ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

DVD 平和への誓約(うけい)~松尾敬宇中佐

2010-04-30 | 映画



先日遊就館で買ったDVD「平和への誓約」を観ました。
特殊潜航艇でシドニー湾に突入し散華した松尾敬宇大尉の話です。
このDVDは靖國神社の遊就館でしか購入することができないそうです。
館内の映画上映のために作られたものであるからかもしれません。

32分というとても短いアニメですが、松尾大尉の生まれた日から、幼年時のエピソード、海軍を志す日、
特殊潜航艇での戦死、そして母まつ枝さんの戦後の豪州訪問までが丁寧に描かれています。

本来ワンシーンで終わってしまうエピソードを無理やり2時間の映画にして大失敗、という
『月光の夏』とは対照的です。



昭和17年春。
海兵66期卒海軍大尉の松尾敬宇は、部下の都竹正雄兵曹と特殊潜航艇でシドニー湾に突入しました。
松尾大尉はこの任務にあたり自分の最後を覚悟したらしく、
最後の帰郷の際「菊池千本槍」という日本刀を父上に所望しています。
鞘袋はまつ枝さんの婚礼衣装の帯地でできていました。

特殊潜航艇はシドニー湾内で攻撃を開始。
湾内にあった豪州軍艦隊は突然の攻撃で大混乱に陥ります。
ところが松尾大尉の艇に機会トラブルが発生。魚雷の発射が不可能となるのです。
松尾大尉は体当たりで本懐を遂げることを決意。

特殊潜航艇は、敵艦に近づき魚雷を発射する兵器です。
しかし、波で揺れる中、潜望鏡の限られた視野の中で狙いを定めるのは容易なことではありません。

松尾大尉は確実に敵艦に体当たりをしようとして艦を浮上させ、ハッチを開けて外に身を乗り出し、
都竹兵曹に艇の方向を指示します。


オーストラリア軍艦の乗組員が見たのは、月明かりの中、日本刀「菊池一本槍」を手に持ち、
まっすぐ突き進んでくる松尾大尉の姿でした。


その後、艇は敵艦の攻撃により湾内に沈没。
後日引き上げられた艇内で、松尾大尉は都竹兵曹と抱き合うようにし、頭を撃って自決していました。

オーストラリア海軍は、敵国でありながらその勇気と愛国心をたたえ、国旗で棺を覆い、
最高の礼を以て海軍葬で松尾大尉らを弔いました。
オーストラリア国民に松尾大尉らの与えた感動は非常に大きなものだったと言います。

戦後、豪州政府の招きで息子の最後の場所を尋ねたまつ枝さんは
「よくこんな狭いところを通り抜けて攻撃したものだ。母は褒めてあげますよ」
とつぶやきました。
しかし、まつ枝さんは「戦争は悲惨ですから二度とすべきではありませんね」というメディアの問いかけに一言も答えなかったと言います。

「また戦わなければならないときは、私がそうだったように、息子のような勇士を送り出す。
それが日本という国なのだ」
まつ枝さんはそう言いたかったのだということです。


松尾敬宇海軍中佐、昭和17年5月31日、シドニー湾にて散華。
死後二階級特進、享年二十四。