル馬は動物園かよほどの好事家でなければ使わない。オートホースも仕事や作業に適した調整が必要で、テムジンたちモンゴル人も仕事のほとんどはオートホースの調整だ。

 またも百元ふんだくられた儂などに構わずに、テムジンは1100騎に語り掛けた。

「ロシアと漢明は、この偉大なモンゴルの大地を戦場に変えようとしている。やつらには一かけらの正義も無い! かつての満州戦争で失敗し、漢明は、その実力の全てを戦争に賭けることはしない。ロシアも漢明と全力でぶつかる意思は無い。さきほど、満州の上空で双方のミサイルが激突し、全面戦争の無謀さを知った。そこで、パルス兵器を禁じているモンゴルの地で、その雌雄を決しようとしているのだ! これを座視すれば、モンゴルはかつてのように、ロシアと漢明の門に下らねばならぬであろう! 我ら草原の子らは、モンゴルの歴史に燦然と輝くチンギス・ハーンの末裔である! もとより世界帝国の夢など持たぬ我らであるが、その誇りはこの胸の内にある。モンゴルの地を奴らに許せば、やつらと、その欲望を他国の領土に向けようとしている邪悪な国々は野放図に、その食指を伸ばし世界を、やがては、この太陽系を果てしなき戦争のるつぼに投じるであろう! その野望を挫き、我らの平和を守るために立ち上がるぞ!」

 オオオオオオオオオオオ!

 1000騎と100騎の騎馬隊が雄たけびを上げる。数十秒昂りに任せ、やがて右手を挙げて制してテムジンは命じた。

「リムジンとドライジンは南の漢明に当れ、俺とゴルジンは北方のロシアを制する。かかれッ!!」

 オオオ! ドドドドドドドドドドド!

 蒼天の下、大地に馬蹄を轟かせ、1000騎と100騎は南北に分かれた。儂は東鈴と馬を並べてテムジンの100騎に付いていく。

「ねえ、テムジンは漢明には『当たれ』、ロシアには『制する』って言ったけど。違いはあるの?」

 東鈴が馬を寄せて聞いてくる。

「『当たれ』は、まず交渉しろという意味がある。『制する』は見つけ次第ぶちのめすという意味だ」

「ほう……じゃあ、あたしたちは面白い方に付いてきたわけだ(^▽^)/」

「ふ、不謹慎アル(>◇<')」

 ジャキーン

 東鈴の目がまたレジスターになった(-_-;)



 
☆彡この章の主な登場人物
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  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
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  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
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  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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銀河太平記・238『テムジン・2』

2024-08-04 15:10:16 | 小説4
・238

『テムジン・2』孫大人 




 ここからはアルアル語は封じる。


 なぜか……テムジンとは、アルアル語など使って自己韜晦する以前の付き合いだったからアル。

 いや、だからアルアル語は封じる。

 児玉元帥を相手にしていても時々出てしまうアルアル語、少し苦労するかもしれないが、このモンゴル平原でテムジンと駆けるなら青年孫悟兵に戻らなければならないアル。

 アル?

 いや、だからアルアル語は封じる! 使ったら罰金!

「罰金て、ちょ、ここで実戦とかやる気なの!?」

 見かけよりも広いゲルに通され、お茶の用意にテムジンが出ると、東鈴が目を三角にする。

「テムジンと出会ったのは運命だ。テムジンとは運命の付き合いをする」

「なに、その運命の付き合いって!?」

「大丈夫だ、テムジンも一族の長。仲間を生かし、このモンゴルの草原を守るのが定め。命は粗末にはせん」

「でも」

「東鈴は筋斗雲で奉天に戻れ、ここが片付いたらすぐに戻るから」

「昔の遊び相手が見つかったらお払い箱ってわけ?」

「いや、だから……」

「だれが戻るかぁ!」

「声大きいアルぅ」

「あ、罰金、100元」

「ひゃ、百元!?」

「さっさと払う」

「し、仕方ないア……」

「ア?」

「ア……明日があるさ(^_^;)」

 ハンベで百元を送金する。

「そうそう、ジャキーン(右目に100,左目に元)」

「目をレジスターにするのはヤメテ」

「明朗会計よ、ストックが無くなったら円とかドルとかでもいいから……あ、来たわ。え、二人?」


 東鈴の言う通り、テムジンは聞かん気の強そうな若者に馬乳酒を持たせて戻ってきた。


「出撃前でもてなしもできんが、馬乳酒で乾杯だ。これは末息子のゴルジンだ。俺の跡はこいつに継がせようと思っている。挨拶しろ、ゴルジン」

「ゴルジンです、お見知りおきを」

 折り目正しく礼をするが、目に刺すような光があって、一から付き合うには骨の折れそうな若者だ。馬乳酒の盃を置く動作も馬に鞍を載せるように無駄が無い。
 
「若いころのテムジンに似ているな」

「ああ、棘はあるが腹は座って、統率力も兄たちに勝っている。今度の戦は、こいつにとってもいい経験になる。こっちは嫁か?」

「いや、儂の助手だ。東鈴という」

「トンリン、いい響きだ……義体率は半分以下だな」

「いや、東鈴は100%だ」

「ん……この美しさで、どこも義体化していないのか?」

「いや、逆だ」

「え……ロボットなのか?」

 テムジンは、ただ驚いただけだが、ゴルジンは無表情なまま目を尖らせる。テムジンも昔は似たような目をしたが、その後は、高い確率で殴り合いになった。

「助手だが、口うるさい女房……いや、娘みたいでもある。東鈴」

「東鈴です、よろしくお願いいたします」

「うむ。では、さっそくだが……」

 テムジンは、無駄口をたたくことも無くモンゴルとその周辺の状況を説明してくれる。どうやら声明を発表する以前から漢明もロシアもモンゴルには手を伸ばしていて、政府の意志決定がなされたら一挙に行動に移せるようになっていたようだ。

 チンギスハンの末裔らしく10分ほどで概略を説明すると、儂と東鈴をうながして外に出た。

 ゲルの外には、いつの間にか先ほどの50騎に加え、1000騎近い騎馬部隊が揃っていた。
 


☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
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  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・237『テムジン・1』

2024-07-31 11:25:30 | 小説4
・237

『テムジン・1』孫大人 




 北京秋天を思うと、それよりも壮絶な、いわば北京蒼天とでも言うべき壮絶な青空が見えてきたアル。

 北京の半分、奉天の四半分ほどしか水蒸気を感じさせない空は、まるで仰ぎ見る者を染めてしまいそうなほどに蒼いアル。

 緩い坂道を上っているので、このまま筋斗雲を進めていくと、そのまま空に上ってしまいそうな気持するアル。

「いっそ、空を飛ぶ? 短時間ならステルスレベルマックスにできるけど」

 気持ちを察した東鈴が気を効かすアル。

「このままがいいアル、飛んだら空に呑み込まれそうアル」

「惜しいわねぇ、小さな雲が一つだけ残ってる」

「惜しいか……かえって空の蒼さを荘厳(しょうごん)してる思うアルよ」

「荘厳ねえ……なんだか、そのまま解脱とかして新興宗教でも開きそうね」

 宗教開いて世界が救われるなら、それもアリ思うアルよ。

 しかし、この蒼天の下では間もなく満州戦争並みの戦闘が行われるアル。

 ここいらは昔からの変わらぬ遊牧やってるアル。今ごろは羊たちも避難させ、人間もゲルを畳んで避難準備の真っ最中思たアル。

 
 峠を越えると、蒼天のぼっち雲を映したように白いゲルが残ってるアル。ゲルの傍らにはポールが立っていてデザインされた狼の旗。

 
 テムジン!?


 児玉元帥以上に古い友人の名前思い出したアル!

「ちょ、なにすんのよ!」

 手を伸ばして筋斗雲の緊急停止を押したアル。

「テムジンは、こういうの嫌うアル。ここからは歩くアル」

「テムジン……知り合いなの? まだ一キロはありそうだけど?」

「ああ、老婆婆(ラオパアパア)の髪がまだ真っ黒だったころからの付き合いアル」

「あたしは?」

「ああ……ついて来てくれ。どのみち紹介しなくちゃならない、いっぺんに済ますいいアル」

「テムジンて本名? 古い鍛冶屋でなければモンゴルの古い英雄の名前だと思うんだけど」

「世襲名アル、父親死ぬとテムジンの名を受け継ぐアル」

「ちょっとぉ……すごい殺気なんだけどぉ」

「だいじょうぶ、ほんとうに殺そう思う、殺気ないアル」

「そう……言われてなきゃ、ソッコー首の骨へし折りに行ってるところよ」

「東鈴、物騒アル」

「え……向こうの方から近づいてきた」

「どうやら敵ではないと認識したアル」

 ゴヘーーイ!

 テムジーン!

 儂もテムジンも同時に駆けだして草原の真ん中で、ガシっとぶつかるようにしてハグし合った。

 同時に、どこでどう隠れていたのか、50騎余りの騎兵が湧いて出て、儂とテムジンを取り巻いたアル。

 東鈴も10騎ほどに取り巻かれている。そいつらはみんな弓に矢をつがえて東鈴に狙いを定めていたアルよ(^_^;)。


 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
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  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
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  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
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銀河太平記・236『西へ』

2024-07-25 11:55:39 | 小説4
・236

『西へ』孫大人 




「ん、なんで西に進むアルか?」


 山海関を出て奉天に戻る道を走るのかと思ったら、筋斗雲はそのまま西に向かって走っている。

「なに言ってんの、自分でも西が危ないって思ってるくせに」

「一度、奉天に戻ってからと思たアル」

「カルチェタランなら大丈夫、老婆婆と鈴麗が居る。あの二人の方が店と街に関しては悟兵よりも分かってる」

「そうアルな。とりあえず満洲里アル」

 満洲里とはハルピンの西方400キロ、モンゴルの東に位置する街で、モンゴルの街でありながら「満州」ではなく「満洲」とキチンと表記する由緒正しい街アル。たぶん、大昔は満州の勢力がこのあたりまであった名残りアル。

「了解」

「なんで、西が危ない思うアルか?」

「そりゃあ、さっきのミサイルはフェイント、あるいは観測気球。力技でぶつかりあったら、すぐに本格的なパルス兵器同士のぶつかり合いになるでしょ。本格的な世界大戦は両国とも避けたい、21世紀の大失敗も有ったことだし。両国ともモンゴルを挟んで通常兵器の密度が高いし、平原ばかりだし通常兵器でドンパチやるにはうってつけだし」

