goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!93『乃木坂学院高校』

2024-12-19 08:32:40 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
93『乃木坂学院高校』 






「ねえ、ちょっと日向ぼっこしていかない」


 相談室の鍵をかけながら柚木先生が言った。

「え、あ、はい」

 仁科香奈の姿をしたマユが応える。もう手続きも終わったんで、ちょっと気持ちがつんのめるぜ。

 退学の手続きにきたら、担任に設定してあった柚木先生に最後の説得をされちまった。


 ちょっと意外だったぜ。


 この仁科香奈の姿は、不可抗力で、目の前にいた大石クララと拓美に貸したマユ自身のアバターを足して二で割った姿だ。

 正式に地獄の小悪魔補習規定にのっとて作られた公式アバターじゃねえ。

 だからよ、経歴も関係者の記憶もかなりいい加減な設定にしかできてねえ。
 乃木坂学院の生徒になったのも、それまで入り込んでいた美優が乃木坂の出身で、美優の記憶がそのまま使えるからという便宜上の理由だけだ。

 だから友だちも居ねえし、部活もやってねえし、担任に埋め込んだ記憶もそうとう粗っぽくて、平均的で目立たない生徒という認識でしかねえ。

 だからよ、退学については、ごく簡単な事務処理で済むと香奈の姿をしたマユは思っていたんだ。

 それがよぉ、退学届けを持ってくると、その柚木先生に相談室に呼ばれ、一時間ちょっと説得されちまった。

 意外にも、柚木先生は自分自身を責めていやがった。

――わたしは、この仁科香奈のことについて何も知らない。面談や懇談をやった記憶はある。でも、可もなく不可もない子だったので、ほとんど意識に留めることもなかった。その仁科香奈が、密かにこの乃木坂学院に見切りをつけ、こともあろうに……と、言っちゃいけないんだろうけど、アイドルグル-プのオモクロのオーディションをうけるという。そんなに乃木坂学院は、いや、この柚木学級、柚木という教師には力も魅力もないのだろうか……――

 マユは香奈の心で申し訳なかったぜ。柚木先生は、いわばエキストラっちゅうか、村人1とかのNPCみてえななもんでよ、仁科香奈について細かい記憶なんかはインストールしてなかっんだ。柚木先生は、それが担任としての落ち度のように感じていやがる。

 魔法というものは、白魔法にせよ黒魔法にせよ怖いものだと感じたぜ。

「わたしね、演劇部の顧問やってるの。仁科さんに、そんな気持ちがあるんだったら、入学したときに勧誘しとくんだったなあ……」

「あ、わたしがやりたいのは、演劇じゃなくて、オモクロやAKRみたいなエンタメですから」

「そうなのよね……今の高校演劇は、あなた達みたいな子を引きつける力がないのよね」

「そんなことないです。ただ、わたしがやりたいことが違うだけで……」

「うちの演劇部は、もともと、そういうエンタメ的な力ももっていたわ。もうお辞めになったけど、貴崎マリって先生が、グイグイ引っ張ってらっしゃって、部員も三十人ほどもいてね、歌って踊ってお芝居もできるって、東京でもトップクラスの演劇部だったのよ。それが、ちょっと事故が重なって、貴崎先生はお辞めになるわ、部員は三人にまで減ってしまうわで、一時は廃部寸前までいったの。でも、生徒の力ってすごいのよ。そんな演劇部を復活させて、秋の予選じゃ最優秀。二年生の仲まどかって子が中心にがんばって、その奮闘ぶりが凄くって、本にまでなったのよ」

 柚木先生は、一冊の本を取り出した。

『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』

 一見ラノベの形式だけど、半年にわたる仲まどかたち、演劇部の子たちの奮闘ぶりが書かれていやがる。

「あげるわ。なんかの参考になったら嬉しい」

「あ、ありがとうございます(^_^;)」

「それから、仁科さんと同じように中退した子だけど、坂東はるかって子も、女優になってがんばっているわ」

「え、坂東はるかって、乃木坂の中退だったんですか!?」

 マユも人間界に来て半年あまり。並の女子高生としての知識はある。坂東はるかは、いま売り出し中の若手女優だ。たしか、大阪で現役高校生のまま新幹線で通って女優の仕事をこなしているはず。ネットで自伝的なノンフィクションを書いていやがった。

『はるか 真田山学院高校演劇部物語』

 そんなタイトルだ。

「坂東はるかって子のことだったら、その『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』にも出てくるわ。仲まどかとは幼なじみだから」

 柚木先生は、マユの心を読んだように答えやがる。人間は、時に悪魔か天使のように心を読んだり、勘を働かせたりすることがある。それは、葬儀を済ませたばかりの美優も同じだったぜ。

 マユは、人間界に補習に出された意味が分かってきたような気がしたぞ。

 あ……

 いつの間にか、理事長先生が後ろに立っていやがる。もう九十を超えているってのに、髪の毛以外はカクシャクとしていやがる。

「仁科さん、わたしの目を見てくれんかね」

「あ、はい……」

 優しいが深みのある目をした先生だ。仁科香奈の心で、マユは、そう感じたぞ。

「いい目をしている。できたら、うちの学校でまっとうして欲しかったが、きちんと決心したんだね?」

「……はい」

 理事長先生は、自分の目を見ろと言って、マユの目を観察していやがったんだ。

「もう、今さら、わたしから言うことはない。柚木先生といっしょに見送らせてくれんかね」

 プラタナスの枯れ葉を踏みしめ、仁科香奈の姿のマユは乃木坂を下る、背中に二人の先生の視線を感じながら。

 たまらずに振り返ると、先生は二人で小さく手を振っていやがったぜ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!92『葬儀・2』

2024-12-18 09:21:39 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
92『葬儀・2』 





「真田さん……」

「こんなことで再会するとはね。式が始まったら、お焼香だけさせてもらうよ」

「どうも……」

「……じゃ」
 
 由美子は、真田に教わったたばこを、一口だけくゆらせて控え室にもどりやがった。

 こんなかたちで五年ぶりに真田にあうとは思いもしねえ由美子だ。五年ぶりの言葉が、あれで適切なのかどうかは分からねえ由美子。でもよ、あれ以上の会話は、思いもしねえ感情を心の底から呼び戻してしまっただろう。

 真田は、それからも左手をポケットに入れたまま動かねえ。

 マユは、まだまだ未熟な小悪魔だからよ、関わった全部の人間や出来事が分かってるわけじゃねえんだ。由美子の中では決着もついてるみてえだし、関わるのは止しにするぜ。悪いな真田。

 このご時世、けっこうな有名人が亡くなっても家族葬で済ますんだけどよ。母親以外の係累は、それこそ成り立て亭主の黒羽D一人だけ。

 ところが、親密にしていたお客やヒカリプロの人間がゴマンといやがる。オモクロ対決を実質の結婚式にしてくれたのもそいつらのお蔭だ。

 マスコミが式場に入ることだけは断りやがったけど、今どきの葬儀としちゃ頭抜けた規模だ。
 ふたを開けてみると、その予想の上を行く会葬者で、急きょ場内整理の警備員を倍にしやがったぐれえだ。

『ただいまより故・黒羽英雄、故・小林美優の合同葬ならびに告別式を執り行います 』

 え、服部八重の声だ。

 八重はAKRの最年長、と言ってもたかが25歳なんだけどよ、クララといっしょにAKRを纏めなきゃって気持ちが強い姉御肌だ。式の司会進行を買って出やがったんだ。

 後ろに専門の葬儀社のオッサン……どこかで見た顔だと思ったら、このオッサン、テレビやネットのCMで時々見かける葬儀社の社長……で、八重の親父? そうか、アイドルが葬儀屋の娘ってのは、今の時代でも抵抗はあるのかもしれねえけど、思いきりやがった。

 そうだよな、新しい時代を切り開こうってのは、小悪魔だけじゃねえんだな。よくやってくれたぜ、八重。

 葬儀の時間は長かったけど苦にはならなねえ由美子だ。今までの親父の介護や看護のことを思えばなにほどのことでもねえ。

 一般焼香のときに真田の気配を感じやがったけど、あえて、その手に指輪がされているかどうかも見ることはしなかった……。

 マユはよ、美優の命の灯が消えてからは、仁科香奈の姿になってるぜ。

 仁科香奈ってのは、前にも言ったけどマユとクララの姿を足して二で割ったアバターだ。自分の本来のアバターは拓美に貸してあるんで、これ以外はケルベロスのポチの姿しかねえ。ポチの姿でうろついていたら、すぐに外に放り出されっちまうからな。

 由美子と真田のことは気づいていた。あの清純で献身的な看護を続けてきた由美子に、こんな過去があるとは思いもしなかったぜ。駐車場で二人が再会した時に、由美子の過去が思念といっしょに分かってしまったけど、二人の心が、きちんとケリのついた話っぽいんで、安心しておく。

 焼香の間、二人は意識の片隅でお互いを捉えていやがったけど、それ以上になることは無かった。ただ会葬者の中に四歳ぐらいの子どもを連れた女性を見たときに、一瞬由美子の心が揺らめきやがる。

 真田との間にできた子を産んでいたら、ちょうどその子と同じくらいの年格好になっていた……グ……由美子の人生もどこまで深けぇんだ。


 出棺の直前、親族で棺を花で満たしてやるときに、いろんな思念がいっぱい飛び込んできちまって、マユは一瞬クラッとしちまったぞ。

 あたりめえだけど、美優の母親、美智子の悲しみが黒羽と並んで一番大きい。その美智子をいたわる気持ちは、ポーカーフェイスの光ミツルが一番だった。探ってみてえ気持ちになったけど、もういっぱいいっぱいだから止しておくぜ。

