チュニジアと「笑い」


 日経でチュニジア女性初のオリンピック・メダリスト(3000m障害銀メダル) Habiba Ghribi選手について、競技用の服が肌を露出しすぎだったというので原理主義者が「国籍剥奪」を要求している、という記事が出てました。
 出どころは8月14日のAPですから、これですね。

 イスラム原理主義者はどうしたってそういうことを言うんだから、ここにあるみたいな「わたしはこのメダルを全てのチュニジア女性と『新しいチュニジア』に捧げる」という感動的なメッセージの方を伝えずに否定的な情報ばかり流すのは、日本のメディアが、こういう国よりは日本はまし、と国民を安心させようという機能しか果たす気がないということか、と嫌な気がしてました。

 このサイトでは、グリビ選手がフランス語でインタビューに答えているのが聞けます(わたしの教え子さんたち、聞き取りやってみて!)。今回は否定的ニュースが英語、前向きニュースがフランス語と分かれた感じですが、こういうのよくあることのように思えます。
 言うまでもありませんが、日本が英語の方ばかりとっているのは、あんまりバランスがよくないと思います。

 ・・・なんですが、フランスのLiberation この記事(すぐ消えちゃうかな)の報ずるところを見ると、たしかにチュニジアは原理主義の力が急速に大きくなってきているような感じですね。彼らが文化的スペクタクルを中止に追い込む事件が頻発しているというのです。
 これはやばい。困ったな・・・

 せっかく「ジャスミン革命」を達成して独裁者を倒したのに、公平な選挙でイスラム保守派政権ができてしまうと、サラフィスト(初期イスラム時代の精神への回帰を志向する人)たちが跳梁しはじめ、政府も彼らへの対応が及び腰、という状況ができてしまっているようです。
 チュニジアはアルジェリアと同じ轍を踏むんでしょうか・・・

 上記の記事を見ると、今回は主にLotfi Abdelliのone-man-showがターゲットになったみたいです。
 要するに「笑い」です。サラフィストたちは反イスラム的と見える笑いを圧殺しにかかっているのです。

 ロトフィ・アブデリのお笑いがどういう性質のものか、分かればいいですが、残念ながらこれはチュニジアの口語アラブ語が聞き取れないとどうしようもないです。それが可能な日本人というのはいるんだろうか? いないなら、ある程度はできてほしいです・・・

 わたしは一般的に「アラブ系お笑い」と呼べるジャンルに興味があります。フランスにはJamel Debouze, Gad el Malehなどフランス語でやってるアラブ系のお笑いの人たちがたくさんいますし。でも彼らの影響力を知ろうと思ったら、そうとう言葉が聞き取れて、社会的、文化的背景がわかって「なんでこれが可笑しいのか」わかる必要があるわけで、大変難しいです。音楽どころの話ではない。
 こういう民衆の笑いを理解できるということは、高度なフランス文学のテキストを理解するのと同じくらい大事なことだと思うのですが、でもそういうのができても日本ではたいして人にリスペクトされないだろうなあ・・・


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