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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

北上の春?と高校野球

2007-04-13 17:15:02 | 社会評論
 いや~、驚いた。
 朝刊の記事である。
 
 専大北上高校が野球部の複数の選手を特待生扱いにしていたのに対し、高野連が学生野球憲章違反として除名相当の処分にするというのだ。
 
 残念ながら、そうした事実があったことに、或いは、そんな事はあっていいはずはないということで驚くほど私は純情ではない。
 その逆である。何を今さら、ということである。
 専大北上に限らず、全国津々浦々の甲子園常連私学で、とりわけ近年名を挙げてきた高校で同様のことが行われてきたことは世間一般の常識ではないか。

 有名監督を採る。その監督のかつての弟子筋が全国で少年野球の監督をしていたりして、彼らがスカウト的な役割を果たし、野球の上手い子をその高校へ送り込む。その子や両親に対しては、学校側からそれ相当の見返りが保証される
 そんなシステムが、リトルリーグから既に厳然として出来上がっているのは国民の常識である。

     
 
 高校野球は今や完全にビジネスの分野である。
 私が若い頃のように、「あのセカンドを守っているのは、三丁目の八百屋の子だ」という時代ではないのだ。

 私の郷土、岐阜の日大大垣が選抜で準優勝を果たした。
 しかし、私は自分の日記などでも全く触れなかった。
 それは、あそこでも同様なことが行われたに違いないからだ。
 愛知の東邦高校で名監督といわれた坂口監督を採る。それにつれて坂口門下の少年野球の指導者などが反応し、日大大垣へと選手を送り込む。
 
 その図式が透けて見えるのだ
 それが証拠に、主力で岐阜県出身以外の選手が目立つ。
 (もっともこれまで、岐阜の野球少年が愛知の有名私学にかっさらわれてきた歴史を考えれば,それを取り戻したとも言えるのだが)

 甲子園出場校のうちで、公立高校の比率が年々低下しつつあるのは誰しも認めることであろう。
 そのうちになくなるかもしれない。
 私の友人に、岐阜県の高野連の関係者が居る。
 ある時、飲み屋での与太話に私がこんな提案をした。
 「甲子園大会を、私学と公立に分ける。そしてその優勝校同士で決勝戦を行うというのはどうだ」
 驚いたことに、それを聞いた彼は極めて真面目に耳を傾け、
 「それもひとつの方法だな」
 といったのだ。
 事態は既に、ここまで来ているのだ

  
 
 そして、ここからが肝心なところであるが、この事態を招いたのは、専大北上が除名処分に相当するなどとほざいている他ならぬ、高野連そのものなのだ。
 私が上に書いたようなことは誰しも感じ、いわば国民的常識なのだが、それを今日に至るまで放置したのが高野連ではないか。
 今回の事態は、プロ側からの不正な働きかけとの関連で明るみに出たのだが、高野連がそれを知らなかったり、陰に陽に特待生扱いが幾つかの学校で行われている事に気付いていなかったはずはないのだ

 もし、高野連が専大北上を除名処分にするならば、そしてそれを他校にも厳格に適用するとしたら、どれほどの有名校が生き残ることができるのか、そして高野連はそこまで腹をくくって追求するつもりがあるのか
 専大北上のみをスケープ・ゴートにして事態を収拾する事は許されない。
 それでは専大北上の選手たちがいかにも可哀相ではないか。

 高野連の仕事は、自分たちの怠慢が招いた事態を、選手たちへの処罰として糊塗するのではなく、高校野球というスポーツをビジネスの世界からなにがしか(完全には無理としても)取り戻すことである。
 そして、高野連自身がそうしたビジネスのマネージメントとしてしか機能してこなかったことを自覚し、解体的な出直しをはかることである。

 そうでなければ、私たちの眼には、グラウンドでプレイする選手たちの姿と、札束が投げたり打ったりする姿とがオーバーラップして、本当に野球を楽しむことが出来ないのだ。

 
 
 以上の記述は、実際にグラウンドで汗を流している選手に対する非難や名誉毀損を一切含むものではない。  
 また、少子化の中で私学が宣伝部門としてスポーツを用いざるをえないという事情を、全く理解しないわけでもない。
 しかし、スポーツの前提としての公正の原則が著しく犯されることがないような限度は明確にすべきだと思う。

 これらを全くかえりみず放置してきた高野連が、「はからずも」明るみに出た事態を、一部選手などの尻尾切りによって切り抜けようとする姑息さに終始するならば、まさに罰せらるべきは高野連そのものというべきである。

この件に関しては、「朝日」や「毎日」は全面批判は展開しないだろう。甲子園大会の関連で、高野連とつるんでいるからだ
 他のマスコミが頑張って欲しいものだ。

*写真はイメージによるもので、本文とは関係ありません。
コメント (3)
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