 黒羽は、美優の顔を見て、美優と、ちゃんと通うところがあったんだろう。小さくうなづいて、黒羽自身の手で棺の蓋をしてやったぜ。

 小悪魔の悲しさ。人間や、幽霊、妖精のたぐいの姿や思いは分かるけど、天国に行く魂は見ることも感じることもできねえ。
 スタジオで美優の魂はオチコボレ天使の雅部利恵の手の中でエメラルドグリーンに輝いていやがった。それが、美優の魂が見えた最後だったぜ。

 美優の棺を閉じて、それから由美子と二人で親父の棺を閉じやがる。

 親父にも美優の葬儀を見届けさせてやろうって気持ちなんだ。

 
 パアーーーーーン


 二台の霊柩車のクラクションが長く響いた。

 あとは大丈夫だろう。

 人間たちは、苦悩を乗り越え、支えながら生きていきやがる。

 マユの仁科香奈は乃木坂学院高校の制服を着ている。明日には退学届けが受理され、週末にひかえたオモクロの研究生のオーディションを受ける。

 なんせマユのでっちあげだからな。周囲のやつらの記憶や記録を、一から用意なんかできてねえ。簡単に乃木坂学院の退学生としての仁科香奈しか用意ができちゃいねえんだ。

 とにかく、これでよ、脳天気なオチコボレ天使の雅部利恵が作った想色クロ-バー、オモクロをなんとかしなければなんねえ。そう思い定めた、仁科香奈姿のマユだったぜ。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!91『葬儀・1』

2024-12-16 09:17:16 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
91『葬儀・1』 





 意地悪なくらいの秋晴れ……その青空に一点の黒いシミが見えたら――え、なんだ、あれ?――って見ちまうだろ。

 まあ、普通の人間なら、そのシミが自分の上に影でも差さねえ限り見ることはねえだろうがな。小はついても悪魔、たとえ影を落とさなくても見ちまう。


 その影が黒羽Dの妹の由美子だ。


 遺族控え室にいたたまれなくなっちまいやがって、あと五分で葬儀が始まろうってのに、由美子は葬儀場の駐車場に出てきやがった。

 親父の死は覚悟していやがったけど、自分より年下の義姉の葬儀をいっしょに出すとは思わなかった由美子だ。

 兄の黒羽Dも、美優の母親であるローザンヌのマダムも落ち着いていやがる。でも、悲しみに耐えているのは痛々しいほどよく分かる由美子だ。

 兄の英二にはクセがある。悲しみや怒りを堪えているとき、表情は穏やかなんだけど、背筋が伸びやがる。
 人が見て分かるほどじゃねえんだけど、兄妹だからよく分かる。針でつつけば破裂しそうなほどに兄は悲しいってことがな。
 
 女なら悲しいだけ泣けばいい。しかし、男は、たとえ身内の葬儀でも涙を見せちゃいけない。

 母親が亡くなった時。当時、まだ元気だった親父が由美子と英二に言った言葉だ。

 まだ中学生だった由美子は、人目もかまわずに泣いたが、兄は泣かなかった。ただ、いつもより少しだけ背筋が伸びていやがる。それに気づいたのは、骨揚げの時だった。

――あ、姿勢を崩したら、お兄ちゃん泣いちゃうんだ――妹の直感で、そう思いやがった。

 高校生の時、ローマ法王が「こんなに悲しい姿はありません」と世界に示した写真がある。

 大空襲の後、亡くなった赤ん坊をオンブして火葬の順番を待っている少年の写真。

 少年は、まるで天皇陛下のご来臨を待って気を付けをしている兵隊みてえだった。少年は、それこそ近衛兵みてえに真面目な表情なんだけど涙は見せちゃいねえ。少年は、こうしていないと背中の赤ん坊を抱きしめて身も世も無く慟哭しちまう。不甲斐ない兄きとして、ここで泣いちゃいけねえ、泣いたら背中の弟妹の後生に障る。

 あの少年に兄きはそっくりなんだ。

 二人分の喪主として控え室にいる兄は、母の骨揚げの時と同じくらい背筋を伸ばしてる。もう口やかましい父もいないんだから、美優ちゃんのために泣いてやってもいいのに。あんなにお父さんに反抗ばかりしていたくせに、こういうところは、どうして親子似ちゃうんだろ。由美子は思っちまう。

 でも、ふと気づくと涙していない自分にも気がついた。気づくと、間欠的に悲しみが胸にせきあげてくる。ひょっとしたら、自分が最初に崩れてしまうかもしれない。また、崩れない自分も予感され、それはそれで、いたたまれなく、控え室を抜け出てきやがった。

「あ……」

 自分もバカなのに気付きやがる。

 タバコを吸おうとして、タバコを持ってきたのにライターを忘れてやがる。指にタバコを挟んだまま、どうしようかと思っていると、すっと横から火の点いたライターが差し出された。

「わ……」

 テレビドラマの抜けた三枚目の脇役みたいな声が出てしまった。

 ライターを差し出したのは、三年ぶりに顔を合わせたアイツだった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 由美子      英二の妹
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!90『スパーク!』

2024-12-15 10:43:21 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
90『スパーク!』 




――美優、聞こえってっか?――

――え、だれ?――

――ええと……ワ、ワクチンの精だ! おめえも、さっきお礼を言ってたじゃねえか(''◇'')――

 正体ばらすわけにはいかねえ、かと言って神さまとか、神の使いとか言うのは利敵行為だしな。悪魔なんて言ったら腰を抜かすかもしれねえ、いや、ショックで即死かもしれねえ。で、もともと一週間だけ命を伸ばすワクチンを注射したってことにしてたから、ワクチンの精ってことにした。文句あっか!

――ワクチンの精?――

――ああ、すっげえワクチンだから、こうやって話もできんだ。おめえも、さっきお礼とか言ってたからよ。そ、そのぉ、以心伝心ってやつだ(''◇'')――

――そ、そうなんだ――

――ああ、薬とかワクチンはよ、何百何千て人間の努力と実験動物の命を使った結果に生まれるものなんだ。だからよ、そういう情熱や命が凝って妖精みてえになるんだ。文句あっか!?――

――ううん、信じる。それで、なんの御用かしら、もうじき死ぬから、あんまり時間がないわよ――

――美優の気持ちと、みんなの励ましとか好意で、マユ、あ、あたしの名前な。マユは超絶進化しちまって、ガン細胞をやっつけられるようになったんだ。スゲエだろ<(`^´)>!――

――そうだったんだ、どうもありがとう――

――それで……ごめん。ガン細胞が一個だけ残っていやがって、魔法の効き目がきれたとたんに増殖し始めやがった。がんばってやっつけてるけど……ううん、がんばってやっつけるからな――

――…………――

――美優?――

――もういいわ、マユさん。本当は、夕べで尽きる命だったんだもん。たった一日だったけど、十分に満ち足りていたから――

――弱気になんな! マユもがんばるからよ!――

――うん。じゃあ、痛みと苦しさだけ、なんとできるかなあ。この番組が終わるまででいいから……――

――わ、分かった!――

 悪魔ってのはよ、自分の怒りとか想いで動くもんでよ。あんまり人からお願いされるもんじゃねえ。だ、だからよ、思わず力が入っちまったぜ!

――エ! エロイムエッサイムッ(``>▭<``)!!――

 そのとたん、美優の痛みと苦しさが無くなり、顔色ももどってきやがった。

――な、元気になっただろがあ!――

――ほんとだ、楽になった……死んで楽になったってことじゃないでしょうね――

――だったら、ほっぺたでもつねってみやがれぇ(´⚰︎` )――

――あ、だいじょうぶみたい――

――って、つねってねえじゃねえか――

――いま、英二さんの温もり感じたから――

 あ、そういや、黒羽Dの奴、肩に手を回して密着してやがる!

――ありがとうワクチンさん。オモクロ対決の結果だけは見て逝けそう――

 よし、これでいい。

 そんで、ここまでだ。

 落ちこぼれ小悪魔、限界を突き抜けて美優の痛みを取ってやったけど、命そのものを助けてやることは……ひょっとしてできるかもと思ったけどよ、やっぱり無理だ。

 イテテテ……こういう人間的な反省も違反なんだろーな、カチューシャがギリギリ締め上げてきやがるぜ。

 分かってるよデーモン先生、もうこれ以上はやらねえよ、力も残ってねえし……やりたけりゃ、一気に締め上げて、マユを締めつぶせばいい。文句なんか言わねえからよ……

 ピカ!

 その時、目の前が真っ白になって、消えかけの美優の心に光るものがあったぞ。

 いいや、光じゃねえ。スパークだ、気がかりのスパークだ。

 超ご先祖のサタンがルシファーって大天使だったころ、神の逆鱗に触れて天界から堕ちる時、天界や神の事を心配した時に全身からほとばしったスパークみてえだ!
 
――お義父さんは……?――

――あ、元気だよ――

 グロッキーだったし、平然と言ったつもりだったけど、美優には分かっちまった。

――お亡くなりになったのね……――

――……昨日、黒羽Dが電話した直後。お父さんの言いつけで、この番組が終わるまでは、言っちゃいけないって、みんなには言ってるみてえだ――

 夕べも病院に行こうかと、黒羽は妹の由美子に電話した。持ち直して元気になったそうで、「今夜は二人で居ろ!って言ってる」と由美子は明るく言っていた。けどよ、スマホから漏れてくる由美子の声が、少し明るすぎるように聞こえやがった。でも、自分たちの幸せの明るさにひっぱられて、すぐに忘れた。それが、自分が、こういう状態になって、また気になりだしやがった。

 そんなことで自分を責めんじゃねえ!

――そう……――

――でも、二人のことは本当に喜んでたみてえだぞ。このこと、旦那にはナイショだぜ――

 旦那の親父のことを思いだしただけで、少し持ち直しやがった。

 美優ってやつは……

――うん……あ、足の感覚が……立てない――

――ちょっと待って――

 マユは、大急ぎで脊髄のガン細胞をやっつけた。全部じゃねえけど、慣れてきて、どこから攻めたらいいか分かるようになってきたみてえ。我ながらがんばれるもんだぜ。

 ギリギリギリ……

 カチューシャが締まってきて、マユの頭は瓢箪みてえにくびれてきやがった。根性で声は出さねえぞ!

