先日、初めてのネットオークションでゲットしたウィーンフィルの来日公演ですが、演目はモーツァルトの第39番とベートーヴェンの第7番です。
一言で総括してしまうと、端正なモーツァルト、情熱的なベートーヴェンという感じなんですが、前からこの2曲には何か共通項があるような気がしていました。
①4楽章構成の長調のシンフォニーであること
②第1楽章に印象的な序奏部がついていること
③大変な名曲であるにもかかわらず、ニックネームがつかない作品であること
④とりわけ澄みきった抒情をもった美しい楽章を有すること
(モーツァルトは第3楽章トリオ、ベートーヴェンは第2楽章のイメージです)
ざっとこんな感じでしょうか。
一方、これらのシンフォニーの中に、モーツァルトは「溢れるように湧き出てくる歌」を、ベートーヴェンは「マグマのように熱くエネルギッシュな情熱」を封じ込めているように感じます。この違いが最も大きいかもしれません。
この2曲のうち、今回はモーツァルトの変ホ長調交響曲について、少し書いてみたいと思います。
残念ながら、今回聴くアーノンクールとウィーンフィルの組み合わせの録音はないようなので、アーノンクールが指揮した2枚のディスクをベースにコメントします。
アーノンクールには、1984年にロイヤルコンセルトヘボウと組んで録音したものと、1991年のモーツァルト没後200年の当日にヨーロッパ室内管弦楽団と組んで録音したものの2種類が残されています。
アーノンクールが再録音した作品においては、基本的に演奏スタイルを変えることなく温かな情感を感じさせてくれるので、多くの場合、私は新盤に惹かれています。
(メサイアしかり、モツレクしかり・・・)
しかし、このモーツァルトの39番は新盤もいいけど、旧盤の魅力も捨てがたいところです。
というより、私がこのコンセルトヘボウとの旧盤から教えてもらったことが、あまりに多いからに他なりません。
新盤の、瑞々しさを湛えた素晴らしい演奏は、既に多くの人が語っているところですが、基本的なスタイルは旧盤も全くと言ってもいいほど変わりません。
あの第1楽章冒頭、鮮烈な付点音符の表現、下降音階の驚くべき速さ、そして何よりも、この革新的な演奏をあの美しい響きに特徴があるコンセルトヘボウが行っているということに、心底驚きました。
あの伝統のあるオーケストラに、このような表現をすることを納得させたアーノンクールは本当に凄いと思ったものです。
でも、付点音符と音階は、この曲のキーワードなんですね。
終楽章までとおして聴くと、何故アーノンクールがこの第1楽章冒頭であれだけ強烈なインパクトのある表現をしたかが分かってきます。
このキーワードにを下地にして、オペラのアリアの一節かと思わせるような美しいメロディを随所にちりばめる、モーツァルトはそんな仕掛けをしたんだとこの演奏を聴いて感じました。
第3楽章メヌエットも、最初聴いたときは、CDプレーヤーが壊れたかと思いました。それくらいハイスピードだったんです。しかも伴奏のリズムも短く切って強調していましたから、どうしても激しく躍動的な踊りに聴こえます。
あの美しいトリオもこの調子で行っちゃうの?
いいえ、アーノンクールは役者でした。
トリオはぐっとテンポを落として、実に美しく歌ってくれました。
一度こんな表現を聴いてしまうと、通常の表現で聴くと何か物足りなくなってしまうのは、ちょっと危険な兆候かも(笑)
そして終楽章、躍動感がとても心地よいです。
ただ、リピートの直前に登場する上昇音型はスタッカートのはずですが、あららテヌートじゃないですか。こんなアーティキュレーションは聴いたことがありません。
逆に非常に印象に残りました。
また、管楽器と弦楽器の美しい掛け合いが、本当に活き活きと表現されていたことも特筆されます。
多くの名演奏に恵まれた曲ですが、私のお気に入りの他のディスクも簡単にご紹介しましょう。
■セル/クリーヴランド管
私の中のスタンダード。ベースはアーノンクールに近いかもしれません。
しかし、もっと優しく温かい表現です。
対旋律の扱いの見事さ、第3楽章トリオのクラリネットが奏でるえもいわれぬ美しさはこの演奏が1番だと思います。
■ワルター/コロンビア響
第2楽章の慈愛に満ちた表現は、ワルター以外に絶対聴けません。
ワルターの人間性が最もよく現われた演奏。
■スイトナー/ドレスデン国立歌劇場管
素朴な美しさという点では最右翼。第3楽章トリオでクラリネットを引き継いで弦楽器が奏でる表情のなんという美しさ。
■レヴァイン/ウィーンフィル
数多いウィーンフィルの演奏からは、このディスクを推します。
サプライズのあまりない演奏ですが、「この柔らかな響きを聴いてくれ。それ以外に何を望むの?」と言われそうな美しい演奏です。
あと、ケルテス盤もウィーンフィルとの相性の良さを示す好演。
バーンスタイン盤は、私にはあまりぴんと来ません。終楽章の装飾音符がとても特徴的ですが・・・。
■その他
クーベリック、クレンペラー、ヴァント等まだまだ採りあげたい素敵な演奏も多いのですが、それはまたの機会に・・・。
