イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

要塞賢母

2010-06-02 18:54:55 | 映画

懐かしいな『ナバロンの要塞』。

「胎教に悪いわ…」なんて言いながら布美枝ちゃん(松下奈緒さん)も結構ノリノリだったじゃないですか(@『ゲゲゲの女房』)。

グレゴリー・ペック。それよりアンソニー・クインが渋かったな。確か70年代の終わり頃に、蒲田か中野か、それこそ池袋かどっかの名画座で観たのがお初で、その後80年代末のレンタルビデオ全盛期にも一度観たような気がしますが、同じアリステア・マクリーン原作で数年後の製作『荒鷲の要塞』(こっちはリチャード・バートンとクリント・イーストウッド共演でした)と話が混じっちゃってるような気もするし、今度DVDで復習してみないといけんですな。

USもしくはUK製の、“連合軍勝ち、ナチスドイツ・枢軸軍負けわかってる前提”の第二次大戦映画って、基本線、テイストが似かよっているので、1020年経つと記憶がうすぼけてしまう。

TVの『コンバット』なんかもおもしろかったなあ。アメリカは勝ちいくさ映画ですからね。悲惨で犠牲を伴う戦争も、底のほうで“自分らだけはカッコよく強く生き残る”とドンと構えて作っている。戦時中も地方在住で裕福で、空襲や食料不足にあまり苦しめられず、家族や親しい友に戦没者もいなかったらしい布美枝さんはともかく、傷痍帰還兵で戦記漫画家でもあるしげるさん(向井理さん)もUS製の連合国戦勝映画に興じるとは、ちょっと意外。

布美枝ちゃんは、「あっちでヘップバーンの映画をやっとりますよ」と言っていたから、『ティファニーで朝食を』を観たかったのかしら。こちらではしげるさんは寝てしまうかもしれませんが。ミッキー・ルーニーのユニオシさんに、「アズキ洗いみたいな外人がおる」と意外に食いついたりして。

ヘップバーンはヘップバーンでも、ノッポつながりでキャサリン・ヘップバーンかな。彼女のひとつめのアカデミー主演女優賞(←生涯3度受賞)作『招かれざる客』は、ドラマの昭和375月時点ではまだ日本で封切られていませんね。1955年の『旅情』は布美枝ちゃん、まだ独身だったから実家地元で観たかな。「あのジェーンいう人、一生懸命働いて、お金を貯めてあげな綺麗な街に旅行しとるのに、ノッポだから結婚できんだっただろうか?」と複雑だったかな。

「カネがないところに子供ができて、これからどげなるかわからんが、まぁなんとかなるだろう」じゃ産まれてくる子供もたまったもんじゃありませんがね。本当になんとかなるんかいな。妊婦さん、カルシウムたくさんとらなきゃいけないのに。

新婚旅行も行ってない夫婦が期せずして初めての映画館デートの後“もち米じゃない節約お赤飯”でささやかにお祝い。「祝う気持ちが大事だけんな」の後のハニカミ「…大事にしえよ。」も良かったけど、間にはさまる「おい」とも「ほい」とも「ふぉい」ともつかない布美枝への呼びかけ方が、しげるさんはいつも、なんかいいんですよね。昭和のなんちゃって関白亭主の「おい!」はムカッとくるけど、しげるさんは微量〔-h-〕ないし〔-(h)w-〕音が含まれているので、とても耳当たりがやわらかい。

演じる向井理さんの、底のほうで理系おたくっぽい、うっすらマッドサイエンティストの弟子のようでもある白い歯スマイルが、太縁メガネ越しでやわらげられて、リアル水木しげる先生の“怪巨人”ぶりとは違った、ドラマの村井茂像を活写しています。ふんわり涼感。でも無味無臭じゃなく、キモくない程度にしっかり奇矯さも。水木先生役ならエキセントリックで容貌魁偉なくらいの俳優さんがいいと思ったけれど、いまとなっては向井さん以外考えられませんね。水木先生役がというより、松下さん演じる布美枝さんの旦那さま役が考えられない。

今日は「子供が生まれるんですぅーー!」しげる実家ご両親の夫婦漫才が癒してくれましたね。しげる夫婦が修復したとは言え前途多難チックな分、境港村井家の、水と油なのに奇跡的に乳化したかのような磐石の安定感が嬉しい。修平さん(風間杜夫さん)「そげか!おお、男か女か!」で、書いてあるわけないのに絹代さん(竹下景子さん)も一瞬、調子合わせてハガキ覗き込んでから、ペチッてツッコんでるんですよね。ノリツッコみ。

「はぁ~こうしちゃおられん!」ポン、「ほんならまず、手紙!」パン、といちいちゲンコツで手叩いて自分にも相手にもハッパかける絹代さん、なんだか金田一耕助ものにおける加藤武さんの「よし、わかった!」みたいなのね。

ここで何度も書いてきたけど、風間さん竹下さん、1985年のSPドラマ『受胎の森』でのイタ悲しいカップルが忘れられないのですが、それぞれ抱かれたい男チャート、お嫁さんにしたい女優チャートの常連上位だったおふたりが、年齢を重ねて、こういう、味のしみ込んだご夫婦役で楽しませてくれるベテランさんになっているというのは観客として喜ばしい限りです。

『受胎~』と言えば樋口可南子さんも忘れてはいけん。こちらもナイスご夫婦役を日々見せてくれていますが、旦那さん、犬ですね(@softbank)。

コメント
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