 それで美優は歩けるようになって、化粧室に行きやがる。身を整え、メイクをやり直そうと思いやがったんだ。

「ちょっと化粧室行ってくる」

「すぐ戻ってこいよ。もうじき本番だからな」

「うん」


 化粧室から戻って、席についたとたん、また足の感覚がなくなっちまいやがる。


 で、ぞいよいよ本番が始まった。


 スタジオの左右にひな壇が組まれ、それぞれAKRとオモクロのメンバーが陣取る。センターには、大きなステージが組まれ、その奥が審査員席になっている。観覧席の者にも、審査ボタンが渡され、曲ごとに投票できる仕組みになっている。そして、視聴者もテレビのリモコンで投票できる仕組みにもなっているぞ。

 二曲ずつのメドレーで、トークが入り、投票することになっている。

 八曲目までは、伯仲のシーソーゲーム。

 九曲目、オモクロの『秋色ララバイ』で998点のポイントがついた。1000点満点なんで、ほぼカンペキだ。それまで、AKRはオモクロに2点の差を開けられていたので、苦しいところだぜ。

 緊張とむき出しの闘志で、メンバーがステージにあがった。

――力みすぎてる――

 黒羽は、ディレクターの勘で、トチリを予感しやがる。

 そして、予感は曲が始まる前のMCとの会話のところで現実になったぞ。

 キャ!

 張り切りすぎた知井子がジャンプしてバランスを崩し、ステージから落ちてしまいやがった。それも、助けようとした矢頭萌を巻き込んで……で、結局、この知井子のドジでスタジオは爆笑になり、メンバーはリラックスして『コスモストルネード』を歌い上げることができた。知井子もただでは転ばなくなったみてえだ。

 得点は999点。オモクロとの差は1点にまでつまった。

 そして、いよいよラストの曲。

 オモクロは再結成のときの『この道を行け!』をぶつけてきた。オモクロは、この曲で路線を変更、おもしろクローバーから想色クロ-バーにグループ名を変えた大ヒットした記念の曲だぜ。
 
 点数は998点。AKRは次の曲で満点を出さねえと優勝できねえ。999点で、かろうじて同点。AKRは最後に、この曲を選んだ!


『オーバーザレインボウ』


 むろんアレンジしてやがる、古さは否めないけどよ。思い切った選曲だぜ。この選曲は、会長が黒羽から、美優の父のオルゴールの話を聞き、急遽ラストに加えたんだと。

 前奏はオルゴールそのまま。美優は、頭の中が、懐かしさと、愛おしさで一杯になりやがる。

 曲の主題に入ると、とたんに曲はビビットになりやがる!

 振り付けも激しさの中に、品の良いチャーミングさがありやがる。振り付けの春まゆみは会長にドヤ顔、それを受けて会長は、方頬で笑いやがった。

 得点は……998点……しかし、観覧席のボタンが一人だけ押されていねえ。そして、ほんの一秒遅れて、それは押されたぞ。

 999点、総合で同点。AKRからも、オモクロからも、スタジオのみんなからも歓声が上がった。黒羽も思わずステージにあがり、メンバーのみんなとハイタッチ、カタキのオモクロのディレクターの上杉とも肩を叩き合って握手した。


 ……そして観覧席……笑顔のまま美優は息絶えていやがった。


 美優は、最後の力を振り絞ってボタンを押しやがった。

 一秒かけて全身の最後の最後に残った力でよ……。

 マユは、美優の中で慟哭したぞ。とうとう美優を、やっぱり美優を、助けることができなかった……。


――よくがんばったよ、マユ――
 

 その思念は、突然飛び込んできた。

 それは……オチコボレ天使の雅部利恵のだ。そして、スタジオの隅にいる利恵の手の上には、今肉体から離れたばかりの美優の魂が乗っていやがった。
 
 それは美優らしい上品なエメラルドグリーンに輝いていやがる……おいしいところを持っていきやがるぜ、天使ってやつめえ!



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!89『二転三転のトルネード!』

2024-12-13 08:44:23 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
89『二転三転のトルネード!』 






 ガン細胞、みんなやっつけた……ぞ。

 美優の中でひっくり返るとガン細胞をカウントしていたカウンターが、小数第二位の『0』をヒクヒクさせながら明るく輝きやがる。もう疲れ切って、視界の中にそれしか見えねえ……スクショ撮って落第天使に見せてやりてえぜ……

 カシャ

 あ、撮れた。

「え…………うそ、奇跡がおきた!」

「美優……!?」

「わたしの体の中のガン細胞が、みんな死んだ……みたい」

「え?」

「頭の中にガン細胞カウンターが現われて、ヒクヒクしながら0.00が輝いてる!」

「ほ、ほんとうか!?」

「うん、ぜんぜん感じが違う、ガン細胞が居る気がしないよ!」

「よ、良かった! ほんとうに奇跡は起きたんだ!」

 二人の大声で、マダムも部屋に入ってきた。娘の最後の瞬間に立ち会ってやりたかったけどよ、新婚夫婦二人だけにしてやろうと、リビングで、じっと我慢をしていやがったんだ。

「お母さん、見て! わたし、予定時間を過ぎても生きてる。どこも痛くない、どこも悪くないんだもの!」

「美優……よかった! よかったね!」 

「うん!」

「やっぱり、ここはあの人の部屋だったからね、お父さんも助けてくれたんだ」

「そうね、早く死んじゃったから、残った自分の時間をくれたのかも」

 あ……マユがやったんだけどな、ま、いいけどよ……

「美優!」「お母さん!」

 今度は、母子で抱き合い、黒羽は会長に電話をした。会長の光ミツルも大感激で、明日の『AKR VS OMOKURO』の生放送に美優を誘うことを提案しやがった。

「お義母さんも、いっしょじゃいけませんか?」

 黒羽は、そう提案したが、会長と義母のマダムの両方から断られた。なにか二人の間には秘密のタクラミがあるみてえだったぜ。


――くたびれたので、しばらく美優の中にいたまま休憩するぞ――


 聞こえるはずもねえんだけど、なんだかシャクで、マユは美優の心に、そう告げて眠ったぞ。体は、もう一体、拓美とクララを足して二で割った仁科香奈というアバターを持ってんだけど、そいつは研究生に応募させて向こうに送り込んであるからな。

 もっともアバターがいくらあっても、考える頭は一つだし、美優のことでいっぱいいっぱいだったし……「無駄なことをやりおってからに」……デーモン先生の声が聞こえてきそうだけど、もう、どーでもいいし。

――どうぞ、ごゆっくり。ほんとうにありがとう――

 え?

「え?」

 美優は、あまりの感激と、マユへの感謝の気持ちで、半分声になって出てしまいやがった。

 正体までは分かってねえみてえだけど、なにかが自分の中で奇跡めいたことを起こしてるものが居るって分かってやがるみてえだ。

「あ、なんだか世界中の神さまにお礼が言いたい気持ちになって……」

「あらら、いつから美優は信心深くなったのかしら」

 ウフフフ( ´艸`) アハハハハハ(* ´▢`) ハハハハハ(⌒▽⌒)

 母が、そういうと、自分でもおかしくなって、三人で笑いやがる。

 神さまはねえだろうと思うんだけどよ、まあ、サタンも堕は付いても元々は天使だ。まあ、良しってことにしておこうぜ。

 笑い声は一階の店まで響き、ちょうど出勤してきたバイトのサエちゃんを驚かせた。


 あくる日は、文字通り目の回るような忙しさだったぞ。


 事務所に集まったAKRのメンバーは、会長から檄を飛ばされ、テレビ局のスタジオに行くまでに、振りやフォーメーションの確認をやった。テレビ局と事務所のスタジオでは尺がちがう。テレビ局のほうが広く、小さくまとまらないように、両サイドのやつは、立ち位置を念入りに確認したぞ。


『秋色ララバイ』は想像以上にすごかった。癪だけどな!


 いままで、レッスンを含め、この曲はメンバー以外には秘密にされていたけど、リハーサルで、その全貌が明らかになったぞ! マユのもう一個のアバターも仁科加奈って名前で、けっこう生き生きやってやがる! クソ、ご主人さまがこんなに大変だっちゅうのに。生成AIってやつに文句言う人間の気持ちが分かるぜ!

「やるわねぇ……」

 最年長の服部八重さえ唸っちまいやがる。知井子なんか口を開けたまま圧倒されてやがる。こら、ヨダレガ垂れてるぞ!

「わたしたちだってできてるわよ。相手がすごいと思えることは、自分たちも同レベルにはできている証拠なんだから!」

「円陣組もう!」

 AKRのリハになったので、マユの姿をした拓美は、ハッパをかけたぞ!

「AKR47、この日のためにがんばってきた。みんながんばるぞ!」

 リーダー大石クララのかけ声に、みんなが応えやがる!

「「「「「「「「「「 オー!!! 」」」」」」」」」」


 特急電車 準急停車と間違えて ボクはホームで吹き飛ばされた♫

 二回転ショック♪! ショック♫!!

 手にした花束、コスモストルネード! トルネードォー♪!


 体中に力がみなぎってきやがる。心配していたフォーメーションもバッチリきまったぜい!