11月13日の本番が、今から本当に待ち遠しいです。
一言で総括してしまうと、端正なモーツァルト、情熱的なベートーヴェンという感じなんですが、前からこの2曲には何か共通項があるような気がしていました。
①4楽章構成の長調のシンフォニーであること
②第1楽章に印象的な序奏部がついていること
③大変な名曲であるにもかかわらず、ニックネームがつかない作品であること
④とりわけ澄みきった抒情をもった美しい楽章を有すること
(モーツァルトは第3楽章トリオ、ベートーヴェンは第2楽章のイメージです)
ざっとこんな感じでしょうか。
一方、これらのシンフォニーの中に、モーツァルトは「溢れるように湧き出てくる歌」を、ベートーヴェンは「マグマのように熱くエネルギッシュな情熱」を封じ込めているように感じます。この違いが最も大きいかもしれません。
この2曲のうち、今回はモーツァルトの変ホ長調交響曲について、少し書いてみたいと思います。
残念ながら、今回聴くアーノンクールとウィーンフィルの組み合わせの録音はないようなので、アーノンクールが指揮した2枚のディスクをベースにコメントします。
アーノンクールには、1984年にロイヤルコンセルトヘボウと組んで録音したものと、1991年のモーツァルト没後200年の当日にヨーロッパ室内管弦楽団と組んで録音したものの2種類が残されています。
アーノンクールが再録音した作品においては、基本的に演奏スタイルを変えることなく温かな情感を感じさせてくれるので、多くの場合、私は新盤に惹かれています。
(メサイアしかり、モツレクしかり・・・)
しかし、このモーツァルトの39番は新盤もいいけど、旧盤の魅力も捨てがたいところです。
というより、私がこのコンセルトヘボウとの旧盤から教えてもらったことが、あまりに多いからに他なりません。
新盤の、瑞々しさを湛えた素晴らしい演奏は、既に多くの人が語っているところですが、基本的なスタイルは旧盤も全くと言ってもいいほど変わりません。
あの第1楽章冒頭、鮮烈な付点音符の表現、下降音階の驚くべき速さ、そして何よりも、この革新的な演奏をあの美しい響きに特徴があるコンセルトヘボウが行っているということに、心底驚きました。
あの伝統のあるオーケストラに、このような表現をすることを納得させたアーノンクールは本当に凄いと思ったものです。
でも、付点音符と音階は、この曲のキーワードなんですね。
終楽章までとおして聴くと、何故アーノンクールがこの第1楽章冒頭であれだけ強烈なインパクトのある表現をしたかが分かってきます。
このキーワードにを下地にして、オペラのアリアの一節かと思わせるような美しいメロディを随所にちりばめる、モーツァルトはそんな仕掛けをしたんだとこの演奏を聴いて感じました。
第3楽章メヌエットも、最初聴いたときは、CDプレーヤーが壊れたかと思いました。それくらいハイスピードだったんです。しかも伴奏のリズムも短く切って強調していましたから、どうしても激しく躍動的な踊りに聴こえます。
あの美しいトリオもこの調子で行っちゃうの?
いいえ、アーノンクールは役者でした。
トリオはぐっとテンポを落として、実に美しく歌ってくれました。
一度こんな表現を聴いてしまうと、通常の表現で聴くと何か物足りなくなってしまうのは、ちょっと危険な兆候かも(笑)
そして終楽章、躍動感がとても心地よいです。
ただ、リピートの直前に登場する上昇音型はスタッカートのはずですが、あららテヌートじゃないですか。こんなアーティキュレーションは聴いたことがありません。
逆に非常に印象に残りました。
また、管楽器と弦楽器の美しい掛け合いが、本当に活き活きと表現されていたことも特筆されます。
多くの名演奏に恵まれた曲ですが、私のお気に入りの他のディスクも簡単にご紹介しましょう。
■セル/クリーヴランド管
私の中のスタンダード。ベースはアーノンクールに近いかもしれません。
しかし、もっと優しく温かい表現です。
対旋律の扱いの見事さ、第3楽章トリオのクラリネットが奏でるえもいわれぬ美しさはこの演奏が1番だと思います。
■ワルター/コロンビア響
第2楽章の慈愛に満ちた表現は、ワルター以外に絶対聴けません。
ワルターの人間性が最もよく現われた演奏。
■スイトナー/ドレスデン国立歌劇場管
素朴な美しさという点では最右翼。第3楽章トリオでクラリネットを引き継いで弦楽器が奏でる表情のなんという美しさ。
■レヴァイン/ウィーンフィル
数多いウィーンフィルの演奏からは、このディスクを推します。
サプライズのあまりない演奏ですが、「この柔らかな響きを聴いてくれ。それ以外に何を望むの?」と言われそうな美しい演奏です。
あと、ケルテス盤もウィーンフィルとの相性の良さを示す好演。
バーンスタイン盤は、私にはあまりぴんと来ません。終楽章の装飾音符がとても特徴的ですが・・・。
■その他
クーベリック、クレンペラー、ヴァント等まだまだ採りあげたい素敵な演奏も多いのですが、それはまたの機会に・・・。
11月13日の本番が、今から本当に待ち遠しいです。