「フフフ……」

「なによ、気持ち悪い」

「東鈴、世界で最初の共産国はどこアルか?」

「え、ソ連でしょ、100年もたなかったけど」

「では、二番目はどこアルか?」

「モンゴル」

「なんでモンゴルアルか?」

「ソ連に隣接してるし、影響受けやすかったからでしょ」

「フフ……理解が浅いアル」

「なんかムカつく(^_^;)」

「モンゴルは中国から逃げたかったアル。歴史的にいじめられてばかりだったアルから、ソ連の親類になるのが手っ取り早かったアル」

「あ、でも、モンゴルの南半分は長いこと中国に入って自治区になってたでしょ。いま向かってる満洲里とかそうだし」

「逃げ遅れて中国に掴まったアル」

「そうなんだ……そうか、その記憶を刺激すれば、わりと簡単に自分の勢力圏に取り込めるとロシアは思うわけか」

「ちょっと高度をとって欲しいアル」

「え、飛んだら目立つよ」

「そこをうまくやって欲しいアルよ、飛んだ方が距離稼げるアルし」

「へいへい」

 東鈴は器用に高度10メートルほどを維持して飛んでくれるアル。

「少し落としてくれアル」

「気づいた?」

「ああ……これは……」

 木の間隠れに手入れの行き届いたAP機が見える。

「でも、あんな旧式機、役に立たないでしょ」

「いや、そうでもないアル」

 AP機とはアンチパルス波動機。つまり、パルス機関やパルス兵器を無効化する防衛兵器アル。

 モンゴルは豊かな国ではないので最新のAP機ないアル。漢明や先進国のパルス機器や兵器を無効化することは難しいアルが、それをピカピカに整備していることの意味は大きいアル。

 モンゴルはパルス機器は大嫌い! 使う奴も大嫌い!

 という意思表示にはなるアル。

 つまり、このモンゴルで事を起こそうとしたら、児玉元帥言うところの元亀天正の戦争をやるしかない。

 あの『北京秋天』の絵を思わせるマンチュリアの空の下で繰り広げられた満州戦争のことが思い起こされたアルよ。

 

☆彡この章の主な登場人物
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  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
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  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
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  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
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  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
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  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
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  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・235『漢明の声明発表』

2024-07-21 11:52:00 | 小説4
・235

『漢明の声明発表』孫大人 




 満州が一番元気だったのは三百年以上昔、中華全体を清朝が治めていたころころアル。

 1911年の辛亥革命で清朝が倒れて、女真人は満州に帰り、中華という大屋台を失ったアル。
 それからは満州の地で馬や羊を追って静かに暮らそうと、ご先祖たちは思ったアル。

 しかし、地下資源や工業資源の豊かな、そして、中華・ロシア・モンゴル・朝鮮半島への回廊である満州がそっと置いてもらえるはずはないアル。

 四半世紀前の満州戦争のあと、マンチュリアいう非同盟主義の独立国になったあるが、元々が諸民族の回廊、国家としての縛りはメチャクチャ緩いアル。
 ハンベに登録済みのパスポートさえあればEUみたいにお出入り自由アル。周りの国々はEUみたいないアルが、自由にすることで多少の問題はあっても平和アル思ってきた。

 しかし、そんなヌルイことでは、どうやら平和は保てないみたいアル。

 漢明とロシアがアヒルみたいに水の下の足で蹴り合いしているのは大昔からアル。めったに水面から上のどつきあいにはならないアルが、このところ、その兆候が見えてきたアル。漢明が志願兵を募ってきたのはリトマス試験紙アル。志願兵の応募の多寡でマンチュリアの漢明への傾斜具合を計ろうとしたアル。
 
 だから、この孫悟兵も筋斗雲を駆って様子を探っているアルよ。

 しかし、ロシアがフライングしてミサイル撃ってきたアル!

 ノンビリ様子見てる場合ないアルよぉ~!


「悟兵、漢明のスポークスマンが声明発表してるぞ」


 筋斗雲に戻るやいなや東鈴がフロントガラスをモニターモードにしたアル。

 スポークスマン見てビックリしたアル!

「いつものオッサンじゃないわね……」

『こんにちは。漢明国民のみなさん、並びに、これをご覧になっている世界のみなさん。今日は、驚きのお知らせと共に漢明政府の決心をお伝えいたします。 五分前にロシアは日本海に向けて戦略ミサイル10発を発射しました。しかし、発射後二分でミサイルは進路をマンチュリアの奉天に指向させ、さらに、その三十秒後には進路と侵入角を変更、北京に向かってきましたので、漢明軍は、これを脅威ととらえ迎撃ミサイルを発射。奉天上空で8発を破壊、残り2発はマンチュリアのミサイルが撃墜しました。漢明政府はただちに予防的に警備部隊を国境沿いに配置、マンチュリア国内にもマンチュリア政府の同意を得た上で、一個師団の防衛部隊を派遣いたします。けして本格的な戦争を始めようということではありませんので、当該地域のみなさんビックリしないでくださいね(^_^;)、え……あ、これってコメントも入るんですね( ゚Д゚)!』

 スポークスマンかわいい!  漢明がんばって!  ロシアが悪いぃ!  漢明加油!  まえの男のスポークスマンよりぜんぜんいい(^▽^)/  漢明困ってるんだよね、顔見たらわかるぅ!  応援します!  クラファンとかないんですか!  個人的にはスポークスマンさん応援します! 
名前なんていうんですか!?  そうだそうだ!  名前教えて!

『あ、えと、胡盛媛って言います(^〇^;)。スポークスマンなんて初めてなんですが、前任の司馬遠さんの名を汚さぬようにがんばります٩(,,•ω•,,)و 』

 ファイトかわいい!  けなげぇ!  応援する!  投げ銭したいぃ!  あ、できるかも!?  え、できる?  やってみよ!  おお、できた!

