六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

「考える前に読め!」 私のデタラメ読書録

2014-05-26 03:06:46 | よしなしごと
 私は実に持続力のない、いわゆる落ち着きのない子なのです。
 ですから、小学生の頃から、通信簿の特筆欄には、いつも「もっと落ち着きなさい」と書かれていました。
 ですから、それを見た父母は、「もっと落ち着け」というのですが、私にはそれがどんなことを要求されているのかがわからないまま、今日まで来てしまったのです。

 おそらくそれは、私の関心の対象がつねに揺れ動いていて定まらないということだったのではと今にして思うのです。で、それがわかったからして70年後の私が落ち着きなるものを身につけたかというと、それはまったくもって怪しいのです。

          

 最初の写真は、今私が平行して読んでいる書の全てです。この「平行して」というのが散漫具合をよく表していますね。
 私は、ひとつの著を集中的に長い時間をかけて読むことができないのです。
 そうすると、その内容がなんか希薄なものに溶解してしまって、そのリアリティが失われてしまうのです。
 ですから、私の読書は、学校での一時限目、二時限目ののように一日の間に何度も移動します。

 現在の主眼は、「思想」の1月号、2月号に連載された森一郎氏の、「共ー脱現在化と共-存在時性 ハイデガー解釈の可能性」です。
 これは今私が勉強している領域と重なりますし、ハンナ・アーレントが、その師、ハイデガーから何を学び何を忌避したかも偲ばれます。
 なお、この2月号の柿並良佑の「存在論は政治的か?」も気になるところですがまだ未読です。

 ミッシェル・フーコーの『ユートピア身体/ヘテロトピア』は、短いテキストですが、前世紀に書かれたもっとも美しい、かつ詩的な哲学的エセーとしてじっくりと読みたいと思います。
 美しい書、美しい文章で、まさに哲学と詩がもっとも理想的にクロスする文章だと思います。

 「きけ わわだつにのこえ」は、当分座右に置きながら、それを追体験する書です。
 私のつい兄とすべき人たちの死地へと赴く自己了解のようなものが哀しく、この理不尽さを再び人類は生み出してはいけないと思い、そこへと立ち返って思考したいと思います。

          
 
 最後の山田風太郎は、なぜだかうちにあったものですが(誰か家人が持ち込んだもの)、彼の文章は簡潔で歯切れがよくて好きです。だいたいは、睡眠剤を飲んでから眠くなるまでに読むのですが、時折、それではもったいないシュールなものもあります。
 この口絵などは、岩田専太郎ほどではないにしても、まさに時代劇のそれですね。

 といった具合で私のデタラメ読書術を紹介したのですが、ついで、次につっかえているのもを紹介します。

          

 ひとつは、日方ヒロコさんからご贈恵頂いた作品集『やどり木』です。
 日方さんは熱心な死刑廃止論者でいらっしゃって、私も知っているある死刑囚と養子縁組をされているような方ですが、この本は直接それに触れたものではありません。
 戦前、北支のチチハルに生まれ、満州国で育った著者が、日本へ帰り着く過程で、いわゆる関東軍がいかに現地の一般民を棄却していったのか、それらの中でやっと日本に帰った著者がいかに戦後の日本を受容していったかの話ですが、まだ拾い読みした段階です。

          
          

 ついで昨日、ネットで知り合った大学の先生から大著のご恵贈を頂きました。
 いわゆる社会学の分野に属するのですが、
 「現行の福祉国家を踏まえながら、それがはらむ問題領域を検証しつつ、来たるべき共同体のありようへのご考察と勝手に見当を付けさせていただきました。あまり馴染みのない固有名や、社会学独自の概念装置などがありそうですが、なんとか食らいついて勉強させていただく所存です。」
 という私のお礼状にある通り、私の関心領域ともかなり関わっていると思います。
 とりわけ帯にある、「理想の力」があとがきでは「知的想像力」と等値されているように、この大著が、単に客観的事象の対象的な叙述にとどまらず、著者のある志向性を如実に表明しているように思います。
 追って精読いたしたいと思います。

 そんなチャランポランな読書の中から、私は何かを掴めとれるのでしょうか。
 いささか心もとないのですが、とりあえずは、活字が招くところに従いたいと思っています。
 

以上に触れた文献の資料。

1,雑誌『思想』 岩波書店
2.ミッシェル・フーコー『ユートピア身体/ヘテロトピア』 水声社
3.『きけ わだつみのこえ』 Ⅰ Ⅱ 岩波文庫
4. 山田風太郎 『ありんす国伝奇』  富士見書房
5. 日方ヒロコ 『やどり木』 れんが書房新社
6. 新川敏光 『福祉国家変革の理路 労働・福祉・自由』ミネルヴァ書房



コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする