ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ポリーニ、マイヤーの室内楽(ルツェルン祝祭チェンバー・フェストⅡ)

2006-10-17 | コンサートの感想
アバド・マジックの余韻も十分醒めやらぬ中、日曜日に聴いた室内楽コンサートの感想を。

       

《ルツェルン祝祭チェンバー・フェストII≫
<日時> 2006年10月15日(日)17:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目と演奏者>
■モーツァルト: クラリネット五重奏曲 イ長調 K. 581
 クラリネット: ザビーネ・マイヤー
 ヴァイオリン: アントン・バラコフスキー、グレゴリー・アース
 ヴィオラ: ディムート・ポッペン
 チェロ: ヴァレンティン・エルベン 
(アンコール)ウェーバー:クラリネット五重奏曲より第3楽章
 
■ブラームス: ピアノ五重奏曲 ヘ短調 op. 34
 ピアノ: マウリツィオ・ポリーニ
 ヴァイオリン: コーリャ・ブラッハー、アントン・バラコフスキー
 ヴィオラ: ヴォルフラム・クリスト
 チェロ: マリオ・ブルネロ
(アンコール)ブラームス:ピアノ五重奏曲 op.34 より 第3楽章

席は、奇しくもマーラーの6番を聴いた時と同じP席5列目中央です。
(もちろん、まったくの偶然!)
2日前にあのマーラーをきいたのと同じ場所なんて、偶然にしては出来すぎてますよね。

さて、前半はモーツァルト晩年の名品、クラリネット五重奏曲。
ザビーネ・マイヤーを先頭にして、5人のアーティストが登場してきました。
マイヤーは、噂にたがわず、長身で笑顔の大変チャーミングな美人。
マイヤーは中央ではなく、舞台上手側に座りました。

モーツァルトの最初のフレーズが流れた時、一瞬にしてホール全体が柔らかな春の雰囲気に包まれました。
また、この冒頭のテーマがリピートされたときの、表情の自然さがたまらなく魅力的。
色で言うと、明らかに暖色系の音です。
ベージュを基調にして、強調する時はすこし茶系を加えてみたり、逆に白を加えて淡い色にしてみたりするのですが、メリハリをつけるためにどぎつい色を使ったりは決してしません。
そのセンスの良さが、この曲本来の魅力をいやがうえにも高めてくれます。
第3楽章では、フレーズの一体感を大切にしようとしずぎるあまり、少し呼吸が乱れる箇所もありましたが、全員がモーツァルトの宝物のような美しいフレーズを大切に扱う姿勢に、私は心打たれました。
トリオで、ごく単純な3拍子を、見事な躍動感をもって表現してくれた時には、おもわずにんまり。
マイヤーのアウフタクトの表現が、とにかく秀逸。
フィナーレは、各バリエーションの対比を含めた絶妙のテンポ感が印象に残りました。
マイヤーの即興的な装飾音も、ますます自在性を増した感じで、もう見事のひとこと。
やっぱり、この人は、世界最高のクラリネット奏者の一人ですね。
あらためて実感しました。
樹衣子様の仰るとおり、「できる女は、かっこいいのだ!」

アンコールのウェーバーも、メインプロで聴きたかったくらいの出来栄えでした。

そして、後半はポリーニを中心にしたブラームスのピアノ五重奏曲。
ヴァイオリンのバラコフスキー以外は、メンバーがすべて交代しました。
私の座っている席からは、ポリーニの手の動きや表情が全て完全に見えました。
ピアノを勉強している人ような人にとっては、垂涎のロケーションだったかもしれません。

前半の暖色系の音色と比較して、こちらは寒色系。
青を基調に、群青色にも水色にもエメラルド色にもなる感じでしょうか。
弦楽器奏者の腕前は、こちらのほうがさらに一枚上です。
とくに第3楽章が凄かった。
回転数を何回かに分けながら、がっがっと全員でテンションをあげてくる時のエネルギーの凄いこと!
まさにベルリンフィルのそれです。
そして、その直後に訪れる心憎いばかりのロマン。
「あー、ブラームス」と思わずつぶやきそうになりました。

感じたとおりにかくと、ブラッハーは必殺仕事人、クリストはお茶の水博士、ブルネロはマフィアみたい。
そして、ブラッハーもクリストもほんとに凄いプレーヤーだけど、この日一番印象に残ったのは、チェロのマフィアことブルネロでした。(ファンの方ごめんなさい)
彼の表現力は凄いのひとこと。圧倒的な存在感でした。

さて、肝心のポリーニ。
ブラームスの室内楽として、おそらく理想に近いピアノだったように思います。
しかし、かつてLPやCDで聴いてきた、あのやや硬質でクリスタルのような輝きをもった音は聴けませんでした。
やっぱりP席の限界なんでしょうね。

こうなると、やっぱり客席側のいい場所でポリーニの音を聴きたい!
しかし、もう11日にソロのコンサートは終わっている。
ということは・・・。

もうひとつのオーケストラ・プログラムに含まれている、ブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴くしかないじゃないですか。
そう閃いた瞬間、私の横には例の悪魔がきて、嬉しそうな顔をして大きく何度も頷いています。
そして、悪魔さんの囁きに負けて血まなこになって探したところ、奇跡的に、出張の谷間である19日(最終日)のチケットを確保できたのであります。
しかもラッキーなことに、2階席の素晴らしい席にもかかわらず、随分安く譲っていただきました。

あとは、ただただ素敵なコンサートになるように祈るばかりです。



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2 コメント

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豪華絢爛 (emi)
2006-10-18 13:44:02
この記事を拝見すると「あれ(お金)」と「あれ(時間)」さえあれば(笑)、ほんとうに聴きたかった演奏会です。いろいろなことを確かめるために。

ポリ-二のブラームスは「ちがう」と思う不届き者(笑)の私ですが、romaniさまは理想に近い演奏を期待していらっしゃるのですね。

たしかに硬質でクリスタルな音のブラームスもいいのかもしれません。この記事で今までの偏見を見直そうと思います。

ムジークフェラインでポリ-二のテレ-ぜをP席で聴きました。P席といってもピアニストの顔が見える側でしたが。硬い殻に閉じこもる彼の音楽は私の前を素通りしていきました。

偉大なピアニストであることに間違いありませんし、ぞくっとするほど硬質な音が突き刺さることもあります。

ブラームスの2番の感想、楽しみにさせていただきます、よろしくお願いします。(笑)
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>emiさま ( romani)
2006-10-19 00:01:56
こんばんは。

いつもありがとうございます。



やっぱり、あれとあれは大切ですよね。(笑)

でも、比較的暇のあるときは金欠気味だし、少し懐が暖かいときは多忙を極めている。

なかなか上手くいかないものです。



先日のブラームス、ピアノは完全に弦に同化していました。

そういう意味で理想的だと書いたのですが、逆に言うと、クリスタルが輝くようなポリーニの音は最後まで聴けなかったのです。

しかし、ひょっとすると本当にポリーニの音、そして音楽が変わったのかもしれない。

それを確かめたかったのです。



いよいよ、今日その答えが出ます。

少し風邪で熱っぽいのですが、きっと知恵熱でしょう。

大きな期待とほんの少しの不安を感じながら、そのときを楽しみに待っております。





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