ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

カルロス・クライバー&ウィーンフィルのモーツァルト交響曲第36番「リンツ」他

2006-01-13 | CDの試聴記
昨日から今日にかけては広島出張でした。
今日は13日の金曜日。こんな日に飛行機に乗るのは実を言うと怖かったのですが、無事羽田に着陸。
あー、良かった。

ところで、先日一大決心をして、エクセルでモーツァルトの全作品表を作ったんです。
曲を聴いた都度、そのエクセルシートに日付と演奏者等を書き入れています。
まだまだ先は遠いですが、これも楽しみのうちですね。

今日ご紹介するのは、モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」。
皆さんはこの曲お好きですか?
「リンツ」はモーツァルトの後期のシンフォニーの中ではちょっと地味な曲ですよね。
でも、「さあ、立派なシンフォニーを聴くぞ!」なんて構えることなく、自然な気持ちで聴けるところに私はとても魅力を感じています。
ザルツブルクからの帰路立ち寄ったリンツで、わずか4日間で作曲されたというこの曲、全編一筆書きのような爽やかな感覚に満ちています。

今まで聴いた中では、クーベリックがバイエルン放送交響楽団と組んだ演奏、アーノンクールがロイヤルコンセルトヘボウと組んだ演奏が好きでした。名盤の誉れ高いベーム&ベルリンフィル盤も素晴らしいのですが、残念ながら終楽章が少し重い!
またこの曲の雰囲気を考えると、さぞかしウィーンフィルにぴったりの曲だと思うのですが、いつも素晴らしい演奏を聴かせてくれるケルテスも、ウィーンフィルとして初めての全集を作ったレヴァインも、また古いバーンスタイン盤も、それぞれ勿論素晴らしいところはあるのですが、逆にどうしても気になるところがあって私の琴線に触れないのです。
そんなときに聴いたのがこのカルロス・クライバー盤。

<曲目>
■モーツァルト:交響曲第36番ハ長調K425
■ブラームス:交響曲第2番
<演奏>
■カルロス・クライバー指揮
■ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<録音>1988年3月20日 定期演奏会のライブ録音

これは素晴らしい名演です。
年末から何十回となく聴いてきましたが、聴くたびに新しい発見があります。
もうすっかり虜にされてしまいました。

第1楽章、アダージョで書かれた短い序奏で始まりますが、このたった19小節が凄いんです。
こんなに素晴らしい音楽だったのかと思わせるほど見事な演奏です。とくに4小節めからヴァイオリン→ファゴット→オーボエと引き継がれていくフレーズの表情は、もうたとえようもない美しさ。この序奏を聴いただけで、この演奏の素晴らしさを実感できます。続く主部のアレグロ・スピリトーゾは一転して、生気溢れる見事な表現。さすがカルロスです。

第2楽章、冒頭のメロディのなんと優美なこと。続く5小節目のfpも、なんともいえない絶妙の色気を感じさせてくれます。また22小節は、たった1音で翳りのある表情に変えてしまうモーツァルトの天才ぶりを実感できる箇所ですが、カルロス&ウィーンフィルは完璧に表現してみせます。
そして、リピートの後登場する「ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ♭-シ♭-ド-ド-レ♭」というなんでもない音階が、カルロスの手に掛かるとなぜこんなに印象に残るんだろう。他の演奏では感じられなかったことです。

そして、終楽章はこれしかないというテンポで、力まず、しなやかで、かつ弾力性に富んだ何とも見事な演奏が展開されています。とりわけ、対位法的に書かれた部分の見事さは、何度聴いても思わずにっこり頷いてしまいます。
ウィーンフィルのメンバーが、「カルロスのベートーベンはクレイジーだ」と話していたそうですが、このモーツァルトは弾いていてどう感じたのでしょうか?
是非聞いてみたいものです。

私は、この曲最高の名演だと信じて疑いません。
正規盤でリリースされていないのが何とも残念ですが、録音もとても良いです。
また入手しやすいという点では、同じコンビで1991年にウィーンで公開録画された演奏が、フィリップスからレーザーディスクやDVDとしてリリースされています。
カルロスの指揮振りがたっぷり堪能できることもあり、こちらもお薦めです。
演奏の傾向もよく似ていますよ。