 ニシシシ(*`艸´)

 今度は、オモクロのメンバーが、スタジオの隅で圧倒されていやがる。むろん、圧倒されっぱなしじゃねえ、ルリ子たちオモクロのメンバーの目は燃えてきてやがる……。

「ここまでこられたのは、メンバーもがんばったけど、ロ-ザンヌの衣装もすごかったからだよ。ほら、会長とお義母さんが、ファッション誌の記者にとりまかれているよ!」

 黒羽が上機嫌で美優の肩をたたいた。

「…………」

「どうした美優。顔色良くないんじゃないか……?」

「え……ううん。ちょっとスタジオの熱気にあてられたかな」

 そういうと、美優は、明るい笑顔を黒羽に向けやがる。

 がん細胞撲滅のシグナル、小数第二位の『0』がビリビリ震えてカウントを上げ始めてやがる!

 クソォ(╬☉Д⊙╬) !

 マユは必死で抑え込むけど、ち、力が足らねえ戻らねえ……『0』は桁を二つも三つも増やしては元の『0』に戻るを繰り返しやがる……このままじゃ、マユの力が尽きたところで爆発的に増殖しちまう……!!

「そうか。じゃ、本番二十分前。そろそろ観覧席に行こうか」

「うん」

「あ、黒羽さん達の席は、そっちです」

 クララが、ウィンクしながら、観覧席の中央を指差しやがった。


〈黒羽ご夫妻様お席〉


 観覧席の真ん中には、そう張り紙された紅白二つの席が用意されていやがる。

「あいつら……」

 黒羽が、スタジオのAKRのコーナーを睨みつけると、メンバーたちが拍手したり、口笛を吹いたりして冷やかしやがる。

「アハハ……」

 精一杯、幸せそうに笑顔を向けるのが、精神的にも肉体的にも美優には限界だったぞ。


 マユは、必死で戦いながら、もう一度美優の心に語りかけたぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!88『会長のハチャメチャと最後の夜』

2024-12-12 08:47:37 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
88『会長のハチャメチャと最後の夜』 




 けっきょく本番まで、いや、本番になっても会長の姿は掴めねえ。

 番組は昭和のいたずら小僧、フォークの主席と言われた会長の面目躍如だぜ!

 AKRはじめヒカリプロのスターやタレントたちの歌やトークやパフォーマンス、その間に局の内外の映像が唐突に入って、会長を追いかけたり過去の映像がランダムに流れやがる。

 天気予報のオネエサンが天気図を指して振り返ると会長! 国会答弁に詰まって俯いた総理が顔を上げると会長! 新幹線が東京駅に入り車内清掃のスタッフが入って数分後車内をピカピカにして、車両から出てくると全員が会長! AKRが新曲を歌い終わって決めポーズになると、これまた全員が会長! やっとまともに一曲終わったと思ったら、カメラがパンしてスタジオの全景をナメルとスタッフ全員が会長! 渋谷交差点の信号が青になって人が渡り出すと、その顔が全員会長! 笑い声が交差点に響き、カメラがズームすると、お座りしてるハチ公が会長!

 合間に入ってるエフェクトは昔流行った『ゲバゲバ90分』やら、怪奇特集の中で使われた『ダンダダン!』て効果音。

 くそ、AIを使いやがったなぁ?

 スタジオのみんなも、テレビの視聴者も気づいてきやがる。

 むろん、この小悪魔のマユさまもな。

 AIは魔法みてえなもんで、なんでもやっちまうし予測も出来ねえ。映像表現的には小悪魔以上だ! だけどよ、AIと気づいたとたん、なんか醒めてきやがる。よく分かんねえけど、AIはコンピューターだろ、コンピューターは機械だろ、機械に騙されると醒めてくるのは人も悪魔も同じみてえだ。

 すると、画面に普段の会長が現われて、しみじみと語りだしやがる。こいつもAIのフェイクだろうと思ったら、こんなことを語り始めやがった。

 
「実は、このAKRのオーディション。最初は四十八人いたような気がするんだよね。だって僕ね、最初に受験者きたときにオモシロ半分で、自販機の空き缶人数分だけ別にしといたの。そいで審査の後、全員合格でやろうってことになって、書類見たら四十七人。僕もそう思いこんじゃってて、そのままいったんだけどね、あとで空き缶数えたら、やっぱり四十八個あるんだよね。いや不思議……今日はAIに手伝ってもらってハチャメチャやったけど、これだけはホント。異世界だか霊だか悪魔か天使か分からねえけど、そういうもんの力が働いてるような気がする。昭和生まれのボキャ貧だから上手いことは言えないけど、なんというかぁ……奇跡は起こると思う。うん、奇跡はおこる!」

 そこまで言うと、スタジオを仕切っていたカーテンが開いて「……奇跡は起こる!」の気持ちを引きずったままの会長が現れる。

「クララ、そんな顔してないで、ここにきて僕と握手しろ」

 ええぇ……(;'∀')

 めちゃくちゃいやそうに握手するクララ。

「どうだ?」

「あ……この気持ちの悪い感触は本物!?」

 それからAKR全員、スタジオの全員、それから会長はの手すきのやつらとAKR全員を引き連れスタジオの外に出て、行き交うテレビ局のやつらと握手。さらに、玄関から出ちまって、出くわした誰彼かまわずに握手していきやがった……

 
 その夜、黒羽と美優は夫婦として、最初の、そして最後の時間を美優の部屋で過ごしやがる。

「あと……一時間だね」

 美優が、ポツンと言った。

「そんなことは、分からない。オレは奇跡を信じる……」

 黒羽は、美優の肩を抱きながら、静かに言った。

 二人は、次第に無口になっていくことを予感していたので、テレビをつけて、録画しておいた『AKRをでっちあげる人たち』を流している。いっしょに出た番組を観て、会長のハチャメチャで押しつけがましい愛情を感じ、二人で笑いながら美優は逝きたかった。

「アハハハ……」


 会長のヨタ話のところでは、美優は自分の、黒羽は新妻の死が、そこまで迫っていることを忘れた。

 CMになって思い出しやがったぞ(°´ω`°)

「あ……時間だ」

「美優……!」

「しっかり抱きしめて。わたし英二の胸の中で逝きたい……」

 二人は、そうやって、その瞬間を覚悟して待った。

 そして、一時間過ぎたころ、美優の胸の中から息絶え絶えの声がしやがる。

 ?

 誰の声かと思ったら、笑っちまう、マユ自身の声だったぜ(^_^;)


――ガン細胞……みんなやっつけた……ぞ――



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!87『会長企てやがる』

2024-12-11 08:35:09 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
87『会長企てやがる』 






 その日の美優はずっと黒羽といっしょだ。


 でもな、二人きりというわけじゃねえ。

 黒羽はディレクターとして、美優は衣装制作者としてフジヤマテレビで特番に出演するんだぜ。

――AKRをでっちあげる人たち――

 実に開き直ったタイトルで、ディレクターから、振り付け、メイク、衣装、果ては事務所の食堂のおばちゃんにいたるまでの総出演だぞ!

 裏話や、とっておきの話とかのト-クショ-でよ。その間メンバーは言われ役で、笑ったり、顔を真っ赤にしたり。そして要所要所でAKRのヒット曲が挟まれるって満腹な企画だぜ。

「え、会長、またアレやるんですか( ゚Д゚)!?」

 放送局の廊下をモップ掛けしてる掃除のオッサンが会長であることに気づいた黒羽Dが目を剥きやがる。

「またじゃない、今度は局の清掃スタッフだ」

 クルンクルン

 自信満々にスピンして、胸と背中のロゴを見せやがる。

「親しいとは言え、ここはテレビ局。うちのスタジオじゃないんですからね」

「わかっとる、細工は流々、黙って見てろ。ここの株の二割は俺のだからな、文句は言わせねえ」

「…………(-_-;)」

 会長が廊下の向こうに行くのを確認すると、副調整室に向かい「実は、うちの会長が……」と局のデレクターにバラしやがる。デレクターも一瞬ひきつりやがるけど、局のえらいやつも会長には逆らえねえ。

「実は、会長が……」

 控室で美優にも話しておく。口には出さねえけど、残り時間の迫ってる美優に心配や強い刺激は避けさせたいって、黒羽の気配りだ。

「それは心配ね」

「うん、でも何があってもぼくがカバーするから、美優は心配しなくていい」

「うん、だいじょうぶ」

 新米亭主の気遣いを嬉しく思う美優だったけど、どこか楽しみにもしてやがる。

 黒羽Dは、こっそり他のスタッフに「会長の居場所は、逐一ぼくに教えて。本人は化けてるつもりだから、気付かないふりでね」と念を押しやがる。

 美優は分かってやがるんだ。最後の時がくるまで、会長は美優を楽しませてやろう、少しでも最後の時間が来るのを忘れさせてやろう。そう思って、あれこれ企ててくれているんだと見破ってやがる。

「よし! じゃあ、わたしも楽しまなくっちゃ!」

 そう決心すると、今までよりもウキウキとしてきて廊下に出た。

 会長がそのつもりなら、こっちからも攻めに出て、もっと面白くしてやろうと思いやがった!

 小さいころ何度か会長に遊んでもらった。アキバの冒険だったりかくれんぼだったり。あのジジイの逃げたり隠れたりのクセなら少しは分かっているつもりの美優だぜ。

 ジジイの裏をかく!

 そう思うと、ウキウキを越してワクワクしてきやがる(^_^;)。

 そして、五分後、三階の廊下を掃除しているジジイの後姿を見つけやがった!

「見っけ!」

「わ!?」

「さあ、観念してください、会長(^▽^)/」

 手を離してやって、こっちを向いたのは本物の掃除のおじさんだったぜ!

 

☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!86『会議室に入って驚いたぜ!!』

2024-12-10 09:11:14 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
86『会議室に入って驚いたぜ!!』 





 廊下に出ると、さっきの外人のオヤジ。目が合うと英語でなんだか言ってきやがって、握手。通訳のネーチャンと笑顔を残していっちまいやがる。

 会議室に入って驚いたぜ!!

