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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

老人の集いと時間のエコノミーについての考察

2014-04-13 00:55:41 | 日記
 先般、親しい仲間内の月例の会合が開かれました。
 いつもは名古屋で行うのですが、今回は諸般の事情で岐阜で行うこととなりました。
 ところが定刻になっても二人が姿を見せません。

 そこで連絡を、といっても簡単ではありません。その内のお一人は、できるだけITにかかわらないとのことで、PCは持っていてもワープロ機能限定の使用ということが示すように、携帯もお持ではいらっしゃいません。
 したがって連絡は、ご自宅のお連れ合いを介して、この方は公衆から、こちらからは携帯での連絡となります。かくして電波がV字型に飛び交うなか、原因が判明しました。この方、集合場所が岐阜駅だったにも関わらず、お気の毒に名古屋駅で一人ぽつねんと待っていらっしゃったのでした。
 で、これから参上ということで解決。

          

 もうお一人は、すぐにキャッチ出来ましたが、こちらの方は11時集合を11日集合(集まったのは10日)と勘違いしてらっしゃったということでまだ自宅。
 で、これから駆けつけるということで解決。
 前者は空間の錯誤、そして後者は時間的な錯誤でした。

 結局、全員が無事、長良河畔の所定の場所で顔を揃えることが出来たのは、予定の時間から1時間半遅れた12時半でした。
 それでも総勢7人のフルメンバーが顔を揃えることが出来たのは久しぶりで、みんなでよかったよかったと喜んだのでした。

          

 ここまで読んだ若い人たちはイライラされるかもしれませんね。
 しかし、平均年齢が80歳に近い集まりはこうしたものなのです。
 だから、お互いの無事到着を喜ぶことはあっても、遅れたひとを責めたりすることはありません。
 
 なぜなら私たちはもう、Time is Money.などという小賢しくも窮屈な時間概念を超越しているからです。
 世間の大半の人にとっては、時間はなにものかを生み出すための手段なのかもしれませんが、私たちにとっては、時間は何かのためというのではなく、その経過自身を固有の仕方で味わう対象なのです。
 ですから、生産のための時間はそれ自身はニュートラルで、最終的にはお金になる(ならねばならない)という怪しげなお化けなのですが、私たちが確実に消費する時間は、そうしたお金というテロスとは無関係な、それ自身価値あるものとして固有な色彩や重量をもっています。

          

 生産のための時間は誰彼なく交換可能ですが、私たちの時間はそうではありません。
 ですから「時間に遅れた」のではなくて、「遅れるという」時間をもったのです。
 また、なにがしかの時間を待ったのではなく、「待つという時間」をもったのです。
 したがって、これでもって誰かが損をしたわけではありません。
 生産場面だったらロスタイムとしてタイムスケジュールのなかから削除され、そうした無為な時間を生み出した者は懲罰ものでしょうね。

          

 昔は、よくその地方などでの固有の時間の流れがありました。
 例えば「名古屋時間」というのがあって集合時間が何分か遅れるのは当たり前で、その遅れの幅が「名古屋時間」や「岐阜時間」を特徴付けていました。
 そうした折でも、人びとはさして怒ったりせず待ったものです。

 しかしそれらは、「非」近代的風習として否定され、今日に至っています。
 ここから見えるのは、近代というのは時間が人それぞれや地方的な色彩を失って、均質になったこと、つまり、ニュートラルでのっぺらぼうで、もっぱら生産のツールとして、金に化けるべきものとなったことが伺えます。
 
 かくして無為な時間(=金に化けない時間)はあってはならない時間であり、働く人たちにとっては、それ自身楽しむべき休養の時間も、「リクレーション=Re-creation」 というフレーズが示すように、新たな労働のために奉仕すべき時間としてあるのです。

          

 こうなると、人間が時間を用いているのではなく、時間が人を支配していることになりますね。
 そんなわけで、時間の現象学的考察は、はからずも時間における疎外状況をあぶり出すのです。
 え?暇な年寄りがたわけたことをと思いですか?
 それはそれでけっこう。
 せいぜい時間と追っかけっこをお続けください。
 その結果として退職金を手にした時、精魂尽き果ててたりしないようにね。
 あるいは、時間の消費の仕方が分からなくなったりしていないようにね。
 これはイヤミではなく、心からの忠告です。

          

 長良河畔、名残の桜が舞い散っていました。写真はそのうちのまだ満開だった日中友好公園内の枝垂れ桜です(10日撮影)。
 


コメント (6)
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