わが母ながら病人に会うだけでは気詰まりでつらい。
だから見舞いの前後に寄り道をしたりして気を紛らわせる。
病院から出たら向かい側のビルに少し傾き始めた陽が映えて綺麗だった。
サラマンカホールへ、3月に行われるコンサートの前売りを買いに行くことにする(ひとつは大阪フィル・岐阜定期公演、もうひとつは藤原歌劇団合唱部プラス中部フィルハーモニー)。サラマンカメイトになっているおかげで1割引である。
普通はネットで申し込むのだが、大阪フィルはサラマンカ主宰コンサートではないのでネットで買っても割引にならない。直接出かければ割引になるというので出かけた。もともと母の病院からさして遠くはない。
途中、梅がほころびているところがあったので、車を止めて早速写真に収める。
ところがである、いいアングルを求めてろくに足元も見ないでズカズカ草むらへ足を運んだのはいいが、そこはコセンダングサの群落で、自分の種子を運んでくれる間抜けな運搬人を待ち受けていたのだった。
このコセンダングサ、花こそ可憐な黄色いものだが、その実は一センチぐらいの細い棒状のもので、その先がフォークのようになっていて繊維にしっかり突き刺さるのだからたちが悪い。
むろんそんなことは知るよしもなく、あちこち歩き回りおまけに腰を落としてカメラを構えたりしたので、気づくと、ズボンの両脚はむろん、お尻や腰の回りまでくっつき虫がびっしりで、まるでハリネズミのような有様であった。
気短にこすってもなかなか取れない。最後は一本一本、引き抜かなくてはならない。15分程も要しただろうか、もういいだろうと思ったのだが、うちへ帰ってよく見たらまだ多少残っていた。
そんなことで時間を取られたが、なんとかサラマンカホールへ着き、所定の料金を払ってチケットを入手する。
青みがかった建物がすっきりしている。この日はちょうどイベントがなかったせいで人気がない。
振り返るとそちらは岐阜の県庁方面で、すっかり傾いた西日が建物をくっきりと照らし出していた。西日というのは交響曲の第四楽章のように対象を明々と映し出す。そして、やがてそれが暗転する前兆であるのも音楽の終曲に似ている。
さらに足を伸ばして県立図書館に向かう。今度発表することになっている勉強会の参考書を探す。借りてくるまでもないものを立ち読みしたりもする。
結局該当するものを2冊と、ハンナ・アーレントに関する新しい書を一冊、それに、この間会った名古屋大学教授の坪井秀人氏の本を一冊、さらには台湾文学の本を一冊借りた。何とも一貫性のない読書癖である。
図書館を出ると、日はすっかり暮れかかり、周辺の灯りと人影がなにやらひと恋しい風景を織りなしていた。
だから見舞いの前後に寄り道をしたりして気を紛らわせる。
病院から出たら向かい側のビルに少し傾き始めた陽が映えて綺麗だった。
サラマンカホールへ、3月に行われるコンサートの前売りを買いに行くことにする(ひとつは大阪フィル・岐阜定期公演、もうひとつは藤原歌劇団合唱部プラス中部フィルハーモニー)。サラマンカメイトになっているおかげで1割引である。
普通はネットで申し込むのだが、大阪フィルはサラマンカ主宰コンサートではないのでネットで買っても割引にならない。直接出かければ割引になるというので出かけた。もともと母の病院からさして遠くはない。
途中、梅がほころびているところがあったので、車を止めて早速写真に収める。
ところがである、いいアングルを求めてろくに足元も見ないでズカズカ草むらへ足を運んだのはいいが、そこはコセンダングサの群落で、自分の種子を運んでくれる間抜けな運搬人を待ち受けていたのだった。
このコセンダングサ、花こそ可憐な黄色いものだが、その実は一センチぐらいの細い棒状のもので、その先がフォークのようになっていて繊維にしっかり突き刺さるのだからたちが悪い。
むろんそんなことは知るよしもなく、あちこち歩き回りおまけに腰を落としてカメラを構えたりしたので、気づくと、ズボンの両脚はむろん、お尻や腰の回りまでくっつき虫がびっしりで、まるでハリネズミのような有様であった。
気短にこすってもなかなか取れない。最後は一本一本、引き抜かなくてはならない。15分程も要しただろうか、もういいだろうと思ったのだが、うちへ帰ってよく見たらまだ多少残っていた。
そんなことで時間を取られたが、なんとかサラマンカホールへ着き、所定の料金を払ってチケットを入手する。
青みがかった建物がすっきりしている。この日はちょうどイベントがなかったせいで人気がない。
振り返るとそちらは岐阜の県庁方面で、すっかり傾いた西日が建物をくっきりと照らし出していた。西日というのは交響曲の第四楽章のように対象を明々と映し出す。そして、やがてそれが暗転する前兆であるのも音楽の終曲に似ている。
さらに足を伸ばして県立図書館に向かう。今度発表することになっている勉強会の参考書を探す。借りてくるまでもないものを立ち読みしたりもする。
結局該当するものを2冊と、ハンナ・アーレントに関する新しい書を一冊、それに、この間会った名古屋大学教授の坪井秀人氏の本を一冊、さらには台湾文学の本を一冊借りた。何とも一貫性のない読書癖である。
図書館を出ると、日はすっかり暮れかかり、周辺の灯りと人影がなにやらひと恋しい風景を織りなしていた。