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ムスリムの子ども教育5~家庭の土台の作り方(5)~

2018年07月18日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

ムスリムの子ども教育5~家庭の土台の作り方(5)~

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)子どもの教育(2:21:19~34:58) bit.ly/1PPruiy

  

前回は、家庭の土台作りとして、妊娠についてお話しました。今回はその続きで出産です。

 

出産時に子どもに唱えるスンナのアザーンとイカーマ:

 

産まれた子どもの右耳にアザーンを、左耳にイカーマを唱えることがスンナです。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のハディースにこうあります。

 

《私は、アッラーの御使い様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がハサン・ブヌ・アリーの耳に、ファーティマが彼を産んだ時、礼拝のアザーンを唱えるのを見ました。》ティルミズィー伝承

 

まだ物心もつかない産まれたばかりの赤ちゃんの耳に、アザーンを聴かせることに何の意味があるのでしょうか。実は、このスンナには、とても大きな英知と意味があります。

 

一つ目の英知は、アザーンにより、シャイターンから守られます。赤ちゃんがこの世に誕生した時に、最初にシャイターンに出会い、シャイターンの指で触られた赤ちゃんは泣き叫びます。ただ、預言者ムハンマド様(彼にアッラーの祝福と平安あれ)のご誕生の時だけは、別で、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はこの世に産まれた時に泣かず、くしゃみをされました。すると、「ヤルハムカッラー(あなたにアッラーのご慈悲あれ)」という声がして、その場にいたシャッファーウ(アブドゥッラフマーン・ブヌ・アウフフ様の母親(彼らの上にアッラーのご満悦あれ))がその声を聞きましたが、声の主を見ることはなかったそうです。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のご誕生は、拝火教徒が1000年絶やさずに拝んできた火が消えるくらい全世界に大きな影響を与えたもので、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の誕生は、普通の子どもの誕生とは比べることができません。

 

また、出産時にアザーンを唱えることの英知の2つ目は、この世に誕生した一番最初に、体の欲求でも、知力の欲求でもなく、魂の欲求を最初に満たすことの重要性です。体の欲求は、ミルクを飲むことを求めますが、魂の欲求は、アッラーを唱念すること(ズィクル)の光が届くことによって満たされます。この世に産まれてきた赤ちゃんに、最初に話しかける言葉は、体にでも、知力にでもなく、魂に向けた言葉です。このことは、私たち人間の名誉は、体に対してでも知力に対してでもなく、魂の名誉に拠ることがわかります。なぜなら、魂は、アッラーがご自分のルーフ(魂)から吹き込んでくださったものだからです。

 

【われは、彼(人間)を(完全に)形作りました。それからわれの霊(ルーフ)を彼に吹込んだ時、「あなたがた(天使)は彼にサジダしなさい。」と(命じました)。】クルアーン アル・ヒジュル章 29節

 

魂に向けたアッラーのズィクルを聞いた子どもの魂は、知力がまだその意味を理解する前に、そのズィクルの甘美さを満喫します。そして、父親がその役目を果たすことで、子どもは、彼にとっての父親が、ただ彼を扶養し、食べ物を与えるだけの存在ではなく、アッラーの光を伝える存在だということを証言します。そのため、父親が産まれたばかりの子どもの耳に、アザーンを唱えることがスンナなのです。それによって、体や知力よりも先に、子どもの魂が、父親との関係を認識するためです。それにより、子どもの心と魂の中に、親孝行の最初のレンガが打ち建てられます。一部の人は、なぜあの子は父親を尊敬し、親孝行なのだろう?多くの若者が、自分の父親のことを、ただ働いて自分を扶養し、食べ物を与え、お金を持って来てくれる人だから、という理由だけで、表面的に父親に従っているというのに?と思うかもしれませんが、それは、父親が、子どもの体の要求だけを満たしているためです。そうではなく、子どもの魂に、父親のアザーンによって、アッラーの光を伝えられた子どもは、知力が理解し始める前に、親孝行の核心をすでに受け取っています。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、すべてのムスリムの父親に、このスンナによって、まるで、こう言っているようです。あなたの役割は、ただ子どもに食べ物や飲み物を与えたり、子どもをかわいがったり、学校の送り迎えをしたり、必要なものを買ってあげることではなく、そんな小さな現世のことではなく、子どもの誕生時に、子どもとの関係を作る最初の段階において、私があなたに命じ、スンナとして行うよう願ったことは、子どもの体や知力を求める前に、子どもの魂を求めなさい、ということです、と。このアザーンは、父親が、体の要求よりも前に、魂の要求を満たしてくれる存在として、子どもに認識されるためのものです。

