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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!78『父の部屋』

2024-12-01 08:54:35 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
78『父の部屋』 




 おまえはコメンテーターか!? アバター貸してノウノウトしてんじゃねえ! グチとか評論ばっかでwwwwwwww 口ばっか! 偽善の小悪魔! こんなんじゃまた落ちるぞ艸! ヤーイ落第生! 小悪魔の面汚し! こっち向くな! ちゃんとやれ! wwwwwwwww!

 久々に小悪魔スマホを開いたら、アホな小悪魔やら地獄の役立たずどもから、いっぱいコメントが入ってやがる! 

 ぜんぶ削除!

 マユは拓美にアバター貸して、美優の中に入ってっけど、ノウノウとしてるわけじゃねえぞヽ(`Д´)ノ。

 タカの知れた小悪魔の力だけどよ、マユは美優の体の中で必死にガン細胞と戦ってんだぞ!

 最初はよ、一週間だけ美優の体を元気にしてやって、ちっとは楽しかったって、指の先ほど思わせられたらって気持ちだったぜ。

 でもよ、自分の事やんのにも十分な時間がねえってのに、道端で酔いつぶれてる黒羽Dを助けやがった。そんで、自分の中で眠ってた黒羽Dへの想いに火が点けちまいやがった。やることなすこと天使みてえに飛躍してやがって、こいつバカじゃねえかって思うけどよ。

 なんかいじらしい。

 今日も美優は半日、モニター越しに黒羽の仕事ぶりを楽しそうに見てやがる。楽しいくせに涙流しながらな。あと一週間もねえ命なのによ……このまま逝っちまったら、鬼になるんじゃねえか? 下手すりゃ、サンチャゴみてえに、じっと座って目の前のハエも追えねえ廃人とかな。

 そんなのは小悪魔としても耐えられねえ。

 マユにできることは、美優の体の中でガン細胞を眠らせ、衰えた美優の体にエネルギーを与えることだけだ。そして、それは、あと6日と4時間で切れちまう。

 マユは、美優のガン細胞を壊しにかかった。ただ小悪魔の力じゃ、一日に1000個ほどのガン細胞を殺すことしかできねえ。ガン細胞は少なく見積もっても数億個ありやがる。人は37兆2000万個の細胞でできてやがる。一日に1000個の破壊じゃ焼け石に水なんだけどよ。


「ねえ、お母さん。今夜からうちに黒羽さん下宿させてあげちゃいけないかしら」


 美優は、AKRの事務所から帰ってきて、マダムの手が空くのを待って切り出しやがった。

「下宿……?」

「そう。お父さんの部屋……ダメ?」

 マダムは数秒目を丸くして、考え、そして結論を出しやがった。

「いいわよ。わたしたちも、お父さんのこと、そろそろ整理しなくっちゃいけない時期かもしれないしね」

 親父は美優が小学校の時にガンで亡くなってやがる。会社の定期検診でひっかって、入院し、亡くなるまでは半年しかなかった。親父は商社の営業マンで、しょっちゅう海外に出張してやがった。だから親父との思い出は、母子ともども並の家庭の1/10ほどしかねえ。それで思い出を大切にするために、親父の部屋は生前のままにしてあるんだぜ。

「こんなことに未練もってたから……」

 亭主の部屋のドアを開けながら、マダムがつぶやいた。

「なに……?」

「ううん、なんでも……」

 親父は、あまり片づけ上手じゃねえ。だから、親父が最後に部屋を使った散らかしようを維持しながら掃除をするのは大変だった。でも美優は、そのぶん部屋の中にあるものは、全て把握していた……つもりでいやがった。


 それは、机の上のドロシー・ゲイルの胸像を持ち上げた時に気がついた。


 マユが、ちょっとビックリしたことが美優に影響したのかもしれねえ。そのドロシー・ゲイルの胸像は、マユがフェアリーテールの世界で別れてきたドロシーにそっくりだったぜ。

「お母さん、このドロシーの台座の底……」

「なに……?」

「この数字……」

「ああ、シリアルナンバーよ」

 母は、146/200を見て興味を失った。

「ちがうよ、このOZのOの中の数字よ」

 そこには、ロゴやシリアルと同じ金色で19851010と書いてあった。

「……これ、お父さんと結婚した日付だわ……どうして、こんなところに」

「なにかの暗証番号……じゃない?」

「カードの暗証番号にしては、長い……」


 マユは、美優の記憶をちょっと刺激してやったぞ。


「あ、ひょっとして……」

 美優は、親父が使っていたパソコンのスイッチを入れた。

「これよ、きっと……」
 
 デスクトップのファイルに暗証番号を入れなければ開けないものが一つだけあった。それが、まさに8桁だったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!77『モニターに釘付けだったぞ』

2024-11-30 08:29:52 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
77『モニターに釘付けだったぞ』 




 店にもどると、マダムがなにか聞きたげだったけど「楽しかった(^▽^)」とだけ言って、事務所に戻る黒羽Dを追いかけてエレベーター。黒羽Dは稽古場のある4Fで降りやがるけど、美優はそのまま最上階の会長室だぞ。

「失礼しま~す……」

 会長室に人の気配はなかったけど、モニターが降りていたんで、美優はコントローラーを手にとって起動ボタンを押す。

 メニュー画面が出てくると、ユーザー名の下に「MITSURU」と「MIYU」が出てくるんで、迷わず「MIYU」選ぶ。設定・フォト・ミュ-ジック・ビデオとメニューが並び、ビデオの下に「スタジオカメラ」が出てきたぜ。

 〇ボタンを押すと、ブースから見たスタジオの全景が見える。右のスティックでカメラが上下左右に、左スティックでカメラが移動する。不用意に動かすとダンスレッスン中のメンバーの子のお尻にピントが合っちまった(^へ^;)。慌てて右スティックを押し込むとオートフォローになって、カメラの方向を変えてもカメラはその子のお尻を追いかけたままになりやがる(^_^;)。

 Xボタンを押すと、メンバーは替わるけど同じお尻だぜ。

「もう、こんなのじゃなくって……」

「R1ボタン」

「R1……」

 声に従ってR1ボタンを押すと胸のアップ……!?

「それ、服部八重。イイカタチしてんだろう」

 そこで気づいた。いつの間にか、会長が後ろに立っていやがる。

「もう、会長さん、こんなことして喜んでるんですか!?」

「そりゃ、美優ちゃんが勝手に操作した結果だよ。まあ、そんな顔しないで、△ボタンで、メニューを呼んで……そう。で、操作クラシック……ね、それでカメラがアナログで動かせるだろう」

 しばらくカメラを動かしていると慣れてきた。

 改めて全景にすると、メンバーやスタッフの熱が伝わってくる。


―― 特急電車、準急停車と勘違いして、ボクはホームで吹き飛ばされた♫ 二回転ショック!ショック! 手にした花束、コスモストルネード! ――


 歌詞に沿って、旋回二回転……したところで、振り付けの春まゆみの声が飛びやがる。

「堀部やえ、あんた切れはいいんだけど力みすぎ。敵討ちじゃないんだからね。小野寺あんたドヤ顔しない。みんな全体にカタイよ。急に強い風に吹かれて、ビックリ、そして、ちょい困り顔のモエ~って一瞬だよ。あとは、パンチと切れ。萌だけじゃ、オモクロには勝てないからね。はい、もう一度サビの前から!」

「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」

 と、みんなで返事をしやがって、また延々とレッスンは続く。そしていつしかカメラは、後ろでヘッドセット付けた黒羽に固定されたぜ。

 軽くリズムに乗りながら、黒羽は前面の鏡に映るメンバーのカメラ写りをチェック。時々立ち位置を変えて観客のあらゆる視点を試していく。そしてモニターに映るメンバーのカメラ写りもチェック。そして常に黒羽の横に付いている専属ADに指示を与えていきやがる。

 美優は、もっと真剣な顔をした黒羽を想像してやがったけど、なんだか文化祭の前日に出し物の準備をしているヤリタガリの男子みてえに無邪気だ。

「意外かい?」

 それを見透かしたみてえに、会長はエビせんべいを差し出した。一枚もらうと意外においしかったぞ。

「もっと真剣な顔してやってるかと思いました……」

「真剣だよ。真剣に遊んでんの。そりゃ、歌や振りを最初に覚えるときは真剣一本だけどね。覚えちゃったら遊ぶ。オレたちエンタメは観てる人に楽しんでもらってナンボだからね。いかにステキに遊べるか、それを黒羽は探ってんだ」

 そういう会長も嬉しそうにエビせんべいをかじってやがる。その姿はガキ大将そのものだぜ。

 そのガキ大将と並んで、美優は日が傾くまでモニターに釘付けだったぞ。


 マユは、美優の中で腕組みして、美優の心が少しずつ変化していっているように感じたぞ。


 美優の命は、あと6日と4時間になっていやがった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!76『ランチデート』

2024-11-29 07:05:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
76『ランチデート』 




 美優は一週間後に死が迫っている黒羽の親父のために黒羽の恋人役を買って出やがった……いや……ええとぉ、親父の願いを重荷に感じて、仕事に手が着かなくなった黒羽のため?……それとも、美優自身一週間と限られた時間の中で、精一杯恋の真似事をしてみたかったから?