『あ、みなさん、これは国の声明でぇ……投げ銭とかは……』

 いいじゃん!  やろうやろう!  

『え、あ、いいんですか? なんか許可が出ましたぁ……でも、これって国家のチャンネルですから、投げ銭は漢明の国家に入ります』

 え、そうなのぉ?  ちょっとぉ  かまわねえ!  オレも!  わたしも!  盛媛ちゃんも個人のチャンネル開いてぇ!

『アハハ(^_^;)……ということで、また新しく政府の発表や見解が出ましたら、逐次お伝えいたしますので、とりあえずは、これで失礼いたします!』

 ゴチン!

 勢いよく頭を下げたので、思い切りマイクに頭をぶつける胡盛媛……いや、フーちゃん。

 劉宏大統領の差し金なんだろうが、この声明発表はミサイル百発分くらいには相当するアルよ。

「フフ、漢明もなかなか姑息な手段に出るじゃない……」

「あ、東鈴、ちょっと目が怖いアルよ……」

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 
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銀河太平記・234『山海関の風』

2024-07-18 17:38:34 | 小説4
・234

『山海関の風』孫大人 




 秦皇島市 (チンファンダォ市 )の海岸に筋斗雲を停める。


 昨日立ち寄った虎山長城(丹東市)のさらに南西の地方都市アル。

 二百年ちょっと前までは、この秦皇島市の山海関が万里の長城の東端ということになっていたアル。
 大雑把に言うと中華と満州の境目アルが、時代によって境目は移動するので、はっきり境目とは言えないアル。言えないアルが、その昔、ここより東北を関東、南西を関内と言って大雑把に民族や文化の境目としたアル。

 中華が元気な時は、ずっと北の豆満江のあたり、マンチュリア全部を中華言うてたアル。その時は万里の長城の東端は虎山長城のさらに北にされてたアル。

 時代によっても、人によっても、その境目の認識は変化するアル。だから、国家の大乱となった時は見極めが肝心アル。

 この孫悟兵、そこを見極めて動くアル。そことは人の気アル。

 マンチュリアと国境近辺の人間がどっち向いて、何を望んでいるかを見極めて、身の処し方決めるアル。

 無理な動きは、たとえ短期的に成功しても長続きはしないアル。

 国家の興亡や縮小拡大の繰り返しは、この大陸では、いわば大陸の生理アル。運命と言ってもいいアル。

 生理や運命であるならば、その秋(とき)の犠牲を小さくするのが英雄の道アル。

 この孫悟兵、けして英雄の器ないアル。せいぜい冒険者か勇者のレベルアル。

 しかし、仮にも先祖伝来の大人の二つ名を名乗る身。先祖に恥じぬ選択するアル!

「さすがに騒めいてるね……」

 え(''◇'')?

 一瞬見透かされたか思ったアル。いまの想いは、ちょっと青臭いアル。

 東鈴は屋台やキッチンカーには目もくれないで海に張り出した長城の果てに歩いていくアル。

 ザザザ~~~ ザップ~~ン

「ここから西の果て嘉峪関までの6000キロ余りが万里の長城なのね」

「21196キロあるよ」

 ザ ザザザーーー

 ズゴォォォーーー

 波音に混じって、そうとは断じたくない飛翔音がするアル、方角は北の方アル!

 ズギューーーーン

 違う飛翔音が南の方からもするアル!

 南の飛翔音は頭上を飛び越えて、虎山長城(丹東市)のあたりも飛び越えて、奉天のあたりで北からの飛翔体とぶつかって火花が散ったアル。

 遅れて奉天からも飛翔体が上がっているのが見えたアルが、目標を喪失して次々に自爆するアル。

 事態は悟兵の想像を超えて動いているアル。

 北方の、おそらくはロシアのミサイルがマンチュリアを狙って傲然と飛来し、それを漢明の迎撃ミサイルが撃ち落としたアル。

 マンチュリアの迎撃ミサイルは結果が出た後に上空に達して虚しく自爆したアル。

 地上の人間たちは、この孫悟兵も含めてバカみたいに口を開けてミサイルたちの残した煙を見るだけアル。

 ビョォーーー

 前触れもなく北の風が吹いてきて、東鈴の長い髪を嬲っていく。数瞬白いうなじが露わになって、ちょっとドキッとしたアル。

 シュポン……と音がして、東鈴の髪は一瞬で引っ込んでショートになったアル!

