ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

若杉弘&シュターツカペレ・ドレスデン ワーグナー:管弦楽曲集

2009-12-20 | CDの試聴記
前回「あらためて師走だ」と書いたばかりだけど、先週も状況は全く変わらない。
広島・東京等でテーマを変えてセミナーをこなしつつ、先月突如舞い込んできた大きなプロジェクトの仕事もやっているので、さすがに目が回りそうだ。
そういえば、年のせいか疲れのせいか分からないが、最近本当にめまいがする時があって、こっちのほうは仕事が一段落したら医者に診てもらわなくちゃ。
さて、そんな状況を精神的に救ってくれているのが、やはり大好きな音楽。
そして、先週聴いたCDの中で大きな感動を与えてくれたのが、この若杉さんのワーグナーだった。

ワーグナー作曲
■『さまよえるオランダ人』序曲
■『タンホイザー』序曲
■『リエンツィ』序曲
■『ローエングリン』第1幕への前奏曲
■『ローエングリン』第3幕への前奏曲
<演奏>
■若杉宏(指揮)
■シュターツカペレ・ドレスデン
<録音>1984年12月 ドレスデン、ルカ教会

このワーグナーの序曲集は、今年7月に惜しくも亡くなった若杉さんが、1980年代に手兵シュターツカペレ・ドレスデンと遺した3枚組のアルバムの中の1枚だ。
1月ほど前に届いていたのだが、先週ようやく聴くことができた。

素晴らしい。素晴らしすぎる。
これほど自然にそしてヒューマンで暖かい感性をもって描かれたワーグナーは、滅多に聴けない。
「上質の」という言葉がこれほどぴったりくる演奏も少ないだろう。
冒頭のオランダ人序曲から、その真摯で包み込むような音楽は、聴く者を捉えて離さない。
恣意性がないというか、妙な小細工をしないので、音楽のもつ本来の魅力が、シュターツカペレ・ドレスデンの美しい響きとともにストレートに出てくる。
どの曲も本当に素晴らしいが、とくに感銘を受けたのがリエンチ序曲。
正直に告白するが、この曲を聴いて、いままで感動したことがほとんどなかった。
しかし、若杉さんたちの演奏からは、自然に体の中から湧き出した熱い情念のようなものが、ひしひしと迫ってきた。
後半の行進曲風の箇所(アレグロ・エネルジコ)でも、やたら明るく元気な、しかし何とも軽薄な演奏が多い中、そこには心躍るような自然な躍動感があった。
だから、ラストの高揚感もこけおどしにならない。
そして、その余韻に浸っていると、続いてあのローエングリンの前奏曲が、神秘的な弱音で入ってくる。
選曲や曲の配置もとてもよく考えられていると思った。

若杉さんは、40代ですでにこんな見事な音楽を聴かせていたんだ。
新国立劇場で、そしていろいろなオーケストラとともに、彼の音楽をもっともっと聴かせてもらいたかった。
本当に残念だ。
あらためて惜しい人を亡くしたと思う。

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4 コメント

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若杉さんのワーグナー (yokochan)
2009-12-21 22:29:09
こんばんは。
私も、最近、頭が重かったり、ふらっとしたり始終です・・・。やっぱり歳のせいでしょうか。それと、これまた歳ゆえか、寒さがやたらと堪えます。
お互い、気をつけましょう。

若杉さんのワーグナーは、わたしの愛聴盤のひとつでした。今年の痛恨事のひとつが、マエストロの死でしたね。
もっともっと、新国で聴かせて欲しかった若杉さん。
ドレスデン時代に、もっと録音を残して欲しかったですね。
いまや貴重な3枚となってしまいました。
以前の記事ですが、TBさせていただきました。
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お体、大切になさって下さい。 (エルザ)
2009-12-21 23:13:19
こんばんは。

最近特に寒さが増した様です。お体、大切になさって下さいませ。

実は私も、体調が?…大学病院にての検査…来年また検査……現在は師走、多忙もあり、私自身のブログの更新は……という次第です。


本当に、音楽には元気の源!を頂いています。

ワーグナーの曲…ありがとうございます。
私も!と思います。
返信する
>yokochanさま (romani)
2009-12-22 21:06:32
こんばんは。
めっきり寒くなってきましたね。
体が発する声には、心して耳を傾かなければいけないと、最近つくづく思います。
これが難しいのですが・・・(笑)

>ドレスデン時代に、もっと録音を残して欲しかったですね。
全く同感です。若杉さんがゼンパーオーパーのシェフになって、「自分の指揮からは、とても出るはずもないような音色が出てきたときは、ほんとにびっくりした」とインタビューで述懐されていましたが、懐かしいですね。
新国立でせめてあと2年腕をふるってくれたら、随分日本のオペラ事情も変わったことでしょうに・・・。
残念です。

P.S
TBもありがとうございました。
返信する
>エルザさま (romani)
2009-12-22 21:23:36
こんばんは。
お気遣いいただき、ありがとうございます。
掛かり付けの医者には診てもらったのですが、脳の梗塞等ではなく三半規管の問題じゃないかと言われています。
症状は少し軽くなってきたのですが、年が明けたら耳鼻科に行こうと思っています。
ご心配をおかけして申し訳ありません。

エルザさんのほうこそ、大丈夫ですか?
ブログも更新されていないようで、
心配しておりました。
お互い、体あっての物種ですから、大事にしましょう。
精神的な特効薬(=素晴らしい音楽)は既に処方済だと思いますので(笑)
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