「美優ちゃん、これに着替えて」

 衣装の篠崎がウェディングドレスを持って待ちかまえてやがる。ヘアーやメイクさんも揃っていやがったぞ。


「こ、これって……」


 九十分ほどかけて、美優は花嫁姿にされちまった。プロ達の手際としては時間がかかりすぎていやがるけど、それは、美優が朝寝坊で、顔もろくに洗っていなかったからだ。

 シャワーから始まり、シャンプー、スキンケア……そして、着付け、ヘアセットとメイクの同時進行。

 そのころになって、届けた衣装が一着多かったことに気づいた。

 ウェデイングのリカちゃん人形が仕上がって廊下に出ると、AKRの研究生のやつらが廊下に並び、そいつらに拍手で連れていかれてスタジオに入った……。


 なんということだ! スタジオが教会に変わっていやがった!


 真ん中に真っ赤なバージンロ-ド。左右の席には、AKRのメンバーや研究生、スタッフのやつら。前の方には留め袖姿の母とブル-のドレスの由美子が立っていやがる。

 そして、一段高くなったところには神父のおっさん。そして、そして……その前にはタキシードの花婿の姿で黒羽が、緊張した顔で立っていやがった!

――そうか、みんなで仕組んでやがったんだ。道理で衣装が一着多いはずだぜ。スタジオのシートにくるまれていた秘密の道具もこのためだったんだ――

 呆然と立ちつくしていると、脇を小突かれた。会長がタキシードに白手袋で腕を差し出してやがる。美優はギクシャクと会長の腕に腕をからませた。

 タ~ンタ~カタンタンタンタン♪ タンタカタンタ~~~ン♪♫

 するとキーボードがパイプオルガンになり、メンデルスゾーンの結婚行進曲を奏で始めやがる!

 美優は感覚がマヒしてしまったぞ。

 まるで全てが分かっていたみてえに、堂々とバージンロ-ドを歩くことができた。最初の一歩は、危うくつまずきそうになったけどな、それで会場のみんなが一瞬クスっときて、動揺することもなかったぞ。

――わたし、英二さんのお嫁さんになるんだ――

 その思いさえも、ひどく冷静、パソコンのそっけないフォントみてえに思い浮かんだだけだったぞ。

 神父の前で黒羽と並んだ。

 神父は、廊下ですれ違った外人のオッサンだ。おごそかな顔で分からなかったけど、ウィンクされて、そうと気づいたぞ。こいつ、仕事で来日中のバチカンの枢機卿じゃねえか! 美優の中に居なきゃ体中にジンマシンが出てるとこだぜ(''◇'')ゞ!

 それから、神父は型どおりに式をを進行させ、いよいよエンゲージリング……そこで、

 ドキドキドキドキ! ドックンドックンドックン! バックンバックン!

 美優の奥底から竜巻みてえな感動が湧いてきやがって、マユはモミクチャになっちまうううう((;´✘;Д;✘`;))!!

 婚約指輪を外されていたことも、花嫁用の白い手袋をさせられたことも覚えてはいねえ美優。そんで、黒羽が、エンゲージリングをはめるため、そっと美優の左手をとったときの手の温もりが、やっと感覚をよびさまさせやがる! 夕べと同じ黒羽の手の温もり……!

「一言ごあいさつを」

 さすが会長、ここ一番という時は大きく見える……と思ったら、ハコ馬の上に乗ってやがる(^_^;)。

「本来ならば、きちんと仲人をたて、吉日を選び、わたしのようなインチキ野郎が、新婦の父の代役をすることもなく結婚式をやらねばならんのですが、新郎黒羽英二は、明後日の新曲発表後、AKRホンコンの立ち上げのため当分日本を離れます。黒羽君は自分で思っているほどには、女にモテやしません。その黒羽君と結婚の約束をしてくれた、美優ちゃんが心変わりしてはいけませんので、不肖わたくし光ミツルのグッドアイデアで、スケジュールの合間を縫って、ささやかながら、わがHIKARIプロのスタジオで、強引でインチキクサイ結婚式を執り行うことになりました。まあ、変態オヤジの酔狂とお許しください。しかし、式とわたしはインチキくさくはありますが、ここに集まった、みなさんの、二人の門出を祝福する気持ちは本物であります。そして二人の気持ちも……そうだよな?」


 新郎と新婦は頬を染めてうなづきやがる。


「それが確認とれたら結構、これから直ぐに区役所に行って婚姻届を出してこい。披露宴その他は、黒羽が帰国後ドハデにやろう。まあ、よかったら、美優ちゃんがホンコンにいっしょにくっついていくってのもありだけどな!」

 くだけて話す会長の目は全てを承知しているような光があった。ありがたいと美優は思ったぞ。

「さ、とりあえず区役所だ!」

「はい、直ぐに着替えます!」

「ばか、着替えてる時間なんかねえの!」

 美優と黒羽は、式のウェディングドレスとタキシードのまま、事務所のバンに乗せられ区役所に行くハメになった。婚姻届の証人になったクララが、どうしても付いていくときかず。そのまま放送局に行くことを条件に認められた。

 ロビーに突然現れたウェディングドレスとタキシード+AKRのクララに、区役所は一時騒然とし、その様子はヤジウマたちによって、その数十分後にはSNSに流れてしまったぜ。


 マユは、もうすぐ一億個目のガン細胞を壊すところだったぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!85『寝ぐせの髪とサムズアップ』

2024-12-09 08:36:31 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
85『寝ぐせの髪とサムズアップ』 




「あ……そうだったんだ(;'∀')」


 美優は、目覚めると黒羽のベッドなんで、瞬間とまどいやがる。

 夕べは、自分から望んで黒羽の部屋を訪れ、本当の恋人に成っちまいやがった。


 にしては……黒羽の姿が無え。


 「いつまで寝てんの。英二さんとっくにいっちゃったわよ!」


 階下からマダムの声がした。

――お母さん、夕べのこと知ってんのかなあ……?――

 階下のキッチンに降りると、母が美優のを残して朝食の後かたづけをしていやがる。

「英二さんも、忙しいわねぇ。今朝は、早くから記者会見なんだって?」

「ああ、うん。Pホテルでね。わたしは事務所のスタジオ。予備のコスできてる?」

「お店のカウンターの中に置いといた。でも、今度の新曲は、動き激しいのね、発表前に予備を八着も作るなんて初めてよ」

「なんたって、今度はオモクロとの対決だからね。振り付けの春まゆみさんも熱が入っちゃって、動きが激しいの。対決に勝ったら、ステージ増えるから、もう一揃え予備作るって。大もうけだねローザンヌも」

「そのときは、担当は美優ね。今度の曲は、美優の方が詳しいもの」

「……お母さん」

「世の中、いつ奇跡がおこるかも知れないもの……」

「……うん。わたしも信じてみる。だって、あと一日ちょっとで終わりなんて、ぜんぜん、そんな気しないもん」

「そうよね、快調そのものだもんね」

「……うん」

 お互いの目が潤んできたので、美優は大あわてで、トーストにスクランブルエッグを乗っけ、トトロのような大口を開けて、かぶりついた……で、その瞬間を、マダムがスマホで写メったぜ。

「あ、お母さん!」

「うん、美優の自然な感じがとてもいいよ。あとで英二さんに送っとくね!」

「もお~、母子の縁きるよヽ(`Д´)ノ!」

「アハハハハハ(ᵔᗜᵔ*) 」


 賑やかにじゃれ合いながら朝食をすませた。こんなふうにじゃれ合えるのも、あと一日……その思いは、ちょうど出勤してきたバイトのサエちゃんに向けた笑顔で忘れっちまいやがる。切り替え方がいじらしいぜ(^▭^;)。


 通りに出て気づきやがる。


――お母さん、黒羽さんじゃなく、英二さんて言ったよね……――


 マダムには、分かっていたのかもしれねえ。ショ-ウィンドウに映る自分の姿が、なんだか昨日までの自分と違ったような気がした……というか、髪に寝癖がついたままだぞ。

「ヤバイ(# ゚Д゚#)!」

 あわてて手櫛で整える美優……恥ずかしさと爽やかさが一度にやってきやがった。


 事務所に入ると、大柄な外人さんとすれ違いざまにぶつかりそうになった。外人さんは「ゴメンナサイ」とカタコトの日本語で言うと、ウィンクして行っちまいやがる。


 若いスタイリストに予備のコスを渡すと、一着多かった。まあ、急な数の変更などしょっちゅう。マダムが数を言い違えたんだだろう。衣装チーフは伝票を確認するとあっさりサインしたんだから、間違いなしだ。

 それから、美優は会長室のモニターでレッスンの様子を見にいったぞ。

 今朝は、記者会見のために選抜メンバーはいねえ。研究生のアンダーやつらが春まゆみにしぼられてやがる。アンダー(アンダースタディー=万一の場合にそなえた代役)だけど悪魔みてえに真剣だ。

――わたしも、こんな風に燃焼……そんな時間はもう無い。英二さんとの時間だけを大事にしよう……ああ、だめだめ、ネガティブは――

 頭を切り換えると、自然に『コスモストルネード』に合わせてリズムをとりやがる。


「やっぱり、高校生のときにスカウトしとけばよかったな」


 いつのまにか、会長が並んで座っていやがる。

「あ、失礼しました!」

「いいよ、いつでも見ていいって言ったのはオレなんだから。しかし、ほんとに美優ちゃん、いけてたよ」

「そんな、わたしなんか、とんでもない!」

「いいや、美優ちゃんは、ミス乃木坂に選ばれたじゃないか」

「文化祭のイベントですよぉ。それも何年も前の話です(^_^;)」

「二年前に準ミス乃木坂に選ばれた坂東はるかは、今や新進気鋭の女優だよ」

「それは、たまたま坂東はるかって子に才能があったからです」

「あの子のディレクターは白羽ってんだけどね、ずいぶん食い下がってモノにしたみたいだ」

「黒羽さんだって……」

「あいつは、せっかくのスターのタマゴを自分一人だけのモノにしやがった」

「え……?」

「なんでも」

 会長はルパン三世みてえに肩をすくめやがった。

「あの、スタジオの奥にシートでかけてあるのは、なんですか。無かったですよね、今まで」

「オレのアイデアで、道具ふやしたの。まだ企業秘密」

 コンコン

 そのとき、会長室をノックして、衣装の篠崎が入ってきやがった。

「ちょっと、美優ちゃん。衣装のことで」

 顔つきが怖い……やっぱり、なにかミスでもあったのだろうかと美優の顔が引き締まる。

――ほう、父親似だと思ってたけど、ちょっとマダムに似てきやがった――

 ミツル会長は、腕を組んだまま小さくサムズアップしやがった。

 美優は、マダムと相似形の顔になって、楽屋を兼ねた会議室へと向かったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!84『婚姻届』

