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踏みにじられた「双葉ばら園」 原発は文化を破壊する!

2015-07-22 23:52:08 | 日記
 今夜のNHKクローズアップ現代は、フクシマ第一から8キロの地にあった、個人経営では日本で最大(2万坪)で、かつ最も美しいといわれた「双葉ばら園」の現在を報告していた。まだ立ち入りもままならないそこは、これがバラ園であったかと思われるほどの荒れ果てようで、雑草や雑木の間に、わずかに一、二輪のバラを見るばかりであった。

          

 このバラ園の育成と維持に家族ぐるみで半世紀をかけてきた経営者の岡田さん一家は、今や家族も分散したままの避難生活を余儀なくされている。
 なんとか蘇らせたいのだが、その資金がないという。東京電力に依る損害賠償金の支払い基準はなんと、そのバラ園は単なる「雑木林」の扱いだというのだ。家族が丹精込めてきたバラ園が、その辺に放置された山林と同様にしか評価されないのだ。

          

 これこそ、あのフクシマが破壊したものが、単なる財貨にとどまらずひとつの文化であったことを象徴的に物語る証左といえる。
 
 そしてまた、原発維持派、再稼働派のイデオロギーともいえる思考が鮮やかに示されている。彼らは経済上の効率や、運用益など、マスとしての数字を並べ立ててそのメリットをいいたてる。しかし、それらがもたらした、あるいはもたらし続けるであろうリスクの具体的な質、内容について語ることはない。
 つまり彼らが語るのはつねにトータルな数字であって、具体的、個別的な質の内容には触れることはないのだ。

          

 しかしながら、私たちにとっての文化は、そうしたトータルな数字の中にではなく、極めて具体的なその差異の中にこそあるのだ。それは、「雑木林」と「バラ園」との差異であり、「整理された復興住宅」と「人びとの喜怒哀楽が行き交った町並みや村落共同体」との差異なのだ。




 彼らは、2万坪に及ぶ花の楽園を一瞬にして破壊しつくし、その周辺の共同体を蹴散らした。その代わりに、いまなお危険な汚物を排出し続ける、あの醜い4棟のガラクタを、しかもここ何年も片付けることすらできないまま、残したのだ。
 文化や文明を破壊し続ける者たちの死臭を放つモニュメントとして。



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2 コメント

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美しいものがどれほどの宝か解ろうとしない人たち (さんこ)
2015-07-23 09:22:09
テレビを見ながら、バラ園の持ち主の無念を思いました。

なんでも数字にし、生産性しか尊ばない人は、おそろしい。
たとえば人の命を産み育てるということなど、家事労働、介護なども、軽んじることに相通じます。

はらだたしいことです。女性蔑視にも相通じます。
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生産性の論理は差異を見ない! (六文銭)
2015-07-24 02:23:17
 さんこさん。
 数字のみに頼る判断は、一見、公正に見えながら、そこにある質的差異を一切見ない暴力に転化します。
 考えてみれば、原発そのものがそうした効率性の論理のみに依拠し、そこに住まう具体的な人の生を数量的に計量し、補償金という札束攻勢でできたものですから、その暴走による被害の算定にもそうした数字の論理に依拠するのだと思います。
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