「しばらくショートでいくわ」

「ちょっとシュールアル(^_^;)」

「なに言ってるの、悟兵もさっさと戦闘態勢になりなさいな(ㆆ_ㆆ) 」

 
 三白眼のジト目で言うのは止めて欲しいアル……

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・233『丹東虎山長城のアイス』

2024-07-15 11:42:56 | 小説4
・233

『丹東虎山長城のアイス』孫大人 




 愛車筋斗雲をC仕様で南に向かってるアル。


 C仕様は四人乗りで、東鈴を乗せてちょうど。後部座席とトランクには多少の荷物。田舎のオッサンが似合わぬ愛人を連れての小旅行。適度に胡散臭くて目立たない。

 とりあえずは北京を目指しながら空気を読む。

 自慢じゃないがサバを読むのと空気を読むのは得意技アル。

 孫の家は、そうやって世の中を渡って来て、この孫悟兵の代に至っているアル。

「あれぇ、ちょっと東に寄ってない?」

 ナビに合わせてハンドルを握っていた東鈴が口を尖らせる。

 散歩に連れて行った犬が勝手に方向を変えたみたいな反応で可笑しい。

「筋斗雲の判断アル」

「筋斗雲はただの車でしょ、なんだか犬に引っ張られてるみたいで気分悪いんですけどぉ」

「この先は……丹東……ああ、虎山長城アルなあ」

「北京に行くんじゃないのぉ?」

「空気を読むアル」

「空気ねえ……」

 ちょっと不足そうだが、ナビもAIも無視することなく丹東に着いたアル。


「あら、立派な長城ねえ」

「いちおう万里の長城の東端ということになってるアル」

「え、わたしのデータベースじゃ万里の長城の東端は山海関だけど?」

「200年前に変えたんだ。目の前にあるのは、その時に作ったレプリカアル」

「そっか、ねえ、アイス売ってるよ。長城の上で食べようよ」

「いや、ちょっと街の様子を見てくる。食べたかったら東鈴一人で食べていてくれ」

「ええ、なにそれぇ」

「儂が戻るまで待ってるアルか?」

「それは別に食べる。お小遣いちょうだい」

「あ、すまん。チャージしてなかったアルな」

 ハンベを直結して、少し迷ってからチャージしてやる。

「え、こんなに?」

「ああ、この先どこで要るか分からんアルからな」

「……円とドルもあるわよ」

「ああ、状況によっては国を出るかもしれないアル」

「あ、いいわね(^▽^)!」

「それじゃあ、二時間ほどで戻って来るアル」

「うん、ごゆっくりねぇ」

 キッチンカーのアイス屋に走っていく東鈴を見届け、筋斗雲のトランクから折り畳みのパルスバイクを出す。さすがC仕様の筋斗雲でも、裏通りまでは入れないアルからな。

 市内の30カ所以上に志願兵募集のポスターが貼ってあり、西と東のリクルートセンターにはチラホラと若者の姿。

「志願するのかい?」

「え、ああ……どうしようかと思って」

 声をかけた青年は迷っている様子。

 しばらく見ていて8人の若者が足を止めたが、中に入っていったのは一人だけだった。

 そのあと、繁華街や公園、駅やらバス停などを周ってみたが、おおむね戦争なんて関係ないという空気が強い。

 他にも物流や景気の具合を見て周るが、漢族が半分に満たない街は漢明のことなどよそ事だという空気だったアル。

 長城に戻ると日が傾いてきたので、アイスはやめ、宿をとって少し早い晩飯にしたアルよ。

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
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  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
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  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
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銀河太平記・232『老婆婆の忠告、そして東鈴と南へ』

2024-07-12 11:20:06 | 小説4
・232

『老婆婆の忠告、そして東鈴と南へ』孫大人 




 作業の邪魔をしてはいけないので、そうそうに車に戻るアル。


 張村長が恵比須顔で見送ってくれる。

 車に乗って走り出しても笑顔……米粒みたいに小さくなっても笑顔アル。

「なにか隠してるアルなぁ」

「バンの中に別の看板隠してたよ」

「え、そうなのか?」

「うん、悟兵のことは、もう少し前から気づいていて隠してたみたい」

「なんの看板アルか?」

「漢明の志願兵募集の看板、こんなの……」

 車のフロントガラスに看板の内容が映し出される。

「アイヤー、見ても居ないのに分かるアルかぁ」

「村長は見てるからね、ちょっと頭を覗いて見た」

「なるほどぉ……」

 東鈴の能力にも驚いたアルが、看板の内容にも驚いたアル。

―― 志願兵募集 一年任期 一時金5000両 月給700両   二年任期 一時金8000両 月給750両   三年任期 一時金10000両 月給800両   希望者に漢明国籍付与、ほかにも各種特典   任務内容:主に後方輸送任務 ――