 マダムも店にもどってから同じことを聞きやがった。母親としては当然だよな。

「わたしは、一週間後には死んでしまう。だから、好きなことをやる。それだけ……なぜとか、どうしてか、なんて理由を考えている時間はわたしには無いの」

 美優は店の開店準備をしながら、それだけを答えやがった。


 昼をちょっと過ぎて、黒羽が美優を食事に誘いに来やがった。


 タクシーで10分ばかり行った、こぢんまりした品の良いフランス料理の店に二人で出かけやがる。

「ほんとはディナーに連れてきたいところなんだけどね。親父や新曲のことで時間がないから、ランチでごめん」

「いいのよ、その代わり、帰りはタクシーじゃなくて……」

「うん……?」

「事務所まで歩いて帰らない?」

「いいよぉ……」

「あら、どこにメール?」

「クララに『30分自主練』」

「ごめんなさい、レッスンに響いちゃった?」

「いやいや、メンバーたちで考える時間をつくらなきゃと思ってたとこだから『黒羽の悪い癖は、なんでも自分でやっちまうところだ』って会長にも言われてたしね。美優ちゃんは、それを知らしめるために神さまが遣わした天使かもしれない」

「ま、お、臆面もなく(''◇'')ゞ」

「可笑しい?」

「知りません!」

 フフフ、憑いてるのは天使じゃなくて悪魔なんだぞぉ、小悪魔だけどな(≖͈́ㅂ≖͈̀ ) 。

 ランチとは言え、なかなかのもんだ。A-5ランク特選牛フィレ肉のグリル トリュフの香るソースをメインに、スープとスパーリングワイン。パンはできたてのものからチョイス。バターとオリ-ブオイルが付いていて、しっとりと食える。ゆったりと風を感じるので首を向けると、テラス越しにお堀が見えた。

 急いでというわりには、黒羽は40分以上かけやがった。美優は、もう食後のコーヒーに手を伸ばしてやがる。

「もっと、ゆっくりすればいいのに」

「アハハ、バイトの子が休んだときなんて、お母さんと交代で、お昼なんか5分ですましちゃう。やっぱり癖がでちゃうかな(^_^;)」

「店も、なかなか大変なんだな」

 出かける前、母が以前バイトをやってくれていたサキちゃんてのに電話してるのに気づいてやがる。美優の一週間を自由にしてやろうという心遣い……気がつかないふりをしてやがるけど、出ちまうんだよなぁ、サキちゃんが間に合うのは明日からだしな。


 帰り道は少し遠回りをしてお堀端を歩きやがる。
 
 美優は喋りっぱなしだったぜ(^〇^)。


 最初は身上調査みてえだ。ヒカリプロに入るまではどうしていたか? 学校じゃどんな子だった? 小さいころは左利きだった? いつまでおねしょしてた? いままでで一番手のかかったタレントは? テレビ局のお弁当って? 上着を着る時は右左どっちから手を通す? 新聞は読んでます? お父さんと妹さんの思い出は? 通販はアマゾン派?楽天派? 神田祭好きですか? 幽霊って信じます? 手を組んだら左右の親指どっちが上に来ます? 自分の鼻は大きい方だと思います? 22世紀まで生きたいと思います?

 なんだか手当たり次第で、会話が途切れたらどうしようと緊張していやがる。

 黒羽Dは、おかしくなってきやがった。小学校の時の靴のサイズを左右別々に聞いてきたときには思わず笑ってやがる。

「ハハハ、なんだか、質問ばかりだな」

「だって、デートなんてしたことないもの。それに……」

「それに?」

「婚約者としては、いろんなこと知っとかなきゃ、黒羽さんのこと」

「婚約者に黒羽さんはないだろう」

「そ、そうね……え、英二さん(*ノωノ)」

「さん抜きで言ってみ」

「そ、そんな……じゃ、わたしのことも美優って呼んでください」

「言えないことはないけど、お互い不自然だな……ま、しばらくは、さん・ちゃん付けでいいんじゃない」

 昼下がりの街は、昼の休憩時間が終わったのだろう、人影がまばらになってきた。

「英二さん」

 下りの階段になったところで美優が声をかけた。

「うん?」

 黒羽が振り返ると、そこに美優の顔があった。ほんの数センチの隔たりで、目をつぶった美優の顔がせまってきてやがる。

「オット……」

 そう言いかけて、二人のクチビルが重なってしまった。

 階段の段差を利用して、美優が体を預けにきやがったんだ。そうしなければ、二人の身長差ではクチビルは重ならねえ。

「美優ちゃん……」

「恋人同士、お互いのクチビルぐらいは知っておかなきゃ」

「大胆だね……」

 黒羽は美優の大胆さへの驚きに愛おしさが付いてきたのに、自身驚いてやがる。

「……この先は進入禁止」

 黒羽のつぶやきに、美優の心は、トキメキとガッカリが一度に来た。

「道に迷ったな、この先進入禁止。大通りに出て、やっぱりタクシーにしよう」
 
 黒羽はディレクターの顔になって、道を戻り始めやがった……。




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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!75『突然の婚約発表』

2024-11-28 08:36:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
75『突然の婚約発表』 





「だからあ、もう、みんな黒羽さんに手を出してはいけません!」

「ちょっと、美優(ᗩꙍᗩ)!!」

 と、マダム。

「ちょっと美優ちゃん……」
 
 黒羽は、一度美優を廊下に出しやがる。

「これは、あくまでオヤジを納得させるための……バーチャルなんだから」

「たとえそうでも、その気になっておかなきゃお父さんは気づいてしまうわ。病人は、そのへんの勘は鋭いのよ。わたしも、ついさっき、こないだまでは、そうだったから、よく分かるの。決めたからには覚悟して」

「美優、どうすんのよ!? 大っぴらにしてしたりして!」

 マダムは、娘の爆弾発言を問いただそうと、廊下に出てきた。メンバーの矢頭萌とかもくっついてきやがる。ビル中に騒ぎが広がりそうなんで、黒羽Dは、慌ててみんなをスタジオにもどそうとしやがったけど、美優はその上をいきやがる。

「AKRは、恋愛禁止になってますけどぉ!。密かに黒羽さんに心寄せてる人がいちゃいけないので、宣言しときます! この英二さんは……」

――売約済み――

 いつのまに用意したのか、ロ-ザンヌの(売約済み)のシールを、黒羽の胸や背中、おでこにも貼り付けやがった(^_^;)。

「「「「「「「「「「キャー、ウワー!」」」」」」」」」」

 歓声があがったぜい。

「結婚式はいつ!?」

「告白は、やっぱ黒羽さんから!?」

「シッ、シッ、これからは、黒羽さんの半径50センチ以上寄っちゃいけないからね。50センチ以内は婚約者のエリアだからね!」

 クララが、通せんぼをしやがる。

「って、いうか、クララさん、その距離超えてるしい」

 萌が、くちびるを尖らせる。

「わたしは、親衛隊長だからいいの!」

「「「「「ずるい~~~~!」」」」」

 アハハハ、ひとしきり騒ぎは収まらねえ。

「……婚約指輪は、まだなんですかぁ(꒪▿꒪)*?」

 知井子が静かに聞きやがる。

「婚約指輪」という言葉は刺激的だぜぃ。


 ジー…………(⚭-⚭(⚭-⚭(⚭-⚭(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)⚭-⚭)⚭-⚭)⚭-⚭)


 47人のメンバーとスタッフ、そんで母親であるマダムの視線が、美優の左手に集中しやがった。

「あ、あの、その……ついさっき婚約したばっかで、そういうのまだなんです……アハハ(#^_^#)」

 美優は、顔を赤らめ、眉を八の字にして頭を掻きやがる。

「ワー!」「そんなの!」「信じらんない!」「大の男があ!」「なにしてんの!」

 と、またもかしましい。

「いや、だから、それはね……」

 と、黒羽が言い訳しようとすると、黒羽のスマホが鳴ったぞ。

「はい、黒羽……あ、会長……はい、今すぐ行きます。オレ会長室行ってくるから、みんなはレッスン。よろしく、まゆみ(振付師)さん」

 パンパン!

