弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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ニュータイプの商標…?

2012年09月13日 08時57分53秒 | 実務関係(商・不)
長らく議論されている「新しいタイプの商標」について。

1.現状、産業構造審議会(商標制度小委員会)で議論の状況を、整理のために以下に記載。

(1)平成21年10月段階の整理では
  ① 動きの商標:図形等が時間によって変化して見える商標
  ② ホログラムの商標:図形等が見る角度によって変化して見える商標
  ③ 輪郭のない色彩の商標:色彩のみからなる商標
  ④ 位置商標:図形等が常に商品等の特定の位置に付される商標
  ⑤ 音の商標:音楽、音声、自然音等からなる商標
   の5種で、
  ○ 香り・匂いの商標
  ○ 触感の商標
  ○ 味等の商標
   は、権利範囲の特定の困難さから保護対象として追加しないことが適切、とされていた。

(2)ところが、平成24年2月の小委員会(第25回)において、
 「香り・におい・触感・味等の商標についても、その保護の在り方について
  引き続き検証していく」とされた。

(3)そして、平成24年6月の小委員会(第28回)で、
 「香り・におい、味、触感は、原則として識別力がないものとし、
  商標登録できるものは、使用による識別力を獲得し、
  法第3条第2項が適用となるものに限定」しつつも保護対象とする方向で議論されている模様。

  そして、「香り・におい」を例にとれば、
  その保護対象の特定方法として
 「商標の範囲を特定するためには、現時点では、諸外国のように文字で表すということが望ましいのではないか。」
  として、香りを文字で表現・特定することが意見として挙がっている。

※上記の議事録等は、
 特許庁のHPで確認することができます。

2.その後の動きはまだ明らかになっていないものの、
  方向性としては新しいタイプの商標が広く保護対象となる見込み。
  ただし図形そのものに識別力が無いもの、視覚で認識できないものは、
  基本3条2項を満たすことが要件。

  そうとすると、
  現状こうした保護対象となるような特徴的なジングルや匂い・味を有している
  企業は、将来3条2項の立証ができるように今から証拠の整備、知名度の向上を
  図っておくことも適切、ということができると思われる。

3.もっとも、このあたりの法改正の意義は、
  個々の音や香りが登録されることにより保護が高まる、というより、
  継続的な使用により従来識別標識とみなされなかったものが
  識別標識とみなされるようになる、という面により大きな意義があると考えられる。
  このあたりは、立体商標制度が導入されてからの経緯
  (保護対象として立体的要素のみで成立するようになったのは導入から10年以上)
  を考えても、
  「文字・図形等の組み合わせ」という商標の定義の拘泥から、
  自由競争に配慮しつうもより実質的な業務上の信用保護への“トレンド作り”
  という面が強いと思う。


…個人的には、検討・導入の順序はあるように思うけどなぁ。。。
「動き」、「音」はともかくとしても、
「香り」や「味」よりは、「トレードドレス」の検討の方が
現行法の制度枠組みにはより整合的な気がするが。。。
コメント
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