ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

R.シュトラウス:「メタモルフォーゼン」~オトマール・スウィトナーを偲んで

2010-01-12 | CDの試聴記
今日は本当に寒い一日だった。
お客さまのところでも、「寒いですねぇ。景気もそうだけど(笑)」という会話で始まることが多かったなぁ。
そんな中、外勤からオフィスに戻って、私はオトマール・スウィトナーの訃報を知った。
享年87歳。
病気のために彼が公の場に登場しなくなってから、随分長い年月が経過していた。
昨年だったか、息子さんと一緒に出演したドキュメンタリー番組をテレビでみて懐かしく思ったばかりなのに、本当に残念だ。

スウィトナーといえば、学生時代に小遣いをためて買ったフォノグラムの廉価盤(もちろんLP!)が忘れられない。
曲はモーツァルトの29番。オーケストラはシュターツカペレ・ドレスデンだった。
こんなに柔らかなモーツァルトは、今以て聴いたことがない。
聴いていると、まるで春の陽だまりのなかにいるような幸福感に浸ることができる。
「モーツァルトの29番」という音楽の魅力を、私に優しく教えてくれたディスクだった。
そんなこともあって、よほどこの演奏(今手元にあるのは10枚組のボックスCDだけど・・・)でマエストロを偲ぼうかと思ったが、迷った末に取り出したのがこのディスク。
上記の10枚組ボックスセットの中に含まれている、リヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」だ。

<曲目>
■R.シュトラウス:「メタモルフォーゼン」
<演奏>
■オトマール・スウィトナー(指揮)
■シュターツカペレ・ドレスデン
<録音>1966年

ほとんど話題にならないディスクだけど、あらためて聴いてみると実に自然に音楽が流れている。
また、小細工なしの直球勝負にもかかわらず、ごつごつ感が皆無で、しなやかさと温かさに満ちている。
もちろん、これも、かつて手兵だったシュターツカペレ・ドレスデンの上質のサウンド抜きには語れない。
とくに中低音の木の香りがするような生々しい響きは鳥肌もの。
そして、最後の最後、エロイカの葬送行進曲のテーマがほんの一瞬登場するあたりにくると、もう私は胸がいっぱいになっていた。

結局スウィトナーの実演には一度も接することができなかったが、私の中で彼の存在は決して小さくない。
地味ではあるが、スウィトナーは、よき時代の職人気質を持った偉大なマエストロだった。
彼が遺してくれたディスクを、これからもずっと大切に聴き続けていくことだろう。

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6 コメント

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モーツァルト29番 (golf130)
2010-01-13 00:35:37
こんにちは。
私も、スウィトナーさんの初めて買った音源はモーツァルト29番のLPでした。フレッシュで優しく素敵なモーツァルト。私もこの演奏でこの曲に魅せられました。
当時、テレビやラジオでN響を振った演奏も良く聴きました。
スウィトナーさんの「メタモルフォーゼン」は未聴ですが、なかなか良さそうですね。
派手さは無かったですが、素晴らしい指揮者だったと思います。
悲しいです (yokochan)
2010-01-13 01:13:18
こんばんは。
N響の名誉指揮者の3大Sは、どなたも大好きでした。
悲しいことに、あとサヴァリッシュだけが存命という事態になってしまいましたね。

夜中になって訃報を知った次第です。
私も、このシュトラウスを時折聴いておりました。柔らかくも芯のある名演ですね。
ご冥福をお祈りしたいと思います。
大切な時代が1つ終わりそう・・・・ (KiKi)
2010-01-13 15:12:01
たまたま先ほど、yurikamome さんのサイトにお邪魔し、スゥイトナー追悼エントリーでこの大事件を知り、その後 yokochan さんのサイトで再認識し、そして romani さんのこちらでようやく事実として納得した・・・・そんな気分の KiKi です。  ここ何年かはいわゆる「往年の・・・・」という感じの音楽家が、次々とあちらへ逝ってしまって淋しい限りですね。

KiKi もやっぱりモーツァルトの交響曲のいくつかを大切に聴いているのですが、こんばんは「モーツァルト・ナイト」となりそうです。  最近は自分自身の老いもヒシヒシと感じているのですが、ということは、あの懐かしい時代の音楽家の皆様方も実は結構なお歳なんだっていうことをあらためて考えさせられました。  音楽家の皆さんってなんとなく不死身・・・というか、若々しい・・・・というか、生命力があるような錯覚に陥っちゃうことも多いんですけどね。

何だかプライベートにとても大切にしてきた1つの時代の終焉・・・・という感じがします。

>golf130さま (romani)
2010-01-13 23:41:22
こんばんは。
golf130さんも、モーツァルトの29番はスウィトナーで開眼されたのですね。
当時のフォノグラムの廉価盤は素晴らしい演奏が並んでいました。
コンビチュニーのシューマン全集とかウラニアのエロイカとか・・・。
その中でもスウィトナーのモーツァルトはピカイチでした。
過去形で語らないといけないのが、本当に残念です。
しばらくは、スウィトナーの音楽を聴くことが増えそうです。
>yokochanさま (romani)
2010-01-13 23:54:38
こんばんは。
>N響の名誉指揮者の3大S
確かに・・・。
本当にサヴァリッシュだけになってしまいましたね。
この3人に共通するのは、オペラを振らしても一流だったことですね。
スウィトナーの「魔笛」は大変有名ですが、ドイツ語版の「フィガロ」も私の愛聴盤のひとつです。
歌手もギューデン、ローテンベルガー、マティスという最高の女声陣にプライ、ベリーでしたから悪くなりようもありませんが、やはり何と言ってもスウィトナーの手綱さばきが見事でした。
訃報を聞いて一日経ちましたが、「残念」から「寂しい」に変わってきました。
>kikiさま (romani)
2010-01-13 23:59:41
こんばんは。
>大切な時代が1つ終わりそう・・・
全く同感です。いつかこの日が来るとは思っていましたが、やっぱり寂しいですね。

>あの懐かしい時代の音楽家の皆様方も実は結構なお歳なんだっていうことをあらためて考えさせられました
こちらも全く同感です。
やはりひとつの時代が終わりつつあるということなのでしょうか。
今日は気分を変えて、スウィトナーのブラームスの4番を聴こうと思います。

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