「はい。さあ、あんたたちがんばるのよ!」

 春まゆみが手を叩いて、やっとみんなを集中させる。なんか、落ち着きのねえ小学一年生みてえだ。

「マダム、美優ちゃん、いっしょに来て」

「え?」

「会長が、二人にもいっしょにってことなんで」

「「え?」」


「黒羽、おまえは、こと自分に関してはカラッキシなんだからなぁ。ホレ」


 会長は、小さな小箱を投げてよこしやがった。


「……これは?」

「グリコのオマケじゃねえぞ。正真正銘の婚約指輪」

「会長……」

「会長さん……」

「急場のことなんで、筋向かいの宝飾堂のありあわせ。でも、モノホンだから……美優ちゃん、マダム、こんな朴念仁だけどよろしく。こいつのお父さんのために……」

「会長……!?」

「夕べは、ずいぶん酔っぱらって……見かねた美優ちゃんが面倒みてくれた……この界隈のことは、業界のことと同じくらいの地獄耳。それに妹さんから電話もあったしな」

「由美子のやつが……!」

「怒ってやるなって……親孝行したいころには親は無しってな。それに『コスモストルネード』発表までは、この朴念仁にもしっかりしてもらわなっくちゃ困るしな」

「ありがとうございます。会長!」

「お礼言うならなら、美優ちゃんだ。かりそめにも10歳以上も年上の婚約者引き受けてくれたんだからな」

「会長さん」

「なんだい?」

「あの……レッスン見てちゃいけませんか。婚約者として英二さんの仕事ぶり見ておきたいんです」

「それは断る。発表までは非公開だ」

「あの、ブースからでもかまわないんです。お父さんにちゃんと婚約者と思ってもらうためには、英二さんの仕事見といたほうがいいと思うんです」

「だめだ、スタジオからブースは丸見えだ……まあ……でも、この部屋のモニターならいいよ」
 
 会長が、机のボタンを押すと、天井から大きなモニターが降りてきた。

「ほら、このゲ-ム機のコントローラーで操作できる」

 モニターにスタジオの全景が映し出された。

「あとは、触っているうちに分かる。じゃ、美優ちゃん、よろしく」

 会長は、ホウキとちり取りを持ってドアに向かった。日課の掃除にいきやがった。さっきやったばかりなのにな(^_^;)。

「あ、それと、適当に時間作ってデートしとけ、リアリティーが出るようにな」

 そう言い残し、ホウキを振って出て行きやがった。

「じゃ、オレも仕事にかかる。あ……昼飯いっしょに食べよう。昼に店に迎えにいくよ」

「は、はい(;'∀')」

 マユは、美優のトキメキを、どう受け止めていいのか分からなくなってきたぜ……。




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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!74『期間限定の恋人・2』

2024-11-27 10:33:23 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
74『期間限定の恋人・2』 






「一週間の期間限定……それでよければ」


「美優ちゃん……(⊙⊙) 」

「聞いて」

 黒羽の言葉をさえぎって続けやがる。心臓はバックンバックンなのに、メチャクチャ落ち着いて見えるぜ。大した奴だぜ美優ってよ。

「芸能プロって夢を売るお仕事でしょ。うちもそう、ブティックは女の子に夢を売るの。ガーリーファッションとかゴスロリとか……うちは、あんまり大仰なロリータファッションにならないように気をつけてる。そのまんまご近所歩いても違和感ない程度に。田舎のおばあちゃんとかが来ても目を回すようなオーバーロリータにならないようにね」

「ああ、そうだね。そのセンスの良さと、お母さんの商売の確かさで、うちも注文のほとんど、このロ-ザンヌだもんな」

「でしょ。商売の駆け引きではお母さんにかなわないけど、わたしだって……!」

 ガチャン!

 美優は、平静に言えたつもりだったが、振り向きざま、シンクに食器を投げ入れるように放り込んじまってカップを割ってしまいやがった。

「アッ……!」

 指を切っちまいやがった。

 心臓がバックンバックンだったんで、ケガの割には血が流れっちまう。

「だめだ、手を心臓よりも高く上げて。救急箱は、どこ!?」

 黒羽は十代のころADになって、下積みからHIKARIプロのチーフディレクターになった男だ。ちょっとしたケガの手当などはお手の物でやがるぜ。

「ありがとう……こんなオッチョコチョイじゃダメかな(-_-;)」

「気持ちは、嬉しいけどね」

「……黒羽さんじゃなく、お父さんに」

「あ……そうだね(^_^;)」

「わたしも、ひところは命が危ないって言われてた(本当は、見かけは元気だけど、一週間の命)でも、元気になって分かるの。お母さんや、友だちが気遣ってくれたことが。そのときは気づかなかったけど、わたしが元気になれたのは、そういうみんなの気持ち。お父さんにも必要よ、あとわずかなお命なら、なおさらのこと……それとも、わたしなんかじゃ黒羽さんには釣り合わない?」
 
 黒羽は、包帯を巻くのと同じ確かさで返事を返しやがる。

「そんなことは無いよ。高校時代はミス乃木坂学院にだって選ばれたじゃないか」

「え、そんなこと覚えていてくれてたんですか?」

「ああ、一時は、うちの事務所からスカウトしようかって、話が出たぐらいなんだから」

「ほんと!?」

「ああ、お母さんにキッパリ断られたけどね」


「そうだね、美優はオンチだし、運動神経も亀さんといい勝負だもんね」


「お母さん!?」「マダム!」

 母が、車のキーをチャラチャラいわせながら、リビングのドアのところに立っていやがる……。

「マダム……」

「黒羽さんが居て助かったわ。47着の衣装、わたし一人じゃ運べない」

「わたしが居るじゃない」

「美優に手伝ってもらったら、倍時間がかかる!」

「もう、そういうこと言う?」

 段ボール箱を三人で運びながらの会話。母の真意は分かっていた。残りの一週間、美優を気ままに過ごさせてやりてえんだ。

「黒羽さん、わたし、こう見えて、あちこちガタがきててね。一週間ほど店休もうかと思って」

「それは、すみません。無理な仕事させてしまって」

「で、この仕事がキリだから、徹夜したのよ。あ~眠い」

「だめよ、お母さん。いつも通りにしてなくっちゃ!」

「だって、美優……!」

 段ボール箱を運びながら親子が睨み合う。その両方の目が潤んでやがる。

「……どうかしました?」

 黒羽が脳天気に聞きやがる。

「バカな親を持つと……」
「バカな娘を持つと……」

 同じグチが、親子の口から同時に出やがった。


「みんな、新しいコスができたから、自分の名前を見て試着して」


 黒羽がそう言うと、メンバーのみんなが集まって、キャーキャー騒ぎ出しやがる。

「わたしと八重さんで配るから、順番に並んで!」

 クララが仕切りやがる。そんで新曲『コスモストルネード』への意気込みはすごいもんで、衣装をもらってマックスになりやがる。

「ちょっとお! みんな聞いてくださーい(>◇<)!」

 美優が叫んで、やっと静かになった。

 美優は宣言したぜ……!

「……わたしと黒羽さん、婚約しましたから!」

 え……えええ(*゚ロ゚)(*゚ロ゚)(*゚ロ゚) ( ゚Д゚)(゚ロ゚*)(゚ロ゚*) (*゚ロ゚)(*゚ロ゚)(*゚ロ゚) !?

 47人の驚愕に、アキバじゃ震度3の局所的地震が観測されちまったぜぃ(^_^;)

 
☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!73『期間限定の恋人・1』

2024-11-26 08:16:32 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
73『期間限定の恋人・1』 





 スズメの鳴き声で、半ば意識がもどってきた。

 ……いつもの朝だ。このスズメの泣き方で、おおよその時間がわかる。いつもなら、もう一群れのスズメたちがやってきて、ちょうど起きる時間になる……ちょっと変だ。

 黒羽は、音楽事務所のプロディユーサーをやってやがるんで、音感は並の人間よりも鋭い。スズメの鳴き声が微妙に違う……と感じやがった。


――そうか、友だち……いや、恋人でも連れてきたかな……スズメも、なかなかやる――


 おめでたい誤解は、コーヒーの香りで打ち消されやがったぜ(^▢^)/。

「え、このベッド……この部屋……?」

『黒羽さーん。もう起きて、朝ご飯できたから』

――この声は……?――

「おはよう!」

「ゲ(# ゚Д゚#)」

 明るい笑顔が視界に入って、慌てまくる黒羽D。マユが企んだわけじゃねえけど、めっちゃ面白れえ(^▭^)

「み、美優ちゃん……!」

「ハイ、おはようございます(^〇^)!」


「すまん、この通りだ!」


 朝食を前にして、黒羽は深々と頭を下げやがった。

「そんなのいいから、冷めないうちに。話は食べながらでいいわ」

「お母さんは……この状況……?」

「まだ帰ってない。黒羽さんのせいよ」

「ボクの?」

「正確には、HIKARIプロのね……五日で四十七人分の衣装。うちだから引き受けられたのよ」

「ああ、新曲の発表に間に合わせなきゃならないから……無理言った。ごめん」

「縫製にクレームついて、お母さん、とうとう泊まり込み……トーストお代わりする?」

「うん……ああ、すまない」

「そんな忙しいときに、チーフプロディユーサーが酔いつぶれていていいのかなあ……」

 オーブントースターに食パンを入れながら意地悪を言ってみやがった。たいした意地悪じゃねえけど、ツボを心得てやがる。可愛い顔して、こいつ小悪魔の才能があるぜ。

「いや、面目ない。ちょっと事情が……」

「黒羽さん。ほんとは恋人のとこに行けばよかったのに……」

 ム、なんちゅう切り返し!