2024-12-08 06:45:44 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
84『婚姻届』 




 クロマキーの撮影はにぎやかだったぞ(^▽^)。

 グリ-ン一色のスタジオで、宙づりになったりデングリガエシになったりしてよ。 知井子なんか、首から下はグリーンの前進タイツを着せられ、一人で『コスモストルネード』を歌わされたりしたぞ(^_^;)。

 ラッシュを見ると、グリーン一食の世界で、自分の首だけが歌っているようで、なんともケッタイなんだけどよ、映像スタッフがPCのエンターキーを押すと、ティンカーベルの妖精みてえな姿になりやがって、コスモス畑の真ん中で、メンバーに取り囲まれて歌っていやがる。

 黒羽Dと美優は、昨日ほどには恋人らしくなかった……というか、距離の取り方が自然で、最年長の服部八重なんか『かえって自然な関係に見えた』って言ってゃがった。

 クロマキーの撮影は、CGとの合成になるんで一見簡単そうだけどよ、CGの画面と完全にシンクロさせることは意外にむつかしい、シーンによっては、テイク二十ぐらいいくものもあって、昼の休憩は午後の一時半を回っちまったぞ。

 控え室が狭いんで、メンバーの半分とスタッフは、スタジオのそこここで、ロケ弁を食ってるぞ。


「ちょっと、美優ちゃん、いいかな」


 スタッフといっしょに衣装直しのチェックをしながらロケ弁を食べている美優に、黒羽Dが声をかけやがった。

「ちょっと待って、打ち合わせ終わって、お弁当食べたら……で、いい?」

「あ、ごめん。むろん、それでいいよ、そこの事務スペースで五分後」

「うん」

 今日の二人の何気なさは、それを仕事の打ち合わせと思わせ、服部八重でさえも気がつかなかったぞ。


「この子達の動きに合うようにするんですね」

 大石クララがCGの画面にくいいってやがる。

「多少は、CGに手を加えて直せるけど、オモクロ対決には間に合わせろって、会長のお達しだから」

「みんな、がんばるんだぞー!」

 おおー!!

 クララが檄を飛ばすと、みんなが拳を突き上げた。突き上げた半数の拳には、まだお箸が握られていたぜ。

 AKRの新曲発表に、みんな、並々ならぬ闘志が籠もっているぜ!


「もう、どこ行ったのよ?」


 事務スペースに、きっちり五分後にやってきた美優は言い出した黒羽Dがいねえことに、口を尖らせやがる。

「やあ、ごめんごめん。みんなのテンションが高いんで、午後の分の打ち合わせにも熱が入ちゃって……これにサインとハンコくれる」

「うん」

 美優は、納品関係の書類だと思って、気楽にハンコを出しやがる。

「……これは」


 書類の左上には「婚姻届」と記してあった……ぞ!!


「英二さん……」

「異議あり?」

 美優はブンブン首を振った。

「じゃ、お気楽に……早く」

「フフ、これって一種の納品書ね」

「どっちが納品されるの?」

「英二さん。だって、先に名前が書いてあるから、わたしが受領者……ね」

「尻に敷かれそうだ……」

 美優は、ポーカーフェイスで署名捺印した。スタジオのみんなは気にも留めないか、仕事上の書類のやりとりだろうと思っていたぞ(〃艸〃)。

 と、そこに一陣の風が吹いてきやがった!

 スタッフが、午後から使う送風機のテストをやりやがったんだ。むろんみんなの邪魔にならねえように、外に向け、パワーも微弱にしてあったけどな。壁を伝った風が、その書類を吹き飛ばすのには十分な力があったぜ。

 そんで、その書類は、スタジオのセットの前に輪になっていたAKRのメンバーの真ん中に落ちてきやがったぞ!


「なに、これぇ……?」


 知井子が、それを拾って、マユの体を借してる拓美が気がついたぞ!

「これ、婚姻届……じゃん!」

 拓美がマユの声で叫ぶと、メンバー全員が、磁石にくっつく釘のみてえに集まって歓声を上げやがる(^_^;)!

 ウワー! キャー! ウソ! ヤダー! ガチ!

 口々に年相応の短い感想を叫びやがって、スタジオの隅で固まっている黒羽と美優にいっせいに目を向けやがった……。


「親父、見えるか、これが……」


 黒羽は、美優とベッドの傍らに立ち、しわくちゃになった婚姻届をかざしやがる。

「今日は、ほとんど意識が無いの……」

 妹の由美子がポツリと言った。

 黒羽ジジイの命は、美優同然、あと二日余りになっていやがる。美優はマユが電池代わりになっているんで、まるで病人には見えねえけど、黒羽ジジイは末期ガンそのままで、意識もはっきりしねえ。

――ジジイの手を取ってやれ――

 マユは、美優の意識に働きかけたぞ。

 美優が手を取ると、ジジイはうっすらと目を開けやがった。マユがエネルギーの一部を父に送ってやったんだ。

「……ああ、来ていたのか」

「昨日は、仕事でこられなかったけど、今夜は……二人揃って来た」

「お義父さん。これ見てください」

「婚姻届……いいのかい、美優ちゃん……」

「だって……だから言ったでしょ。わたしは本当に英二さんと結婚するって」

「そうか……その指輪?」

「うん、親父が、お袋に送った指輪を作った、同じ店で」

「そうか……昨日は、ちがう指輪のように見えたが」

「ちゃんと、覚悟の程を、ちゃんとお義父さんに分かってもらうために、英二さん作り直してくれたんです」

「分かってくれたかい、親父?」

「ああ、美優ちゃん……このボンクラを、よろしく頼むよ」

「ボンクラはないだろう」

「ああ、すまん。英二にしちゃ、上出来だ。好きな女を清いまま……オレは、てっきり、お前のヤラセだと思っていた」

 美優の心臓は大きく高鳴って顔が真っ赤になってきやがった。だからよ、使うエネルギーも増えちまって、ジジイに送っていたエネルギーを遮断したぞ。

「あ、眠っちゃった……きっと安心したのね」

 由美子も嬉しそうに父の手を握って、掛け布団の中に収めてやったぞ。


 その夜、家にもどり、食事やあれこれをすませ、お風呂に入ったあと、美優はいったん自分の部屋に戻りやがる。

 そしてガウンを着て黒羽の部屋の前に立ちやがる。そして……大きな深呼吸をしてドアをノックしやがった。

 コンコン

「どうぞ」

 黒羽の声がした。

「え、英二さん……(//▭//) 」

 声がかすれてやがる。

 美優は、自然な飛躍をするために、ゆっくりとドアの中に身を滑り込ませていきやがった……。


 マユは、美優の体の中で3200万個目のガン細胞を殺しにかかるところだったぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!83『再びの婚約指輪だぞ!』

2024-12-06 07:10:53 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
83『再びの婚約指輪だぞ!』 


 


「その婚約指輪……返してくれないかな」


 クロマキー用の貸しスタジオに行く車中で、黒羽がサイドブレーキを引きながら言ったぞ。

 M坂の交差点にかかったところで、信号にひっかかっちまってよ。ここの信号はめちゃ長げえ。

「……どういうことなの?」

「それは、会長が用意したとりあえずのものだ……これ、オレが自分で買った」

 ゴソゴソ……

 黒羽は、ポケットから指輪の箱を取りだした。

「英二さん……」

「親父のためじゃなくて……オレと結婚してくれないか」

 この行動に移るまで、黒羽は三時間半かけやがった。

 最初の三十分は、美優の寝顔を見ていた。そして自分の気持ちに確信が持てると、すぐに行動を起こしやがった。


――近所の宝飾堂なんかじゃだめだ!――


 黒羽は、父が亡くなった母のための婚約指輪を作った銀座のT宝飾店まで足を伸ばし、開店前にもかかわらず、シャッターを叩いて、この指輪を用意しやがった。

 指輪ができると会長のマンションに直行、必要な話をして、会長を説得するのに、四十分の時間と二リットルの水分を費やしやがった。会長の日課のジョギングに付き合いながらの話になったからな。

 それから、会長のマンションでシャワーを借り、スポーツドリンクの二リットルボトルをもらって、区役所に寄り、踊る心臓をなだめながら、車で美優を迎えにきやがったんだ。


「……やっぱり、それはだめ」


 長い間をおいて、美優は大粒の涙を流しながら応えやがった。

「どうして……こんなオッサンじゃだめか?」

「そうじゃない、そうじゃない。わたし英二さんのことは大好き……」

「だったら……」

「わたし……英二さんに秘密があるの」

「それは……」

 ちょうど信号が変わって、車はゆっくりと堀端のK坂を上っていく。

「なんの……どんな秘密なんだ。愛してるって気持ちを殺さなきゃならないほどの秘密なのか……」

 美優は、スタジオに着くまで、ずっと黙って涙を流していたぞ……。


 黒羽は、スタジオの駐車場に車を止めると、静かに言いやがる。


「その秘密って……美優ちゃんの命が……あとわずかってことか……」

「……どうして、そのこと?」

「今朝、お母さんから聞いた……」

「同情からなんか、まっぴらよ!」

 美優は、ドアを開けて逃げようとした。けども、黒羽は、美優の右手をしっかりとつかまえて離さなかったぞ。

「似たようなことは、マダムにも言われたよ。親父のためのガセ婚約なら止めてくれって……オレ、しばらく美優の寝顔を見ていたんだ。そして確信が持てた。オレは黒羽英二は吉永美優を愛してるって……」