「漢明軍のホームページにアクセスしたら、今日付けで同じのが出てる。うち以外にも、旧漢明構成国、外国にもネットで流し始めてるし」

「ほう……」

 昔の軍隊とは違うアル。

 うちの老婆婆(小鈴)のように100%天然ボディーでなければ、いくらでもハードやソフトを入れ替えて、昔なら半年はかかった新兵訓練は三日で済ませられるアル。

「まあ、たいていは周辺諸国への脅しでしょうけどね。マンチュリアは不景気だからけっこう応募者いるでしょーね」

「ああ、おそらくは……東鈴」

「なにぃ?」

「株式市況と政府投資、運輸状況、発電状況、軍の移動、周辺諸国の反応データ出して欲しいアル」

「もう、運転中なんですけどねえ」

 プータレながらもデータを出してくれる。

 心配したような状況ではないが、ちょっときな臭いと頭の奥で言う者があるアル。



「老婆婆、しばらく旅に出るアル」


 
 家に戻るって宣言すると、こめかみに膏薬を貼った顔を向けてくる老婆婆。

「もう、少しは落ち着いてくださいましよ。仕事の指図は外に出ていても出来るんでしょうけど、東鈴みたいなこともあります。気が付いてからでは遅いんでございますよ」

「ああ、分かってるアル」

「それに、もう小爺(シャオイェ)も若くないんですから跡継ぎのこともお考えにならないと」

「まだ、やっと六十アル」

「やれやれ、お供は……」

「儂、一人でいいアル」

「そうはいきません、そうだ鈴麗をお連れないさいまし」

「なんで鈴麗?」

「あの子なら、いい赤ちゃんを産みますよ」

「ムグ……(-_-;)」

「大丈夫、鈴麗は機械化率は10%未満ですから問題ありません」

「鈴麗はそういう対象ないアル」

「そうでございますかぁ、この老婆婆、五十も若ければねえ……なんでしたらお試しに(ㆆωㆆ) 」

「か、勘弁して欲しいアル(;'∀')」

「冗談でございますよ、とにかく鈴麗をおつれなさいませ」

「いや、それほど言うなら東鈴にしとくよ!」

「年寄りの言うことはお聞きなさいまし!」

「ああ、もう時間ないから、行くアルヨ!」

 
 なんとか振り切って駐車場に向かい、歩きながらハンベで東鈴に指示を飛ばす。


「ちょっと遅かったアルな」

「老婆婆に掴まってたのよ」

「小鈴なにか言ってたアルか?」

「真面目な顔してこう言ってた『東鈴、あんた世界最高水準のロボットだろ、〇〇能力はないのかい?』って」

「なに考えてんだろうねえ、あの老婆婆は……」

「真剣なのよ、あんたの代で孫家をつぶしたくないって」

「親父の代からいるからなあ……」

「じゃあ、出すよ」

「おお」

 飛行モードにした車は高度をとって南を目指したアル。

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
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  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
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  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
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 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
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  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・231『満要鎮PI史跡・2』

2024-07-08 12:01:05 | 小説4
・231

『満要鎮PI史跡・2』孫大人 




「あたしはPIなんか絶対しないからね」

「え、突然アルネ?」

「JQもJR西もPIされて、中身は児玉元帥やら劉宏大統領なわけでしょ。それって、単なるスペアボディーじゃん。ロボットは人間の道具じゃないとか言ってるけど、嘘っぱちじゃん」

「おお……( ゚Д゚)」

「悟兵のソウルが入ってきてさ、アルアル語喋ってるなんてゲロが出るし」

「アハハハ、そんな予定は無いアルヨ」

「え、だったらなんで電源入れたりしたのよ?」

「え、騒鈴が言ったアルヨ『ねえ、主電源入れてくださらないかしら』って」

「え、そうだった!?」

「そうアルヨ、ほんの三時間ほど前のことアルヨ」

「ナイナイ、ぜったい無い!」

「バックログ見てみるいいよ」

「無いもん、無いから見ないし」

 なんか子どもを相手にしてるみたいアル。でも面白いから深入りしないアル(^_^;)。どう言い返してやるか考えていると、ピックアップトラックがバンを引き連れて入ってきたアル。

「ん……なんだろ?」

 東鈴と二人、近所に越してきた引っ越しトラックに気を奪われる子供のようにシゲシゲと見る。バンの方からも作業員風やらスーツ姿やらジャンパー姿が下りてきてテキパキと作業に入る。

「あ、似てる……」

 東鈴が呟く通り、下ろしてきた物体は児玉元帥のPI記念碑に似ていた。

 ジャンパー姿が儂に気付いて笑顔でやってくる。

「やあ、孫大人じゃありませんか!?」

「え、あ、ああ……」

 思い出した、このジャンパーは満要鎮の村長の張ナントカだ。

「いやあ、PI記念碑はうちの観光資源なんですがね、昔のように人が集まりませんでしてねえ。まあ、大連の203高地やら万里の長城ほどには人気がありませんからね。こんど劉宏大統領の記念碑も合わせて、PI資料館なんかも併設しようと思いましてねえ(^▽^)。漢明の銀行からも資金を借りましてね、やっとここまでこぎつけたんです」

 なるほど、アイデア村長の村おこしと言ったところアル。

 記念碑のプレートには『瀋陽PI記念館』と表記されている。

 行政区的には満要鎮なのだが、政府は民間施設の表記にはうるさくない。

 千葉にあっても東京ディズニーランドと呼ぶしね。

 大勢の観光客を呼び込もうとしたら、何でもありでいいアルよ。

 記念碑は新品でピカピカ。日本人ならひいてしまうかもしれないが、ここらあたりはピカピカが好まれるアル。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 

 

 

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銀河太平記・230『満要鎮PI史跡・1』

2024-07-04 11:36:22 | 小説4
・230

『満要鎮PI史跡・1』孫大人 




 奉天南西15キロの満要鎮を目指している。


 唐黍も満足に穫れない瘦せた土地だが、先の満州戦争で児玉元帥が史上初のPIをやったことで名所になった。

 PIとはPerfect Instsll(パーフェクトインストール)の意味で、人の魂そのものをロボットに移植する技術だ。
 知識や行動様式をコピーしたソックリロボットはコピーした人間の行動や思考をトレースすることしかできない。従って、他のコンピューターによって、その思考や行動は予測されてしまう。

 司令官級の軍人や国家の意思決定に関わる最上級の政治家はコピーロボットでは務まらない。完全に読まれてしまうからだ。

 それに、ソウルや魂と呼ばれるものをインストールすること自体に大方の人間は違和感を持っている。

 ソウルを移植し続ければ、人間は永遠に生き続けることができる……ということになる。その気持ち悪さに人間は耐えられない。
 長期の宇宙旅行では、食料供給をレプリケーターに頼っている。レプリケーターは、どんな有機物でも分子にまで分解し、それを再構築して食品や飲料水を造る。つまり、自分たちの排泄物や死体からでも作れるわけで、その気持ち悪さを嫌って、惑星航路船などは、かなりの船内スペースをリアルの食糧庫に充てている。
 将来、パルステクノロジーが進化して恒星間航行が可能になった時はレプリケーターに頼らざるを得なくなるはずなのに、そのことに思いをいたす人間は少ない。

