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旅淡シリーズ~昼下がりの倉敷を歩く

2013-02-27 | お出かけ

夜の倉敷もいいですが、昼下がりもね。

というわけで、何度も来ている倉敷美観地区、
もう別に良く知ってるから行かなくていいわ、と言う気も
ちらっとしないでもなかったのですが、
何が何でも出かけなくてはいけない理由ができました。
それは

大原美術館を解説員の案内付きで観賞

という、地元企業の社長である知人の篤いご手配により、
ありがたいようなありがたくないような(これっ)スケジュールが
この日の朝から入っていたのです。

「大原美術館、何度も観ているんだけどな・・・」

しかし、これも秋田に行ったときに慨嘆したように、
「接待する方もされる方もとりあえずは仕事」というモードですから、
これを「いや、もう観たことあるので結構です」
なんてとても言えるものではありません。

社会人の皆さん、そうでしょう?

案の定ぶーぶー文句をいう息子を無理やり引っ張り出し、ホテルを出ました。



部屋からの眺め。
屋根瓦が昔のままです。



倉敷国際ホテルは実は庭で大原美術館とつながっています。
なので、入口を出て角を曲がればそこは美術館と言うロケーション。



疎水を見ながら30秒も行かないうちに着いてしまいます。
ここには白鳥のカップルがいて、優雅な姿を見せてくれるのですが、
なんだか一羽の様子がおかしい。


その長い首を上下に激しく振っています。

夫の(勝手に決めているけど根拠なし)様子がおかしいので、
妻も少し心配そう。
「あなたどうなさったの?」
「さっきなんかうまそうじゃ思うて口にしたもん、食べ物ちゃう!
でも、半分喉に詰まって取れへんのじゃ~」(うろ覚えの岡山弁)

まあ、こんな状態では喋るどころではないので、
鳥同士のテレパシーでこのような会話が行われていると想像しました。

うーん、水の中に小さなプラスティック袋が落ちていたんですね。
よく、ウミガメなどは、プラスティックバッグをクラゲだと思って食べてしまい、
詰まらせて死んでしまうという話を聞いたことがありますが、
そんな感じでしょうか。
何しろ苦しそうです。



「優雅に見える白鳥も水の中では必死で水を掻いている」
by花形満

白鳥は尾から出る脂分を羽に付けて楽に浮くことができるので、
上記は梶原一騎の勘違いであったことが最近明らかになったわけですが、
この白鳥は皆にもしっかりわかるように必死で水上で首を振っています。

「これ、誰かに言った方がいいんじゃない」
と見ていると、どこかのお店の制服を着た女の子が立ち止まり、
じっと見てから立ち去ったので、わたしたちは彼女が
しかるべき部署にこのことを報告するものと安心してそこを去りました。

しかし白鳥にとって不幸中の幸いだったのは、
このように口から垂れ下がっているから異常に気付いてもらえたことです。
プラスティックが小さくて口に入ってしまっていたら、ウミガメと同じ運命でした。



大原美術館到着。
ここで副館長とご挨拶。
虫明さんとおっしゃるかたでした。
この名前は岡山県の地名でもあり、ここの出身者に見られるものです。
ちなみにわたしの名字も岡山にその地名があり、岡山に多い名字です。
TOのルーツは岡山ではなく、そのお向かいの四国らしいのですが。

副館長が用意してくださった解説員はここのキュレーター。
ところがTOったらこの方に挨拶するなり
「何度も観ているので簡単にお願いします」

な、何を言う~!それでも社会人か。
向こうだってスポンサーの命令で仕方なく来ているのに、
こんなことを言われて気を悪くしない美術館員がいようか。

後で文句を言うと、
「だって、気乗りのしないようなこと言っていたからきみのことを思って」
「それは嬉しいけどあの方は頼まれて来てるのだけなのに失礼じゃない」

そう、たとえ陰でどれだけ「めんどくさい」などと言っていても、こういう状況になれば
解説員の言うことを真剣に聞き、熱心に質問などしてしまうのがエリス中尉。
それになんだかんだ言って解説がついていると居ないでは全く面白さも違います。
この方の説明に周りの客も「ほおー」などと言って質問してくるのもまた一興。

ところで、この日、この方と二人で館内を巡っていてこんなことがありました。

現代絵画のコーナーに、アメリカ人のリトグラフの作品で
「ローザ・パークス」と言うタイトルのものがあったのです。

「公民権運動のローザ・パークスですね」

わたしが言うと、解説の方は

「知りません」

とおっしゃるので、バスの白人専用席に座って、運転手が「どけ」というのを
断固無視してすわり続けた黒人女性で、この事件が公民権運動の
ひとつのきっかけになったことを話しました。
エリス中尉、このローザ・パークスが「レジスタンスとして」というよりは
中年のおばちゃんが仕事の後疲れていて座り込んだところ文句を言われたので、
そこで断固抵抗しただけというのが真相ではないかと疑っているのですが、
それはともかく、この絵は、画面のほとんどが黒で、右上の部分に白く切り抜かれたように
白が配置されている、というそれだけのもの。
「ローザ・パークス」と題名がついていなければ、ただの包み紙です。

