【作・演出】川村毅
【音楽】杉浦英治(SUGIURUMN) 【照明】原田 保 【音響】藤平美保子
【衣裳】伊藤かよみ 【演出助手】小松主税
【舞台監督】小笠原幹夫 小野寺栞/劇工房 双真
【製作】平井佳子/ティーファクトリー
【宣伝美術】町口 覚/マッチアンドカンパニー
【出演】今井朋彦 加藤虎ノ介 川口 覚 池岡亮介 小林 隆
【あらすじ】
何もない、けれど全てがある空間。
そこには箱がひとつある。
箱に誘われるように現れる5人の男。
彼らはそれぞれ、箱から紙片を取り、そこに書かれたことに目を落とす。
裁判員に選ばれた大学職員
法務大臣
拘置所の刑務官
未決囚
役割は4つ。
一人は去り、残された4人は順に長いモノローグを始める。
罪と罰、悔恨と恐怖、孤独と虚無、過去と未来、希望と夢。
それぞれの独白、その断片は次第に他の役割の人物の言葉と呼応し、男たちを結ぶ「事件」の像が浮かび上がって来る。
罪とは何か。
それを犯した人間を、同じ人間が裁き、罰を与えることは可能なのか。
虚実を往還する4人と1人の果てなきゲームに、終幕は訪れるのか。
そしてその時、男たちは‥‥。
閉塞的な状況の中、楽しい作品ももちろん観たいんですが なんだかすごく台詞のシャワーを浴びたくなってしまい、あうるすぽっとへ。
ネタバレしますのでご注意を。改行しときます。
この作品は、白井晃さんの演出で上演されたものを、今回は作者の川村氏自身が演出。初演は観ていませんが、シアタートラムの座席を撤去するなど、かなり実験的な舞台だったそうです。今回は普通に舞台上で終始しますが、内容はかなり独創的。今井朋彦さん、川口覚さんをはじめとする実力派ぞろいで発声も素晴らしく、モノローグを多用する展開もぐっと惹きつけられました。
裁判員に選ばれた大学職員、法務大臣、拘置所の刑務官、未決囚、この4つの役割をそれぞれが演じますが、4人が4人とも「死」と密接に向き合った経験を持っています。モノローグの内容には、総理の椅子に最も近いとされた閣僚の自死、無差別殺人など、かつておきた実際の事件がオーバーラップするものもあり、どきりとさせられました。
実際に処刑にかかわる刑務官と殺人者、死刑に挙手する裁判員、死刑執行を決定する法務大臣、それぞれの迷いや苦悩、死刑制度の矛盾などが浮かび上がり、くじによって何度か立場を変えるたびに見えてくる真実もあり、とてもスリリングで考えさせられます。5人目の登場人物(小林隆さん)のモノローグによって、実はこの4人が犯罪被害者の家族だったことがわかり、さらに彼は殺人者の家族だったこともわかります。「他人ではなく私を殺してくれればよかった」と絞り出すように吐露する犯罪者の親としての苦しみ、悲しみが、ずーんと伝わり、こみあげるものがありました。
平成の前代未聞の大事件にかかわるらしいという噂を聞いて、もしや地下鉄サリン?と、びびりましたがそうではなく秋葉原のあの事件?と思わされました。ともかく、あってはならないことです。関わるすべての人々がこれほど苦しく複雑な思いに囚われる。最後はまぶしい光につつまれますが、救いとか、希望とか、そういった明るさを導く展開にならないことが、かえってこのテーマの奥の深さをあらわしているように思えました。久しぶりに見ごたえのある舞台。どの役者さんも存在感があり、引き込まれました。池岡亮介さんという方は初見でしたが、この達者な役者さん揃いの中で、一歩もひけをとらない感じです。いい役者さんになりそう。久しぶりに舞台でお会いできたワタシ的推しの川口覚さんは4つの役割の中でも無差別殺人犯メインという今までとは一味違った配役をきっちり見せてくれて大満足なのでした。
それにしても、人のこと言えませんけどこの感染者増大の中、池袋の町には若者がラッシュアワーばりに沢山歩いていました。年配者はほとんど見かけないのに。。。
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