 児玉元帥をPIしたJQは、先年寿命が来て朝霞谷で眠っている。あくまで軍人児玉元帥としてなのだが、元がカルチェタランの舞姫。最近では『朝霞谷の眠れる森の美女』とか呼ばれている。いまのボディーは……おっと、我が親友児玉元帥の最大の秘密。たとえ、ポンコツ道路を移動中の回想としても控えておこう。

「悟兵、そろそろ着くよ」

「え……ああ、東鈴の運転がうまいんでつい居眠ってしまったアル」

「フフ、よく言うよ、脳波は起きてる時と変わらなかったわよ」

「え、モニタリングしてたアルか!?」

「してないわよ、しなくてもダダモレ」

「油断ならないアル、プラグインしたアルか(;'∀')?」

 慌てて首の後ろを探る。

「しないわよ。そんなことしなくても分かるくらいにあちこちの筋肉ピクピクしてたし」

「え、筋肉ピクピクアルか(;'∀')?」

「ほら、こんな感じ」

 フロントガラスに筋電図が現われたアル! グラフのこぎりの歯みたいアル!

「うう……ん……これ、10倍にしてないアルか?」

「とんでもない、20倍よ」

「20倍……ほとんど平常値アルよ」

「孫企業集団の總經理(ヅォン ヂィン リィー)でしょ、どこで情報読まれてるか分からないから気を付けるアルね」

「お、おうアル」

「さ、着いた。車、駐車場にまわすから先に行っといて」

「おう」


 久々に来た満要鎮の記念碑は緑青が噴いていたが、近づいて現れたホログラムは生々しい。


 胸のアーマーを撃ち抜かれた元帥にJQが覆いかぶさるようにして様態をチェックしている。

「お、俺のソウルを……ダウンロードしろ」
「ソウルをダウンロードしたら、死んでしまう」
「このままでも、俺は……十分と持たない、や、やってくれ!」
「分かった」

 JQは両手で元帥のこめかみを挟む。微弱な電流が流れて、元帥の脳みその保全を図ろうとする。

「ロボット法なんて無視しろ……か、かかれ」
「死んでも知らないから……」

 十秒ほどでPIし終わると、立ち上がってJQは児玉元帥として宣言する。

「ここからは、わたしが指揮をとる」
 
 副官のヨイチは児玉司令の死亡を確認して命令を復唱する。

「『ここからは、わたしが指揮をとる』全部隊に伝達いたします」


 このPI宣言で終わるはずが、続きがあった。


 JQがジェネレーターを放電させて、元帥の遺骸を焼いて灰になるところまでをリアルに再現している。

 ちょっと趣味が悪いと思ったアル。



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・229『騒東鈴』

2024-06-30 11:57:12 | 小説4
・229

『騒東鈴』孫大人 




 ブ~~~~~~ン


 主電源を入れると、蚊の鳴くような起動音がしてJR東の目玉がクルクル回る。目を閉じているので目蓋がグリグリするだけなんだが、これを目蓋が開いた状態でやられると、ちょっとシュールだろう。

 ウィーーーーン

 カプセルが開くと、スチームアイロンの残り湯を捨てた程度の蒸気が漏れる。JRの生体組織を守るために還流していた蒸気が解放される音だ。

 キューーコロコロコロ……

 続いて、育ち盛りの子どもがお腹を減らした時のような音がする。休眠していた内臓が働きだしたんだ。Jシリーズのロボットの生体組織は人間同様の食物摂取で維持されている。モスボールが解かれると、その生体組織が急速に働きを取り戻す。

