ETUDE

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アルブレヒト&読響のベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」

2006-12-24 | コンサートの感想
昨日は読響の第九に行ってきました。
読響のマチネー会員になって5回目の第九になります。

思い出深いのは、3年前の第九。
グシュルバウアーの指揮だったのですが、今から思えば、やや微温的な演奏でした。
しかし、当時、大プロジェクトを2つ抱えて心身ともに疲れ果てていた私にとって、このときに聴いた第九は、大袈裟な意味ではなく「いのちを貰った」コンサートでした。
「疲れきった心と体の隅々に、理屈ではなく、ベートーヴェンの音楽が沁み込んでいく。生き返っていく・・・。」、まさにそんな感じでした。
「ようし、負けないでやっていこう。そして来年もこの第九が聴けるように頑張ろう。」という勇気を貰ったコンサートでもありました。
実際は、翌年年明けから8月頃にかけて、さらに過酷な状況が続くのですが、このときの第九が、いつもどこかで支えになっていたように思います。

そんなことを考えながら、この日、第九の開演を待ちました。

  

<日時>平成18年12月23日(土) 午後2時開演
<会場>東京芸術劇場
<曲目>
■ベートーベン:交響曲第9番〈合唱付き〉 
<演奏>
■指 揮:ゲルト・アルブレヒト
■管弦楽:読売日本交響楽団
■合 唱:武蔵野音楽大学
■ソプラノ:林 正子
■メゾ・ソプラノ:坂本 朱
■テノール:中鉢 聡
■バリトン:三原 剛

今年タクトを取るのは、常任指揮者として最後のシーズンになるアルブレヒトです。
コンサートマスターが登場し、オーボエの音をもらってチューニング。
ここで、ふとある光景に気付きました。
「えっ? ステージに合唱団がいない!」
昨年は、4楽章が始まってもソリストがステージにいなくて、それもびっくりしましたが、今年はどうなるんだろう。

アルブレヒトが、ゆっくりとステージに現われました。
コンサートマスター2人と笑顔でがっちり握手したあと、指揮台へ。
何の気負いもなくタクトを振り上げ、いよいよ今年の第九が始まりました。
一回目のクライマックスで、「あー、読響のサウンド。この重厚な音が聴きたかったんだ。この音を聴きにきたんだ」と早くも鳥肌がたちました。
再現部のクライマックスでは、ティンパニをトレモロではなく譜面どおり32分音符できっちり叩かせます。
そして、チェロとコントラバスが同じように渾身の力で32分音符を刻むので、単なる巨大な音の塊ではなく、音楽の鼓動が息づいていきます。
素晴らしい演奏!

第2楽章は、速めのテンポで、まさにスケルツォ。
アルブレヒトお得意のメリハリをつけたスタイルなんですが、作為的な感じは全くしません。
ただ、アルブレヒトのタクトに金管が少し遅れぎみになる箇所が何回かでてきましたが、さすがに気心の知れたコンビです。
つぎに出てくるフォルテを豊かに響かせるような表現にすることで、破綻を見せません。
うまいなあ・・・。
第2楽章が終わって、合唱団がステージに登場しました。
ソリストも一緒です。ソリストは合唱団の前に座りました。指揮者の前に座らせるやり方もありますが、私はこの方が好きです。

さて、第3楽章。
非常に美しい演奏でした。
常に音楽を大きな流れで捉えて、パーツパーツに神経質にこだわることはしません。
だからこそ、ミスが発生しやすい96小節のホルンソロも、実に伸びやかな表情になったのでしょう。
その自然なホルンソロを引き継いだ第一ヴァイオリンの表情が、これまた実に美しかった。

フィナーレの冒頭は3つ振りする指揮者が多いですが、アルブレヒトは1つ振り。音楽の流れを大切にしているのでしょう。
この日、チェロ・コンバスが聴かせてくれた緊張感に満ちた雄渾な表現力には、もう見事というしかありません。
終演後、マエストロがとくにチェロ・コンバスを湛えたのも頷けます。
そして、バリトンソロを迎えます。いつ聴いても三原さんのソロは本当に素晴らしい!
胸がいっぱいになります。

そして、この日とくに感銘を受けたのが、武蔵野音大の合唱。
力と透明感に溢れた素晴らしいコーラスでした。
ソリストとしては、昨年までのメンバーからソプラノが林さんに代わりましたが、アンサンブルという点では、むしろ良くなったような気がします。
二重フーガの部分では、あまりに見事な声楽陣と充実したオケの響きを聴きながら、つい3年前のことを思い出してしまい、なぜだか分かりませんが不覚にも涙が出てきてしまいました。
いかん!まだ続きがあるのに・・。

762小節の「・・・ein lieber Vater wohnen」の箇所だけは、最後のフェルマータのあと、もう少し間が欲しかったなぁ。
とても感動的なところですから・・・。

この日のフィナーレは、概してテンポが速かった。
しかも、軽く速いのではなく、力強くかつ速い!
これが、本来ベートーヴェンが求めていたものかもしれません。
アンサンブルに若干の乱れはありましたが、この充実した響きはきっと忘れることはないでしょう。
大きなインパクトをもった第九でした。

アルブレヒトをマチネーシリーズで聴けるのは、残念なことにあと一回だけです。
とき、まさに、シーズン最後の日となる3月31日。
プロはマーラーの9番。
この最高の名曲に対して、どんな感動的な演奏を聴かせてくれるんだろう。
今から、楽しみです。






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