 それから、黒羽は、ここにいたるまでの、今朝の慌ただしい行動の説明をしやがった。

「……じゃ、二週間後には香港に行くの?」

「ああ、AKR47HONGKONGを立ち上げるためにね。いっしょに行こう。新婚旅行を兼ねて」

「そこまで……わたしの命はもたないわ」

「人生には奇跡がある。ガンで死を予告されて、その後ずっと生き続けている人だっているんだから。オレが、きっと美優のガンを治してやるから、きっと治して……」

「英二さん!」

 美優は、やっと黒羽の胸に飛び込みやがった(^_^;)。


「ここからは、十八禁!」


 早めにスタジオに来ていたメンバーの何人かが、植え込みの陰から、この様子を見ていやがったぞ。

 唯一成人の服部八重が、知井子や萌を植え込みに引っ張り込む。マユの体を借りている拓美は、こう思いやがった。

――バカな交通事故で死んでなきゃ、わたしの命の半分もあげるのに――

「みんな、今日の仕事が終わったら明日の準備。黒羽さんたちに気づかれないようにしっかりね!」

「おお(>▢<)/ !」

「バカ、声が大きい」

 知井子は叱られてやんの(^_^;)。


 そんで、マユは2250万個めのガン細胞を殺していたぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!82『沈む夕日は朝日に似てる』

2024-12-05 07:48:13 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
82『沈む夕日は朝日に似てる』 




 今夜は、明日のスタジオ撮りの準備のため黒羽は帰ってこねえ。
 
 あらかじめ分かっていたことだけど美優はとても寂しかったぞ。人生の一日一日がこんなに大事なものだと思ったのは初めてのことみてえだ。

 美優は黒羽の下宿部屋になった親父の部屋で一晩過ごしてやがる。ドロシーのお下げを三回叩き『オーバーザレインボー』を繰り返し聞いてやがる。


――三日で、虹の彼方にたどりつかなきゃ――


 そう思っているうちに美優は眠りにおちてしまいやがった(^_^;)。

「まあ、こんなところで寝てしまって……」

 明け方になって気づいたマダムは、美優の手からドロシーの胸像をそっと取りあげやがる。

「よいしょっと……フフ、何年振りかしら……」

 その見かけよりも強い力で美優を抱き上げると、美優の部屋まで連れて行きやがる。


「マダム……」


 黒羽の声が聞こえたのは、美優を抱きかかえたまま、どうやって美優の部屋のドアを開けようかと苦心している最中だったぞ。

「ボクが代わります」

 黒羽は、ドアを開けてからマダムの手から美優を受け取り、ベッドに寝かしつけやがった。

「……可愛い寝顔だ。むかしのまんまだな」

「黒羽さん。あなたスタジオの方は?」

「あ、会長命令で、もどってきました」

「ミツルクンが?」

「あんまり、わたしが働きすぎると、若い者が育たんと言われました」

「そうね、その気持ちは分かるわ」

「マダムだって、美優ちゃんをそうやって育てているんでしょ。昨日のロケの衣装直しは、美優ちゃん一人に任せていたし」

「……黒羽さん、お疲れのところ悪いんだけど、少しいいかしら」

「え、ええ」


「この店は、わたし一代でおしまい」


「じゃ、美優ちゃんは……」

「東の空が明るくなってきた……この朝とも夜ともつかない時間は、墓場の死人でさえ、起きあがって真実を語る」

「シェ-クスピアですか?」

「わたしよ……シェ-クスピアらしく聞こえたら光栄だわ。こう見えても、若い頃は女優志望だったの。オタクの会長さんが、田中米造の本名でフォークやってたころの大昔」

「そうだったんですか、道理で魅力的な人だと思ってました」

「美優のことは、どう思ってるの?」

「そりゃあ……可愛いくて、チャーミングで、見かけによらず働き者……」

「そんな営業用の言葉じゃなく、本当のところを聞かせて……!」

「マダム……」

「あなたのお父さんのために、かりそめの婚約者をやっているけど……美優は本気よ」

「それは……」

「もし、あなたに、その気がないなら、お父さんには悪いけど、もうおしまいにしてやって」

「マダム……」

「実は……あの子の命は、あと三日とちょっとしかもたないの」

「え……治ったんじゃないんですか( ゚Д゚)!?」

「薬よ……新薬なの。末期のガン患者を、その命の灯が消えるまで元気でいさせてくれる。だから、その瞬間まで、あの子の好きなようにやらせようって決心したの。好きなところに行って好きなことやりなさいって、わたしのゴールドカード渡してある。でも、あの子は、病院から、ここに戻ってくるタクシー代に使っただけ。あとは自分の貯金。あの子全額下ろしてる。あの子には、あと三日とちょっとが一生の全て。だから、たとえお父さんのためでも、偽りの恋人なら、もう止してあげてちょうだい。あの子は見た目には昇る朝日だけど、もう日没寸前の夕陽なのよ」


 昇り始めた朝日に照らされた黒羽は、しばらく言葉もなかったぞ。


 マユは、もう少しで二千万個目のガン細胞をやっつけるところだった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!81『黒羽Dがんばる!』

2024-12-04 08:39:38 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
81『黒羽Dがんばる!』 




 黒羽のジジイは分かってやがる。黒羽と美優は、自分を安心させるために見せかけの婚約をしていることをな。

「違います!」

 しかし、美優は、はっきり言いやがった。

「違います。わたし、本当に英二さんのこと愛しているんです」

 でも、ジジイは、こう返してきやがった。

「……だとしたら、それは錯覚だよ。婚約者の役を引き受けたのは、俺の命が長くない……そう聞いてからだろう。二人を見ていれば分かるよ……二人は、まだ清いままだ」

 清いまま……国宝になりそうなくれえ古風な言い回しだけど、核心をついていやがる。

「オヤジになに言われたの?」

 ハンドルを握りながら黒羽Dは聞きやがる。

 軽い調子だけど、かなり気にしていることが美優にもマユにも分かったぞ。

「ナイショ」

「厳しいこと言ったんだろ。外面はくだけたジイサンだけど、身内にはキビシイからなあ。まあ、年寄りの繰り言と聞き流せばいいよ」

――そうだよね、お父さんは、とても優しく接してくれて、心配もしてくれた。でも、厳しく現実は見抜いていた……いや、違う。わたしは、ほんとうに英二さんを愛してるんだからね――


 それから二日がたった。


 コスモストルネードは、プロモーションビデオの段階にさしかかっていた。

 マユのアバターを借りた拓美もリーダーのクララも知井子も、他の選抜メンバーも歌と振りは完成していたぞ。


 プロモの撮影は、隣りのS県のコスモス畑でおこなわれたぜ。


「すごいだろ!」


 黒羽は、衣装のアシスタントとして付いてきた美優を含める全員に自慢しやがる。

 黒羽は仕事の上では公私混同はしねえ。美優も、カメラテストの終わったメンバーの衣装の手直しを真剣にやったぞ。あくまでローザンヌの仕事だという姿勢は崩さねえ。

 プロモのディレクターはゲームクリエーターの岸川という、まだ二十代前半の若い奴だ。

「岸川君は、『アイドルチャレンジ』で立て続けにミリオンとってるやり手だからな。きっといいプロモにしてくれるよ」

 黒羽が、そう紹介すると、メンバーのみんなが騒ぎやがる。

「え、ウソー! あのアイチャレ作ってんですか!」

「わたし、クリアーしちゃった!」

「続編でるんですか!?」

 AKRのメンバーの中にも、かなりのファンがいるようだ。そのためにメンバーとクルーのモチベーションは最初から高くて、チームワークもいいぞ。

 なんといっても、メンバーのほとんどがアイチャレにハマったり、知っていたりしていたんで、最初から共通のイメージを持って撮影できたことが大きい。

 まったく新しいものを一から作るより、アイチャレをブースターにして打ち上げた方が確実に軌道に乗る。乗ってしまえば、回を重ねるごとに自ずとAKRらしさが出てくると、この人たらしディレクターは目論んでやがる。
 そんで、企まずして出て来た『らしさ』の中から、次の本当のAKRの色と形を掴もうとしてやがる。

『二番煎じで墜落すんなよ』

 会長には言われてやがるが、会長もそうやってフォークの枠から突き抜けてきやがったんで、それ以上には言わせねえ。

 
 予定より二時間も早く撮影が終わって明くる日はスタジオ撮りだ。 そんで、週末の新曲発表は、いきなりオモクロとの対決というブースターが付くことになりやがった。

 オモクロが、新曲の『秋色ララバイ』をぶちかまし、合同発表ということになった。しかし、ただの発表ではつまらねえ。

 収録に審査員。そして会場の観客。さらにはテレビとネットの視聴者にも投票してもらい、順位を付けることになってやがる。
 ただの新曲だけの勝負では負けた方が営業上のダメージが大きく、九十分の特番としては尺が余ってしまうので、AKRもオモクロも独自の選曲で、三曲づつぶつけ合い、その間にもトークなどがあって、最後に投票結果が集計され、フィナーレで結果が発表されるちゅう、失速してる間もねえ企てだ。

 この分かり易くセンセーショナルな企画は、HIKARIプロの会長が発案し、オモクロが受けるカタチで決まった。黒羽Dは独自に突っ走りながらも、会長へのヨイショも抜かりがねえ。


――まんまと罠にはまったな――


 オモクロの上杉プロディユーサー兼チーフディレクターは笑みをこぼしやがった。だけど、オモクロのことは、もうちょっと後でな。

 
「ごめんなさい。英二さん、今夜は来れなくて……」

「いいよ美優ちゃん」

 美優が病室に入って最初の会話だ。

「由美子、ちょっとの間、この酸素マスク外してくれよ」

 ジジイが、夕べよりもか細くなった声で言いやがる。

「……いいわ。でも三十分だけよ」

「頼む」

「三十分たたなくっても、顔色変わったり、モニターのアラームがなったら、そこでマスクジイサンになってもらうからね。じゃ、美優……お義姉さん、よろしく」

 年上の由美子から言われて、少し落ち着かなかええけど、気遣いは嬉しい美優だったぞ。

 昨日もそうだったけど、黒羽の父は、美優がかりそめの婚約者だとは言わなかった。ほんとうに息子の嫁に話しかけるみてえに、うち解けて話してくれやがる。

「ハ……あいつも、なかなかやるもんじゃないか……」

 オモクロとの対決を話した時などは笑ってくれた。もう声を出して笑う力はなかったが、目はしっかり笑っていた。
 
 対決番組の収録まで、あと五日。

――わたしの命は……あと四日。神さま、お願いです。英二さんの勝利が分かるまで、一日だけ命を延ばしてください――

 頼む相手が違ぇだろ!