「老けましたね、マスター」

「ああ、かれこれ三十年ぶりだからな。きみは相変わらずだ」

「生体組織の加齢処理をしますか?」

「いいや、これでいいアルヨ」

「おお、懐かしい……マスターのアルアル言葉。緊張した時とか、なにか誤魔化したいときにアルアル語になるんですよね」

「うるさいアルヨ、直すアル。なんで、いま、起動したアルか?」

「なにかプログラムされていたっぽいのですが、分かりません」

「ええと……とりあえず、なにか身につけようか」

 タッチパネルを押してカプセルの下に格納されている衣装ラックを出してやる。

「え……ああ、こういう時は恥ずかしがらなきゃいけないんですよね……あ、ハ、ズ、カ、シ、イ」

「なんか、おざなりアル」

「まだ情緒表現のデータベースが起動しきれていないので……」

「よっこいしょ……」

 人間らしい掛け声をかけてカプセルから出てくるJR東。

 プ~~~~~~

「あ、思わず排気してしまった」

「早く、服着るアルヨ(''◇'')!」

「ハイ、アルヨ('◇')ゞ」

「おちょくるなぁ! アルヨ(^_^;)!」


 カジュアルなジーンズとブルゾンを着たJR東を真カルチェタランに連れていき飯を食わせる。


「總經理(ヅォン ヂィン リィー)、この子を店で働かせるんでございますか?」

 支配人が耳もとで囁く。JR東の雰囲気は、高級店と言われる真カルチェタランにはそぐわない。

「え、あ、鈴麗の妹、行儀見習いで俺の秘書……アル」

「秘書ですか!?」

「あ……まあ、当分は仕事も見習いアル。今日は飯食いに来ただけアル」

「承知いたしました。ご注文は?」

「ええとね……これとあれと、それと、あれもこれも……」

 満漢全席かというくらいのオーダーをするJR東。

「JR東、おまえ、そんなキャラだったあるか? それとも、まだデータベースが起動しきれてないアルか?」

「ああ、なんか、これで固着してしまったかな(^_^;)、まあ、スペック的には問題ないから、ムシャムシャ」

「しかし、なんで今、起動したアルかぁ?」

「さあ……それより、ムシャムシャ、名前つけてよ、いちいちJR東じゃ言いにくいっしょ。わたしもヤダし、ハムハム……」

「グヌヌ、居続ける気マンマンアルなあ」

「こうやって目覚めたってことは意味があるんだろうからさ、ムシャムシャ……」

「グヌヌ……じゃあ、宋東鈴アル!」

「いいねえ、字で書くとどうかなぁ……ソウトンリン……」

 騒東鈴

 ハンベをモニターにして出てきた文字は「ソウ」の字が違うが、印象としてはピッタリアル。

「ねえ、203地点に行きたい」

 水餃子の最後の一個をかっさらうようにして口に放り込み、青島ビールで飲み下すと、指を立てて宣言する。

「203地点……」

「うん、あの203地点」

 203地点……それは、奉天包囲戦のさ中、児玉元帥がまさかの敵弾をくらって、肉体的に戦死した地点。人類史上初めてPIが成された記念の地だったアル。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・228『孫大人の倉庫』

2024-06-24 11:06:01 | 小説4
・228

『孫大人の倉庫』孫大人 




「やっぱり、ここじゃダメだったんですよ、小爺(シャオイェ)」

「ああ、もう言わんで欲しいアルヨ老婆婆(ラオポゥポゥ)」

「 昔からですよ、小爺はいつも大事なものを仕舞っては忘れてしまって『どこにいったんだ!?』と大騒ぎするんですからね」

「隠したのは確かだけど、忘れたわけじゃないアルヨ。分かってるだろ老婆婆?」

「ほんとうに大事なものなら、この小鈴にお頼みなさい。もう閉めますよぉ小爺」

「おまえはもう帰っていいよ、俺は、もうしばらく見ていくアルヨ」

「そうですか、じゃあ、晩ご飯までには帰ってくるんですよ小爺」

「ああ、お前も気を付けるアルヨ、老婆婆」

「はい、じゃあ、鍵お願いしますよ小爺」

 老婆婆は皺くちゃの小さな手で俺のでかい手を包むようにして鍵を渡し、念入りに二回揺すって階段を上って行く。

「家まで見届けておくれ鈴麗(リンレイ)」

「お一人になりますが……總經理(ヅォン ヂィン リィー)?」

「ああ、もう少しここにいるよ」

「では、直近の警衛を一人まわしておきます」

 有能な秘書は、護衛の手配を一瞬で済ますと、孫家でただ一人生身の老婆婆の見送りに行った。

 さて、一人になって見ると、このカルチェタランは広い。

 隣接するビルの地下も買い取って、延べ輿床面積は400平米を超える。

 グランマがここを畳むと聞いて、即金で買ったのは、ついこないだという気がするが、もう四半世紀以上も昔のことだ。
 
 満州戦争で奉天が灰燼に帰すのは目に見えていた。

 できることなら、北大街全部を保全して守りたかったが、このカルチェタランを含む奉天物産公司ビルと隣のビルを買い取って保全するのが精いっぱいだった。

 戦後、一ブロック先に別のビルを建てて真カルチェタランとして営業、それ以来ここはモスボール状態で法的にはただの倉庫だ。戦後、登記するのに役人に見せたとき「これは高級風俗店ですよ、孫大人」と言われたが「カルチェタランは文化財アルヨ」と、日漢双方の学者の鑑定書を見せて事なきを得た。
 じっさい、真カルチェタランは、季節ごとにここから持ち出した備品で模様替えをやっている。

 ここの番人は老婆婆の小鈴に任せた。

 小鈴は父の代からの使用人で、若いころは孫家の家政を取り仕切り、俺が生まれてからは乳母を兼ねてくれていた。だから、小鈴が管理する物件は世間からも身内からも、孫悟兵のガラクタ番だと思われていた。

 小鈴が番をしてくれているうちはJRは無事だった。

 しかし、戦後二年目に小鈴が体を壊して、それ以来番頭たちの勧めもあって、ここの管理と警備はAIとロボットに任せるようになった。

 そして、まんまとJRを盗まれてしまった。

 気づいたのは劉宏大統領がPI(パーフェクトインストール)をして西之島を訪れた時だ。大統領はプールの事故で心停止した時に秘書の王春華にPIした。そのことは知っていたが、それがJRであるとは知らなかった。奉天に立ち寄る度に倉庫のことは確認していたからな。

 未練たらしいのだが、もう一度バックヤードに入ってみる。

 Aブロックには季節ごとの什器が保管され、奥のBブロックにはカルチェタランで踊り子をやっていたロボットたちがモスボールされている。

 そのモスボールの中央に佇立しているのがJR。

 JRは二体ある、JR西とJR東。

 なんだか昔の日本の鉄道のようだが、造った敷島教授のラボが西と東にあったことに由来しているかららしい。俺が付けるならJR悟とJR兵だ。

 盗まれたのは西の方だ。

 巧妙な盗まれ方をしたので、つい最近まで気づかなかった。

 なんせ、ボディーはオリジナルのままでコアだけが汎用品と入れ換えられている。コア以外はオリジナルだから電源を切ったモスボールの状態では区別がつかない。

 JR東は演舞集団北大街を作った時に解凍したんだが、演舞集団を休止するときに再びモスボールした。

 そのモスボールしたJR東の口が動いた。

「ねえ、主電源入れてくださらないかしら」

 ちょっとビックリしたアル。

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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