弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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商標は生き物 【登録後に識別力を喪失した商標】

2012年09月28日 09時03分09秒 | 実務関係(商・不)
今日は真面目な方のはなしですみません(なんであやまってんだろ…)。

産構審知財部会の商標制度小委員会(第29回)が今週開催され、
配布資料がアップされていたのでさらっと一読。

“新しいタイプの商標”については、効力制限規定や継続的使用権についての検討が進められているようで、
導入への細かい地ならしが行われている印象。
(※これまでの議論については、ここでコメントしました。)
まあ、驚く内容ではなく予想通りの内容かなぁ、と。


気になったのは、“登録後に識別力を喪失した商標の取消制度の創設”についての検討。

現行の制度としては、
(1)登録フェーズで識別力がない商標はそもそも登録していない。
(2)登録後、普通名称化したり品質表示化したりした場合、
   日本の法律では「登録を取り消す」という建てつけにはなっておらず、
   「商標権の効力が及ばない」(商標法第26条1項各号)になっている。

検討の骨子としては、
(A)そもそも普通名称化してしまった登録商標が権利として残っていると
   トラブルのもとになるんじゃね?
(B)他人が登録商標を、侵害ではないが普通名称化してしまうような使い方
   をしたときの担保措置がないのって、問題じゃね?
という2点。

検討結果としては、
(A)→
  ・ま、確かに他の国で取消制度を導入しているとこもいくつかあるよ。
  ・でも、ニーズ調べたけどそこまで差し迫ったニーズはないよね。
  ・ニュータイプの商標が導入されたら状況変わるかもしれないから、
   そのときに改めて検討すればいいんじゃね?
  ・制度悪用される可能性も検討したほうがよいよね。
(B)→
  ・こっちは、外国でもあんまり制度として規定されてないよ
  ・取消制度入れるときが来れば併せて検討すればいいんじゃね?
とのことで、今即手当されない模様。


だがしかし、代理人として商標調査その他に従事している身としては、
肌感覚として結構違和感。

“なんでこんな当たり前の表現が登録商標になってるの??”
という困った状況に、しばしば直面する。
もちろん、26条、不使用の可能性、
あるいはこちらが商標的使用にあたるか、という点を
精査することにより「懸念なし」の結論に至ることもあるが、
事業者としては無用なリスクは回避したいのが常だから、
そこで表示選択の自由にかなりの制限がかかることがある。

一方で、権利化する側に立つこともあるが、
その場合、極力普通名称や記述的表示に近いギリギリのもの
(ディスタンスが少ないもの)
について権利が得られた方が、一般的には事業上有利といえる。
或いは、将来メジャーになる言葉だよなー、と見越して出願することも多々ある。

ま、そういう商標を権利化したのならちゃんと使おう、
& 使わなくなったんなら更新やめようよ。第三者は取消審判で白黒つければ?
ということなんだろうけど。
審判って、企業によってはそんなにお手軽じゃないんだよねー。
費用的な面でという場合もあるし、いたずらに係争を好まない企業も多い。

ともあれ、今しばらくは続くと思われる現行法制化での心構えとしては、
「登録を受けているからいつでも権利行使できる」ということではなく、
「登録した商標が活きるように、価値を毀損しないようにケアしよう」
というありふれた結論になってしまうのかなぁ。

今一つ考えがまとまっていないけど、メモとして。
コメント
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