「ゲホ、ゲホ、ゲホ……」

 黒羽は、派手にむせかりやがる。

「あ、ごめん。ひょっとして、まだナイショのことだった(;'∀')?」

「ナイショもなにも、恋人なんていないよ。このクソ忙しいHIKARIプロのプロディユーサーに、そんなヒマはないよ」

「でも、夕べは、さんざん言ってたわよ。わたしのこと妹さんと間違えて」

「え、あ、それは……」

「どーなのよ……」

 黒羽は観念して病院でのこと話しやがる。例の『恋人なら、もういる』なんてその場しのぎのウソの話をな。

「じゃ、お父さんは婚約者がいるって信じてるんだ……」

「ハッタリだってわかってるよ」

「だったら、なんで、あんなにヘベレケになっちゃうのよ」

「……だよな。でも無いものはしょうがない、今夜にでも正直に話すよ」

「でも、お父さんガッカリ……その……長くないんでしょ、お父さん?」

「そんなことまで、しゃべったのかオレ?」

「わたしも病人……だったから」

「そうだ、たしか、美優ちゃん入院してるんだよな」

「『だった』って言ったのよ。昨日退院しちゃった」

「そうか……それはおめでとう。元気になってなによりだ……オヤジは、あと一週間……なんか、他の方法で親孝行考えるよ……じゃ、オレそろそろ行くわ」

「やだぁ、黒羽さん、自分の家の感覚になってるでしょ。HIKARIプロはすぐそこだよ。まだ八時まわったばかりだし」

「いや、夕べはレッスン見てないからね。早く行ってスタジオの空気吸っとかなきゃ。クララなんか九時には、スタジオにやってくるからね」

 そう言うと、仕事の虫はコーヒーを一気のみして、上着を掴んだ。美優は、ときめく心を無意識に押さえ込みやがった。

「そうよね、うちのお母さん徹夜させるぐらい熱が入ってるんだもんね」

「ごめん、迷惑かけたね。落ち着いたら、お礼させてもらうよ」

 黒羽は、右袖に腕を入れながら、ドアに向かった。

 マユは、小指の先だけ美優の心臓を刺激したぞ。ラノベでいう「胸キュン」てやつだ。

 するとよ、美優の心は瞬間で沸騰しちまって、とんでもねえあぶくが浮かんできやがった!

「わたしが恋人になってあげようか」

「え……」

 左袖をぶら下げたまま、黒羽が振り返りやがる。


「一週間、期間限定の恋人……だけどね(*´꒳`*) 」




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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!72『黒羽Dを介抱する』

2024-11-25 08:06:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
72『黒羽Dを介抱する』 





 HIKARIプロの黒羽Dじゃねえか( ゚Д゚)!?

 あ、マユさん(;'∀')。

 ああ……ごめん美優。時どきマユの意識が表面に出てきちまう。今のは、酔っ払いが黒羽Dだって分かっちまったショックだ……まあ、適当にやっから(^▭^;)。

 は、はい。

 地下鉄に乗って帰らなかったら、美優は、こんなことはしなかったかもしれねえ。

「よっこいしょ!」

 おお!

 酔っぱらった黒羽ディレクターを、自分の家まで肩をかして連れてきちまいやがった。

 だいじょうぶかぁ?

 大人としての判断なら、たとえ知り合いでも、AKRの事務所は、すぐそこ。とても自分の足では歩けそうにない黒羽さんに一言二言声をかけて、事務所の人に来てもらっただろう。

「事務所の人に来てもらいましょうか、黒羽さん」

 実際、一度は、そうたずねたよ。

「いや、事務所には言わないでくれ……いや、大丈夫。しばらく休んだら……大丈夫……あ、美優ちゃんかぁ‎꜀( ꜆-ࡇ-)꜆ 」

 ああ……とても大丈夫そうじゃねえ。そんで、美優を見る目は、まるで高校時代の美優を見る目だぜ。美優も地下鉄の中で感覚が高校生に戻っていやがったしな、その相乗効果ってやつだ。

――知らねえぞぉ、面白ぇけどよ――

 美優の中でつぶやいたけど、今は美優の心には届かねえ。持ち前の親切心と、ちょっとした冒険心で飛躍してやがる。


 なんとか家に連れて行くと、母親の美智子が電話をしてきやがった。


 美優のあとを追いかけて帰宅するつもりでいやがったけど、AKRから請けた衣装の縫製でトラブルがあって、今夜は帰ってこられねえという内容だ。

「うん、わたしなら大丈夫。お母さんは明日の開店に間に合えばいいから」

『そう、じゃ、なるべく早く帰るから』

「うん、じゃ、バイビー……」

『ハハハ』

「なにがおかしいのよ?」

『バイビーなんて、何年ぶり……高校生にもどったみたいよ!』

「そんなことないよ、たまたまだよ、たまたま!」

 少しムキになって言やがる。電話の向こうの母は泣き笑いしてやがる。

 なんか微笑ましいぜ。

「じゃ、切るよ」
 
 美優は、携帯を切ると黒羽のために水を持っていきやがる。

「あ……」

 ソファーに寝かせていた黒羽の姿がなかったぜ。

「黒羽さーん……」

 声をひそめて呼ばわると、自分の部屋から気配がした。

「もう、黒羽さん。どこで寝てんですかぁ!」

 ふとんをめくると、黒羽はパンツ一丁になって『く』の字になっていやがる。美優のベッドの中でよぉ(''◇'')。

「きゃ」

 美優は、小さな悲鳴をあげて、そっとふとんをかけ直す。また黒羽は、ふとんをはね飛ばしやがる(^_^;)。

 そんなことを三回繰り返して、美優は、エアコンの暖房を切って、窓を少し開けた。冷気がサワっと入り込んで、黒羽は自分でふとんを胸までたぐりよせやがったぜ。

「黒羽さん……お水」

「す、すまん」

 まるで素面のように、黒羽さんは半身を起こし、おいしそうに水を飲み干した。ちょっとホッとして……なんでもないわ。

「あ、あの……」

「うん~?」

 黒羽さんは、うるさそうに返事をかえした。

「いいえ、なんでも……」

「言いたいことは、分かってる……ちゃんと彼女はいるんだ。ちゃんと婚約までしてんだからな……」

「え……( ゚Д゚)!?」

 面白ぇ、美優の頭にショックと混乱が一度にやってきやがったぜ(^△^;)

「だから、オヤジには頼むよ……週末までには『コスモストルネード』仕上げなきゃならないんだ。だから頼むよぉ、兄妹なんだからさ、な、由美子。いい子だからさ……」

「え、あ、ちょ、黒羽さん(><)」

 そう言って、美優の頭を乱暴に撫でると、スイッチが切れたように寝ちまいやがった。

「妹さんと間違えてんだ……酔っぱらい」

 ホッとして、ベッドの脇を見ると、服を脱ぎ散らかしてやがる。美優は複雑な気持ちで、たたんでやったぜ。

「黒羽さんの奥さんになる人って苦労……すりゃあ、いいのよ!」
 
 美優は、乱暴にドアを閉めやがった。

 おもしれえ展開になってきやがったぜ。
  


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!71『スパークと酔っ払い』

2024-11-24 07:30:53 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
71『スパークと酔っ払い』 





――人生のやり残しをやっつけるて、楽しいことばっかじゃねえんだぞ――

 マユは、美優の体の中で呟いた……。

 むろん、マユの呟きが美優に届くわけもねえ。マユの意識はほとんど美優に入れ替わっちまって、見ていることしかできなくなっちまうからな。

 
 美優は、一つ手前の地下鉄の駅でタクシーを降りやがった。
 

 急な思いつきだ。タクシーの窓から見える懐かしい街並み。その中にAKRの看板がチラホラ見えてきた。AKRはそのシアターまで、街の要所要所に看板やポスターを貼っていやがる。

 その一枚は『最初の制服』という新曲のコスを着た選抜メンバーが、女子高の新入生みたいに写っていて。数年前の高校生のころの自分と重なった。いろんなことに憧れていたあのころの美優にな……。

――そうだ、高校生のときの気分で家に帰ろう――

 そう思い立ってタクシーを止めた。

 そして、たった一駅だけど、高校生のころ通学に使っていた地下鉄に乗ることにしやがった。

 美優は、その一駅の間に時間を巻き戻しやがる。

 ほう、このあたりじゃセレブな乃木坂学院高校に通ってやがったんだ。ダンス部に所属して、コンクールの前は遅くまで練習……なかなかのやつだったんだな。

 あのころは部員も10人そこそこで泣かず飛ばずだったけど、今じゃ文化部の花形だった演劇部を追い越し、都の大会でも三位につける好成績ぶりみてえだ。

 あのころは学校自慢のリハーサル室なんか使えなくて、練習場所の確保に四苦八苦してやがった……でも、持ち前のマネジメント能力の高さで、美優は、いつも十分じゃねえけど、必要なだけの練習場所は確保してきやがった。

――充実してたなあ、あのころ――

 地下鉄の揺れが、懐かしく思い出を呼び覚ましてくれやがる。なんだか、マユまで時めいてきちまうぜ。

 キシ キシキシ キシィ

 カーブに差しかかると、独特の軋み音とともに、パンタグラフと架線がスパークして、瞬間ストロボみてえ。

 美優は、そのストロボが好きで、このカーブに差しかかると、持っていた携帯や文庫から目を離し、窓の外のストロボに目をやったもんだ。

 たまに、このストロボは、思わぬアイデアや思い出を閃かせてくれやがった。ダンスの振りが今ひとつ決まらないときも、このストロボでアイデアが浮かんだこともあったんだ。

 キシ キシキシ キシィ
 
――そうだ、あの振り付けは、自分のアイデアじゃなかった……そのころ、近所のビルにHIKARIプロが引っ越してきた。引っ越し挨拶に、近所の店にシアターの招待券が配られたんだ――