この圧倒的な黒が公民権運動の高まりっていう意味なんでしょうか

これは思い付きで言ってみましたが、

「ははあ・・・。勉強になりました」

とまで言われてしまい、それまででした。
ちなみに息子に後で聴くと「それくらい学校で習うぜ」

習うかなあ。



説明してくれたのは本館だけで、ここは家族で適当に見学。
地下に現代美術展示があり、これがかなりおもしろかったです。



屋外の作品群。
このつるつるした石が埋め込まれている様子がなぜか快感を感じる作品。



快感と言えば、こんな風に舗道に半分はみ出している石。
これも、なんだかわからないけど、快感です。

そう、知識はともかく、わたしが美術作品を評価するのは
「目に快であるか、不快であるか」
理屈ではない、この一点に尽きます。


さて、予定されていた「仕事」が終わり、お茶でも飲もうと言う話になりました。



一度は行ってみたかったエル・グレコに。



ツタは大昔からこの建物を覆い続けているようで、
ほとんどが樹木化しています。
ここの夏季に撮られた写真を見るとツタの葉が深々と覆い、
全く壁が見えません。



窓が極限まで高くとってあり、室内はとても明るい。





大原美術館と同じ敷地内にあり、ミュージアムカフェの役を担うこの喫茶店、
最初はなんと大原孫三郎の事務所だったのだそうです。

この建物ができたのは大正の末期。
最後の年だったとすると大原美術館の建設に先駆けてこの建物が
事務所のために建てられていたということになります。

美術を鑑賞した後の余韻をお茶を飲みつつ味わう場所を、ということで
ここを大原總一郎の御母堂が「息子の願いを聞き届け」、
昭和34年に喫茶店としてオープンさせたということです。



すりガラスのドアに和風の紋。
これは大原家の家紋です。

お茶を飲んでホテルに帰るまでの道を歩きました。



細い小路。



なぜか近頃観光地に欠かせない「猫グッズの店」。
犬好きも取り込もうと、犬グッズも扱っています。
店内には猫の声がサンプリングされたクリスマスの曲のCDが、
2月と言うのに流れていました。
実はこの「キワモノCD」、妹が買ってきてうちにあるんです。

何を買うでもなく中をぶらっとしたのですが、ガラスのウィンドーの中で
巨大猫がお昼寝していました。



この招き猫が思いっきり手を挙げているのと、犬のコンボにウケて。

この後いくつかお土産物屋を冷やかしたのですが、
そこで今回の旅行中見た唯一の不愉快な出来事が。
岡山空港は国際線、といっても中国と韓国だけが開設されていて、
昔来たときからは考えられないくらい、特に韓国人旅行客がいました。

その土産物屋にも大学生らしい韓国人がうろうろしていたのですが、
一人が何かを買ってビニール袋を持ったままもう一度店内で、
800円くらいの小物入れを手にし、そのまま店の入り口付近で待っている
仲間のところに行きます。
レジに立ち寄るのかな、と思ったら、次の瞬間彼らは出て行ってしまったのです。

あっという間の出来事でした。
しかも、盗った本人は笑いながら仲間に何事か報告しているのが最後に見え、
念のため店の外まで出てみたら人ごみにまぎれてしまっていました。

日本のお店の、ろくに店員もおかず自由に品物を手に取ってみる形態は
基本客が万引きしないことを前提にしているのですが、
彼らはこれをすっかり味を占め悪用したということのようです。

わざわざ海外に来て平気でこんなことをするとは・・・。
これも愛国無罪ってやつですか。


さて、そういういやな話はともかく、もう一度河畔に来てみると・・・。



プラスティックバッグを飲み込みそうになった白鳥はどうなったのでしょうか。



どうやらあの後誰かがレスキューしたようです。
よかったよかった。



なんと、高橋大輔選手は倉敷出身だったのか。



アメリカによくあるタイプの建物ですが、ここでは希少です。



チャペル発見。
こんなところで結婚式を挙げたい!というカップルは多そうですね。



これも夏になるとツタの緑で覆われるのでしょう。
もとクラボウ(倉敷貿易)の工場だったこの建物は、
冷房のない時代、夏の暑さを少しでも和らげるためツタが植えられました。



桜の木の下のお地蔵様。
ちゃんと水仙の花が供えられていました。


どこをとっても絵になる街、それが倉敷です。