ただ、2種類を比べると、私は1988年の定期演奏会のほうにより魅力を感じますが・・・。


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12 コメント

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Unknown (shinsaqu)
2006-01-14 06:20:49
あっ、確かに13日の金曜日でしたね。何事もなくて良かったですね。私は昨日の朝、マリナー/ASMF盤で「リンツ」を聴きました。今まであまりモーツァルトに興味がなく、我が家のモーツァルトはほとんどマリナーのものです。録音は良いけどいたって安全運転。皆さんモーツァルトのエントリーが増えているので、とても参考になります。
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マリナーのモーツァルト (romani)
2006-01-14 14:30:16
shinsaquさま

いつもありがとうございます。

shinsaquさまも「リンツ」聴かれていたんですね。マリナーの演奏、そういえば、久しく聴いておりませんでした。

昔、グルダが、「素晴らしいモーツァルトを聴きたかったら、マリナーの演奏を聴きなさい」と雑誌のインタビューで応えていたことを思い出しました。

私も聴いてみます。
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リンツ (親父りゅう)
2006-01-15 07:57:31
好きですねぇ、この曲。

クライバーのこの演奏、たぶんFMで放送されたものと同じだと思うんですが、だとしたら素晴らしい演奏ですね。

私の「初リンツ」はカザルス盤でした。

(すごい出会いでしょ。)

次いで、ワルターのモノ盤、小澤が桐朋オケを振ったテレビ放送・・・と続きました。

カザルス、ワルター(新旧)、快速のシューリヒトなどが好きですが、大抵のの演奏でも楽しめる素敵な曲だと思ってます。
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Unknown (onscreen)
2006-01-15 16:07:04
「ハフナー」「リンツ」好きな私にとって、とても有益な情報でありがとうございます。

私もエクセルで、全曲リストに挑戦したことがありますが、長期にわたり挫折中です...

がんばっていただきたいと思います。

最後に。「ハフナー」のお勧めはございますか。

返信する
実は・・・ (よし)
2006-01-15 18:25:47
romoniさんの記事でミトロプーロスのマーラー6番を絶賛していたと思うのですがどこでしたでしょうか?お恥ずかしいのですがお教え願います。
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勝手にTB! (yuhoto)
2006-01-15 19:20:10
こんばんは~!

TBと同時刻にコメントを送信する積もりでしたが、遅れてしまい申し訳ありません。

今年は、モーツァルト、シューマン、ショスタコーヴィチの生誕何年、没後何年とやらで、彼らの作品紹介記事を多くのブログで見ることができるでしょうね。今から楽しみです。



そう言う私も3日前に「リンツ」を準備していましたが、記事に設けている紹介コーナーにこちらの“カルロス・クライバー&ウィーンフィルのモーツァルト交響曲第36番「リンツ」他”をリンク紹介にしてエントリーしました。勝手ではありますがTB致します。
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>親父りゅうさま (romani)
2006-01-15 21:52:09
こんばんは。

いつもありがとうぎざいます。

そういえば、この演奏はウィーンフィルの定期演奏会ですから、FMであったはずですよね。

彼がウィーンフィルの定期で振ったのは2回だけですから、まさにその録音だと思います。



>私の「初リンツ」はカザルス盤でした。

たしかに凄い原体験!ひょっとして、カザルス盤が刷り込みになっていたりして(笑)

でも、「リンツ」ファンがいてくださって、とても嬉しいです。
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>onscreenさま (romani)
2006-01-15 22:08:23
こんばんは。

コメントとTBをいただき、ありがとうございます。

「リンツ」のファンがいてくださって、心強いです。

ハフナーのほうは、onscreenさまがエントリーされていらっしゃいますが、セレナードと兄弟の作品ですよね。

まさに「リンツ」がウィーン時代最初の、独立した傑作シンフォニーという気がします。



>「ハフナー」のお勧めはございますか

うーん、悩んでしまいますが、クーベリック&バイエルン放送響(CBS盤、ARTUSのライブ盤いずれも)、セル&クリーブランド盤あたりはいかがでしょうか。
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>よしさま (romani)
2006-01-15 22:16:49
こんばんは。

私の記事では、ミトロプーロス盤はまだ採りあげておりませんでした。(書きたかったのですが・・・)

ただ、以前アバド&ベルリンフィルでマラ6をエントリーしたことがあります。

ご参考までにTBさせていただきますね。
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>yuhotoさま (romani)
2006-01-15 22:24:06
こんばんは。

コメントとTBをいただきありがとうございました。

モーツァルト、シューマン、ショスタコーヴィチという人気作曲家のメモリアルイヤーですから、ブログを書いておられる皆さんのエントリーも増えてきましたよね。

コンサートもCDも新しい発見があって、とても楽しみです。

yuhotoさまの今後のエントリーも、とても楽しみにしております。
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