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ジ・アメリカンズ シーズン3 【感想】

2016-09-09 08:00:00 | 海外ドラマ


「ジ・アメリカンズ」のシーズン3をNetflixで観終ったので感想を残す。全13話。

安定の面白さだが、エピソード平均の引力は過去2シーズンと比べると最も低い。
しかし後半、大きなイベントを待ち受けていた。

フィリップ夫妻は引き続き、諜報活動と子育ての両立で多忙を極める。昼間は旅行代理店の仕事をして、家に帰れば子どものケアをして、夜になれば諜報活動に出向く。そのサイクルが毎日ではないにせよ、寝ている時間はほとんどなさそうだ。本シーズンでの諜報活動は、当時実際にあったソ連によるアフガン侵攻や、南アフリカの反アパルトヘイト活動に繋がっている。アメリカの情報を奪うというこれまでの活動とは違い、彼らが大義として掲げる「世界を変える」活動に近い。2人のお馴染の変装プレイは、シーズン3を迎えても過去の内容とは全くビジュアルが被っておらず、面白いを通り越してもはや凄いの一言である。凄腕スパイとしての彼らの鮮やかな手並みや、人間相手ならではの予期せぬ事態、ときに遠慮のない冷徹で残酷な人物描写など、ドラマの魅力は本シーズンでも健在。しかし、過去シーズンで感じたようなスケール感は乏しく、フィリップたちの諜報活動と、お隣さんであるスタン率いるFBIの動きがほとんど交錯しないのも面白くない。



本シーズンをみて、改めて思うのは諜報活動において重要なスキルは「他人を利用する」ことだと感じる。利用する人間を操るために最も原始的で手っ取り早いのが、相手と恋愛関係になることだ。色恋は人を盲目にする。前シーズンに続き、フィリップはCIA秘書のマーサと「偽装」結婚を続けているが、本シーズンで新たなターゲットが出現する。その相手は娘のペイジと同世代のティーネイジャーの女子だ。フィリップにメロメロになった女子は「私のコト、欲しくないの?」とフィリップに迫るが、彼はさすがに応じることができない。このあたりのシークエンスで挟まれる過去の回想シーンが印象的だった。フィリップがアメリカに来る前にソ連で体験していた訓練の様子が断片的に描かれる。それはセックスの訓練で、老若に関わらず、異性だけではなく同性をも相手にする訓練を受けていたようだ。相手と肉体関係を持つことはフィリップにとっては仕事の一部であるということ。それは妻のエリザベスも同じだ。スパイも楽じゃない。

本シーズンで大きなターニングポイントとなるのが、前シーズンよりフィリップ夫妻を悩ませていた娘ペイジの存在である。そのペイジはシーズン2から一気に垢ぬけた印象で、どんどん綺麗になっている。確信がないものの、不穏な家庭状況を察知し、自身の生きる道を別の場所に見出そうとしたペイジは、いよいよ本格的に信仰へとのめり込んでいく。非情な現実世界で生きるフィリップ夫妻にとって、信仰はまやかしに過ぎず、信仰に囚われるペイジを強く懸念する。ソ連の諜報本部からはペイジを新たな諜報員として育てるように圧力がかかるなか、フィリップたちは愛する娘ペイジの意思を尊重することを優先する。スパイ活動を抜きにしても、ホームドラマとして相変わらず見応え十分だ。そして、本シーズンの後半でペイジがいよいよフィリップたちの正体を知ることになる。まぁ、いつかはわかることであり来るべき時が来た感じだが、その衝撃はかなり大きかった。両親の秘密を知ったペイジのリアクションが誠実であり、本作の脚本の完成度を改めて実感する。



その一方で想定外だったのが、マーサのパートだ。FBIに仕込んだ盗聴器が見つけられ、フィリップの存在がマーサにバレる。絶対絶命の危機だったが、その危機をつなぎ止めたのがマーサの「情」だ。その2人の掛け合いのシーンが個人的には本シーズンの1番のハイライトだった。利用されていると知りながら、愛する男を裏切れない切なさ。。。マーサに初めて同情してしまった。「新たなステージ」に入ったフィリップとマーサの関係が、以降のシーズンでどう進展していくのか楽しみである。



本シーズンで個人的に物足りなかったのは、前シーズンでソ連に送還されたニーナのパートを、これまでのシーズンと変わらぬボリュームで描いている点だ。極刑を待つ絶望的なニーナの状況を、本作の脚本家は救済する。祖国を裏切った者のリアルな現実として、ニーナはそのまま本シリーズから居なくなっても良かったと思う。その代わりに新たなキャラクターを投入すれば良いわけであり、変わり映えのないキャラクターで無理やり回しているような窮屈さを感じる。このあたりは「ホームランド」や「ハウスオブカード」と比べて作りがヌルい。彼女を愛したスタンとオレグはもっと他のことをやってほしいのに、ニーナを救出しようと余計な時間をかける。しかも結局、彼らの苦労は全くニーナには届かずに終わる。無駄じゃないか。。。。

これまでのシーズンの中で最も不満が出たシーズンだったが、ありがたいことに北米での放映タイミングから間を開けず、次のシーズン4が既にNetflixで配信されている。オリジナルドラマじゃないのに、スゴいぞ、Netflix!!
日本でこのドラマを見られるのは、Netflixだけなのにどうしてもっと宣伝しないんだろ。海ドラファンを取り込めると思うんだけどな。。。

その最新シーズンであるシーズン4は、今月開催されるエミー賞で作品賞、主演賞などで堂々の初ノミネートを果たしている。ファンとしてはめちゃくちゃ嬉しい。授賞式までにシーズン4を見ておかなければ。

【70点】
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