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不屈の男 アンブロークン 【感想】

2016-09-13 09:00:00 | 映画


新作DVDレンタルにて。

戦時中、アメリカの陸上オリンピック選手だった青年が、兵士とした出征した先で日本軍に捕らえられのち、様々な苦難に耐え抜いていくという話。主人公は実在の人物で、つい最近まで健在だったというから驚き。監督はアンジェリーナ・ジョリー。

「一瞬の苦しみと永遠の栄光」と、地元の小さな町で札付きのワルガキだった主人公が、陸上競技に開眼し、スポーツという分野で栄光を勝ち得ていく。しかし、世界を巻き込んだ戦争が、主人公の運命を狂わせ栄光なき苦しみをもたらす。彼が乗っていた飛行機が太平洋上に墜落し40日以上の漂流に見舞われる。その内容だけでも映画1本くらいのボリュームがあるのだが、漂流から救われた相手が、敵軍の日本軍という不幸が待ち受ける。骨と皮だけになった肉体に容赦ない取り調べが続き、捕虜として収監された日本では鬼軍曹(?)による陰湿で暴力的な制裁を浴びせられる。しかし、主人公は映画のタイトルのとおり不屈の精神をもって生き抜いてみせる。
これだけの壮絶な史実を突きつけられながらも、感情が揺り動かされることがほとんどない。彼の「不屈」っぷりが、陸上長距離走選手特有の「忍耐強さ」の延長線上でしか描かれておらず、なぜ彼が苛酷な状況に耐えることができたのかという真の背景が無視されているように思う。それは主人公を苦しめる日本人鬼軍曹も同じで、主人公に「俺とお前は似たモノ同士だ」と言っている理由もよくわからない。平たくいえば、起きた事件の再現VTRの域を出ていない。また、エンドロール手前で流れる、実際の映像で明らかになる感動的な事実についても、主人公がなぜ「赦し」の境地に至ることができたのか、そこにこそ大きなドラマがあると思える。

主人公を演じるのはジャック・オコンネルだ。将来オスカー間違いなしと予想する若手演技派だが、肉体的で表層的なパフォーマンスに留まり、彼の真価が十分に発揮されていない。おそらく脚本の問題。コーエン兄弟が脚本に絡んでいるようだが、このテの話は苦手なのか。

【60点】