ETUDE

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趙静&デプリースト/都響 : オール ショスタコーヴィチプロ

2006-09-19 | コンサートの感想
趙静凄い!

あっ、ちょっと興奮気味なもので申し訳ありません。
昨日聴いた「都響:『作曲家の肖像』Vol.61 <ショスタコーヴィチ>」のお話です。
2階の4列目やや右側の席で聴きました。

<日時>2006年9月18日(月)14;00~
<場所>東京芸術劇場
<曲目>
《ショスタコーヴィチ》
■室内交響曲 ハ短調 作品110a
■チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 作品107
■交響曲第5番 ニ短調 作品47
<演奏>
■チェロ:趙静
■指 揮:ジェイムズ・デプリースト
■管弦楽:東京都交響楽団

           



趙静さん、あの難曲、チェロ協奏曲第1番を見事に弾ききってくれました。
生でこの曲を聴いたのは初めて。
どんな風に弾くんだろうと興味しんしんだったのですが、予想をはるかに上回る超絶技巧です。

とくに第2楽章以降が素晴らしかった。
第2楽章後半、チェレスタの伴奏にのせてフラジオレットで弾くチェロの何と美しかったこと。
何か儚いもの、そんな感覚が私をとらえました。
続く第3楽章カデンツァは、もう息をすることさえ憚れるほどの緊張感。
素晴らしいテクニックもさることながら、彼女の集中力は凄いですね。
終楽章は、文字通り超絶技巧の連続。CDで聴いた初演者ロストロポーヴィチの演奏はもちろん凄かったですが、実演でこんな演奏を聴いてしまうと、もうあ然とするしかありません。

趙静さんは、あたりまえに円満に弾こうなんて、まったく考えていませんね。
どんなフレーズも、ぎりぎりのところで勝負しています。
誤解を怖れずにいうなら、若き日のキョン・ファ・チョンのようなイメージに近いかなあ。
本当は「デュ・プレⅡ世」といいたいところですが、デュ・プレはある部分でもっと豪快で情念たっぷりのところがありました。
趙静さんに、まだ(?)その情念のたぎりのようなものはありません。
しかし、この研ぎ澄まされた鋭敏な感覚、緊張感、ふとしたときに見せてくれる美しい歌、それらを支える圧倒的な技巧、まぎれもなく一級品です。

趙静さんのチェロのことばかり書きましたが、都響のホルンもティンパニもばっちり決まっていました。ただ、ティンパニの活躍場所が、意外に少なかったことにいささか驚きました。印象があまりに鮮烈なので、勝手に大活躍する曲だと思い込んでいたんですね。
実際のコンサートで、しかもこんなに素敵な演奏で聴けて、とてもラッキーでした。

ところで、今回のプログラムは、作曲された時期から言うとちょうど逆になっています。
最初の曲は、弦楽四重奏曲第8番をバルシャイがアレンジした「室内交響曲ハ短調 作品110a」。
第1楽章の主要動機は、作曲者のイニシャルを模した「D.SCH」(D―Es-C-Hの4音)が使われています。
第2楽章は、本家バルシャイの演奏(CD)がちょっとスローテンポだったので、デプリーストの演奏は心地よかった。
この日の白眉は、何といっても第4楽章のラルゴ。
独奏ヴァイオリンが最弱音で長い持続音を弾く中、悲劇的とも神秘的ともとれる音楽が展開していきます。この持続音は異常なくらいの緊張感で、私の眼も耳もすっかり独奏ヴァイオリンにくぎ付けになっていました。
また、独奏チェロの美しさも絶品。

メインの交響曲第5番(私の大好きな曲です)も素晴らしい演奏でした。
第1楽章、こんなフレーズがあったのかと、私にとっての新しい発見がいくつもありました。
中間部でオケ全体がユニゾンで強奏する箇所では、思わず鳥肌がたちました。
そして第3楽章のラルゴも秀逸。冒頭の弦のささやきを受けてハープとフルートが奏でるフレーズでは、思わず目頭が熱くなりました。
そして終楽章は、圧倒的な名演といって差し支えないでしょう。
終演後の大きなブラヴォーと、長く長く続いた拍手が、演奏の素晴らしさを物語っています。

デプリーストの音楽を実際に聴くのは初めてですが、素晴らしいマエストロですね。
音楽の勘どころをすべてきっちり押さえて、すべてのフレーズを十分に歌わせます。
また、全体の見通しがすごくいいんです。
だからこそ、音楽がが活き活きと十分に鳴りきるんだと思います。
それから、デプリーストのタクトに応えた都響のメンバーにも拍手。
素晴らしいアンサンブルでした。
日頃、読響を聴くことが多い私ですが、熱狂的な都響ファンの気持ちがよく分かりました。





コメント (6)
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