ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ハイドン:ピアノソナタ集 by ケフェレック

2010-01-11 | CDの試聴記
大好きなピアニストであるケフェレックのニューアルバムを聴いた。
今回はオールハイドンプログラム。

<曲目>
ハイドン作曲
■ピアノ・ソナタ第62番変ホ長調 Hob. XVI:52
■変奏曲ヘ短調 Hob.XVII:6
■ピアノ・ソナタ第53番ホ短調 Hob. XVI:34
■ピアノ・ソナタ第54番ト長調 Hob. XVI:40
<演奏>アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
<録音>2001年9月30日、10月1日

昨年12月のリリースなので、ハイドンイヤーに何とかぎりぎり間に合わせたのだろう。
一応新譜ということにはなっているが、録音は2001年。
リリースまで少しばかり時間がかかりすぎていることが、ファンとしては気になるところだ。
でも最初の変ホ長調のソナタを聴き始めた途端、そんなことはどうだっていい話だと思い知らされる。
よくぞ録音してくれた、よくぞこのディスクをリリースしてくれたと、ただただ感謝あるのみだ。
大空めがけて逞しく羽ばたいていくような冒頭の主題、そして高みから分散和音をともなってひそやかに舞い降りる美しいフレーズが、見事な対比をみせる。
もう忽ちにして、そこはケフェレックの世界だ。
あの魔法のようなタッチがもたらす多彩な音色と、絶妙としか言いようのないアーティキュレーションが織りなすハイドンの音楽に、私はひたすらうっとりするばかり。
そんな彼女の美質が最高に発揮されるのは、第二楽章アダージョ。
この深い情感を湛えた表現(とくに弱音部)は、とても言葉では言い表せない。

つづく変奏曲も、心に沁みいるような美しさだ。
この曲はブレンデルもフェアウェルコンサートでとりあげていたが、どちらも甲乙つけがたい名演だと思う。
ラスト近くの情熱的に盛り上がる箇所では、それまでの凛とした佇まいがあったからこそ、それこそ胸がかきむしられるような強い印象を聴き手に与える。
こんなハイドンを聴かされたら、聴き手はたまらない。
余談になるが、この曲の主題は、ギターを弾く人間にとっては懐かしいメロディだ。
ソルの二重奏曲の名品「アンクラージュマン」の第2変奏を思い出すので・・・。

また、最後に収められた2つのソナタも、文句なく素晴らしい。
とくに53番のホ短調ソナタのロンド・フィナーレは、このアルバムの中でも白眉の美しさ。
ここにはハイドンの魅力のエッセンスが詰まっている!
聴き終わってあらためて思ったのだけど、ほんとにさりげないフレーズから、聴き手の心を動かす何かをケフェレックは持っている。
だからこそ、モーツァルトやハイドンをこれだけ魅力的に演奏できるのだろう。
ケフェレックの演奏に接するたびに褒めてばかりで、いささか気が引けるが、それほど素晴らしいのだからご勘弁ください。
ひとりでも多くの方に、このハイドンを聴いていただきたいと思う。

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2 コメント

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Unknown (ガーター亭亭主)
2010-01-14 12:56:56
しばらくご無沙汰しておりました。ワタクシもこのCDを店頭で見つけて「新譜だ!」と勇躍買って帰りました。
良いですよねぇ。

ただ、確認したらミラーレから過去に発売され後にモーツァルトと2枚組となったのと同じ演奏でした。http://homepage1.nifty.com/falrtaff/queffe-d.htm

アリャリャという感じですが、もちろん後悔なんかしていません。ファンですから(キッパリ)。

でも、このレーベルは前にも既リリースのシャオ・メイシュのゴールドベルクを新譜(とは確かにどこにも書いていなかったけれど)のごとく発売していたので注意が必要かもしれません。

というわけで、数年お蔵入りしていた訳ではないので、ご心配なく。
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>ガーター亭亭主さま (romani)
2010-01-15 08:24:11
おはようございます。
コメントいただきありがとうございます。

モーツァルトのアルバムと2枚組でリリースされていたんですね。
まったく知りませんでした。
ミラーレも罪なことをしてくれますねぇ。
でも放置されていたのではないことが分かって、安心しました(笑)
ありがとうございます。

でもそんな経緯はともかく、本当に素敵なハイドンですよね。
聴きながら、彼女の演奏姿・タッチがはっきりとみえてくるような思いがしました。
ラ・フォル・ジュルネでケフェレックのピアノが聴けるのが、いまから楽しみです。
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