بسم الله الرحمن الرحيم
97章解説
1. 本当にわれは、みいつの夜に、この(クルアーン)を下した。
2. みいつの夜が何であるかを、あなたに理解させるものは何か。
3. みいつの夜は、千月よりも優る。
4. (その夜)天使たちと聖霊は、主の許しのもとに、凡ての神命を齎して下る。
5. 暁の明けるまで、(それは)平安である。
偉人や何かに対する勝利、記念日などに祝い事をするという習慣が多くの共同体の中に存在しています。またこういった祝い事は飲酒などの多くの罪を引き寄せる機会となってしまっています。
代わってイスラームは、この宗教に追従する者たちにクルアーンの啓示に対する祝い方の紹介をしてくれています。心を鍛え、五感を繊細にし、至高なるアッラーに結び付けるイバーダ(崇拝行為)で祝うのが相応しく、具体的には、ライラトゥルカドル(みいつの夜)をアッラーに捧げるイバーダで過ごすことだと言われています。
ここでアッラーは、人間に垂れたクルアーンの降下という恩恵を信者たちに思い出させ給います。クルアーンは人々を暗闇から光へと連れ出してくれます:「本当にわれは、みいつの夜に、この(クルアーン)を下した」つまりライラトゥルカドゥルに預言者(平安と祝福あれ)に啓示が下り始めたという意味です。その夜はラマダーン月の中にある一日で、次の御言葉が示している通りでもあります:「ラマダーンの月こそは、人類の導きとして、クルアーンが下された月である」(雌牛章185節)
また、ここでの「下した」は、アッラーがクルアーンをラマダーン月のライラトゥルカドゥルに一度に現世の天に下し、そこから出来事に応じて23年の間、預言者(平安と祝福あれ)に少しずつ天使ジブリールを介して下した、とも言われます。そして預言者(平安と祝福あれ)は啓示されたものを共同体に伝え続けました。
ライラトゥルカドル(みいつの夜)と名がついた理由は、その夜の偉大さと尊さが由来しています。カドゥルは偉大、尊いという意味を持ちます。続けてアッラーは仰せになります:「みいつの夜が何であるかを、あなたに理解させるものは何か」この疑問文はこの夜の重要さを増強します。つまりこの夜の価値の崇高さは被造物の理解を超えたものであり、アッラー以外にそれを知り得る存在はない、という意味です。
続けてアッラーはライラトゥルカドゥルの夜における善行について解明し給います:「みいつの夜は、千月よりも優る」つまりライラトゥルカドゥルの夜に行われる善行や礼拝は、ライラトゥルカドゥルを含まない1000月中に行う善行とイバーダに勝る、という意味です。ここでなぜ「夜」という時間帯が選ばれているのでしょうか。この時間帯に捧げられるイバーダはアッラーおひとりのみに捧げられるからです。アッラーに対するイバーダを人に見られるためにしている人は、決して夜の間(任意の)礼拝に立つことはできません。しかしアッラーに対する畏れの気持ちをもって夜の礼拝に立つ者は真の信者と言えるでしょう。
次にアッラーはライラトゥルカドゥルが持つ偉大な特徴を解説し給います:
「(その夜)天使たちと聖霊は、主の許しのもとに、凡ての神命を齎して下る。暁の明けるまで、(それは)平安である。」
つまり、かの夜に天使たちとジブリールが「主の許しのもと」つまり主の命令に応じて地上に降りて来ます。「凡ての神命を齎して」つまりアッラーがその年から次の年の間に定め給うたすべての事柄のために、という意味です。この夜に諸事柄が決定され、寿命と糧が決められます。「暁の明けるまで、(それは)平安である」つまりライラトゥルカドゥルはそのすべてが平安であり、悪はなく、暁が明けるまで平安は続く、ということです。また、天使たちはこの夜にアッラーによく従い崇める人たちに平安の挨拶を暁が明けるまで送り続けるとも言われます。
以上から、ライラトゥルカドゥルはその夜自体が善であり祝福であるため、その善と祝福を獲得しそびれてしまうのは信者にとって好ましくないことが分かります。そのため預言者(平安と祝福あれ)も次のように言われています:《ライラトゥルカドゥル(みいつの夜)に、信仰と報酬を願って祈りに立った者は、今までに犯した罪が赦される。》(アル=ブハーリー)
その夜に立つとは、礼拝、祈願、イスティグファール(罪の赦し請い)、クルアーン読誦といったイバーダ(崇拝行為)に励むことを指します。
伝えられたことによると、預言者(平安と祝福あれ)はラマダーン最終10日間にはお籠りをされ、次のように言われていました:《ラマダーン最終10日間からライラトゥルカドゥルを探し出しなさい。》(アル=ブハーリー)
他にも次のように彼(平安と祝福あれ)は言われました:《ラマダーン最終10日間の奇数日からライラトゥルカドゥルを探し出しなさい》(アル=ブハーリー)つまり21,23,25,27,29の夜です。ライラトゥルカドゥルが明解にされなかった背景に、信者たちにアッラーから恩恵や魂の平安、自我の浄化を頂戴できるようこの10日間イバーダに励むよう急きたてたいというイスラームの配慮があります。
(参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ アンマ/アフィーフ・アブドゥ=ル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーン(P144~146)
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