六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

しじまに沁みた声。夜のグラウンド。

2006-08-18 01:41:01 | よしなしごと
 





 
 自転車で家に帰る途中、ちょっと寄り道をすると高校がある。
 防犯のためであろうか、夜間の無人のグラウンドに照明がついたままのときがある。

 昼の喧噪が嘘みたいでただ茫漠として広がっている。
 しかし、しばらくその空間を見つめていると、突如、若いさざめきの残響が聞こえる。

 変声期を終えた少年の野太いおらび声、あきらかにコケットリーな少女の嬌声。
 それらの間に織りなされる感情の交差、控えめな、あるいはあからさまな恋心と欲情。

 昼間、過剰に発散されてそれらの残滓が、夜のグラウンドにはなお息づいているのだ。
 だから、夜のグラウンドは、静謐を装ったなまめかしさに満ちている。

 
 昼間、岐阜の街を自転車で走り回り、その後、名古屋の町を徒歩で歩き回ったら、軽い熱中症だろうか、目眩とけだるさに襲われた。
 滅多に街頭のペットボトル入りの飲料など買わないのだが、この際、とにかく水分補給とばかりに飲み、しばらく涼しいところでじっとしていた。

 その後の映画、『太陽』は、先般の『蟻の兵隊』に引き続き、またまた立ち見であった。この歳にはかなりつらい。

 映画を見終わって、知り合いの「りりこ@マタハリ」さんの店へ行く。
 久しぶりなのでゆっくりしたかったのだが、やはり疲労のせいかどうも冴えない。
 私にしてはややあっさりと引き上げる。

 
 夜のグラウンドのさざめきは、そうした私の疲れた脳細胞に浮かんだ幻聴なのだろうか。
 ぁ、でもあそこで、確かに少女が笑った。それもかなりけたたましく・・。
 眠っていた声たちを、私が起こしたのかも知れないと思いながら、それらの声を背にペダルを漕いだ。
 寝そびれたセミが、キチキチと鳴いて、私の前をよぎった。
コメント
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