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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

丹波篠山黒豆騒動記

2007-01-05 01:20:08 | よしなしごと
 三が日も過ぎておせちの話もあるまいが、これは書いておきたい。

 わが家では、基本として私がおせちをつくる。
 理由は私がつくった方がうまいからだ。
 加えて、いろいろ変なトッピングや、手抜きの技巧を発見するのも楽しいからだ。

 しかし、今年のわが家のおせちのハイライトは、丹波の黒豆だ。
 これは昨秋、SNSで知り合ったTさんから頂戴した本場ものの黒豆だ。
 それを下手に調理することは、彼の好意を無にするものだ。

 思わず、真央ちゃんがトリプルアクセルを決める前のような緊張がはしる。

 偉そうなことをいっている割に私の黒豆体験は過去に一度しかない。しかもそれは、ふっくらと味がしみこんだという事前のイメトレとはほど遠く、しわくちゃで、味もうまく浸透してはいなかった。
 下ごしらえの不十分さと、急速な加熱が原因と自己批判した。

  
 

 さて、失敗は許されない。そこらの企業のように、記者会見で逆イナバウアーか、米つきバッタを演じればいいという軽々しいものではないのだ。
 美しい日本をひとりで背負って立ったような重圧に足元が震え、顔の筋肉は極度に硬化し、ナルシスの再来といわれた美貌が幾分そこなわれて行くのを意識する。

 先ず下ごしらえだ。
 きれいに洗った黒豆を、6時間以上水につけ込む。その折り、さび釘10本あまりと、重曹を少し加える。これが黒さをいや増す。

 待つ、ひたすら待つ。豆どもが、私の意図を十分理解し、期待した反応を現すのを待つ。

 時は熟した。いよいよ火入れだ。
 蓋をしないで煮込んで行き、煮立ったら表面の灰汁を取り除く。地味な仕事だ。しかしこの一見虐げられたような仕事が、やがて大輪の花となって開花するのだ。少なくとも、演歌の世界ではそうなっている。紅白で、オッパイみたいな肉襦袢を着て踊っているわけにはいかないのだ(ここんとこなんの脈絡もない)。

 これ以上とれないところまで灰汁と格闘したら、今度は一挙に調味料を入れ落としぶたをして本格的な火入れだ。

 そして、ここが私の手抜きの本領が発揮されるところなのだ。
 今まで、鍋に触れなかったが、実はこれは圧力鍋なのだ。
 蓋を閉める。15分ほど強火にかけ、鍋のおもりが勢いよく回り出したら火を弱め、さらに20分ほど加熱して火を止める。

 これで出来たと思ったら大間違い。世の中それほど甘くはない。さらに10分ほど蒸らすのだ。
 そして圧力をぬいて蓋を開けると、あら不思議、ほぼ円形だった豆が楕円形をして、しかもくすんでいた表面が黒光りしているではないか。
 ひとつつまんでみる。柔らかい、味もそこそこ沁みている。

 さあ、これで完成と思うのはど素人の赤坂見附だ
 ここからが肝心要の最終チェックだ。
 甘みはこれでよいか。辛みはどうか。
 横断歩道は、右見て、左見て、また右を見ろというではないか(ン?逆だったかな。まあこの際どっちでもいいことにしよう)。

 味を調えたら弱火にし、またまた灰汁を取る。
 さあ出来た、と手を出すのはまだ早い。慌てる○○はもらいが少ないというではないか。

 そこでさらに蓋をしてじっくり寝かせるのだ。
 最低数時間か一晩だ。

 わ~い、できた、できた。
 「黒豆は苦労しがいが味となる」
 なんじゃこの川柳、まんまやないか。

   

 Tさん、見てくれ、この艶、この味!
 え?味は見えない?ごもっとも。
 しかし、あなたの好意は見事、この美濃の地で花開いたのですぞ。
 「守るも攻めるも黒豆の~」
 あれ!「軍艦マーチ」になってしまった。
 きっとこれは、安倍のせいだ!

 というわけで、私の作品「黒豆2号」の大公表である。
 写真は小分けしたもので、実際には重箱一杯つくった。
 だが、この黒豆って写真に撮るのが実に難しいのだ。
 重箱のまま撮ると、まるで三原山の噴火跡の火山弾のようになってしまうのだ。

 ボルドーの赤が写っているでしょう。
 この組み合わせ、意外と合うのだ。
 嘘だと思ったら試してご覧あれ。
 ただし私のようにうまく煮た黒豆でないと駄目ですぞ。ご同輩!

 Tさん。ありがとう。ごちそうさまでした。
 うちの家族はそういう人とは末永く仲良くしなさいっていってました。
コメント
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