作:井上ひさし
演出:栗山民也
<キャスト>
秋山菜津子、山西惇、久保酎吉、田代万里生、木村靖司
後藤浩明、深谷美歩、峰崎亮介、長谷川直紀、木場勝己
時は太平洋戦争前夜昭和15年から16年の東京、浅草のレコード屋オデオン堂の家族と、広告文案家の下宿人は皆、音楽大好きな一家である。しかもその音楽は『仮想敵国のジャズ』であったり、『軟弱な流行歌』であったり・・・。
更に陸軍に入隊していた長男が脱走、追ってきたのは憲兵伍長、いつの間にかオデオン堂は非国民の家と噂されてしまう。
しかし、可憐な一人娘が結婚相手に選んだのは傷病兵。非国民家族から一転、美談の家になったオデオン堂で繰り広げられる、好きなものが好きと言えなかった時代の、愛すべき家族と下宿人たちの運命は・・・。
日中戦争、傷痍軍人、脱走兵、憲兵・・・・暗い時代の明るい一家の物語に胸うたれてきました。今回の収穫は、なんといっても秋山菜津子さんの歌、そして田代万里生くんの角刈り・・いえ、身体能力、いえ、演技力魅力的なキャラクターだなあ・・と、改めて思いました。秋山菜津子さんはミステリアスな悪女の似合うクールな女優というイメージでしたが、明るくキュートな後妻をとびきり素敵に演じていて、本当に素晴らしかったです。前回この役は愛華みれさんがふんわりと演じていらして、シャープなイメージの秋山さんがどんなふうに演じるのかと思っていましたが、一生懸命でそこそこ色っぽく、まっすぐなお母さんに感動しました。
この家のお嬢さんと結婚した傷痍軍人の山西惇さん。軍人としてまっすぐに国の「大義」を信じてきた彼が、その「大義」に疑問を持った瞬間の表現が衝撃的で、心を揺さぶられました。そして最後に歌う秋山さんの「青空」
文字通り突然に訪れて日常を遮る、ショッキングな幕切れも印象的でした。