 マユは、必死で五百万個目のガン細胞を殺しにかかったぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!80『二人で病院に向かったぜ』

2024-12-03 08:55:19 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
80『二人で病院に向かったぜ』 





 ゼーーゼーーゼーー(:.;゚;Д;゚;.:)

 み、美優のガン細胞を1万個ほど壊したぜ……よ、予想よりも早い速度だぜぃ。で、でもよ、ガン細胞は眠っているとはいえ、数億個……数億個……間に合うかなあ(-_-;)。


 黒羽が美優の家に下宿することが決まると、飯を食って、二人で病院に向かったぜ。

「すまない、美優ちゃん……」

「え、なにが……?」

「こんな親不孝なオッサンのために、婚約者の真似事させて」

「またぁ……真似事なんかじゃないわ」

 グイ!

「キャ」

 後ろから強引に追い越しをかけてきた車をよけるため、黒羽Dはハンドルを左にきった。

「あっぶねええなあ……!」

 ハンドルをきった勢いで、美優の頭が、黒羽の肩にぶつかっちまった。

「ごめん、急にハンドルきって」

 美優はよぉ、黒羽の肩に寄り添ったまま体を動かさなかったぜ。

「……英二さんの温もりを感じる」

「……美優ちゃん」

「この温もりを自然に感じるぐらいでなきゃ、本物の婚約者には見えないわよ」

「そ、そうだな……」

 黒羽は、自分でも意外な自然さで美優の肩を抱いたぜ……。


「親父、婚約者なんだけど……」

「ハハ、やっぱりハッタリ……そんなもん、いやしないだろう」

「兄さん……(;'∀')」

 妹の由美子が困ったような顔をした。

「それが、その……」

「いいよ、ハナから期待なんかしてねえから」

「……廊下に待たせてある。いいかい入れても?」

「……英二」

「入ってもらっていいかい?」

「もちろんよ!」

 由美子がドアを開けると……真っ正面に美優が立っていた。


「「わ……!」」


 あまりの近さに、由美子と美優は同時に驚きやがった(^_^;)。

「し、失礼します……」

「あ、あんたが……」

「吉永美優と申します。英二さんと結婚します……よろしくお願いします!」

 美優の緊張した挨拶に、親父と妹はクスクスと笑ったぜ。

「あ、ごめんなさい。わたし妹の由美子です。美優さんこそ、いいんですか、こんなオッサンで?」

「そうだよ、歳が離れすぎとる。それに英二には……可愛すぎる」

「わたしバカだから、若く見られますけど、英二さんとは十歳しか離れてないんです」

「あ……十一歳。オレ、先月誕生日だったから」


 それから、四人の楽しい語らいになったぜ。


 由美子は年下の義姉ができることを面白がり、その語らいの間は親父の死が間近であることも、自分自身、最近こうむった心の痛手も忘れやがった。

 英二は、親父にせがまれるまま二人の成り染めを話しやがる。ただ婚約した時期は二か月ほどサバを読んでやがるけどな。

「え、じゃあ、美優さんの方から、その……プロポーズしたの!?」

「口ではね。態度では、英二さんの方が先でした」

「そりゃ、そうだろう。こんな可愛くて、歳が離れてるんだもんな」

「親父も、母さんとは八つも開いていたじゃないか」

「確かにな。しかし母さんは、こんなに可愛くはなかったからな」

「え、じゃあ、こういう偏屈オヤジと可愛くない母さんの間に生まれたわたしは、可愛くないってこと?」

「いや、由美子は可愛いぞ。由美子を製造したときは、俺、キャンディーズの蘭ちゃん思いながらだったもんなあ。由美子が生まれる前の晩なんか水谷豊の写真付けたわら人形に五寸釘打ち込んでたからなあ、アハハ!」

 黒羽の親父も、死が間近に迫った病人とは思えねえぐらいの陽気さでやがる。
 
「さあ、これで親父も納得しただろう」

「うん。したした」

「そろそろ帰る。明日も早いから。じゃ、美優ちゃん……」

「はい」

「なんだ、もう帰んのか……」

「また、明日も来ますから……ん?」
 
 黒羽の父が、美優のスカートの端をつかんでいた。


「ちょっと、美優ちゃんと二人にしてくれんか」

「親父……」

「いや、黒羽家の嫁として話しておきたいことがあるんでなあ」

 仕方なく、由美子と黒羽は廊下に出たぞ。


「美優ちゃん……すまんなあ。婚約者のフリをしてくれて」

「お義父さん……」

「本物かどうかは、この歳になりゃ分かるよ。俺の命が長くないから……引き受けてくれたんだろう」

「ち、違います! わたし、本当に英二さんのこと愛しているんです(>◇<)!」

「……だとしたら、それは錯覚だよ。婚約者の役を引き受けたのは、俺の命が長くない……そう聞いてからだろう。二人を見ていれば分かるよ……二人は、まだ清いままだ」

「え、あ、わたしたち……(''◇'')」


 そこまで言って言葉につまる美優だったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!79『オーバーザレインボー』

2024-12-02 08:10:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
79『オーバーザレインボー』 




 美優は8桁の数字を入れエンターキーを押したぞ……すると、数秒たって親父が画像になって現れたぜ!


『ハハ、見つかってしまったな。もう見つかった……やっと見つかった……どっちだろう? 多分やっとだと思う。美智子のことだから、わたしの部屋はしばらく手を付けないで、そのままにしているんじゃないかと思う。

 だから、これを見つけたということは、わたしの部屋を他の目的に使う必要が出てきたことだと思う。どうだい、それも美優が必要になったからだと……当たったかな? 

 美優は自分の部屋を持っているから、この部屋の使い道は……お母さんを助けて店の手伝い。そして、そんな美優を助けてくれる素敵な男性が見つかったから……お父さんは、そう思っている。 美優は、一人っ子で優しい子だから、きっとそうだと思っているよ。もし違っていたら、腹を抱えて笑ってくれ。

 店は繁盛しているだろう。美智子はバブルの時でも下手に仕事を広げたりはしなかった。堅実に店を守り、マスコミ関係の仕事も確実に取り込んでいる。HIKARIプロの事務所移転と拡張にも目を付けている。わたしも、あそこは先物買いとして狙い目だと思う。

 ヒカリミツルは奇行の多い人だけど、しっかりした経営戦略を持っている。彼は、芸能界……古いなあ、エンタテイメントの世界に、新しいスタイルを提示してくるだろうな。

 話が仕事っぽくていけない。

 一つ心配事……お父さんの家系はガンに罹る者が多い。親父も祖父さんもそうだった。まさか三代続くとは思わなかったよ。お父さんの数少ない、でも大きな見込み違いだった。 美優がお母さんの血を多く受け継いでいることを願っているよ。

 でも、検診はしっかり受けてな……ええと、このドロシーの胸像の下のロゴに暗証番号……ハハ、ばかだな。見つけたから、これを見てるんだよね。

 ドロシーのお下げを両方いっしょに三回叩くと……ほら、『オーバーザレインボー』が聞こえる。これを見ている美優とお母さんが、虹の彼方に着いていることを願っているよ。あ、もし、美優の彼がこれを一緒に見ていたら……二人のことをよろしく。じゃあね……』


 そこで、父はバイバイと手を振りやがる。そして……『オーバーザレインボー』がステレオになったぞ。


「こんな男で……こんな事情で申し訳ありません」

 黒羽Dが、二人の後ろに立っていやがった。

「英二さん……」

「一応、声はかけたんですけど、無断ですみません。お父さん、素敵な人だったんですね」

「あ……この部屋、黒羽さんに使っていただこうと思って、美優といっしょに片づけていて」

「今度の新曲、勝負なんでしょ!?」

「うん。ありがたく使わせてもらうよ、今週いっぱい。しかし、本当にお父さんは先見の明だな」

「夢ばっかり、思いこみの強い人だったから」

「いいえ、このお店のことも、うちの事務所のことも、ちゃんと見通していらっしゃる。それに、なにより、病気のこと、ちゃんと気にかけていらっしゃって、その甲斐あって、美優ちゃんも、早期治療でこんなに元気になったじゃないか」

「……そうよね。お父さん大したもんだ。ね、お母さん!」

「うん、そうよね!」

 黒羽Dが包み込むように美優の肩を抱き、マダムがもう一度ドロシーのおさげを叩くと『オーバーザレインボー』は二周目になったぞ。


 美優の命は、あと6日と30分……にしちゃいけねえ。美優の中でマユは決心したぞ。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする