ETUDE

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チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル 1986年来日公演(その2)

2007-06-23 | CDの試聴記
昨日も日帰りで大阪出張でした。
しかし、昨日は、朝方とんでもないトラブルに巻き込まれました。
ニュースでも大きく報じられたJR東日本の架線切断事故です。
しばらくホームで待っていたのですが、まったく埒があかないので、新幹線を使って東京まで行くことにしました。
結果的にこれが大正解。
最寄り駅である大宮駅が新幹線の止まる駅であったこと、そして普段より少し遅く家を出たためにホームで足止めを食うことになり、それが逆に「電車の中で缶詰め」という最悪の事態にならずにすんだことが、本当にラッキーでした。
セミナーも無事に終了して、ほっとしています。

さて、新幹線でこの日もずっと聴いていた「チェリビダッケ1986年の来日公演」の続きを。
後半の曲は、ブラームスの4番でした。

『他の誰とも違うブラームス』
ひとことでいうと、こんな印象です。

チェリのブラームスの4番といえば、1974年のシュトュットガルト放送響と組んだDG盤、1985年の手兵ミュンヘンフィルと組んだEMI盤の2枚のディスクを私は聴いてきましたが、EMI盤は録音のせいもあって、とにかく音が重い。
雰囲気は良いのですが、音楽が沈んだ感じに聞こえるのであまり好きではありません。シュトュットガルト放送響とのDG盤のほうが、音楽が澱まず見通しよく前に進むので気に入っていました。
ただ、今回の来日公演の演奏は、造型的にはDG盤というよりもEMI盤に近いのですが、音の響きや音楽の表情はEMI盤に比べてずっと豊かになっています。

第1楽章冒頭、指定どおりの弱音で奏でる弦の美しい旋律と、管楽器が裏拍で刻むリズムの拍動がうまく絡み合って、早くも充実した音楽を聴かせます。そこにホルンの対旋律が加わり、音楽はどんどん充実していきます。
これぞ、まさにブラームス!
その後も、普段聴き取れないような声部が、チェリの生み出す絶妙のバランスの中で見事なまでに浮かび上がってきます。
音楽の求めに応じてデリケートに伸縮するテンポと、徹底的に磨きあげられるフレーズ。
私は、今まで聴いたことのないような豊かな響きに、耳洗われる思いがしました。
分離のいい録音とも相まって、チェリの作ろうとしている音楽が、実によくわかります。

第2楽章に入ると、第1楽章で感じた印象がさらに強くなっていきます。
冒頭のフレーズを、ホルンならびに木管楽器が明快なアーティキュレーションで吹ききったあと、クラリネットと弦が見事にバトンをひきとって繫いでいきます。
そして、リハーサル風景でもとりあげられている練習番号Cで、チェロ&コンバスがドルチェ・センプレで奏でるあたりからは、微妙なアゴーギクも一層顕著に・・・。
深々とした呼吸がなんとも感動的だなぁ。
これだけ息の長いフレージングを徹底するためには、いかにミュンヘンフィルといえども大変な練習をこなしてきたんでしょうね。

しかし、この演奏のクライマックスは、まぎれもなく終楽章のパッサカリアでした。
冒頭、パッサカリア主題の最後の2小節をしっかりディミヌエンドするのが、早くもチェリビダッケ流。
和声進行のストレートな描写と、第1変奏へのスムーズな移行を重要視したのでしょう。
そして、何といっても圧巻は97小節からのフルートソロ。
異常なまでの遅さ。しかも、吹くほどにスピードが遅くなり、この調子でいけばやがて止まってしまうのではないかと思うような、本当にぎりぎりのテンポになっていきます。
ちなみに、このチェリの無理難題を難なくクリアし、神業のようなフルートを吹いているのが、ソロフルートのマックス・ヘッカー。
ライナーノートによれば、彼は病気のためひとり遅れて来日し、何とこのコンサートが最初の出番だったそうです。
まったくそんな背景を感じさせない、それはそれは見事な演奏です。(3分19秒あたり)
このあたりから、チェリとオケの奏者達の秘術の尽くしあいが、聴き手にもはっきり伝わってきて、まるでコンサート会場に居合わせたかのような錯覚を覚えました。

全曲聴き終えて真っ先に感じたのは、「何とも見事なブラームス!」というひとことでした。
ミュンヘンフィルの奏者達が、「チェリとの演奏で最高のブラ4だった」というのも頷けますね。
このディスクを何(十)回も聴いているうちに、チェリビダッケの音楽づくりのヒントが、ほんの少し分かったような気がしました。
でも、まだ自信がもてないので、もう少しまとまった段階で、ブログに書かせていただきたいと思います。



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