から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

スーサイド・スクワッド 【感想】

2016-09-16 08:00:00 | 映画


マーベルに押されっぱなしのDCの逆襲なるか。「悪」を主人公にした大胆な設定と、予告編のクオリティの高さに胸を高鳴らせていたが、DCファンとして贔屓目に見ても肩すかしだ。「悪」を「悪」として描かなかったことに強い失望感を覚える。みんないい奴じゃないか!(笑)少なくとも「毒をもって毒を制す」内容ではない。また、キャラ描写の力点がハーレイ・クインに寄り過ぎているのも勿体ない。戦うべき相手の設定が雑なため、クライマックスも萌えなかった。つまらないわけではないが、もっと面白い映画になってたはずだ。

意外だったのは、先に公開された「バットマン vs スーパーマン」と地続きのストーリーであったこと。マーベルと同じように、DCユニバースとして映画を広げていくのだな~と実感する。スーパーマンがいなくなった後、誰が人類の守護者となるのか(バットマンじゃ不十分!?)、いや、そもそもスーパーマン自体が人類の味方だったか怪しい。。。そんな状況のなか、新たな守護者を求めた政府が、白羽の矢を立てたのが特殊能力を持ちながら収監されている罪人たちである。減刑と引き換えに、彼らに課されるのは命の保証のない危険なミッション。しかし、彼らに拒否権はなく「逃げたら殺す」の仕組みが強いられている。どっちにしても「決死部隊(=スーサイドスクワッド)」ということだ。

本作を観るまで勘違いしていたのは、本作の主人公らは「悪人」ではなく「罪人」という点だ。当然悪いことをした結果、彼らは罪人として処罰されるのだが、彼らにも普通の人間と同じように良心がきちんと根付いている。劇中挟まれる回想シーンでそれぞれの過去の背景が描かれており、そこには愛する人や家族に対する愛情が注ぎ込まれている。一瞬、「なるほど」と違和感なく見られるのものの、「いや、これで良かったんだっけ??」と本作に対して抱いていたイメージとのギャップを感じ出す。「ワルを描いた映画」というのは自分の勝手な先入観だったが、これでは普通の戦隊ヒーローモノと変わらない。彼らが一致団結するシーンの収まりの悪さったらない。真面目か!

スーサイドスクワッドのメンツは非常に個性豊かだ。DCキャラならではの「陰」なデザインが素晴らしい。それぞれに全く異なる特殊能力を持っているという設定も高ポイントだ。部隊のリーダー役はウィル・スミス演じるデッドショットであるが、映画全体を牽引するのは間違いなくマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインだ。彼女を前面に押し出したプロモーションに偽りはなく、彼女のアイドルムービーといっても過言ではない。超ミニホットパンツ姿が眩しく、情報番組のミヤネ屋が彼女を取り上げたら「尻、出てもうてるやろ!」と宮根がツッコむに違いない。特殊能力のない彼女が部隊に選抜された理由や、デッドショットに彼女がひたすら付いていく理由はよくわからないけど、クレージーでチャーミングな彼女の存在感が本作の最大の引力になっているのは間違いない。

その一方で、他のキャラについてはかなり駆け足だ。キャプテン・ブーメランや、エル・ディアブロ、キラー・クロックは、おそらくもっと面白いキャラなのだろうが、その魅力は十分に描かれず、サブキャラの位置に留まる。個人的に注目したのはディアブロで、顔面に至るまで全身にタトゥ―を入れており、炎を自由自在に操る。おそらく戦闘力は部隊イチであり、唯一スーパーナチュラルな能力を持っている。彼が自身の能力を封印した過去が明らかになり、その個性にグッと深みが出るが、彼がなぜそんな能力を持っているかの説明がほしかった(ミュータント!?)。そのせいでクライマックスでの彼の大活躍シーンも消化不良だ。キャプテン・ブーメランやキラー・クロックに至っては、バトルアクションですら彼らの能力が活かされていないという哀しさ。世界観も能力レベルも違うキャラクターを見事なアンサンブル劇としてまとめ上げた「アベンジャーズ」はやっぱ偉大だな~と再認識した。

彼らが戦うヴィランは予想外だ。予告編だけみるとジョーカーのように思えたがそうではない。ジャレッド・レト演じるジョーカーも本作の楽しみであったが、キャラクターの完成度は素晴らしいものの、「スーサイドスクワッド」の物語としては直接的な関係はなく、ぶっちゃけいなくても良かったという位置にいる。う~ん勿体ない。。。。強いていえば、次回作へのお楽しみキャラといえるか。
本作のヴィランは部隊の一員となる予定だったキャラクターであり、その暴走によって起きる事件の収拾のために部隊が派遣される格好だ。その展開自体は悪くないが、ヴィラン自体の設定がよくわからない。ショッカーのように襲いかかる軍勢(後でその正体はわかるが)、ヴィランである姉弟キャラの狙い、ボス戦の攻防など、ロジックではなく世界観として破綻しているのが気になる。超常現象によるヴィランの攻撃に対して、物理的な攻撃しかできない部隊が互角に戦うのは難しいはずで、その障壁をパスするために、わざわざヴィランが彼らのレベルに落として攻撃をしてくる。そのシーンに思わずズッコケてしまった。

悪を悪として描き、その凶暴さゆえに思いっきり暴れ回る絵を期待していたが、蓋を開けてみればとてもお行儀のよいヒーロー映画。悪役たちによる贖罪のための戦いを描いた映画として打ち出していれば普通に見れたかも。それでも脚本の仕上がりは非常に粗いが。

不評が続くDC映画の起死回生の一打にするにはもってこいの企画だったと思うが、そのチャンスを逃してしまったようだ。続編がありそうな気配だが、期待値が大いに下がってしまった。これがDCユニバースの限界とは思いたくない。

【60点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする