ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ヘッツェルのブラームス:ヴァイオリンソナタ全集

2006-09-06 | CDの試聴記
紀子さま ご出産おめでとうございます!
男児誕生ということよりも、無事にお子様がお生まれになったということが何よりも良かった。
心よりお喜び申しあげます。

実は、私にとっても、今日はちょっとうれしいことがありました。
必死で探し回っていたCDが届いたのです。
いろいろなルートで在庫を確認してもらいましたが、結局すべて廃盤だからとの回答。
諦めきれず、中古レコード屋でも時間がある限り見て回りましたが、見当たらない。
それが、「夢よもう一度」ではありませんが、何気なくネット・オークションをみていると、出品されているではありませんか。
早速入札したのは、いうまでもありません。
リミットまでの5日間の何と長かったこと!
結局入札したのは私一人だったようで、幸運にも落札することができました。
また、中古ということもあり値段も安くゲットできました。

その幸運のディスクが、このヘッツェルのブラームスのヴァイオリンソナタです。

早速聴きました。
素晴らしかった。ほんと素晴らしかった。
それしか、言うことはありません。
昔からこの曲は大好きな曲だったので、いろいろな演奏を聴いてきました。
しかし、ヘッツェルの演奏は、どのヴァイオリニストとも違います。
エキセントリックになったり、効果を狙った音は、一音足りともありません。
ウィーンフィルの名コンマスとして鳴らした、あの温かく豊かな音、真摯で豊かな音楽がここにはありました。

たとえば、私が最も好きな第2番の第1楽章。
なんという優しさ、なんという豊かさ。全てを包み込むような、自然で素晴らしい音楽です。
聴きながら、不覚にも涙がでてきました。
またピアノのドイチュとの掛け合いの妙は、やはりソリストの感覚ではなかなか表現できないものです。
ウィーンフィルという稀代の名アンサンブルの中で培われた、というよりも名アンサンブルを引っ張ってきた達人でないと、なしえなかったでしょう。

もう一例あげると、第3番のフィナーレ。
プレスト アジタートと書かれたこの楽章は、第3番の終曲であるだけではなく、全3曲を締めくくる曲です。
だからこそ、たいていのヴァイオリニストは、速めのテンポでテンションを高めながら、ぐいぐいラストへ向けて疾走するのですが、ヘッツェルは違う。
「何をそんなに急ぐの。ブラームスの心の歌が聴こえないの?」といわんばかりに、たっぷり豊かに表現しながら、それでいて最後は自然と緊張感が高まっている、まさにそんな風なんです。

あの名匠カール・ベームが無条件に信頼したコンマスだけのことはあります。
ヘッツェルさん、あなたは何故こんな素敵なアルバムを遺して、52歳という若さで亡くなってしまったのですか。
あなたのベートーヴェンもバッハも聴きたかった。もちろんモーツァルトも・・・。
それから、ウィーンフィルのコンマス席で少し身体を傾けながら演奏するあなたの姿を、一度で良いからステージで見たかった。
残念です。

このブラームスのディスクは、間違いなく私の「宝物」になりました。
それから、このディスクを教えていただいたemiさまにも感謝します。

         

<曲目>
■ブラームス ヴァイオリンソナタ(全曲)
<演奏>
■ゲアハルト・ヘッツェル(ヴァイオリン)
■ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)
<録音>
■1992年1月 ウィーン
コメント (4)
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