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信州伊那谷「赤そばの里」と元気な昆虫たち

2014-09-19 02:21:11 | 花便り&花をめぐって
 この中旬、長野県上伊那郡箕輪町の「赤そばの里」を訪れた。
 「赤そば」といってもコミュニスト(これはもう死語なのだろうか)の蕎麦ではない。花も実も文字通り赤い蕎麦なのだ。

 

 日本蕎麦の花は白いのだが、中国の雲南省あたりではピンクのものがあるという。しかし、ここのはまた違って、ヒマラヤの標高3,800メートルの高地に咲く赤い花のものを持ち帰り、それに品種改良を加えたもので、「高嶺ルビー2011」と名付けられたものだとのこと。

 

 中央道伊北インターから車で10分少々なのだが、まずはこの地は蕎麦そのものの産地とあって、普通の日本蕎麦の畑を見ることにした。
 蕎麦の花はまさに満開で、白く清々しく咲き誇っていた。

 農薬などあまり使っていないせいか、小型のコガネムシや花アブ、それにアキアカネなどが写真を撮るレンズの先に小うるさいほど飛び回っている。
 アキアカネは岐阜などで見るのとは違って、もうすっかり色づき、胴体が真紅に輝いていた。

 

 この調子なら赤そばも期待できるぞと先を急ぐ。
 赤そばが栽培されている地域は限定されていて、標高900メートルの地に、4.2ヘクタールにわたって展開しているという。
 ほかの蕎麦と分離されているというのは、やはり高地を好むとうことか、あるいは白いものとの交配を断つということだろうか。

     

 指定された駐車場からしばらく、木立ちの山道を登る。
 ちょっと疲れたかな(若い人にとってはそうではないだろう)というあたりで山道のカーブを回り切ると、いきなり視界がひらける。
 なるほど赤い。広大な地がじゅうたんを敷き詰めたよう赤さを帯びてはいる。

 
 
 しかし、なんだか物足りないものがある。
 花の赤さと葉の緑が混在していて、予め聞いていた「真紅の絨毯を敷き詰めたような」という情景とはいささか異なるのだ。
 しかし、さらに近づくとその原因がわかった。4分咲きというぐらいなのかまだ花がじゅうぶん開ききっていないのだ。赤そばは普通のそばに比べて開花が遅いのだ。

 

 土地の人に聞くと、「最盛期なこんなもんじゃないぞ、気味が悪いくらい一面が真っ赤になるのだから」とのことだ。
 確かにこの程度の開花で、これだけ赤いのだから、最盛期にはもの狂わしいほど赤くなることはじゅうぶん想像できる。ちなみに今年の最盛期は9月後半から10月中頃までということだから、これからという人にも間に合うだろう。
 しかし、生まれてはじめて見る赤い蕎麦の花はじゅうぶん感動的であった。

     

 もう一つ残念なことがある。それは、この赤そばをぜひ味わいたいと思ったのにそれがかなわなかったことだ。畑を降りたところに、「赤そば」という看板が出ている店があったが、まだ営業していなかった。
 帰ってからネットで調べたら、今年は以下のような日程という。
  ▼赤そば花まつり:9/27(土)・28(日)
   地元農産物・手工芸品の販売
   手打ちそばの提供(有料)
  ▼地元農産物等直売所の開設
   9/19(金)~10/12(日)

 

 ようするに、行くのが少し早すぎたのだ。
 自然は自然がもつ周期で移ろう。人間はまた、人間のもつ都合で往来する。
 だから、それらが重なり合わないことはよくあることなのだ。
コメント
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