■作 井上ひさし
■演出 鵜山 仁
■出演 内野聖陽 有森也実
命を舞台にかけて、欠けた鏡に素顔をうつし
白粉塗る度夢を見るのは、母の姿か息子の顔か。
笑いの後に涙が一滴、可笑しくも華やかな一人芝居の二本立て。
楽屋芝居の名作があの二人で蘇る。
朝ドラ『おかえりモネ』では、優しいお父さんな内野さんを、やっぱり板の上で観たくなり、サザンシアターへ。
開演前から石原裕次郎や水前寺清子さんなど、バリバリの昭和歌謡が流れ、年配者多目の客席も大漁旗の大きな鯛が踊る舞台上も、昭和感満載
一幕の有森也実さんの女座長、ほっそりと 儚げなイメージとは180度違う骨太の五月洋子がそこに!三度笠の旅姿で舞台袖にはけてゆく姿のかっこいいこと!
ニ幕 待ってました!の内野さん。楽屋で寝っ転がった姿から、すっぴんから化粧を重ねる内野さんが、どんどん変化していく様がすごいです。一幕の有森也実さんもですが、45分、ずーっと台詞を発し続け、大漁旗と化粧前の他には何もない空間に様々な人物を、様々な情景を浮かび上がらせる。これぞ演劇!と、胸が熱くました
お二人とも舞台から真っ直ぐに客席に向かい、そこにはない鏡に向かって化粧をはじめますが、本当にそこに鏡があるかのよう。水おしろいを刷毛でぬりたくり、頬紅を濃く入れ、また粉をはたきまくる。黒々とした眉を描きあげ、紙をあててなじませる。髪をまとめあげ、カツラをのせる。その過程を見せながら同時に自らの人生を語りつくすという、ものすごい舞台でした。
ロビーには小さなのぼり旗。
役者というものは一 声、ニ 所作、三 姿といって、声がなによりも大事。
内野さんの発する台詞ですが、この言葉に急逝された辻萬長さんを思い、思わず落涙。。。でした。