 

授乳時のスンナ:

 

そして、母親は、子どもに授乳をする時に、アッラーをズィクルするのがスンナです。ミルクを飲ませる前に、「ビスミッラー」(アッラーの御名において)と言って始めることで、アッラーの御名の光が、彼女のミルクと一緒に、子どもの体の中に深く流れ込みます。昔の敬虔な方は、授乳をしている母親が、関係のないおしゃべりをしていると、「アッラーを唱念しなさい。あなたは、子どもに授乳しているんですよ。子どもの心にアッラーの光を一緒に与えなさい。」と言っていました。そして、もし授乳している母親が、アッラーを忘れ悪口などを言っていたら、「あなたは、忘恩をミルクと一緒に子どもの心に入れるのですか?!」と言われたものでした。こういったことは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)からの知識以外からは、学ぶことができない知識です。

 

現在は多くの専門家が、子ども教育のために、子どもの知覚能力が形成された後の体の成長や心の成長などについて、様々な知識を紹介しています。しかし、イスラームにおけるムハンマド様(アッラーの祝福と平安あれ)の子どもの教育法は、子どもがこの世に誕生する前から、親が子どもを授かる前から始まります。子どもが、イスラームの光、信仰の光、アッラーとムハンマド様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の光を受けるために、子どもの体が形成されるずっと前から、子ども教育の最初の一歩を始めます。

 

子どもの授乳している時にハラールのお金で得た食べ物を母親に食べさせること:

 

子どもを、授乳の時から、ハラールのお金で得た食べ物やハラールの食べ物を与えるよう、できる限り努力することは、子どもの教育においてとても大切です。現代では、ハラールのお金を得ることがとても難しくなっています。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、こう言われたとおりです。

 

《利子を貪ぼらない人がいない時代が、必ず人々のところにやって来ます。もし、それ(利子)を貪ることがなかったとしても、その埃をかぶります。》イブンマージャ、アブーダーウード、ナサーイー伝承

 

私たちが生きている時代のことです。しかし、アッラーがご覧になっているのは私たちの心です。ハラームの利子をできる限り避けようとしている心があるかどうかを、アッラーはご覧になっています。

 

著名なイスラーム学者イマーム・ガザーリーの師であった、アル=ジュワイニー師(彼らにアッラーのご慈悲あれ)の逸話があります。彼は、イスラームの知識に長け、その演説の上手さや論述の正確さにおいて当時右に出る者がいないほどの学者でしたが、滑らかに話す彼が時々、話の途中で沈黙することがありました。ある人が彼に、「あなたの弁術は本当にすばらしい。しかし、その弁術のすばらしさと、その時折見せる沈黙の秘密は何でしょうか。」と尋ねました。すると、彼は、「私の父は、アッラーを畏れる本当に用心深い人で、ハラールのお金や食べ物を固く守り、私にも、母にも、ハラールのものしか決して与えませんでした。いつも母に、母以外の誰からも、私に授乳させないようにと言って、私に他の人の母乳を与えることを禁じていました。ある日、母が忙しくしている間、私がお腹を空かせて泣いていると、隣の家の奥さんがやって来て、かわいそうに思って私を抱き上げると、自分の母乳を与え始めました。そこへ、父が帰宅し、彼女が授乳をしているのに気付くと、『その子を渡してください。』と言い、私を別の部屋に連れて行くと、急いで足を持って逆さにし、口に手を入れて、『吐き出せ、吐き出せ。』と言って、胃の中のミルクをすべて吐き出させました。父は隣の家の主人が利子を扱っていたことを知っていたからです。私の知識や弁が立つのは、父がハラールで育ててくれたからで、沈黙は、その時に胃に残っていたミルクの分です。」

 

子どもを育てるときにハラームのお金が入らないように、注意することはその子の将来に大きな影響を与え、とても大切です。

 

 

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