ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

バッハのシャコンヌ(3種類の編曲+原曲)

2006-06-18 | CDの試聴記
昨日、偶然面白いCDを見つけました。
バッハのシャコンヌを、3種類のピアノ編曲とヴァイオリンの原曲で聴かせるという趣向です。
バッハのシャコンヌは、いうまでもなく無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番の終曲ですが、古今東西を問わず「変奏曲」の最高峰に位置する作品として広く知られています。

このヴァイオリンの聖典を、ピアノという最も高度な機能を有した楽器でアプローチするとどうなるか・・。

     

『シャコンヌ』
<曲目>バッハ 「シャコンヌ」二短調
(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004より)
■ ブゾーニ編曲 ピアノ版
■ ルッツ編曲 ピアノ版
■ ブラームス編曲 ピアノ版
■ 原曲 ヴァイオリン版
<演奏>
■エドナ・スターン(ピアノ)
■アマンディーヌ・ベイェ(バロック・ヴァイオリン)
<録音>2005年1月17-20日 スイス,ボスヴィル教会

ブゾーニの手による編曲版は、昔からよく知られており、ミケランジェリやワイセンベルク、ボレットといった大家による名演も数多くリリースされています。
ブゾーニ版の最大の特徴は、ロマンティックでスケールが大きいところでしょう。
ピアノという楽器の機能を余すところなく使って書かれているため、何よりも大変華麗な印象を受けます。
「これがバッハか?」と言われると一瞬答えに窮してしまいますが、20世紀初頭に活躍し、バッハを心から尊敬していた巨匠ブゾーニとの協働作品だと考えれば、それはそれで立派な音楽だと思います。

ルッツ版は、エドナ・スターンの先生にあたるルドルフ・ルッツの手によるもので、彼女のために書かれた作品だそうです。
まず冒頭のテーマが、オリジナルやブゾーニ版より1オクターブ高い音で始まります。そしてテーマそのものも既にモダンな和音でアレンジされています。
どちらかというと、「バッハのシャコンヌによる即興曲」を楽譜に書きとめたという感じでしょうか。
最後までモダンな和音の連続でとても面白いのですが、「さあ、ここから・・・」というときに必ずフェイントをかけられるので、初めて聴いたときはいささか面食らいました。
でも、コンサートで聴いたらきっと楽しいでしょうね。

最後のブラームス版は、ブラームスが思いを寄せるクララ・シューマンに捧げたといわれており、左手一本のために書かれています。
最近で言えば館野泉さんが復帰コンサートで素晴らしい演奏をされていましたね。
このブラームス編曲版は、左手一本のための作品ということもあり原曲に非常に近いです。
したがって、全体に非常に真摯な印象を受けるのですが、一方でたとえば前半の山場である長大なアルペッジョあたりでは、少し苦しい感じもしました。

こうやって3種類のアレンジを続けて聴くとそれぞれに面白いのですが、どれか1つといわれたら、私の場合はやはりブゾーニ版でしょうか。

このディスクで演奏しているエドナ・スターンというピアニストは、初めて聴きましたが、なかなか落ち着いた演奏をする人です。
「3曲とも、ゆうに15分以上かけた演奏です」というと、だいたいイメージがお分かりいただけるでしょうか。
ややロマンティックな方向に傾斜している感もありますが、私は好ましく思いました。
また、最後に原曲どおりのヴァイオリンで演奏しているアマンディーヌ・ベイェが、なかなか良いのです。たった一曲聴いただけですが、ビッグネームになる予感がしました。

これは拾い物のディスクでした。

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4 コメント

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興味深い取り合わせ (calaf)
2006-06-20 23:59:56
こんばんは。ギターでセゴビア版を知って以来「シャコンヌ」をおっかけております(笑)ピアノ版のルッツは是非聴いてみたいですね。チェロ版、オーケストラ版(斉藤秀雄編曲)、シロティー版(ピアノ編曲)とありますが、どれも面白いです。
返信する
>calafさま ( romani)
2006-06-22 22:23:11
こんばんは。

いつもありがとうございます。

calafさまもやはりシャコンヌフリークですか

私も同類です。(笑)

きっと一生かけて取り組んでいくと思います。

ところで、真摯にアレンジされたシャコンヌは、原曲同様必ず輝きを放っていますよね。

奥深く不思議な作品だと思います。
返信する
はじめまして (「尺八+琵琶+Piano」の管理人です)
2010-10-25 20:41:51
はじめまして

>奥深く不思議な作品だと思います。

のコメントに深く同意致します

その「シャコンヌ」に尺八独奏で挑む
コンサートを企画致しました

心から お聴き頂きたいと思いまして
コメント欄にて失礼ですが 御案内を
致しました

歴史に新たなページが加わります

御都合宜しければ お足をお運び頂け
ますよう よろしくお願い致します
返信する
>「尺八+琵琶+Piano」の管理人さま (romani)
2010-10-27 07:06:44
おはようございます。
ようこそお越しくださいました。
お返事が遅くなり、大変申し訳ございません。

シャコンヌは、バッハの全作品の中でも特別な音楽ですよね。
私も若い時から聴いたり、自分でギターで弾いたりしてきましたが、毎年、違った姿をみせてくれます。

尺八での演奏、とても興味があります。以前、ブリュッヘンのリコーダーの演奏を聴き、大きな感銘を受けました。
きっと新たな世界を見せてくれのだろうなと、期待しております。
またブログにお邪魔させていただきますね。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
返信する

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