 公開レッスンを見に行った。

 春まゆみという振り付けの先生が厳しく教えていた。メンバーの一人が、なかなか振りを覚えられずに、袖に駆け込んで泣き出した。レッスンは、そんなことで中断されることもなく続けられたけど、わたしは泣き出した子に興味があった。こんな局面は、自分のクラブでもよくある。スタッフが、どう対応しているかが気になった。

 ディレクターが相手をしていた。若いみたいだけど、どこかオジサン。

「さあ、ゆっくり深呼吸して……」

 過呼吸になったその子を優しくハグし、クシャクシャになった髪を撫でながら、あまやかすでもなく、叱るでもなく、落ち着かせていた。

 後で黒羽というディレクターだということが分かった。ローザンヌは、小売りだけではなく、プロダクションなどの卸の仲介もやっていて、そういう仕事で、ときどき黒羽が店に来ることもあったし、母のアシスタントで大量の見本を運ぶこともあって、黒羽とは、いつか挨拶するぐらいの仲にはなっていた。

――いい人だなあ――

 その程度の気持ちは持っていたけど、淡い憧れ。ご近所の知り合いの域を超えるようなことはなかった。

 HIKARIプロについては、そんな思い出だけだったんだけど、その時思いついた振りは、無意識に見ていた春まゆみの振り付けを真似していたことに気づいた。落ち込んだ後輩を慰めたり元気づけたりするときは黒羽さんの口調になっていた。

 ストロボの余韻に浸っているうちに駅についてしまった。

 わたしは、あのころのように軽々と階段を駆け上がって出口に出た。

 目の端に出口のところで座り込んでいる酔っぱらいが見えた。よく見かける光景なので、少し速足になってシカトする。


 え、まさか!?


 酔っぱらいは……たった今思い出していた黒羽ディレクターだった……。
 



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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!70『秘密の注射』

2024-11-23 08:07:52 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
70『秘密の注射』 





 渡瀬ナースのマユは、当直のドクターを連れてきたぞ。

 ドクターは太っちょの若禿でチョビヒゲなんか生やして、見かけは立派なドクターだ。実は、近所の開業医のどら息子で、ハクを付けるためにだけ、この病院に勤めている食わせ物なんだけどよ、こういう人間の方が操りやすい。

――先生は日本一の名医ですのよ。この注射をしてあげれば、ノーベル賞だって夢じゃありませんことよ!――

 なんだか利恵の口調になっちまったけど、そう暗示をかけてやると、マユの差し出した注射器を持って病室まで付いてきやがった。

「オホン、この薬を注射すれば、死が訪れるまで、まったく健常者と同じように動くことができます……ええ、長年わたしが研究してきた成果です。末期ガンの患者さんの残された時間を、患者さんの意思で思う存分自由に生きてもらうための薬です……効き目の期間ですか……美優さんの命がつきるまで」

「どのくらいなんでしょうか?」

「……言ってもかまいませんか?」

「はい、精いっぱい生きたいですから!」

「……美優さんの命は、あと一週間です。きっちり168時間」

「ぜひ、お願いします……こんな寝たきりで……じわじわ死ぬのはいや」

 美優の言葉に、母の美智子も涙ぐんでうなづきやがった。

「では……きみ、クランケの腕を……」

 ドクターは、威厳を持ってナース渡瀬の姿をしたマユに命じやがる。マユは、おごそかに美優の袖をまくり、上腕に静脈注射用のゴムバンドをしたぞ。

「う……」

 美優は小さな声をあげた。

 このドクターは見かけ倒しなんで、注射はめちゃくちゃヘタクソで、かなり痛かった。元気だったら、美優は大きな悲鳴をあげていたところだったぜ。

「オホン、効き目が現れるのに二十分ほどかかります。起きあがれるようになったら、もう自由になさってけっこうです。では、残った一週間。思い残すことなく使ってください (。・ω´・。) 」

 もったいぶって言うと、名医らしく美優の手を握り、母の美智子に目礼をしやがった。

「ありがとうございました!」

 美智子のお礼を背中で聞いて、ドクターは渡瀬ナースの姿をしたマユを従えて、病室をあとにしやがった。
  

 マユは、いそいで更衣室にいき、ナースのユニホームを脱いだ。渡瀬ナースの姿は、消えかかっていたからな。


 あの注射は、ただのビタミン注射。本当は、マユ自身が美優の体の中に入り込んで、美優を死の間際までサポートするんだぞ。

 マユ本来のアバターは幽霊の拓美に貸してある。マユとクララを足して二で割ったアバターは、オモクロのオーディションまでは用がねえ。

 そこで、マユは魂というかエネルギーだけの存在になって、美優の体に入り込む。美優の体は衰弱が激しいんで、二十分ゆっくりかけて美優の体に入っていくってわけだ。

 十九分たったころ、吉田の同僚のナースが、遅れた日勤を終えて更衣室に入ってきやがった。

「……渡瀬さん!?」

 同僚は裸の吉田が消えていく瞬間を見ちまいやがった!

 胸騒ぎした同僚は、携帯で渡瀬に電話をしやがる。

 電話の向こうで、元気な吉田の声がしたので、安心して携帯を切ったけどな。


「お母さん、わたし元気になった!」


 美優は、嬉しい叫び声をあげて起きあがったぞ。

「よかったね、美優!」

「うん、一週間だけど、わたし一生分生きてやる!」

「これ、使いな。一週間自由に生きるのに十分な残高がある」

 美智子は、自分のゴールドカードを渡してやった。

「ありがとう、お母さん」

 美優は、もう二度と着ることがないと思っていたお気に入りのポロワンピースに着替えると、さっさと病院を出て行きやがった(^_^;)。

「とりあえず、自分の家に戻ろう(^▽^)/」

 そう独り言を言ってタクシーを拾った。

 タクシーは美優の心が乗り移ったみてえにウキウキとケツを振りながら走っていきやがる。

――言っとくけどよ、人生でやり残したことをやるのは、けして楽しいことばかりじゃねえんだぜ――


 小悪魔のマユは、美優の中で念を押したぞ……。



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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!69『病室の美優』

2024-11-22 07:27:50 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
69『病室の美優』 





「あら、渡瀬さん。今日はもう上がったんじゃないの?」

 病室に入ると、母親の美智子が驚きやがる。マユも驚いたけど顔には出さねえぞ。

 以前ロ-ザンヌで客として会ったときよりも十歳ほど老けて見えやがる。看病疲れなんだろうけどよ、自分が老けることで、少しでも娘の命をのばしてやりたい母心のようにも思えたぞ。

「ナースステーションにもどったら、このブローチ、ユーノー (Juno)って、ローマ神話の女性の結婚生活を守護する女神さまだって、ドクターに教わって……改めてお礼を……」

 そこまで言うと、渡瀬ナースは涙で言葉が詰まってしまった。マユ自身の心なのか、コピーしたナースの心の反応なのか分からなくなっちまう。

「お礼が言いたいのは、わたしの方よ……渡瀬さんは、わたしと同い年でしょ。その渡瀬さんが、結婚を間近にして、こんなにキラキラして……わたし、自分のことのように嬉しいのよ(⌒∇⌒)」

 やつれてはいるけど、美優は酸素マスクをずらし、透き通るような笑顔を返してきやがった。

「でも、疲れたんじゃない? この一週間、これにかかりっきりだったでしょ。わたし、よっぽど止めようと思ったんだけど、美優ちゃん、一生懸命だったし、お母さんも楽しそうに観てらっしゃったから……」

「うん……少しね。いよいよ酸素マスクなしじゃ、呼吸も苦しくなってきたけど。わたし……満足」

「『渡瀬さんにあげる』って言われたとき、びっくりしちゃった。そのとき、これがユーノーだって言われてたら、わたし泣いちゃってたわ」

「フフ……」

 美優は力無く、しかし、心から嬉しそうに笑ったぞ。

「そこまで言ったら、きっと渡瀬さん泣いちゃうだろうって……当たりだったわね。でも、もう泣かないで。美優もわたしも、渡瀬さんの笑顔が見たかったんだから」

「渡瀬さん……」

「うん?」

「側に来て……」

「え……?」

「目にきちゃったみたいなの……それ、彫り終えてから、物がが見えにくくって」
 
 美優は抗ガン剤を使わなかった。もう助からないことが分かってやがったし、抗ガン剤の副作用で髪の毛が抜けたりするのが嫌だったんだ。どうせ助からない命なら、少しでも女らしく逝きたかった。泣かせるやつだぜ。

「ほんと……渡瀬さん、ほんとにきれいよ。お母さんの言ってたこと、ホントだね」

「そうよ、恋の絶頂にいる女性は、一生で一番きれいになるのよ。もともと渡瀬さんはきれいな人だけどね」

「渡瀬さん……顔さわってもいい?」

「う、うん。いいわよ。こんなものでよければ、ご存分に」

 美優は、渡瀬ナースの頬に触れようと手を伸ばした……しかし、渡瀬ナースの顔の高さまで手を伸ばす力が出ない。

「……手が、上がらない(^_^;)」

「美優……!」

 母の美智子が、思わず立ち上がった。

「ちがうって、お母さん。ブローチ彫るのに腕使いすぎたから……」

 渡瀬ナースは美優の手を取って自分の頬に持っていきやがる。

「スベスベのツヤツヤだ……フフ、なんだか、赤ちゃんのお尻みたい……泣かないでよ渡瀬さん」

「う、うん」

「泣いたら、スベスベが分からなくなっちゃう……」

 美優は、一分足らずで渡瀬の顔から手を放した……もう、力が尽きてきやがるんだ。

 もう、明日からは寝たきりになりやがるだろ……渡瀬姿のマユは小悪魔の勘で、美優の命は一週間きっかりだとふんだぜ。

 マユは温かくも悲しい気持ちになっちまって、母の美智子にそっと言った。

「お母さん……」

「え……そんな薬があるの!?」

「ええ、命を延ばすことはできませんが、命をまっとうするまでは普通の元気でいられます」

「ぜひ、お願いします!」

「なにこそこそ話してんの……」

「「な、なんでも……!」」
 
 美智子と渡瀬ナースの声がそろったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!68『病院潜入』

2024-11-21 07:26:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
68『病院潜入』 





 病院の駐車場に入ると、マユはちょっとした魔法をかけた。

 黒羽Dがドアを閉める寸前に、ナビのスイッチを切り忘れるようにな。

「あれ、切り忘れか……」

 で、ナビのスイッチを切り直しているうちに、ポチの姿のマユは、後部座席から抜けだして監視カメラの位置を確認した。

 豆柴とはいえ病院に犬が入り込んだら騒ぎになるからな。カメラの死角を拾いながら、黒羽の後をつけていったぜ。

 夜間受付で、黒羽は父の病室を尋ねやがる。その瞬間、受付のガードマンは監視カメラのモニターから目を離す。その隙に、ロビーの自販機の横に隠れる。病室はガードマンが黒羽に教えていたのを覚えているんで問題はねえ。

 あとはポチの姿をなんとかするだけだ……そこに運良く日勤空けのナースが更衣室に向かうのに出くわしたぜ。

 マユはナースの後をつけ、更衣室でそのナースに化けた。むろんナース服は、そのナースが着替えたものを拝借した。ナースの胸には渡瀬の名札がついていたぞ。


 病室は五階にある。


 エレベーターに乗っているうちに化けたナースの記憶の断片が浮かび上がった……吉永美優という若い患者のことが気がかりなようだぜ。骨肉腫が術後に全身に転移し、もう手の打ちようが無え、余命は黒羽のジジイ同様に一週間ほど。美優はナースと同い年みてえだ。

「おめでとう……」

 そう言って、美優はナースにブローチをくれた。死期を悟った美優が、同い年のナースの幸せを願って、少しずつ病床で作ったものみてえだ。

「あげる。幸せになってね」

 特定の患者に感情移入はしねえのが、この職業の鉄則みてえだが、さすがに渡瀬ナースはグッときやがった。そのブローチが、まだポケットに入っていやがる。

 エレベーターが上昇しはじめたときにそのブローチを出してみた。ユーノー (Juno)の横顔を彫り込んだブローチ。
 ユーノーは、ローマ神話で女性の結婚生活を守護する女神だ。渡瀬ナースはそのことを知らねえみてえだけど、マユは、そのことがすぐに分かったぞ。

 気づいていたら、渡瀬ナースは職業の規範を超えて涙したにちげえねえ。


「あ……」


 ブローチを裏返して驚いた。『ローザンヌ』のロゴが入ってやがる。ローザンヌは、黒羽と出会う前に知井子が、ゴスロリのコスを買った店……ナースの記憶にローザンヌのマダムの顔が……美優はマダムの娘だ!

 あとで寄ってみよう。そう思ったときには五階に着いていたぜ。

 マユは、黒羽が入った隣の空き病室に入った。隣の様子が手に取るように分かるぜ。ベッドにひと回り小さくなったジジイ、枕もとに二十代後半の女……黒羽Dの妹が文庫に目を落としてやがる。

「英二、何しに来た!?」

 ジジイは、病人とは思えねえほどでけえ声だ。

「お父さん、体にさわるわよ」

「……そこに座れ」

 次の声はひどく弱々しかった。やっぱり余命は一週間といったとこだ。ジジイはかなり衰えてやがる。以前、HIKARIプロの事務所で黒羽を叱りつけていたころの半分ほどに痩せ、顔は薬の副作用で黄色くなってやがる……心臓を生かすために肝臓を犠牲にしてやがんだ。

「なあ、英二……」

「なんだよ、オヤジ」

「おまえが、仕事に打ち込んでいるのは嬉しい」

「バカにしてたんじゃないのか。いたいけない少女を使ってあぶく銭稼いでいる角兵衛獅子だって」

「……思っていたさ。でもな、いつだったっけ、オレがおまえのところへ行こうとして(13~16回)地下鉄の通路で発作おこしちまって、その時助けてくれた女の子」

「ああ、知井子とマユか……」

「おまえ、あの子たち入れっちまったんだな」

「悪いか」

 妹がお茶を淹れる気配がした。

「お父さん、毎日チャンネルかえてはAKRの子たちのこと追いかけてるのよ」

 父と息子は同時に目を背けやがる。その隙間を淹れたてのお茶の香りが満たしたぞ。

「……みんなよくやってるよ。特にマユなんか命かけてやってるようなスゴミがあるよ」

「……そうか」

 そりゃそうだろ。あのマユの中味は拓美。生きた証(あかし)残そうって必死なんだからな。

「あんないい子たちを、あそこまで光らせたんだ。おまえの仕事は間違っちゃいねえ」

「え……あ、うん」

 黒羽は、窓辺に寄って背中で答えた。

「だけどよ……お前が身を固めないのが気がかりなんだ」

「……だ、だから、ちゃんといるって彼女は」

「古いこと言うようだけどよ、黒羽の家をお前限りにはしてほしくねえんだ」

「お父さん、ひょっとしたら彼女連れてくるかなって……期待してんのよ」

「期待なんかしてねえよ、どうせ英二のハッタリだ」

「そんなことないって。今日は急だったから連れてこれなかったけど、今度は必ず……」

「必ずって、いつだい……おれは、もう十日ももちゃしねえぞ」

「お父さん、そんなことないわよ」

「気休めはよせ。由美子、お前の顔に『長くない』って書いてあるぜ」

「お父さん……」

「泣くな由美子。おまえも英二も嘘はつけねえ。死んだ母さんが、そこんとこだけはちゃんと育ててくれた」

「ほ、ほんとうに嘘じゃない(;'∀')」

「なあ英二、今の仕事が一段落してからでいい、身い固めろ。由美子は、もう三十になろうってのに、ここんとこ男っ気一つありゃしねえ、なんでか分かるか?」

「三十ぐらいの独身女なんてザラにいるわよ。お父さんせっかちなんだから」

「由美子、養子になってくれることを条件に男を考えてるだろう……そんなこと考えてたら、行かず後家になっちまうぜ」

「そんなんじゃないってば」

「真田ってやつと別れたの……その伝だろ」

「由美子……そんな話あったのか?」

 窓ガラスに映る妹と目があって、取り乱す黒羽D。こいつのこんなところは始めて見たぜ。

「ないない、お父さんの妄想よ!」

 由美子が、顔を赤くしてムキになってやがる。

「オレ、今度は必ず……連れてくるから。由美子もつまらない心配すんな」

 三人とも黙っちまって、時計の秒針の音だけになっちまう。

「無理すんなって……」

「無理じゃないって、じゃ、オレ仕事残ってるから、また明日。由美子、悪いけど頼むわ」

 黒羽Dは、ぬるくなったお茶を飲むと、そそくさと出て行く。最後まで父の顔は見られなかったぜ。


 ハ~~~

 マユはため息をついたぞ。


 天使なら、安直に人の命を助けて自己満足しやがるんだろうけど、悪魔の使命は違う。
 人に試練を与え、その生をまっとうさせることにある。死ぬ、あるいは死んだ命に干渉することはできねえ。それができるのなら、あの拓美だって生き返らせてるぜ。

 マユは、ポケットのブローチを撫でて、美優の病室に向かったぞ……。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
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  • ドロシー
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  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!67『黒羽Dの苦悩』

2024-11-20 08:31:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
67『黒羽Dの苦悩』 





「マユ、オモクロの研究生になるの?」

「虎穴に入らずんば虎児を得ずだぜ」

「……でも、このパンフ、応募用紙がないよ」

「さっき、配達されてきたとこだ。書類審査は軽いもんよ。なんたって、クララと、拓美の合成だからな」

「ヒュ~」「(#*´・`*#)」

 クララは小さく口笛を鳴らして、拓美は顔を赤くして感心しやがった。

「とにかく、オチコボレ天使のお節介は放っておけねえからな」

「だよね」「う、うん」

 クララと拓美がうなずいたところに、黒羽Dが入ってきやがった。

「すまない。これからちょっと外さなくっちゃならなくなった。今夜のレッスンには付き合えないけど、みんな励んでくれよ。明日は、その成果しっかり見せてもらうからな。パフォーマンスはカレーじゃないから一晩寝かせて上手くなるってもんじゃない。今のモチベーションを『コスモストルネード』の発表まで、持ち続けていること。選抜もアンダーの研究生もね!」

 はい!

 百人近いメンバーと研究生が返事をしやがる。そのモチベーションの高さは目の前で花火が爆発したみてえで、マユはビクッとして飛び上がりそうになっちまったぜ。

 でもよ、その中で、たった一人、ブラックホールのみてえに落ち込んでる人間がいやがる。

 誰でもねえ、いま檄を飛ばした黒羽D自身だ。

 いくら表面を取り繕っても小悪魔の目はごまかせねえ。

――死ぬ――オヤジ――よくもって一週間――
 
 思念がスパークしてやがる。表面は明るそうに振る舞ってやがるけど、心の中は悲しみと混乱でいっぱいだ。どうやら、さっき事務所に電話があったみてえだ。

――どうして、携帯切りっぱなし……よくもって一週間……そうよ……はい?……看護師さんが呼んでる……父が……お父さんのメモ……読むよ『英二、いい歳して嫁さんもなし。仕事一途もいいけど、体には気を付けろ。見舞いなんぞこなくていいからな。通夜も葬式にも来なくてもいい。気の済むまで仕事に打ち込め。父』……お兄ちゃんの勝手! バカ、その勝手じゃなくて、勝手にしろの勝手よ!――

 黒羽Dの妹からだ。

 お父さんとは13~15回に出てきたジジイのことだ。どうやら、思いあまって「今から行く!」と返事をしやがって……え……「彼女だっている」……おやおや、ハッタリかましやがったんだ。

「じゃ、みんなガンバローぜ! イェイ!」

 元気にカマしやがった。

 オオオオオオオオオオ!!
 
 何も知らねえメンバーと研究生は、黒羽のエールを倍にして返しやがる。

 ブチブチブチブチブチ!!

 その跳ね返りが、無数の矢になって黒羽Dに突き刺さるイメージが浮かびやがるぜ(-_-;)

 リハーサル室を出た黒羽Dは、電源を落としたスマホ画面みてえに暗かった。しかし、黒い画面の向こうは整理されてねえ仕事や思い出の欠片でクラッシュ寸前だ。


 マユは、ポチの姿にもどって黒羽の後をつけたぜ。


 地下の駐車場で黒羽が車のドアを開けたとき、魔法でカラーコーンを倒して注意をそらし、その隙に後部座席に乗り込んだ。

 運転中も、黒羽Dの心は混乱したままだったけど、新曲キャンペーンのアイデアの整理にかかってやがる。そんて、こんな状況で仕事のことを考えている自分に自己嫌悪も襲ってきやがる。まるで、サンチャゴの海みてえだ。黒羽Dは、何度もため息をついたり、意味もなくハンドルを叩いたりしやがった。

 マユは、久々に見たぞ。こんなに苦悩している人間を。

 小の字は付いても悪魔。黒羽Dの苦悩を頼もしく思ったぜ。

 人間とは苦悩や錯誤のあとに道を切り開いていく不完全な生き物なんだ。いわば、悪魔と天使のせめぎあいから湧いて出た虫みてえなもんだ。

 でもな、一寸の虫にも五分の魂、魂は鍛えなくっちゃならねえ、天使みてえに気まぐれで安直な救済はしねえんだからな。

 いまは、雅部利恵の安直なクワダテを阻止することがマユの使命だ。そのためには、黒羽Dにダウンしてもらっては困る。むろん、黒羽Dの魂も放っちゃおけねえ。


 そんな具合に根性たぎらせてっと、フロントグラスにA病院の建物が揺れながら現れたぜ……。



☆彡 主な登場人物
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!66『よし、これだ!』

2024-11-19 08:22:25 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
66『よし、これだ!』 





「よし、これだ!」  


 白線の二往復目には、新曲のタイトルが浮かんだ。

――間もなく列車が通過しますので、白線の後ろにお下がり下さい――

 会長室の白線は特別製で、駅の構内アナウンス、そして列車の通過音やホームの振動まで再現できるようになってやがる。窓ぎわのスリットからは、列車の通過に見合った風が「バン!」と吹き出して、光会長のキャップを吹き飛ばしちまった。

 光会長は、若い頃から、駅のプラットホームの白線の上に立って、通過列車の振動と風圧を全身で感じた時にアイデアがひらめくってあぶないやつだ(^_^;)。

 で、今、その効果が現れた!


『秋桜旋風(コスモストルネード)!!』


 季節性もインパクトも十分あって、あとは歌詞だ!

 光会長は白線の設定を山手線から新幹線にして足を踏ん張りやがった。

 新幹線は、シューっていう独特の接近音がする……列車接近のアナウンスは、もう耳にも入らなかったぜ。


 ドバッ! ドバッ! ドバドバ! ドバッ!


 衝撃的な通過音と風圧のショックで、小柄な会長は部屋の端まで吹き飛ばされやがった!

 しかし、壁には衝撃吸収のためのラバーが貼ってあって怪我はしねえ。怪我はしねえが、衝撃はハンパねえ。ハンパねえけど、二回転して、壁にぶつかったときには、最初のフレーズがひらめいてやがったぞ!


 特急を準急停車と間違えて♫ ホームの端まで吹き飛ばされ~た~♪

 ショック! ショック! ショック!!

 手にした花束、コスモストルネード!


「振り付けの春まゆみ、作曲の大久保は来たか!」

「はい!」

「ここに!」

 振り付け師と作曲家が、息を切らしながら会長室に入ってきやがった!

 さっそく、最初のフレーズに曲と振り付けが付けられる。

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 それから、二回新幹線が会長室を通過し、そのMAXな風圧で、会長室はまさに嵐の中だぜ。

 デスクの書類はもちろん、パソコンのデスクトップまで吹っ飛び、ロッカーは倒れ、カーテンはちぎれ、部屋の片隅で他の細々したものといっしょに吹き寄せられてやがる!

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 三回目の通過の時は、光会長は、雄々しく足を踏ん張って曲の一番を完成させてやがったぞ!


 オレの心は、コスモストルネード!


 振り付けの春まゆみも、二回スピンして決めポーズを完成させた。曲は、大久保がアカペラできめやがった!


「「「決まった!」」」


 作詞・作曲・振り付けが一発で決まちまった!!

 すぐに大久保はスコアに音符を並べ、春まゆみは振り付けのコンテを描いた。

 この間、わずかに13分13秒。13分後には伴奏用の編曲ができて、コンピューターに入力されて、一時間後には、AKRのメンバーが集められ、歌と振り付けのレッスンに入っちまった。もう目が回るぜ!

「会長、すごいですよ!」

 付き合いの長い黒羽ディレクターも舌を巻きやがる。

「な~に。軽いもんよ」

 そして、ボコボコになった会長の手には二番と三番の歌詞がしっかりと握られていたぜぇ。

 マユがもどってきたときは、もう夕方でよ、AKRのメンバーたちは、一通り、新曲の『秋桜旋風(コスモストルネード)』をマスターし、夕食を兼ねて一時間の休憩に入ってやがった。


「うそ、オモクロって、そんなクワダテしてんの!?」


 マユの姿をした拓美が目を剥きやがる。

 三人は、食事のあと、メンバーや研究生・スタッフたちで一杯のリハーサル室で話してんだ。

 下手に個室で話すよりも、この方が目立たねえ。なんせマユは、クララとマユの拓美を足して二で割った姿をしているんで違和感がねえしな。

「この話、黒羽さんに言ったほうがいいかな」

「言わなくていいわよ(*,,ÒㅅÓ,,)  」

 拓美は、きっぱりと否定しやがった。

「情報源聞かれたら困るし。わたし今度の『秋桜旋風(コスモストルネード)』はいけるような気がするの」

「そうね、今のAKRは会長から、研究生まで一つになれてるものね」

 クララも拓美に同調しやがった。

「わたしたちは、二つになってしまったけどぉ」

 マユは、オスマシして言ったぞ。

「ごめんね」

 拓美は、真っ直ぐに受け止めて、ペコリと頭を下げる。

「いいんだ、拓美の気が済むまで、そのアバターは貸してやっから」

「もうしわけない」

「ほんとにいいんだって。マユにもタクラミがあるんだからな」

「「え……?」」

 クララと拓美の声がそろった。


 マユはオモクロの研究生募集のパンフを開いた……。




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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!65『見学自由』

2024-11-18 08:16:38 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
65『見学自由』 





 雅部利恵(天使名ガブリエ)が肩入れしてからのオモクロは、それまでの「オモシロクローバー」から「想色クローバー」と名を変えたけど、略称はオモクロのまま中身を変えやがった。

 それまでのお笑い系ではなく清楚とビビットが売りでよ。だけど、トークやバラエティーなんかでは元のオモシロの味も残していやがって、その手のコントやギャグをやらせると、AKRの上を行きやがる。

 ディレクター兼社長の上杉は、関西のお笑い総合商社と言われるユシモトから資本提携をうけ、中堅プロダクションを買収、いちやく東京でベストテンに入る芸能プロにしてやがった。

 その新生上杉プロの前まで来た。

 なんと「見学自由」の張り紙がしてある。

 学校帰りの女子高生なんかも結構並んで、見学の順番待ちをしてやがる。五十人一組で十五分の見学ができる。

 マユは、さっそく並んだぜ。

 一時間たった三回転目、やっと番が回ってきて見学の流れに潜り込めたぜ。


 一階の展示室には、オモクロの歴史や、活躍ぶりをパネルや映像で見られるようになって、メンバーの衣装なんかも展示してある。オモクロのこれからのスケジュールなんかも書いてあんだけど、AKRのえらいさんたちが言っていた新企画については書かれてなかったぞ。

 ロビーにはメンバーの写真が並んでいて、ルリ子と美紀の写真も当然並んでやがる。

 おお……( ゚Д゚)!

 学校での意地悪グループの印象など全くなくてよ、清楚なお嬢様キャラで額縁に収まってやがる。プロフは生年月日と性別以外はデタラメだけどな。

――学校では、人前で話すこともできない性格で、少しでも前に出られるようになりたいです――

 笑いそうになったぜ(`艸´)。


 五分ほどで展示室を出されると、階段を上がった二階に連れて行かれた。


 なんとリハーサル室の隣りの部屋を見学室にして、リハーサルを見せてくれる。防音のガラス張りになっていて、リハーサル室の音声は、据え付けのスピーカーから聞こえてくる。

 ルリ子と美紀もレッスンに励んでやがる。

 そして気がついたぜ。

 二人は白魔法をかけられてやがって、歌唱力やダンスの能力が何倍にも高められてやがる。

 実力でアイドルになった拓美や知井子に負けない歌とダンスだ。マユは、拓美には体しか貸してねえ。だから混じりけなしの実力だ。

 白魔法は、本人には分からねえようにかけられていて、ルリ子も美紀も自分の力と努力のタマモノだと思ってやがる。
 
 このごろのルリ子たちは学校でも大人しい。

 だけじゃなくてよ、他人への気配りや態度が優しくなってきやがった。これは白魔法じゃなくて、ルリ子たちが持った自信からくる自然な優しさ、この点では、マユも文句はねえ。しかし、その根本にあるのが、オチコボレ天使の利恵の思惑なんで、いただけねえ。

 運がよかった。

 残り時間五分というところで、リハーサル室に上杉ディレクターが入ってきやがった。

 オモクロの新しい企みというか企画は、メンバーにも知らせられていないようで、オモクロのやつらの心を読んでも分からなかったぞ。

 上杉の心は読まなくても飛び込んでくる。それだけ自信と闘志に燃えていやがる。

 新曲は『秋色ララバイ』ってタイトルで、見学者の前ではレッスンさせてねえ。オモクロにしては大人しい曲みてえだ。けどもサビからはオモクロらしくビビットになりやがる。曲自体は平凡のちょっと上って感じだけどよ、オモクロたちの手に掛かると、思いがけずヒット曲になりそうな予感がしたぞ。
 
「え……!?」

 思わず声が出ちまった。

 でも、周りの女の子たちの声や想念に紛れて、たとえ、利恵が、ここにいても気は付かれなかった。

 上杉は、AKRに果たし状を突きつける気でいやがる。表面は別の企画としてだけど、会場はすでに東京ドームを押さえてやがる。ユシモトの資本力の背景があってできることだぜ。

 メンバー全体の、いわば団体競技と、選抜のソロで競わせるつもりでいやがる。オモクロはすでに準備に入ってやがる。果たし状を出された時点で、AKRは一歩遅れることになるぜ。

 それに、なにより利恵が一枚かんでやがる。どんな影響が出てくるか分からねえ。

 ん……?

 見学室を探っている思念を感じたぞ!

 的は絞り切れてねえみたいだが、あきらかに探ってやがる。

 ……分かった。

 リハーサル室のパイプ椅子に化けた利恵が、見学室からのマユの思念を感じて探ってやがんだ。しかし、いまのマユはポチの体を借りて、見かけも拓美とクララを足して二で割った姿をしている。マユとは気づいてねえみてえだ。

――なんだ、見学の子たちが興奮しただけか。まあ、それほどいい出来ってことなんだ(^▽^)――


 パイプ椅子の利恵は、おめでたく解釈しやがった。

 見学時間が終わって、出口に差しかかったところで、パンフが配られた。パンフの何枚かにメンバーのサインが書かれている。外に出てパンフを開くまで分からないが、当たった子は「キャ-!」とか「ウソ!」とか歓声を上げていやがる。マユは、違うことでほくそ笑んだ。

 パンフの中に、研究生の応募用紙が入っていたんだ。


 マユは、小悪魔らしくほくそ笑んだぜ。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!64『マユはポチの姿で偵察したぜ』

2024-11-17 08:27:10 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
64『マユはポチの姿で偵察したぜ』 




 マユは迷路みてえなダクトを伝ってスタッフの会議室を探したぜ。むろん、ワンコのポチの姿でな。

 帰り道のことは心配はねえ。ポチの嗅覚は人間の一億倍もあるからな、自分の匂いをたどっていけば、もとの出口にたどり着くことは簡単だ。

 オッサン特有の臭いがただよってきて、たどっていけばドンピシャ。HIKARIプロのえらいやつらが会議をしている部屋の排気口にたどり着いたぜ。


「……オモクロが、この週末の週間火曜曲で、新曲の発表をやります」


 オーディションのとき、えらそーに見えて、実は、それほどでもねえディレクターが話してやがる。

「どんな曲なんだ?」

 社長が目を細めた。とたんにデーモン先生みたく人相が悪くなりやがる。

「それが、分かりません」

「分からない?」

 みんなが、一見えらそーなディレクターに注目した。

「これまでは、宣伝を兼ねて意図的に情報を流していたんですが、今回は、見事に分かりません」

「オレは、少しは分かっている。作詞作曲は中山耕一だ」

 黒羽ディレクターがつぶやいた。やっぱり人の一歩先を行くやつだぜ。

「え、薬師丸陽子じゃないんですか!?」

 二番目にえらそーなディレクターがびっくりして、目を剥きやがる。

 その拍子にディレクターは、コンタクトレンズを落とし、話に参加できなくなったけど、見かけほどにはえらくねえので、会議が中断するほどじゃねえ。

「上杉のヤロー、勝負に出てきやがったなぁ……」

「たかが上杉、たいしたことはできませんよ」

 えらそーなディレクターが言った。

「オレも昔は『たかが光ミツル』って言われていたんだぜ……」

 ぜんぜんえらそーに見えねえ会長が立ち上がって、会議室の窓辺に沿って歩き始めた。会長が本気で考え事をしたときのクセみてえで、歩くとこには白線がひかれてやがる。

 え、なんで白線なんだ? 

 オッサン達の頭を覗いてみる。

 プ(`艸´)

 思わず噴いちまった。

 これは会長が光ミツルとしてデビューする前、フォークの国家主席と言われたころからの習慣なんだ。

 いつも駅のホームの白線ギリギリのところを歩いて考え事をするって変なクセなんだ。

 HIKARIプロができたころは、屋上のふちに白線を引いて歩いてやがった。それが、通行人に自殺者と間違われ、通報されて大騒ぎになった。それからは、会長室と会議室の窓ぎわに白線を引いて代用してやがる。へんなジジイだ。

 フニュ

 二往復目、さっきのディレクターのコンタクトレンズを踏んだ。ソフトなんで割れることはねえけど、靴底のわずかな違和感が、会長を決心させたぜ。

「この違和感は本物だ。今日一日で新曲作るぞ! で、オモクロと同じ日に発表! 十時までには作詞しとくから、振り付けの春まゆみ、作曲の大久保も呼んどけ!」

「じゃ、レッスンも、今日からですね!」

「むろんだ!」

 出て行きながら黒羽ディレクターに命じやがった。黒羽ディレクターは、全員に目配せ。それだけで、おのおのがやるべき事が分かる。

 う~~~~ん(-_-;)

 なかなか鍛え上げられたクリエィティブ集団だぜ。


「みんな、集まれ!」


 リハーサル室に行くと、黒羽ディレクターはメンバー全員を集めやがった。

「今日は、十時から新曲のレッスンに入る。今までとはやり方が違うからビックリしないように。それから、今日は遅くなるから、家には連絡入れとくこと。深夜タクシーで帰る覚悟しとけ!」

 はい!

 大石クララを筆頭にメンバー全員が熱気の籠もった返事をしやがった。会長の熱気が、HIKARIプロ全員に行き渡っていく。知井子なんか、なんだか自分の身長が、また伸びたような気がしたぐれえで、ピョンピョン跳ねてやがる。

 マユも、なんだかワクワクしてきてよ、人の姿になってクララたちが用意してくれてた制服を身に着け、オモクロのプロダクションを目指していったぜ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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